最近マウスピース型矯正をよく耳にしますが、誰でもできる矯正方法なのかわからない人も多いと思います。
結論からいうと、マウスピース型矯正は希望するすべての人ができるわけではありません。
この記事では、どのような人がマウスピース型矯正をできないのかを解説します。
また、マウスピース型矯正ができないときの対処法や、他の治療法もご紹介するので参考にしてください。
マウスピース型矯正ができない例は?
マウスピース型矯正は誰でもできるわけではなく、歯の状態や骨格によってできないこともあります。ここでは、マウスピース型矯正ができない例を6つ紹介します。
むし歯がある
むし歯だからといって必ずしもマウスピース型矯正ができないわけではありません。
初期のむし歯であれば進行が止まる可能性があるため、治療せずに矯正を始める場合があります。中度以上のむし歯の場合、歯を削ったり抜歯したりすることがあるでしょう。
むし歯治療が矯正中に必要になると、歯型の取り直しをしなければいけません。そのため、むし歯の程度によっては治療してからマウスピース型矯正を始めます。
重度の歯周病にかかっている
歯茎が腫れたり血が出たりする症状がある人は、歯周病の可能性があります。
重度の歯周病の場合、歯が支えられずぐらぐらして抜けることがあるため、マウスピース型矯正ができません。
また、重度の歯周病は歯を支える顎の骨が溶けているため、歯の位置を安定させた状態で動かすことも難しいでしょう。
動かせたとしても途中で抜けてしまう可能性があります。
そのため、マウスピース型矯正に限らず他の矯正治療も歯周病治療が終わっていないとできません。矯正治療を行う前に歯周病治療を行いましょう。
骨格が原因
出っ歯やすきっ歯など不正咬合になってしまう原因のひとつとして、顎の骨格に問題がある場合があります。
顎の骨格が通常と異なる場合は、外科手術を併用し、骨格から修正することで効果的に矯正を行うことが可能です。これを外科的矯正治療といいます。
こうした外科的矯正治療が必要な場合には、マウスピース型矯正だけでは充分な効果が見込めない場合が多いです。
ただし矯正にも様々な方法があり、必ずしも外科的矯正治療を行わなくても正常咬合に改善できる場合が大半ですので、歯科医師とカウンセリングしたうえで矯正方法を決めましょう。
重度の叢生
重度の叢生の場合、マウスピース型矯正だけでは歯並びを綺麗にすることはできません。歯の生え方によっては、抜歯してからマウスピース型矯正を始めることがあります。
抜かない方法では、歯と歯の間にスペースを作る上下床矯正装置を行ってからマウスピース型矯正をすることもあります。
ただし、歯を抜きたくなくても生え方次第では抜歯しなければなりません。抜歯や上下床矯正装置をしてから、マウスピース型矯正をすればガタガタした歯並びが改善できます。
しかし、これらの処置をしないまま放置すると、どんどん歯並びが悪化するので早めに歯科医師に相談しましょう。
多くの歯を抜歯する必要がある
もともと顎が小さい人は歯列の幅を広げるには限界があります。
無理に広げてしまうと、歯周病の進行・歯肉退縮・矯正前に戻るなどのリスクがあるので慎重に判断しなければなりません。
親知らずを4本とも抜く人は多いですが、それ以外の歯で抜くものが多いと歯科医師によっては矯正を断る場合もあります。1〜2本程度抜いて歯並びを調整するのは問題ありません。
しかし、抜歯の本数が多ければ多いほど、歯と歯の隙間が開きやすくなります。
6本のインプラントを入れて矯正治療を行った例もありますが、歯科医師の実力によっては綺麗な歯並びになるとは言い切れません。
不正咬合の治療をせず放置している人ほど、歯を抜かなければならなくなってしまいます。そのため、抜くことになる前に不正咬合の治療をしてから矯正に移りましょう。
歯の本数が多ければ多いほど、歯と歯の隙間が開きやすくなります。
6本のインプラントを入れて矯正治療を行った例もありますが、歯科医師の実力によっては綺麗な歯並びになるとは言い切れません。
不正咬合の治療をせず放置している人ほど、歯を抜かなければならなくなってしまいます。そのため、抜くことになる前に不正咬合の治療をしてから矯正に移りましょう。
インプラントが多く入っている
インプラントは歯がなくなっても代わりに挿入できる人工の歯のことです。「インプラント矯正」があるからインプラントが入っていても問題ないと思っている人もいるでしょう。
インプラント矯正の場合は、歯を動かすためのインプラントにすぎません。しかし、一般的なインプラントは顎の骨にネジを埋め込み、歯の代替品を被せています。
固定されてしまうので場所や本数によっては、マウスピース型矯正の妨げになる場合があります。
