噛み合わせ

噛み合わせの違和感や歯が浮く原因は?矯正治療中の対処法を解説します!

噛み合わせの違和感や歯が浮く原因は?矯正治療中の対処法を解説します!

矯正治療中には、噛み合わせの違和感や歯が浮くような感覚が現れる場合があります。これらの症状は、歯が動いている過程や矯正装置の影響によるものです。歯の根元にある歯根膜に不必要な圧力がかかると、このような感覚を生じさせることがあります。
本記事では、矯正治療中の噛み合わせの違和感や歯が浮く原因、また症状が長期間続く場合の対処法について以下の点を中心にご紹介します。

  • 噛み合わせの違和感や歯が浮く状態とは
  • 噛み合わせの違和感や歯が浮く原因
  • 噛み合わせの違和感や歯が浮く状態への対処法

矯正治療をスムーズに進めるためのヒントについて理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。
ぜひ最後までお読みください。

噛み合わせの違和感や歯が浮く状態とは

噛み合わせの違和感や歯が浮く状態とは

噛み合わせの違和感や歯が浮くような感覚は、歯根膜の働きによるものです。歯根膜は、歯の根の周りを包むとても薄い膜で、歯と骨をつなぐ重要な役割を果たしています。この膜には細い線維が走っており、歯が物理的な力を受けると、それに応じてわずかに動く生理的動揺が生じます。

矯正装置が歯に持続的な力を加えると、歯根膜内では骨を溶かす破骨細胞と骨を作る骨芽細胞が活発に働き、歯を支える骨が徐々に作り変えられます。この過程で、歯根膜が一時的に厚くなり、歯が浮いたように感じたり、噛み合わせが変わったような違和感が生じます。
これらの感覚は、歯が新しい位置に移動するための正常な反応であり、通常は数日で収まるとされています。しかし、症状が長く続く場合は注意が必要です。

噛み合わせの違和や歯が浮く状態を放置するリスク

噛み合わせの違和や歯が浮く状態を放置するリスク

噛み合わせの違和感や歯が浮く状態を放置すると、さまざまなリスクが生じます。まず、不正咬合が原因で咀嚼や発音がしにくくなり、食事や会話が困難になる場合があります。また、歯が正しく噛み合わない状態では、歯や顎に過剰な負担がかかり、顎関節症を引き起こす可能性もあります。
さらに、噛み合わせが悪いと歯垢がたまりやすくなり、むし歯や歯周病のリスクが高まります。むし歯や歯周病は口臭の原因にもなり、全体的な口腔衛生の悪化が懸念されます。

マウスピース型矯正装置の場合、装置が浮いた状態で使用を続けると、計画どおりに歯が移動せず、歯並びが悪化するリスクが高まります。治療のやり直しが必要になる場合もあり、そうなると経済的な負担も増加するでしょう。
また、装置の浮きが原因で口腔内を傷つける恐れがあり、炎症や痛みが生じると治療を中断せざるを得ない状況になる可能性もあります。

矯正治療中に噛み合わせの違和や歯が浮く原因

矯正治療中に噛み合わせの違和や歯が浮く原因

矯正治療中、なかでもマウスピース型矯正の場合、口腔内の違和感を覚えるケースは少なくありません。その原因を、以下に詳しく解説します。

歯が移動している

違和感の原因のひとつは、歯が移動しているためです。矯正装置を使用して歯に持続的な力をかけると、歯はゆっくりと新しい位置へと動きます。この過程では、歯が移動する方向の骨が吸収され、反対側では新たな骨が形成されるため、歯が押されるような感覚や噛み合わせの変化が一時的に感じられる場合があります。
なかでも、治療開始直後や装置の調整後に違和感が強まる傾向がありますが、1週間〜10日程度でこれらの感覚は緩和するとされています。

