噛み合わせ

噛み合わせとストレスの関係とは?歯並びや噛み合わせによるさまざまな影響を解説します

噛み合わせとストレスの関係とは?歯並びや噛み合わせによるさまざまな影響を解説します

噛み合わせの悪さは、日常生活におけるさまざまなトラブルやストレスにつながります。また、その逆に日頃のストレスが噛み合わせの悪化を引き起こすこともあり、両者には深い関係があります。
この記事は、噛み合わせによって生じるさまざまな影響について解説します。

悪い噛み合わせが引き起こすストレス

悪い噛み合わせが引き起こすストレス

噛み合わせの悪さは食事中の咀嚼に対する影響や、歯磨きなどのケアが不十分になってしまうことからむし歯などのトラブルが生じやすくなるという問題があることが知られています。
こうしたお口のトラブルによってストレスが生じることはもちろんですが、それ以外にも下記のような点でストレスを感じる可能性があります。

無意識の内に余計な負担がかかる

噛み合わせが悪いと、食事の際に噛みやすい場所でばかり噛むようになってしまうなど、無意識の内に偏った部位に負担がかかりやすくなります。こうした余計な負担がかかり続けると、歯や歯茎にダメージが蓄積され、場合によっては痛みなどが生じてストレスを感じやすくなります。

頭痛や肩こりなどの不調

噛み合わせの悪さによる余計な負担は、お口回りの筋肉にも影響します。無意識のうちに顎の筋肉に負担がかかることから、筋肉の慢性的な緊張へとつながり、顎周辺の痛みなどが生じる場合があります。
また、顎の筋肉は頭部や首、肩の筋肉ともつながっていることから、慢性的な頭痛や肩こりを引き起こす原因にもなります。

口腔内を噛んでしまうなどのストレス

歯が外側に傾いているなど、噛み合わせの悪さによって口腔内を噛んでしまう可能性が高まる点も、ストレスにつながる要因の一つです。
口腔内を噛むことによって痛みや傷が生じるほか、その傷が炎症を起こすことでカタル性口内炎になってしまうと、継続的なストレスを感じやすくなるといえるでしょう。

発音の不便さによるストレス

前歯に隙間が空いている場合など、噛み合わせの状態によっては発音に影響を及ぼす可能性もあります。
発音が悪くなると自分の意思を相手に伝えにくくなるほか、発音に対する指摘などを受けてコンプレックスに感じてしまい、強いストレスになるかもしれません。

継続的なお口の中の違和感(咬合違和感症候群)

咬合違和感症候群とは、歯の神経や顎の関節、口回りの筋肉などに異常がないにも関わらず、噛み合わせに違和感や不快感が生じる状態を指します。
食事をどの歯で噛めばよいのかがわからないといったような状態などがあり、日常的に強いストレスを感じ続け、精神的に疲弊してしまうケースがあります。
歯の治療などを受けて噛み合わせに生じる微妙な違和感から気になりはじめ、治療を繰り返すことで状況が悪化していくというようなケースがあります。

ストレスによる噛み合わせや歯並びへの影響

ストレスによる噛み合わせや歯並びへの影響

噛み合わせの悪さがストレスとなるだけではなく、ストレスによって下記のような状態になると、それが原因で噛み合わせを悪化させてしまう可能性があります。

無意識に歯を食いしばる(クレンチング症候群)

クレンチング症候群とは、無意識のうちに歯を強く食いしばってしまう癖のことです。歯の強い食いしばりはストレスが原因で生じやすく、食いしばりによって体重と同程度からそれ以上の力が歯にかかるといわれています。

歯ぎしりや食いしばりで歯がすり減る

上述のように、ストレスを感じると無意識で歯を食いしばってしまい、場合によっては寝ている間の歯ぎしりも生じさせます。
歯ぎしりや食いしばりは歯に強い負担をかけ、場合によっては歯をすり減らしてしまいます。歯がすり減ると咀嚼能力が低下してしまうほか、歯の内部に刺激が伝わりやすくなって知覚過敏の症状が出てしまう場合もあります。

歯周組織に負荷がかかり歯周病が進む

食いしばりによって歯に強い負担がかかると、歯を支えている歯槽骨などの歯周組織にも強い負担がかかります。これによって歯槽骨が損傷してしまうなどすると、歯周病が進行しやすくなり、場合によっては歯がグラグラしてくるといった状態につながる可能性もあります。

