マウスピース矯正

マウスピース型矯正は痛くない?痛みが少ないといわれる理由や痛みを感じる原因、対処法

マウスピース型矯正は痛くない?痛みが少ないといわれる理由や痛みを感じる原因、対処法

歯列矯正と聞いて痛いイメージを持っている人もいるのではないでしょうか。

歯列矯正の方法によって痛みの強さは異なります。マウスピース型矯正は、ワイヤー矯正に比べて痛みが少ないといわれています。

マウスピース型矯正は、ワイヤー矯正とは単に歯列矯正の方法が異なるだけではありません。

その特徴として、取り外しが可能であることや、目立ちにくいデザインであることが挙げられます。口腔内の清掃がしやすく、食事制限も少ないため、生活の質を高める効果も期待できます。

本記事では、マウスピース型矯正は痛みが少ないといわれる理由や痛みを感じる原因、対処法を紹介します。マウスピース型矯正に踏み出せない方の参考になれば幸いです。

マウスピース型矯正はワイヤー矯正と比べて痛みを感じにくいって本当?

悩み女性

マウスピース型矯正は、ワイヤー矯正に比べて痛みを感じにくいでしょう。マウスピース型矯正は、一定期間でマウスピースを交換しながら少しずつ歯を動かしていく方法です。

大きな力が1度にかかるような歯列矯正方法ではないため、ワイヤー矯正に比べて痛みは少ないでしょう。

ワイヤー矯正はワイヤー1本ですべての歯をつなぎ、調整時にかけた力がすべての歯にかかるため、強い痛みを感じやすい歯列矯正方法です。

一気に力が全体にかかるか、少しずつ力が加わるかで痛みの感じ方も変わるでしょう。

マウスピース型矯正は痛みが少ないといわれる理由

歯を指さす女性

マウスピース型矯正は、ワイヤー矯正とは異なり歯を徐々に動かしていくため、痛みが少ないといわれています。

マウスピース型矯正は、理想の歯並びになるように定期的にマウスピースを交換して、歯にかける矯正力を変えながら歯を動かしていく方法です。

1ヵ月で動かせる歯の距離は1mm程で、ワイヤー矯正は1ヵ月に1回の調整で1mm動くように調整しています。1度の調節で強い力をかけるため、痛みも強くなりがちです。

マウスピース型矯正では、1枚のマウスピースで動かせるといわれている歯の移動距離は0.25mm程です。

ワイヤー矯正に比べて1度にかかる力が弱いため、痛みも少ないと感じるでしょう。

マウスピース型矯正で痛みが出る原因

歯が痛い 女性

マウスピース型矯正は痛みが少ないとされていますが、場合によっては痛みを感じることもあるでしょう。マウスピース型矯正で考えられる痛みは以下の2つに分けられます。

歯が動いているために感じる痛みトラブルによる痛みです。痛みが出る原因を知ることで対処も可能になります。

次項で、マウスピース型矯正で痛みが出る原因を5つ紹介します。

歯並びとマウスピースが合っていない

歯並びとマウスピースが合っていない状態で使用していると、歯に加わる力の方向や加減が変わるため、痛みを感じやすくなるでしょう。

新しいマウスピースの交換後は、歯並びと新しいマウスピースの形状が馴染んでいないため、合っていないと感じることもあります。

歯並びとマウスピースが合っていない状態では、マウスピースが浮く部分が出てくるため、歯列矯正の効果は出にくくなります。

また、マウスピースを使う順番を間違えていても歯並びとマウスピースが合わない状態で使用することになるでしょう。

加えて、チューイーと呼ばれる専用装置を使わずに装着すると歯とマウスピースが密着せず、正しくフィットしない状態での装着になりやすいです。

歯並びとマウスピースが合っていない際には、歯科医師に相談してみてください。

歯が動いている

歯列矯正は、歯に矯正力をかけて動かすため、歯に持続的な痛みが生じやすくなります。歯は歯槽骨で支えられているため、簡単には動かせないでしょう。

そのため、マウスピース型矯正は、1日に20〜22時間程マウスピースを付けて、理想とする方向に力をかけて動かします。

食事や歯磨き以外の時間はずっと付けておく必要があるでしょう。歯に力が加わると、歯槽骨に直接力が伝わらないようクッションの役目をしている歯根膜が力を吸収します。

歯根膜に力がかかり続けると炎症をおこす物質が分泌され、炎症性浮腫や細胞浸潤などが引き起こされます。

同時に痛みを発生させる物質が作られ、力を受けた箇所の感受性が増すため、持続的な痛みを感じるようになるでしょう。

咀嚼時など上下の歯がぶつかっている

歯列矯正治療中の歯は、咀嚼時などの上下の歯がぶつかるときに痛みを感じやすくなります。

上記で述べた歯が動くことによる持続的な痛みは、歯列矯正を開始してから数時間程で生じます。

歯列矯正中は感覚閾値(かんかくいきち)が下がっており、通常ではあまり感じない刺激にも過敏に反応してしまいがちです。

感覚閾値とは痛みを感じる極小の刺激量のことで、閾値が小さい程痛みを感じやすい状態です。

数日間は刺激を感じやすい状態が続き、わずかな刺激で自発痛を生じる場合もあるでしょう。

痛みに対して敏感な状態のため、咀嚼時など上下の歯がぶつかるだけでも痛みがあるかもしれません。

食事や歯磨きの際に痛みを感じやすいため、歯列矯正が始まったら注意が必要です。

マウスピースが歯肉や舌に当たっている

マウスピースの出っ張りなどが歯肉や舌に当たることで痛みが出るケースです。

頬や歯肉に当たっている時間が長くなると、口内炎などの可能性も高くなるため、マウスピースを削るなどの対応が必要になるでしょう。

むし歯や歯周病ができている

マウスピース型矯正の直接的な痛みではありませんが、歯列矯正中にむし歯や歯周病になると痛みが出る原因となります。

まず、歯列矯正を行う前にむし歯や歯周病などのチェックが行われます。

この時点でむし歯などが見つかった場合には、治療を行ってから歯列矯正を始めるのが一般的です。

マウスピース型治療は着脱可能なため、歯磨きの際には外して行えます。しかし、歯列矯正中に歯磨きを怠るとむし歯や歯周病になる可能性があります。

なってしまった場合は、むし歯や歯周病の治療が優先されるため、歯列矯正治療が予定していた期間よりも伸びてしまうでしょう。

もし、むし歯や歯周病の治療でマウスピースが合わなくなった際には、もう1度型取りから行うことになります。

時間もお金も余計にかかるため、歯列矯正期間中の歯磨きやマウスピースの手入れは入念に行うようにしましょう。

マウスピース型矯正の痛みのピークはいつ?

