笑顔はその人の持ち得る魅力を引き出し、人生のあらゆる重要なシーンで個人的・社会的な成功へ導く程の影響力があります。
美しい笑顔を実現するためには、横顔美人の基準とされるEラインに悪影響を及ぼす要因を知り、解決することが重要です。
そこで本記事では、マウスピース型矯正でEラインを美しくできるのかどうかや、マウスピース型矯正のメリット・デメリットを紹介します。
費用相場や治療期間の目安、Eラインを改善するその他の治療方法も併せて解説します。
横顔美人の基準とされるEラインとは
美しい横顔(プロフィール)の指標、Eラインをご存知でしょうか。エステティックラインといいます。
Eラインは、下顎の突端部のオトガイ部と鼻先を結ぶ線です。骨格は持って生まれた個人差があり、人種により異なります。
人間の顔は同じパーツから構成されますが、1つとして同じ顔はありません。
そうした中、Eラインは顔を見分ける平均的な1つの指標として受け入れられています。
美の基準は国によって異なります。
しかしEラインからどれだけ唇が出ているか、あるいは達していないかによって、横顔の美しさを判断するのは1つの方法です。
Eラインに悪影響を及ぼす要因
Eラインに悪影響を及ぼす要因には、上顎前突・下顎前突・上下顎前突・口呼吸・日常的な癖などがあります。
上顎前突(出っ歯)
上顎前突は大別すると3つのタイプです。上顎前突・下顎後退・混合型となります。
上顎前突は上顎が前方に突き出ており、口元が前に突き出て見える状態です。
単に歯のみが突出している歯性のものと、上顎の骨自体が前突している骨格性のものがあります。
歯性のものでは口を閉じても前歯が口から出ていることが多く、骨格性のものでは顔の中央部が突出して見えるのが特徴です。
下顎前歯が唇側傾斜しても上顎前突になるわけではなく、下顎前歯が舌側傾斜していると上顎前突になります。
下顎後退は下顎が後退している状態で、上顎よりも下顎が後ろに位置するため口元のバランスが悪くなり、顔のプロポーションに影響を与えるでしょう。
どちらも顎の骨格の問題で歯列異常を引き起こしてしている状態です。
混合型は上顎前突と下顎後退が同時に見られる状態を指します。原因は成長や遺伝に加え、環境や生活習慣の影響もあるでしょう。
上顎の前方突出と下顎の後退が同時に起こるため、口元の見た目に大きな影響を及ぼす可能性があります。
下顎前突(受け口)
下顎前突も上顎前突同様に骨格性の原因と歯性の原因があります。成長とともに治療が難しくなるため、早期治療が重要です。
下顎前突とは下の歯が上の歯の前へ出ている状態で、顎変形症の1つと知られています。
顎変形症とは上顎または下顎あるいは両方の大きさ・形・位置などの異常により、噛み合わせの異常を生じている状態です。
顎変形症の種類は以下となります。顔面の変形を伴う場合が少なくありません。
- 下顎前突症(受け口)
- 下顎後退症あるいは上顎前突症
- 顔面非対称
下の歯が上の歯の前方へ出ている、下の歯が引っ込んでいる、噛み合わせの面が傾いて顔が非対称になる状態となります。
食事や発音に影響を与えるだけでなく顔のバランスにも影響を及ぼすため、早期の診断と治療が重要です。
上下顎前突(口ゴボ)
上下顎前突(口ゴボ)とは、口元がモコッと膨らんだ顔をいいます。
口ゴボとデコボコ歯並びの叢生は異なる不正歯列です。口ゴボには悩ましい問題があります。
歯列矯正すべきか悩む患者さんは少なくありません。歯並びは悪くないように見えるからです。
不正歯列の上顎(上下顎)前突の場合は叢生を併発する場合もあれば、歯の並び自体はきれいに並んでいる場合もあります。
不正歯列が原因でない場合もあるでしょう。
上下顎前突の主な原因は以下となります。
- 上下顎とも骨格的に前方位が認められる
- 上下顎とも前歯の唇側傾斜が認められる
- 1・2の両方が認められる
加えて、関わってくるのが口唇の厚みの問題などです。
口呼吸
口呼吸がEラインに悪影響を及ぼすこともあります。長期間にわたる口呼吸によって顔の形が変わる場合も考えられます。
お口をぽかんと開け続けると生じるのが筋肉の緊張の緩みです。上顎と下顎は縦方向のみバランスの悪い成長となります。
横方向へ広がるバランスも顎の成長には不可欠です。歯が生えるスペースは重要で、顔の筋肉には外へ広がる力も欠かせません。
長期間の口呼吸でアデノイド顔貌が見られることがあります。
顎の発育に影響が出たり、大人になったときに別の病気のリスクが高まるかもしれません。
これらの悪影響で面長の特徴的な子どもの顔つきになったり、歯が狭いところに押し合って生えると歯並びが悪くなることもあります。
いびきや睡眠時無呼吸症候群が生じることもあるでしょう。
日常的な癖
舌や唇など口周りの習癖や日常的な癖も不正咬合を招き、Eラインに悪影響を及ぼす要因となります。
不正咬合の原因はさまざまです。指しゃぶり・爪を噛む癖・舌癖が挙げられます。
よくお口を開けたり口呼吸をする、指しゃぶりや唇を噛む行為、舌を無意識に噛んだり前に出す癖も影響するでしょう。
頬杖をよくついたり、歯を失った部分の放置も不正咬合の原因です。
生えてきた永久歯が大きい場合や永久歯が生えてこない場合、永久歯が傾いて生えてきた場合も同様に不正咬合の原因となります。
成長期に悪い歯並びや指しゃぶりなどのお口の癖を放置すると、顎の成長に影響を及ぼすかもしれません。
食べ物をしっかり噛めないとむし歯や歯周病のリスクが高まり、発音も不明瞭になることがあります。心理的にも悪い影響を与えるでしょう。
例えば、食事や会話がストレスになる・歯ブラシが届きにくくなる・外見にコンプレックスを持つなどです。
マウスピース型矯正でEラインを美しくできる?