歯根の破折などにつながる

歯は歯根と呼ばれる歯の根っこ部分で歯槽骨に接続していますが、歯根部分は歯茎より上の歯冠部分と比べ、細く脆い性質です。そのため、食いしばりで歯に強い負担がかかってしまうと、歯根が折れたりひびが入ったりしてしまう可能性が生じます。
特に、進行したむし歯に対して行う根管治療を行った歯の場合、治療によって歯根部分の強度が低下しているため、強い負担がかかると破折しやすくなります。
歯根部分が折れたり、ひびが入ったりしてしまうと、その部分にむし歯が生じた際の治療が困難になるため、抜歯につながる可能性が高まります。

顎関節症が生じる

食いしばりによる強い負担は、顎の関節にも影響します。そして、顎の関節への負担によって生じる可能性がある症状の一つが顎関節症です。
顎関節症は、顎の関節にある、関節を滑らかに動かすためのクッションのような役割を果たす関節円板という組織がズレるなどして、お口が開きにくくなったり、開いたときに痛みが出たり、顎を動かしたときにカクカクと音が鳴るような状態になるものです。
初期症状であれば日常生活への悪影響は少ないですが、関節に負担がかかり続けて症状が悪化してしまうと、食事そのものが困難になるなどのトラブルにつながる場合があります。

肩こりなどの全身症状につながる場合もある

ストレスによって強く歯を食いしばってしまうと、その負担が咬筋などの顎の筋肉に負担をかけ、お口回りの血流を悪化させます。顎の筋肉は頭部や首の筋肉ともつながっているため、こうした筋肉への負担や血流の悪化が痛みを引き起こし、慢性的な肩こりなどを引き起こす可能性があります。
場合によっては肩だけではなく、さらに腰などへの負担にもつながり、全身のバランスを崩してしまうといった状態につながることも考えられます。

歯ぎしり以外の歯並びや噛み合わせを悪化させる癖

歯ぎしり以外の歯並びや噛み合わせを悪化させる癖

ストレスなどが原因となって生じる歯ぎしりは、歯並びや噛み合わせを悪化させてしまう大きな要因の一つです。
歯ぎしり以外にも、日常的に繰り返してしまいがちな癖のなかには、歯並びや噛み合わせを悪化させる可能性が考えられるものがあります。
噛み合わせの悪化を防止するためには、特に下記のような癖に気を付けるようにしましょう。

頬杖

頬杖は、顎の関節や筋肉、場合によっては歯に負担をかけ、歯並びや噛み合わせを悪化させる要因の一つです。成人の場合、頭の重さは体重の1割ほどともいわれていて、頬杖をついているとその重量が顎や歯にかかることになります。
スマートフォンやパソコンのディスプレイを覗き込むなど、頭が前方に傾くとそれを支えるために頬杖をしやすくなりますので、なるべく頭が前方に行き過ぎないように注意し、頬杖をしないでも頭をしっかりと支えられるように過ごしましょう。

舌癖

舌で歯を外側に向けて押すような癖があると、その力によって歯が外側に押し倒されてしまい、歯並びが悪化する可能性があります。
また、舌をお口の外に出すような癖があると、お口が開きっぱなしの状態が続きやすく、開咬という悪い噛み合わせの状態になるリスクが高くなります。
安静時の舌の位置は、舌先が上の前歯の内側の歯茎(スポット)にあり、舌が全体的に上顎に密着した状態とされています。この位置に舌を収めるように意識することで、歯並びや噛み合わせを良好に保ちやすくなります。
なお、幼少期の顎の発達状態によっては、舌の大きさに対して顎のスペースが小さく、無意識のうちに舌が歯を押し出してしまうような場合もあります。

爪などを噛む癖

爪を噛んだり、指しゃぶりをするといった癖も、歯並びや噛み合わせを悪化させる要因の一つです。
爪を噛みながら引っ張るような動作が歯を移動させてしまうだけではなく、爪などの硬いものを噛むことによって歯や歯茎に負担がかかり、歯周病を悪化させてしまうリスクにもつながります。