歯が痛い人

マウスピース型矯正の痛みのピークは2〜3日といわれています。歯列矯正を模した実験では、歯の移動による痛みは歯列矯正装置装着後の2〜3時間後から生じています。

24〜48時間後にピークになり、1週間程は持続するようです。

歯列矯正装置の装着後すぐは違和感程度ですが、3時間後くらいから痛みを感じ始め9時間後にかけて徐々に痛みが強くなります。

また、痛みの感じ方には個人差があり、マウスピース型矯正では痛みをあまり感じなかったとの声もあるようです。

マウスピース型矯正中の痛みを和らげる方法

マウスピース型

マウスピース型矯正では、マウスピースの装着で違和感や窮屈感を覚えますが、強い痛みは少ないといわれています。

痛みの感じ方や感じる程度には個人差があるため、マウスピース型矯正中の痛みを強いと感じる方もいるでしょう。

痛みを感じた際には以下で紹介する5つの方法を試してみてください。

前のマウスピースに戻す

前に着けていたマウスピースに戻して様子をみてみましょう。交換時に痛みを感じる原因は、十分に歯が動いていない状態で新しいマウピースに交換するためです。

マウスピースの装着時間が短いと、新しいマウスピースに対応できる程に歯が動いていない場合も痛みが出てきます。

そのため、痛む直前のマウスピースに戻して一定期間装着してみてください。

動ききっていなかった歯が動くため、痛みを感じたマウスピースを装着しても痛みを感じにくくなるでしょう。

ただし、前のマウスピースに戻している期間は定められた予定に含まれていないため、完了するまでの期間が伸びてしまいます。

なるべく定められた予定どおりに終わらせたい方は、1日20〜22時間の装着時間を守って治療を進めていきましょう。

歯列矯正用ワックスを使用する

痛みを和らげる方法の1つに歯列矯正用ワックスがあります。歯列矯正用ワックスは、歯列矯正装置による口腔粘膜への刺激や違和感を和らげるために使う粘膜保護剤です。

歯列矯正装置に塗り、短期的に使用するものを指します。ただし使われている材料によっては、発疹や皮膚炎などの症状が現れることがあります。

異変を感じたら歯科医院を早めに受診しましょう。興味のある方は、歯科医師に相談のうえで指導を受けてから使うようにしてください。

なるべくやわらかい食べ物を食べる

雑炊

歯の移動による痛みが出やすいのは噛んだ際です。歯列矯正を行っている歯は、外部刺激に対して過敏になっている状態です。

そのため、通常では痛みを感じないような刺激にも痛みを感じることがあります。

特に、咬合時に痛みを感じやすいため、硬い食べ物や咀嚼が必要な食べ物は痛みを感じやすいです。

そのため、マウスピース型矯正中は、なるべく噛むことが少ないやわらかい食べ物を食べるようにしましょう。

おかゆや麺類、卵料理や煮込み料理などがおすすめです。痛みを感じないように工夫して食事を楽しみましょう。

鎮痛剤を服用する

治療中に痛みを感じた際には、鎮痛剤の服用も視野に入れましょう。

マウスピース型矯正は、鎮痛剤を服用する程の痛みを生じることは少ないですが、痛みが気になる人や痛みに弱い人は鎮痛剤などの薬を使ってみるのも1つの手です。

もし耐えられないような痛みが持続する場合は、何かしらのトラブルかもしれません。

歯が動いている痛みだけではない違う痛みの可能性もあるため、歯科医院で診てもらいましょう。

マウスピースを調整してもらう

マウスピース 調整

新しいマウスピースで頬や歯茎に痛みを覚える際には、マウスピースを調整してもらいましょう。

痛みによっては、マウスピースの再制作が必要になる場合も出てくるでしょう。マウスピース型矯正は、デジタルスキャナーで型を採ったらゴールまでのマウスピースが作られます。

シミュレーションで出た結果をもとに治療期間が決まり、治療が始まります。しかし、実際の歯の位置がシミュレーション通りに動くわけではありません。

