特徴的な顔貌を呈する症状に受け口というものがあります。一般的にはしゃくれと呼ばれることもありますが、歯並びとはどのような関係があるのか気になるところです。今現在、受け口の症状で悩まされている人は、治療法についても知りたいことでしょう。ここではそんな受け口の種類や原因、治療する方法について解説をします。
受け口について
はじめに、受け口の基本事項を確認していきましょう。
- 受け口とはどのような状態ですか?
- 受け口とは、下の歯がうえの歯より前に出ている噛み合わせの状態を指します。この状態は下顎前突(かがくぜんとつ)とも呼ばれ、噛み合わせの不調和によって食事や発音に支障をきたすことがあります。
- 受け口にも種類があるようですが違いを教えてください
- 受け口は歯槽性(しそうせい)の下顎前突と骨格性の下顎前突の二種類に大きく分けられます。以下に、それぞれの違いについて解説します。
◎歯槽性の下顎前突
歯槽性の下顎前突は、歯の位置や角度が原因で受け口になる状態です。この場合、下の前歯がうえの前歯より前に出ていますが、下顎骨自体は正常な位置にあります。主な原因は、幼少期の指しゃぶりや舌の癖などの不適切な習慣や歯の生え方によるものです。治療法としては、歯の位置を調整するための矯正治療が一般的で、特にお子さんの場合は早期の治療が効果的です。
◎骨格性の下顎前突
骨格性の下顎前突は、下顎骨そのものが相対的に前方へと突出している状態を指します。これは遺伝的要因が大きく、両親の骨格的特徴を受け継ぐことが原因とされています。このタイプの受け口は、単なる矯正治療では改善が難しく、外科的手術を伴うことがあります。外科手術により下顎骨の位置を調整し、正常な噛み合わせにすることで、見た目と機能の両方を改善します。小児期に適切な治療を行うことで、外科矯正が不要となる場合もあります。
このように、受け口は種類によって、治療法やアプローチが異なります。正確な診断と適切な治療を受けるためには、歯科医師の診察を受けることが重要です。
- 受け口としゃくれの違いを教えてください
- 受け口とは、下顎の前歯が上顎の前歯よりも前方に出ている状態を指します。これは下顎前突とも呼ばれ、正常な噛み合わせとは反対の位置関係にあることから、咀嚼機能に支障をきたします。歯槽性と骨格性の2種類があり、いずれも前歯部の噛み合わせに異常が認められます。
一方、しゃくれは下顎骨そのものが前方に突出している状態で、必ずしも噛み合わせや歯並びに異常を伴うわけではありません。具体的にはオトガイ部の骨が突出していることが根本的な原因で、遺伝的要因が極めて大きい症状といえます。
- 受け口を放っておくと身体には影響がありますか?
- 次に挙げる影響が現れることがあります。
◎食べ物を咀嚼しにくいため胃腸に負担がかかる
受け口では、正しい噛み合わせができないため、食べ物を十分に咀嚼することが難しくなります。咀嚼不足のまま飲み込むことで、胃腸に負担がかかり、消化不良や胃もたれ、腹痛を引き起こすことがあります。
◎歯の寿命が縮まる
受け口の状態が続くと、前歯ではなく奥歯に過度な力がかかりやすくなります。その結果、奥歯が早期に摩耗し、寿命が縮まることがあります。奥歯の摩耗は、将来的にむし歯や歯周病のリスクを高める可能性もあります。ケースによっては、前歯が擦れ合って摩耗が進行することもあります。
◎顎関節症を発症する
受け口は噛み合わせの不調和を引き起こし、顎関節に異常な負担をかけることがあります。この状態が長期間続くと、顎関節症を発症するリスクが高まります。顎関節症は、顎の痛みやお口の開閉困難、頭痛などを伴うことがあります。
◎顔に歪みが生じる
受け口の状態が改善されないまま放置されると、顔の筋肉や骨格に影響を及ぼし、顔の歪みが生じることがあります。特に、お子さんの成長期に受け口を放置すると、顔の非対称が顕著になる可能性があります。見た目の問題だけでなく、噛み合わせの悪化にもつながります。