噛み合わせを良好に保つためのポイント

噛み合わせを良好に保つためのポイント

噛み合わせを良好な状態に保つためには、日頃の適切なケアが大切です。

歯磨きなどの口腔ケアをしっかり行う

噛み合わせを良好に保つためにも、歯磨きをはじめとした口腔ケアはしっかりと行うようにしましょう。
お口のなかに細菌が増殖してしまい、むし歯や歯周病が進行していくと、どうしても歯並びや噛み合わせが悪化する要因となります。
歯磨きを行う際は、目立つ歯面だけではなく、歯と歯茎の間や、歯と歯の間にある歯垢もしっかりと除去することを心がけ、しっかりと汚れを除去するようにしましょう。
歯ブラシによるケアだけではどうしても汚れが残りやすいので、フロスや歯間ブラシを利用することも大切です。

しっかりと噛んで食事をする

良好な噛み合わせを得るためには、特に幼少期に、しっかりと顎の発達を促すことが大切です。食事の際に十分な咀嚼をしないなど、顎の筋肉が適切に使われていない場合、顎の発達が促進されにくくなり、良好な噛み合わせにならない可能性が高まります。
食事の際はよく噛むことを意識して、顎周辺の組織の適切な発達を促しましょう。

定期的に歯科検診を受ける

毎日の歯磨きを頑張っていても、どうしても磨き残しが生じてしまい、その汚れが歯石となるなどして噛み合わせを悪化させてしまう可能性があります。定期的に歯科検診を受けることで、こうした汚れもしっかり除去できるため、良好な噛み合わせを維持しやすくなります。
また、定期的な歯科検診を受けておくことで、むし歯や歯周病といったトラブルが生じた場合でも早期発見、早期治療が可能になるため、噛み合わせに影響が出るような治療が必要になりにくく、良好な状態を維持しやすいといえます。

噛み合わせや歯並びを改善する方法

噛み合わせや歯並びを改善する方法

噛み合わせや歯並びを改善するためには、下記のような治療法があります。

歯列矯正

歯に一定の力を加え続けて動かすことで、歯並びを整える治療が歯列矯正です。
歯にブラケットという装置を取り付け、そこにとおしたワイヤーの力で治療を行う方法と、透明なマウスピースを装着して行う方法などがあります。
歯の位置や傾きを修正することで、歯並びを美しく整えるだけではなく、噛み合わせも向上させることが可能です。
歯列矯正は基本的に保険適用外の治療となりますが、手術が必要な顎変形症の治療として行われる場合は保険適用で治療を受けられる可能性があります。

顎関節症の治療

顎の関節のトラブルで、お口を開きにくくなるといった状態になるものが、顎関節症です。顎関節症を治療することで、顎を動かした際の違和感が少なくなるため、噛み合わせも良好な状態に近づきます。
顎関節症の治療は、薬物療法で痛みを抑える治療やマッサージなどの理学療法、顎のストレッチやマウスピースを使用して噛み合わせの調整を行うなどの方法で行われます。

補綴物(詰め物やかぶせ物)による治療

むし歯の治療などを行った際に、削った部分を補うために行う詰め物やかぶせ物を、補綴物と呼びます。補綴物をしっかりと噛み合わせに合うように調整することで、良好な噛み合わせを実現することができます。
補綴物には歯科用レジンやハイブリッドセラミックで作成する保険適用のものや、セラミックなどで作る自費診療のものがあります。

外科手術

歯並びではなく、噛み合わせの悪さを生じさせている原因が骨格にあるようなケースは顎変形症と呼ばれ、外科手術が必要な場合があります。
下顎が前方に出ている状態の下顎前突や、下顎が小さく相対的に上顎が前方に出ている上顎前突、または顎が横にズレてしまっている顔面非対称などが、手術による治療の対象となります。
具体的な方法としては、顎の骨の一部を切除したうえでプレートなどで固定し、顎の骨が再生してしっかりと接続されるのを待つといった治療が行われます。
多くの場合、外科手術だけで治療が完了するのではなく、歯列矯正も含めて治療が行われるため、治療開始から治療が終わるまでには数年かかる場合もあります。
なお、外科手術が必要となるような噛み合わせの問題がある場合は、歯列矯正も含めて保険適用で治療を受けられる可能性があります。

まとめ

まとめ

噛み合わせの悪さが日常生活のストレスにつながったり、逆にストレスが原因となって噛み合わせが悪くなったりと、噛み合わせとストレスには深い関係があります。
噛み合わせは食事のしやすさだけではなく、場合によっては肩こりや全身症状などにも影響しますので、QOLを高めるためにも、良好な噛み合わせは重要です。
噛み合わせの改善には歯列矯正をはじめさまざまな治療法がありますので、噛み合わせが気になる方は、一度歯科医院に相談してみてはいかがでしょうか。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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