痛みが気になる際には、定期検診などで歯科医師に相談してみてください。

マウスピース型矯正の治療中に痛みが出た際にやってはいけないこと

医師

マウスピース型矯正の治療を行っていると痛みを感じることもあります。痛みを感じた際にやってはいけないことを3つ紹介します。

勝手にマウスピース着用をやめる

痛みが出たことで勝手にマウスピースの着用をやめるのは、とってはいけない行動の1つでしょう。着用をやめることで動いていた歯がもとに戻ってしまうからです。

マウスピース型矯正は、歯の動きをシミュレーションしたうえで段階的にマウスピースが作られています。

新しいマウスピースは前のマウスピースよりも歯に負荷がかかりやすいように作られており、慣れるまでに痛みや違和感を覚える人は少なくないでしょう。

マウスピースの交換時には多少の痛みや違和感が出る程度の認識で行うといいかもしれません。

痛みが出た際には、今着けているものから1つ前のマウスピースに戻して着用を続けてください。着用自体をやめてしまうと、せっかく動いた時間や労力が消えてしまいかねません。

市販の鎮痛剤を服用し続ける

薬

痛みが出た際に市販の鎮痛剤を服用し続けると、歯の移動速度が遅くなり歯列矯正治療に影響がでやすいでしょう。

鎮痛剤や抗炎症剤などの非ステロイド系抗炎症剤は、歯列矯正している歯の移動速度を低下させます。

歯列矯正治療の痛みは部分的に起きることが少なくないため、前のマウスピースに戻すなど副作用の少ない痛み軽減法を身につけましょう。

また、市販の鎮痛剤を服用し続けると、胃粘膜や腎臓など多くの臓器が影響を受ける可能性があるため注意が必要です。

痛みがひかない場合には、歯科医院で歯の移動速度に影響しない痛みを抑えられる薬を処方してもらいましょう。

刺激を加える

マウスピース型矯正の治療中に痛みが出た際には、固い物を食べるなどの刺激を加えるのは控えましょう。

痛みを減らせそうと何かしらの対応をするかもしれませんが、対応によっては痛みが増してしまう可能性もあります。

歯列矯正中の歯は不安定な状態です。そのような状態の歯で硬いものを噛むと痛みが増す可能性が高くなるでしょう。

治療中は、噛む力が少なくてすむようになるべくやわらかい食事を心がけてください。

まとめ

女性 笑顔ここまで、マウスピース型矯正は痛みが少ないといわれる理由や痛みを感じる原因、対処法を紹介しました。

マウスピース型矯正は、マウスピースを定期的に交換して段階的に歯を動かしていきます。

何十枚ものマウスピースを使って徐々に動かしていくため、痛みが少ないのが特徴です。

歯に力が加わると、その力が直接歯槽骨に伝わらないように歯根膜がクッションの役割をします。

しかし、力が長時間持続すると炎症をおこす物質を出し、痛みを発生させる物質も作ります。

そして、力が加わっている箇所の感覚閾値は下がり、少しの刺激で痛みを感じるような敏感な状態になるでしょう。

そのため、咀嚼や上下の歯の噛み合わせなどで痛みが生じます。マウスピースの出っ張りや歯列矯正中のむし歯や歯周病でも痛みは生じやすく、原因によって対処法も変わります。

前のマウスピースに戻すのか歯への刺激をなるべく減らすのか、痛みの原因を理解して痛みに適した対処をしていきましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

記事をもっと見る
  • この記事の監修医師
  • 他の監修記事
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

  1. 自分でできる噛み合わせの治し方はある?歯並びや顎のセルフケア方法について解説

  2. 歯列矯正中にできないこととは?食事・歯磨き・スポーツをする際の注意点を詳しく解説します

  3. MFT(口腔筋機能療法)とは?メリット・デメリットを併せて解説

RELATED

PAGE TOP