歯が移動できていない

歯が移動できていないことも原因になります。マウスピース型矯正では治療前に綿密な計画を立てますが、歯の動きには個人差があります。ズレが生じると、マウスピースと実際の歯並びに隙間ができ、マウスピースが浮いてしまうことがあります。
もしマウスピースが歯から約2mm以上浮いていると感じた場合は、速やかに歯科医に相談することが重要です。

アタッチメントの不備

マウスピース型矯正装置のアタッチメントは、矯正装置のフィット感を高め、歯を計画どおりに動かすために重要な役割を果たします。しかし、前歯はアタッチメントが装着されない場合が多く、結果として浮きやすくなります。必要に応じて前歯にもアタッチメントを追加することで、浮きが改善される場合があります。

マウスピースが新しい

新しいマウスピースに交換した際も、違和感を覚える場合があります。これは、新しいマウスピースが現在の歯列から少しずれて設計されているためです。
マウスピースは、歯を少しずつ理想の位置に動かすために、約0.25mmずつ歯を移動させるように作られています。そのため、交換直後は歯とマウスピースの間にわずかな隙間が生じ、浮いているように感じることがあります。
違和感は数日中に改善するとされていますが、正しく装着しているのにずれが解消されない場合は、別の原因が潜んでいる可能性があります。その際は、速やかに歯科医院に相談しましょう。

マウスピースの変形や破損

マウスピース型矯正装置は、弾力性のあるプラスチックやシリコン素材で作られているため、日常的な着脱や強い力が加わることで簡単に変形する場合があります。なかでもマウスピースを何度も着脱する際、注意せずに扱うと知らぬ間にヒビが入ったり、素材が歪んだりする原因につながります。

しかし、ヒビが入ったマウスピースは見た目にはわかりにくいため、気付かずに使用を続けてしまうケースも少なくありません。マウスピースが変形や破損している状態で装着を続けると、噛み合わせが悪化したり、誤った方向に力がかかってしまい、治療計画どおりに歯が動かなくなるリスクがあります。

また、破損したマウスピースを無理に使用すると、口内を傷つける可能性もあり、さらに治療を遅らせる原因にもなりかねません。もし不具合を感じたら、歯科医院を受診しましょう。

装着する時間が短い

マウスピース型矯正は、歯を少しずつ理想の位置に移動させるために設計された装置を使用しますが、治療を効果的に機能させるためには、1日約20〜22時間の装着が必要とされています。

しかし、装置の着脱が簡単であるため、煩わしさから装着時間が短くなってしまうケースがあります。装着時間が不足すると計画どおりに歯が移動せず、マウスピースが歯にしっかりフィットしない浮きが生じ、噛み合わせが悪化するリスクが高まります。

また、治療期間が延び、最終的には治療効果が得られなくなる可能性もあります。なかでも奥歯は強い力がかかりやすいため、装着時間が短いと浮きが生じやすくなります。矯正治療を成功させるためには、定められた装着時間を守りましょう。

噛み合わせの違和や歯が浮く状態への対処法

噛み合わせの違和や歯が浮く状態への対処法

ここまで、矯正治療中に起こる口腔内の違和感について紹介しました。以下ではその対処法を解説します。

矯正装置の装着方法や順番を確認する

矯正治療中に口腔内の違和感を覚えた場合、まずは矯正装置の装着方法や順番を確認してみましょう。マウスピース型矯正では、治療計画に基づいてマウスピースを順番どおりに装着し、歯を理想の位置に徐々に動かしていきます。

しかし、誤ってマウスピースの順番を飛ばして装着してしまうと、歯並びにズレが生じ、マウスピースが正しくフィットせず、浮いたように感じる場合があります。

また、マウスピースの着脱方法も注意が必要です。誤った方法で着脱すると、マウスピースにヒビが入ったり、割れたりする可能性があり、それが原因で浮きが生じやすくなります。装着方法を守り、正しくマウスピースを使用しましょう。

