部分矯正は歯並びや噛み合わせを全体の歯列矯正ではなく、上の歯だけ・下の歯だけ・前歯だけなど、特定の問題箇所を治療する方法です。部分矯正では歯の噛み合わせの調整は、基本的にはできません。特定の歯や歯列の一部のみを修正するため、治療期間が短く、全体の歯列矯正に比べて費用が低く抑えられることがあります。
この記事では、部分矯正について詳しく解説しています。部分矯正の適応例や治療費、そしてメリットやデメリットについても紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
部分矯正で噛み合わせは治る？
- 部分矯正で噛み合わせは治りますか？
- 軽度の出っ歯や一部の歯のがたつきは部分矯正で治療が可能です。ただし、部分矯正では歯の噛み合わせの調整は、基本的にはできません。
歯列矯正治療は自費治療であり、費用や治療期間がかかることがあります。部分矯正では、全体の矯正治療に比べて費用や治療期間を抑えることができ、目立つ前歯の歯並びの問題を効果的に改善できます。
- 部分矯正で噛み合わせ治療ができるケースを教えてください。
- 以下のようなケースが部分矯正治療の適応例です。
- 前歯が少し重なっている・ずれているなどの軽度の前歯の乱れ
- 前歯の間に軽度の隙間がある状態（すきっ歯）
これらについて、まずは歯科医師と相談するのがおすすめです。良好な噛み合わせは歯・咀嚼筋・顎関節の調和が整っている状態のことで、噛み合わせの検査では、これらが正常に機能しているかの確認が必要です。
- 部分矯正での噛み合わせ治療が適さない症例はありますか？
- 部分矯正は、抜歯が必要な場合や骨格の問題により外科的処置が必要な場合には適応しません。以下が具体例です。
- 出っ歯で前歯の凸凹が大きい
- 八重歯や叢生（歯が重なって生えている状態）
- 開咬（オープンバイト）
- 深い噛み合わせ（過蓋咬合）
- 噛み合わせに問題があるすきっ歯
- 骨格に問題がある受け口など
これらの状態では、全体の歯列矯正や外科的処置が必要な場合があります。
部分矯正治療のメリット・デメリット
- 部分矯正とはどのような治療法ですか？
- 部分矯正の治療方法には2つの種類があります。
- ワイヤー矯正
- マウスピース型矯正
ワイヤー矯正は、ワイヤーとブラケットを使用して全体の歯列を治療する方法です。マウスピース型矯正は、透明なマウスピースを装着して歯並びを徐々に修正する方法で、装着時にほとんど目立ちにくく、特に外見を気にする方に好評です。
これらにはメリット・デメリットがあるので、歯科医師と相談して決めましょう。
- 部分矯正治療のメリットを教えてください。
- メリットは次のようなものがあります。
- 治療期間が短い
- 費用の節約
- 審美的効果
部分矯正の治療期間は、全体の歯列矯正が通常2〜3年かかるのに対し、平均で6ヵ月から1年程度と短く済むことが特徴です。また、治療範囲が限定されているため、部分矯正の費用は通常全体の歯列矯正の半額程度で済むことがあり、費用の節約につながります。さらに、部分矯正では主に前歯の気になる部分の歯並びを改善し、見た目を美しく整えることができます。
- 部分矯正治療のデメリットを教えてください。
- デメリットとしては、部分矯正に不適応なケースもあり、以下の場合には全体矯正が必要となることがあります。
- 重度の歯並びの乱れ
- 複数の問題がある場合
- 後戻りが起こりやすい
部分矯正のデメリットとして挙げられるのが、適応できる症例が限定されていることです。症状が重度の場合や骨格に問題がある場合などは部分矯正で対応できません。
また、部分矯正治療でも、保定装置（リテーナー）が必要です。ほかの歯が移動しやすいことや、噛み合わせが不安定な状態であるため、前歯が再び前方に傾くなどの後戻りが起こりやすいことがあります。
- 噛み合わせの部分矯正の費用を教えてください。
- 部分矯正で治療できるのは、軽度の症例に限られます。歯を大きく移動させて、噛み合わせ全体を改善する必要がある場合には全体の歯列矯正が適切です。
治療にかかる費用の目安は以下のとおりです（金額は税込）- ワイヤー矯正（表側）は、300,000～600,000円（税込）
- ワイヤー矯正（裏側）は、400,000～700,000円（税込）
- マウスピース型矯正は、100,000～400,000円（税込）
これについては歯科医院によって大きく差がありますので、いくつか相談してみることをおすすめします。部分歯科矯正治療の内訳として以下の費用がかかります。