横顔のEラインが崩れている原因が出っ歯・受け口・口ゴボなどの場合は歯列矯正、骨格の問題の場合は美容整形での治療が可能です。
歯列矯正のマウスピース型矯正ではEラインを美しく改善できる症例、改善が難しい症例があります。
改善できる症例
歯並びや骨格はさまざまで人により異なります。治療のリスク・費用・通院の負担が軽減され、患者さん自身も満足された例があります。
信頼できる歯科医師を、諦めず根気強く探してみてください。
マウスピース型矯正(インビザライン(※))の歯列矯正治療により、Eラインの変化が起きやすい患者さんがなかにはいます。
ある病院で、前歯が出ていてEラインの改善を希望する患者さんは、健康な歯を抜歯しなければならないといわれていました。
別の病院では抜歯することなく前歯の突出感とEラインも改善し、治療期間9ヵ月、通院回数約5回で済んだケースがあります。
(※)未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
改善が難しい症例
Eラインは歯列・骨格・軟組織の3つから構成されます。歯列矯正のみでの改善は難しいかもしれません。
例えば日本人と欧米人の骨格には違いがあり、横顔の形も異なります。改善が難しい症例が出てくるでしょう。
インビザラインだけで改善が難しい理由は、基本的に外科手術が必要なことです。
改善できるのは歯列のみで、骨格や軟組織へのアプローチには限界があります。
インビザライン矯正でEラインを改善できると謳うカウンセリングのクリニックには、注意が必要です。
ただし、歯列の要因の改善でEラインが大きく改善されるケースもあります。
マウスピース型矯正のメリット・デメリット
どのような治療方法にも、メリット・デメリットの両方があります。マウスピース型矯正も例外ではありません。
目立ちにくいからマウスピース型矯正と決めるのではなく、実際のメリット・デメリットを知ったうえでよく考えて決めてください。
メリット
マウスピース型矯正のメリットは、事前に治療内容を把握できることです。
治療前に、治療期間・歯の動き・治療後の歯並びをチェックすることで精神的に楽になります。
マウスピース型矯正では治療後のイメージを事前に確認でき、患者さんは不安なく治療に臨めるでしょう。
治療中のトラブルが少なく取り外し可能な装置で、目立ちにくいのもうれしいポイントです。
体に害の少ないプラスチックが使用されており、異物感や痛みがほとんどなく安全性も高いといえるでしょう。
日常生活やスポーツの制限がなく1~2ヵ月に1回の通院で済み、忙しい人にも適しています。
マウスピース型矯正が適応できる症例として挙げられるのは以下のとおりです。
- 八重歯や叢生
- すきっ歯や空隙歯列
- 開咬や前歯が開いている状態
- 出っ歯や上顎前突
- 受け口や反対咬合
- 下顎前突
- 過蓋咬合
前述の症例は以下の状態を指します。
- 歯がデコボコに並んでいる
- 前歯の隙間が大きく開いている
- 前歯で食べ物を噛み切れない
- 上の歯が大きく前へ出ている
- 下の歯が上の歯より前へ出ている
- 上の前歯が大きく覆い被さる
デメリット
マウスピース型矯正の認知度は現時点で高いといえないかもしれません。だからこそデメリットを知ることは大切です。
歯科医院と歯科医師選びも重要で、治療の質は歯科医師の知識・経験・技術に左右されます。
そのため、日本矯正歯科学会 認定医・臨床指導医がインビザライン治療を行っている歯科医院を選択するべきでしょう。
マウスピース型矯正にはいくつかのデメリットがあります。
1日20~22時間以上装着する必要があり、自己管理の程度により治療効果に差が出るでしょう。
飲食時はマウスピースを取り外し、再装着前には歯磨きをしなければなりません。
適応できない症例も存在します。治療の質は歯科医師によって異なり、導入されていない歯科医院もあるのでチェックが必要です。
いずれも軽度のものであればマウスピース型矯正による改善が可能です。骨格性の問題を抱えている場合はマウスピース型矯正による改善は難しいです。
これらの症例は、骨格が大きくずれている場合や奥歯の噛み合わせが左右にずれている場合、正中が大幅にずれている場合などが該当します。