1つ前のマウスピースを使用する

新しいマウスピース型矯正装置に交換した際、歯が計画どおりに移動しておらず、浮きが生じているケースも考えられます。新しいマウスピースは、歯を動かすためにわずかな隙間を設けて作られているため、多少の浮きが生じるのは大きな問題ではありませんが、浮きが大きい場合は注意が必要です。
その際は1つ前のマウスピースを再度装着し、歯が目標の位置に近づくまで待つ方法があります。

しかし、この対応は一時的なものです。マウスピースの浮きが続き、違和感が解消されない場合は、早めに歯科医師に相談し、指導を受けることが大切です。

医師に相談して矯正装置の調整を行う

矯正装置の使用を見直しても違和感が続く場合、歯科医師への相談は不可欠です。なかでもマウスピース型矯正装置は、装置の厚みが原因で奥歯が沈み込み、噛み合わせが悪くなるケースがあります。
マウスピースの厚みを調整したり、必要に応じて奥歯の部分をカットしたりなど、噛み合わせを改善する処置は医師によって受けられます。

また、矯正装置の作り直しが必要になる可能性もあります。作り直しには時間と費用がかかりますが、治療計画どおりに歯が動かないリスクを避けるためには重要な対応です。

さらに、マウスピースの調整だけでは噛み合わせの改善が難しい場合、部分的にワイヤーを使用して奥歯の位置を調整する方法もあります。

矯正治療以外で噛み合わせの違和や歯が浮く原因

矯正治療以外で噛み合わせの違和や歯が浮く原因

ここでは、矯正治療以外で噛み合わせに違和感を覚えたり、歯が浮いたりする原因を紹介します。

病変

矯正治療中に口腔内の違和感を覚える場合、何らかの病変が潜んでいる可能性もあります。以下で解説します。

歯周病

主な原因の一つ目に、歯周病が挙げられます。
歯周病は歯垢(プラーク)が原因で発生しますが、歯垢には無数の細菌が含まれています。この細菌が歯茎に炎症を引き起こすと、歯茎から出血や痛みなどの症状が生じます。
さらに、症状が進行すると歯茎の腫れに加えて膿が歯槽骨と歯根膜の間に溜まります。この膿が圧力を増して歯を押し上げるため、歯がふわふわと浮いているような感覚を引き起こします。

このように歯周病が進行すると、歯が浮くだけでなく、歯が抜けるリスクも高まります。そのため、早期の段階で適切な歯周病治療を受け、定期的な歯科診察と適切な口内ケアが重要です。

歯性感染症

歯性感染症とは、むし歯や歯周病が原因で、細菌性の炎症が周囲の組織までおよぶ疾患のことです。
むし歯が歯の神経まで進行すると、歯の根や、歯を支える骨、さらにその周囲の筋肉、組織隙、顎の骨まで感染がおよびます。 また、歯と歯肉の間の歯周ポケットから細菌が侵入して、むし歯と同様に周囲の組織まで感染が及ぶこともあります。

むし歯が神経にまで広がると強い痛みが生じますが、さらに進行すると神経が壊死し、痛みを感じなくなり、歯槽骨が破壊されて膿が溜まります。そして、 歯周病と同様に、膿が溜まることで内部の圧力が高まり、歯が浮いている、あるいは痛いといった感覚があらわれます。

歯周病やむし歯によって歯根膜が炎症を起こした状態の歯根膜炎や根尖性歯周炎も、歯が浮くような感覚の原因となることがあります。

歯性感染症は、炎症がどこまで波及しているかにより、それぞれ検査や治療内容が異なります。

根尖病巣と歯根嚢胞

根尖病巣(こんせんびょうそう)とは、むし歯が進行して神経にまで到達し、歯の根元にある神経(歯髄)までが感染して、炎症を起こした炎症によって内部に腫れが生じて歯が押し出されると、歯が浮くような感覚を引き起こします。

さらに、根尖病巣が長期慢性化すると、歯茎に嚢胞や腫瘍ができます。(歯根嚢胞(しこんのうほう))嚢胞とは、顎の骨の中などにできる袋状の膿のことです。
歯根嚢胞による腫れが歯を押し上げ、これも歯が浮いたような感覚を引き起こします。