受け口になる原因とは
受け口になる原因は、先天性の要因と後天性の要因の2つに大きく分けられます。
- 受け口になる先天性の要因を教えてください
- 受け口の先天性の要因としては、遺伝的な影響が挙げられます。親御親から受け継ぐ骨格の特徴や、顎の形、歯の大きさ、歯の数の異常などが関係しています。例えば、下顎骨が大きい場合や、歯が過剰に生えている場合、または歯の位置がずれている場合に受け口が生じることがあります。これらの遺伝的要因が噛み合わせや歯並びに影響を及ぼすのです。
- 受け口になる後天性の要因を教えてください
- 受け口の後天性の要因として、悪習慣が挙げられます。例えば、舌を前に突き出す癖や爪を噛む癖、口呼吸、低位舌などが受け口の原因となり得ます。これらの習慣は、患者さんの噛み合わせや歯並びに悪影響を及ぼし、受け口を引き起こす可能性があります。成長期にこれらの習慣が続くと、骨格や歯の位置に影響を与え、受け口が固定化することがあるため十分な注意が必要です。
受け口の治し方に関する疑問
ここでは、受け口の治し方に関する疑問に答えます。
- 歯性の受け口の治し方を教えてください
- 歯性の受け口は、歯列矯正によって治すのが一般的です。矯正治療では、患者さんの歯並びや噛み合わせを改善するために、ブラケットやマウスピースを用いて歯を徐々に正しい位置に移動させます。治療期間は個人差がありますが、定期的な歯科医師の診察と調整が必要です。歯列矯正によって、美しい歯並びと正しい噛み合わせを実現できます。
- 骨格性の受け口の治し方を教えてください
- 骨格性の受け口は、外科矯正と歯列矯正を組み合わせて治療します。骨格的な異常は外科手術で改善し、その前後で歯列矯正を行うのが一般的です。誤解している人も少なくないのですが、外科矯正だけで治せる歯並び・噛み合わせの問題はほとんどありません。
具体的には、外科手術で下顎骨の位置を正しく調整し、噛み合わせを整えます。その後、矯正治療により歯並びをさらに改善します。これにより、患者さんの噛み合わせや見た目のバランスが向上し、健康的な口腔環境を実現できます。
- 大人と子どもで治療方法に違いはありますか?
- 大人の受け口の治療は、基本的に歯列矯正か外科矯正となりますが、子どもの場合は予防矯正という選択肢もあります。適切な装置を使って舌を正しい位置に誘導したり、口腔周囲筋や顎骨の発育を正常化したりすることで、受け口を予防、あるいは症状の悪化を防げます。
その他、小児矯正では顎の骨を拡大したり、過剰な成長を押さえたりすることでも受け口を改善できます。いずれにしても、小児期に受け口の症状が認められる場合は、顎の成長する力を利用した治療を優先した方がよいといえます。大人になるまで放っておくと、治療が大がかりになるだけでなく、十分な効果が得られなくなることも珍しくありません。
- トレーニングだけで治すことはできますか?
- 受け口の症状にもよります。極めて軽度の受け口で、顎の骨の発育が途上にある子どもであれば、トレーニングだけでも治せる可能性はありませんあります。一方、大人の受け口は、もうすでに骨格や歯並び・噛み合わせに異常が認められるため、トレーニングだけで治すことは不可能です。ですから、大人の受け口を治す場合は、必ず歯列矯正や外科矯正を行ったうえで、トレーニングを併用することになります。
編集部まとめ
今回は、受け口の種類や原因、治療法について解説しました。受け口は、下の歯が前方に出ている歯並びで、歯槽性と骨格性の2種類に分けられます。また、受け口の原因は先天的な要因と後天的な要因に分けられ、個々のケースで治療方法が異なる点に注意が必要です。自分の受け口がどの種類に当たるのか、どのような治療法が適しているのかなど、受け口に関する疑問がある人は、矯正歯科に相談することをおすすめします。
参考文献