マウスピース型矯正は徐々に歯を動かして歯並びを良くするので、動かせなくなると歯並びが改善できません。
そのため、矯正前にインプラントがあると断られるケースがあるので注意してください。
インプラントを入れようか迷っている人は入れる前に相談することで、マウスピース型矯正も可能になることがあります。
マウスピース型矯正ができない場合の対処法
マウスピース型矯正ができない場合、理由によっては対処することで矯正できるようになることがあります。ここでは、むし歯・歯周病の治療と対処法の見つけ方をご紹介します。
むし歯の治療
初期段階以外のむし歯は治療しなければなりません。小さいむし歯には、少し削った部分に歯科用プラスチックを詰めるだけで治療が終わります。
しかし、中程度以上のむし歯はこの程度の治療では終わりません。中程度のむし歯は削った後に詰めて補修を行い、炎症が起こっている歯髄を除去します。
除去した根管を埋める処置をして終了です。詰め物や被せ物で対処できないほど重度な場合、抜歯をしなければなりません。
また、ここまで重度の場合は口腔環境が悪化しているので、歯茎の治療など別の治療が必要になることが多いでしょう。
抜歯するほどではないけれど神経までむし歯が到達している場合、1~2回での処置は難しく7回程度通院する必要があります。
歯周病の治療
歯周病の治療は程度に関わらず、歯石と歯垢の除去・歯の根面の滑択化・咬み合わせの調整を行います。
これらの行為は、歯周病の基本治療に該当します。基本治療を行えば深くなった歯周ポケットが改善しますが、改善されない場合は外科治療を受けなければなりません。
歯周ポケットの奥深くにある汚れは、歯肉を切開して汚れを除去し縫い合わせます。
歯肉が退縮してしまっている場合は、別の部分の歯肉を移植して歯茎の下がりを解消します。
歯周病は外科手術をしたからといって、再発しないとは限りません。再発防止のためにも適切な歯磨き方法を指導してもらいましょう。
歯科医院に相談して適切な方法を検討
治療したからといって、マウスピース型矯正が必ずしもできるとは限りません。歯科医師は顎の大きさや歯の生え方など、様々なことを考慮して適切な矯正方法を提案してくれます。
歯列矯正はマウスピース型矯正に限らず、失敗すると歯並びが改善されなかったり歯が不健康になったりします。
そこで、歯科医院の中でも日本矯正歯科学会が認めた、認定医・指導医・臨床指導医が常勤している歯科医院を選びましょう。
これらに当てはまる歯科医師は、矯正に対して十分な知識と経験があるので安心です。
マウスピース型矯正ができない場合の治療法は?
対処法ではマウスピース型矯正をできない場合は、他の矯正方法を検討しましょう。矯正方法には主にワイヤー矯正が用いられます。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正とはブラケット矯正とも呼ばれ、ワイヤーを使用して矯正する方法です。金属のブラケットと呼ばれる部品に、ワイヤーを通して歯に力を入れ少しずつ動かします。
矯正といったらこのワイヤー矯正を思い浮かべる人が多いでしょう。
金属が目立ちやすい方法ですが、セラミックブラケットやデーモンシステムなどよりも費用が抑えられます。
ワイヤー矯正の費用の相場は約70〜100万円(税込);ほどだそうです。ぜひ参考にしてみてください。
見た目を気にせず矯正費用を抑えたい人におすすめな方法です。また、部分的に取り付けることも可能なので、部分矯正したい人にも向いているでしょう。
マウスピース型矯正以外の目立たない治療法
マウスピース型矯正を検討している人の中には、矯正が目立ちたくないという理由の人が多いでしょう。
矯正治療にはマウスピース型矯正以外にも目立ちにくい方法があるので検討してみてください。
白や透明のブラケットとホワイトワイヤーを使ったワイヤー矯正
従来のワイヤー矯正はチタン製などが多く、銀色や金色で目立つものでした。そのため、矯正が目立ってしまうとマイナスイメージを持っている人も多いでしょう。
しかし、ホワイトワイヤーやクリアブラケットが登場したことで、笑っても矯正器具が目立ちにくくなりました。
ホワイトワイヤーは白い色でコーティングされただけなので、これまでの器具と実力は変わりません。
ブラケットは乳白色のセラミック素材のため目立ちにくくなりますが、金属製と同様の効果があります。
デメリットとしては、どちらも金属製よりも費用が高くなることです。
歯の裏側に装置を付ける舌側矯正(裏側矯正)
舌側矯正(裏側矯正)は簡単にいうと、ワイヤー矯正を歯の裏側に施す矯正方法です。しかし、通常のワイヤー矯正よりもさらに長い期間がかかってしまいます。
そのため、通常のワイヤー矯正よりも費用が高くなる傾向にあるでしょう。また、装着直後は慣れるまで滑舌が悪くなると覚えておいてください。