根尖病巣および歯根嚢胞による歯の浮きは、不快な感覚に留まらず、放置することで顎の骨にもダメージを与えかねない重大な問題です。
したがって、歯髄炎の兆候が見られる場合は、速やかに歯科診療を受け、適切な治療を受ける行うことが重要です。

生活習慣

歯の病気以外にも、生活習慣は噛み合わせを悪くしたり、歯が浮いたりする原因になる場合があります。以下で、病気以外の原因を解説します。

食いしばりや歯ぎしり

病気以外で歯が浮く原因の一つ目に、食いしばりや歯ぎしりが挙げられます。食いしばりや歯ぎしりは、日常生活において無意識のうちにしていることが多く、歯にかかる過剰な圧力が歯根膜にダメージを与えます。

人間の歯は1日の大部分を1mm程度の隙間を保ちながら過ごします。この状態を安静空隙といいますが、食いしばりがある方はこの自然な状態が乱れている可能性があります。集中作業中や睡眠中に無意識のうちに歯を強く噛みしめるため、長時間にわたって歯根膜に過剰な圧力がかかることで、歯が浮いたような感覚を引き起こします。

一方、歯ぎしりは睡眠中に無意識のうちに行っている場合が多いとされています。歯を横方向に強くこすり合わせる歯ぎしりの動作は、歯根膜を引っ張り、圧力が加わることで歯が浮く感覚につながります。これらの習慣は歯の健康だけでなく、顎関節にも負担をかける恐れがあります。

歯の使いすぎ

歯の使い過ぎも、歯が浮く感覚の原因としてが挙げられます。硬い食べ物を長時間食べ続けたり、同じ箇所を過度に使用したりすることで、歯根膜に連続して強い刺激が加わります。この連続的な刺激により、歯根膜はダメージを受け、歯が浮いているような感覚を引き起こします。

もし、歯の使いすぎによって歯が浮いているような感覚がある場合、一時的に硬い食べ物を避け、歯を休ませることが重要です。飲食を控えめにする、やわらかい食べ物に切り替えるなどして、歯を適切に休ませることで、徐々に歯根膜の状態が改善されるでしょう。

疲労やストレス

ストレスや疲れによって自律神経系が乱れ、血液やリンパの流れが悪くなると、歯が浮く感覚を受けることがあります。これは歯根膜の血行も悪くなるためです。

また、風邪を引いたり、体が弱ったりすると、抵抗力や免疫力が低下し、歯が浮いていると感じることがあります。
ストレス源の特定と適切な休息が重要ですが、血行不良で歯が浮くと感じるときは、しっかりと歯磨きを行い、歯茎をマッサージして血流を良くすることで症状の緩和が期待できます。
また、運動やウォーキングなどで全身の血流を良くすることもおすすめです。

まとめ

まとめ

ここまで矯正治療中の口腔内の違和感ついてお伝えしてきました。
噛み合わせの違和感や歯が浮く状態になる原因の要点をまとめると以下のとおりです。

  • 噛み合わせの違和感や歯が浮く状態は、歯根膜と呼ばれる歯の周囲にある線維組織に力が加わったり、炎症が起きたりなどの異常が生じている場合に引き起こされる
  • 噛み合わせの違和感歯が浮く原因には、矯正装置の不具合や病変が潜んでいる場合が挙げられる
  • 噛み合わせの違和感や歯が浮く状態を改善させるには、矯正装置の使用方法を確認する、医師に相談してマウスピースを調整するなどが大切

噛み合わせの違和感や歯が浮く状態を放置すると、矯正治療がスムーズに進まなかったり、余計に噛み合わせが悪くなったりする可能性があるため、早期に歯科医院を受診することが大切です。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

柴原 孝彦医師(東京歯科大学口腔顎顔面外科学講座)

1979年東京歯科大学卒業 2004年東京歯科大学主任教授 2012年東京歯科大学市川総合病院口腔がんセンター長 2020年東京歯科大学名誉教授

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