マウスピース型矯正の費用・治療期間の目安
歯科医院により異なりますが、マウスピース型矯正の費用相場や治療期間の目安は以下のとおりです。検討される方は参考にしてみてください。
費用
参考として歯列矯正方法別の費用相場の比較を以下に示します。費用は部分歯列矯正の費用相場/全体歯列矯正の費用相場です。
- マウスピース型矯正:300,000~600,000円(税込)/800,000~900,000円(税込)
- 金属ブラケット矯正:100,000~300,000円(税込)/600,000~900,000円(税込)
- 審美ブラケット矯正:150,000~350,000円(税込)/650,000~950,000円(税込)
- 裏側矯正(舌側矯正):200,000~600,000円(税込)/1,200,000~1,500,000円(税込)
マウスピース型矯正の費用をデンタルローンで支払うこともできます。
治療は受けたいけど経済的負担でお悩みの方に便利なサービスです。金利・借入金額・手数料など納得されたうえで決めてください。
デンタルローン利用時の注意点は歯科治療に特化したローンを選び、手数料・金利・借入金額を確認することです。
治療費を信販会社が立替払いしてくれますが、歯科医院の採用ローン会社に左右されます。
治療期間
マウスピース型矯正は仕事や学業などで忙しい方へおすすめの治療方法です。来院や診察における時間と労力の負担が抑えられます。
一定期間の治療で心構えは必要ですが、情報が事前にわかると気持ちが楽になるでしょう。マウスピース型矯正の治療期間は以下のとおりです。
- 全体歯列矯正の治療期間は2年~2年半
- 部分歯列矯正の治療期間は1年未満
- 来院頻度は初期1ヵ月に1回/通常2~3ヵ月に1回
- 全体歯列矯正はワイヤー矯正との来院回数の差が約10回
Eラインを改善するその他の治療方法
医療の目覚ましい進歩でその他の治療方法も出てきています。歯列矯正用アンカースクリューとサージェリーファーストの2つです。
歯列矯正用アンカースクリュー
一般的なデンタルインプラントとは異なり、大きさ・形・目的が異なることが知られています。
麻酔の効き方・痛みの程度・装着に慣れるまでには個人差があります。
歯科矯正用アンカースクリューの利点は、治療の幅が広がる・治療期間の短縮・手術回避に役立つ・抜歯の可能性が下げられるなどです。
これまで不可能だった歯の動きを可能にし、歯の移動効率も高く、外科手術併用の歯列矯正治療を希望しない患者さんの苦痛と負担が軽減されます。
サージェリーファースト
Surgery First(SF法)は顎変形症への新しいアプローチで、世界的に主流となりつつある治療法です。
外科手術後に歯列矯正を行い噛み合わせを改善させます。外科手術と歯列矯正の相乗効果で骨格性、重度の受け口はより美しくなる可能性があるでしょう。
サージェリーファーストのメリットは術前歯列矯正による見た目の悪化がないことです。
従来の治療方法より早く顔のバランスが整うため、手術後の歯の移動が促進されます。治療期間が短くなり噛みにくい期間が短くて済むでしょう。
サージェリーファーストのデメリットは手術直後の噛み合わせが不安定になることです。
術後にマウスピース装着が必要になる場合もあり、保険適用外で自費診療となる点も考慮しなければなりません。
まとめ
人間の営みにはさまざまな喜びや楽しみ、幸せの形があり、お金の使い方も人それぞれです。
せっかくお金を使うのなら一生に関わる大切なことに使いたいと考える方もいるでしょう。
社会的に成功している方は横顔や歯並びが美しく、笑顔の素敵な方が少なくありません。全体的なイメージのよさにもつながっています。
重要な場面でよい評価が得られ人生が実り多きものとなるのであれば、歯科治療は有意義なお金の使い方の1つではないでしょうか。
一定期間の治療でメリットやデメリット、費用や通院などの心構えは必要です。信頼できる歯科医師との御縁を願っています。
本記事がマウスピース型矯正でEラインを整え、明るく魅力的な笑顔に自信を持ちたい方の一助となれば幸いです。
参考文献