舌側矯正(裏側矯正)のメリットは目立たないことだけではありません。歯の裏側は唾液が多いので、むし歯菌が繁殖しにくくなります。
また、歯の表に矯正器具がついているときよりも、治療の効果が目に見えてわかります。この方法は人前に立つような仕事の人にも、おすすめできる方法といえるでしょう。
他にも舌で歯を押してしまう癖がある人にも向いています。これは矯正器具が歯の裏についていることで、歯を押せなくなるからです。
舌側矯正(裏側矯正)の費用の相場は約110〜140万円(税込)ほどだそうです。ぜひ参考にしてみてください。
上顎は裏側・下顎は表側にブラケットを付けるハーフリンガル矯正
ハーフリンガル矯正は上顎を舌側矯正(裏側矯正)、下顎を表側矯正で矯正する方法です。
両方とも歯の裏側を矯正する舌側矯正だと舌に違和感を覚える人が多数いました。
しかし、ハーフリンガル矯正は下顎が表側矯正なので、舌が装置に当たらず違和感が軽減できます。そのため、滑舌への影響も少なくなります。
また、下顎は表側矯正なので舌側矯正よりも難易度が高くありません。
ハーフリンガル矯正の費用の相場は約90〜120万円(税込)ほどだそうです。ぜひ参考にしてみてください。
上下ともに舌側矯正(裏側矯正)にするよりも費用を抑えられます。ただし、歯のガタガタ具合など状態によっては高額になることもあり得ます。
笑った時や話す時に下の歯が見えにくい人は、下側の矯正が目立ちにくいのでメリットを感じられるでしょう。
しかし、下の歯が見えやすい人にとっては、矯正しているのが目立ってしまう方法です。
マウスピース型矯正を諦める前に歯科医院に相談を
他の矯正方法を断られたからといって、マウスピース型矯正ができないわけではありません。矯正を始める前にまず、歯科医院に矯正相談をしましょう。
矯正相談は無料で受けられることが多く、矯正の必要性・費用・おおよその治療期間などを相談できます。
歯科医師のスキルによっても矯正のできるできないがあるので、いくつかの歯科医院で相談しましょう。
マウスピース型矯正のメリット
マウスピース型矯正には以下のようなメリットがあります。
- 矯正が目立たない
- 痛みがほとんどない
- 取り外しが楽
- 食事制限がない
- 清潔に保てる
- 金属アレルギーでも矯正できる
- 通院回数が少ない
多くの人がマウスピース型矯正に、矯正が目立たないイメージを持っているでしょう。
マウスピース型矯正で使用する矯正器具は透明に近いので、つけていても気づかれにくくなっています。
マウスピース型矯正はワイヤー矯正のように金具やワイヤーといった金属を付けることがありません。そのため、これらによって舌が傷ついたり口内炎ができたりしにくいです。
また、マウスピース型全体に力が分散するように設計されているので、矯正中の痛みがほとんどないように感じるでしょう。
マウスピース型ははめるだけなので、簡単に食事や歯磨きの時に取り外せます。食事中に取り外せるので、ワイヤーに色が付きやすいものや矯正器具に挟まりやすいものも食べられます。
また、他の矯正方法は器具に食べかすが詰まりやすく、むし歯や歯周病になりやすいですがマウスピース型矯正は食べかすが詰まりません。
普段通りに歯磨きできるので、口の中を清潔に保てます。
歯列矯正したいけど金属アレルギーで諦めていた人もいるでしょう。マウスピース型矯正は医療用プラスチックで設計されているので、金属は一切使用していません。
そのため、金属アレルギーの人でも矯正ができます。マウスピース型矯正はワイヤー矯正のように外れたり、締めが強くて痛すぎることもありません。
また、歯科医師の指示通りに自分でマウスピース型を変更するので、通院回数が他の矯正方法よりも少なく済みます。
メリットの多いマウスピース型矯正ですが、取り外しが自由であることから自己管理となってしまい、治療期間がよりかかってしまうというデメリットもあります。
また、マウスピース型矯正で行える歯の移動には限界があるので、治せない症状があることもデメリットの1つです。
デメリットも理解したうえで、マウスピース型矯正の治療を相談するようにしましょう。
マウスピース型矯正の費用の相場は全体矯正で約80〜110万円(税込)、部分矯正では約60~80万円(税込)ほどだそうです。ぜひ参考にしてみてください。
まとめ
マウスピース型矯正は痛みがほとんどなく、費用や通院回数も抑えられる矯正方法です。
しかし、歯周病などで歯をしっかり支えられなかったり、インプラントに変えていて動かせなかったりする場合はマウスピース型矯正ができません。
マウスピース型矯正の症例に慣れている歯科医師なら、適切な矯正方法を提案してもらえるでしょう。
参考文献