- 相談料（カウンセリング料）
- 検査料（精密検査費）
- 診断料（診断費）
相談料（カウンセリング料）は、患者さんの歯並びに関するお悩みを聞き、必要な矯正治療の流れをポイントに絞って説明する際にかかる料金です。
検査料（精密検査費）は現在の歯並びの状況を確認するために、歯やその周辺の骨格を詳細に見るためのレントゲン撮影やCT撮影などを行う際にかかります。
診断料（診断費）は検査結果に基づき現在の歯並びの状況を説明し、適切な矯正方法や治療プラン、費用について説明する際の料金です。矯正治療後にかかる費用内訳は以下のとおりです。- 歯列が安定するまで使用する保定装置の料金
- 矯正治療後、歯並びの状態を定期的にチェックする際の診察料（メンテナンス料）
矯正治療には複数の段階があるため、治療を始める前に初回の相談で概算を聞くことをおすすめします。
- 部分矯正治療の流れと治療期間を教えてください。
- 治療の流れは以下のとおりです。
- 初診相談
- 精密検査
- 診断・治療計画の説明
まず初診相談として、お口のなかの簡単な診査を行い、治療に関する疑問・心配について相談をします。次に精密検査では、レントゲン撮影・写真撮影・歯型の採取などを行います。
ここで得られる資料は歯列矯正の治療計画立案や成長や治療の経過観察の資料として大切な役割を果たします。診断・治療計画の説明は、精密検査の結果をもとに患者さんに適した治療計画を立てます。治療方法・期間・費用・支払方法なども説明があるので、納得できるまで十分な説明を受けましょう。
治療期間については、歯の状態や年齢・歯の動きによって異なります。ワイヤー矯正（表側）で3ヵ月〜1年程、裏側矯正（舌側矯正）であれば半年〜2年程かかります。マウスピース型矯正では半年〜1年半程です。
部分矯正で噛み合わせを治すためのポイント
- 噛み合わせを治すためのポイントはありますか？
- 部分矯正では歯の噛み合わせの調整はできませんが、全体歯列矯正では噛み合わせの治療が可能です。
ワイヤー矯正の特徴は、歯にブラケット（金属やセラミックの小さな装置）を接着し、その上にアーチワイヤー（弧を描く金属ワイヤー）を通すことです。アーチワイヤーは歯を理想的な位置に引っ張る力を持ち、この力により歯を少しずつ動かしていきます。通院は1ヵ月に1回装置を調整する必要があり、治療期間は数ヵ月から数年で、歯を理想的な位置に移動させます。
ワイヤー矯正では、ブラケットの周囲が汚れやすくなるため、歯磨きを丁寧に行うことが重要です。マウスピース型矯正の特徴は、装着時間が1日20時間以上であることです。
透明なマウスピースを歯に装着することで、徐々に歯並びを調整します。外見の影響が少なく、特に見た目を気にされる方に好評です。マウスピース型矯正の効果は、患者さんが担当医の指示どおりにマウスピースを装着する必要があります。
- 部分矯正中の生活上での注意点はありますか？
- 生活上では以下について注意が必要です。
- 口腔ケアを丁寧に行う
- 抜歯後の体調変化に気を付ける
- 保定装置を適切に装着する
ワイヤー矯正やマウスピース型矯正の治療中は、歯磨きを怠るとむし歯や歯周病などのリスクが増加します。また装置の装着方法を誤ったり、違和感による装置のずれたりすると、歯肉の炎症を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
抜歯を行う際には、体質やアレルギー反応により、麻酔後に悪心や嘔吐が起こることがあります。抜歯後には体の倦怠感や口腔内の炎症が現れることもありますので、注意が必要です。治療後、矯正した箇所に後戻りが生じる可能性があるため、保定装置を使って後戻りを防ぐ保定期間が設けられます。
保定期間終了後も、数ヵ月から数年が経過すると噛み合わせが悪化することがあります。噛み合わせの問題があると咀嚼が困難になる、頭痛や肩こりがするなどの症状が現れることがあるので注意が必要です。
その際には早めに歯科医院を受診し、歯科医師と相談することが重要です。
編集部まとめ
部分矯正は選択肢の1つです。治療範囲が限定されているため、治療期間が短く費用も抑えられるメリットがあります。
しかし、歯並びは見た目だけでなく噛み合わせなどの機能面にも影響するため、総合的に考えると全体矯正が適している場合もあります。
歯並びが気になる場合は、まずは歯科医院で相談して、信頼できる歯科医師を選ぶことが重要です。
参考文献
電話コンシェルジュで地域の名医を紹介します。