マウスピース矯正

マウスピース型矯正の仕組みとは?マウスピース型矯正の方法や歯を動かす仕組みを解説します

マウスピース型矯正の仕組みとは?マウスピース型矯正の方法や歯を動かす仕組みを解説します

歯に圧力をかけて歯並びを改善する歯列矯正ですが、その仕組みはワイヤー矯正であれば容易にイメージできます。なぜならワイヤー矯正では、1歯1歯にブラケットが設置されて、歯を動かしたい方向にワイヤーの形態が調整されているからです。一方、マウスピース型矯正は、透明なマウスピースを歯列全体に被せるだけなので、どういった仕組みで歯を動かすのかよくわからないという人もいるでしょう。ここではそんなマウスピース型矯正の方法や歯を動かす仕組みについて解説します。マウスピース型矯正の効果に不安や疑問を感じている人は参考にしてみてください。

マウスピース型矯正とは

マウスピース型矯正とは はじめに、マウスピース型矯正の基本事項を確認しておきましょう。

マウスピース型矯正の概要

マウスピース型矯正とは、透明な樹脂製のマウスピースを使用して歯並びを矯正する方法です。この方法は、見た目が自然で目立ちにくく、取り外しが可能なため、生活スタイルに合わせて矯正治療を進めることができます。矯正治療中でも、取り外しが可能なので、通常どおりの食事や歯磨きができるのが大きな特徴です。

◎マウスピース型矯正治療の手順

マウスピース型矯正では、歯型を精密に取り、それに基づいてカスタムメイドのマウスピースを作成します。このマウスピースは、歯を少しずつ動かす力を持ち、一定期間ごとに新しいマウスピースに交換しながら歯並びを改善していきます。一般的に、2週間ごとに新しいマウスピースに交換し、治療が完了するまで続けます。

ワイヤー矯正との違い

マウスピース型矯正とワイヤー矯正には、いくつかの観点から大きな違いが見られます。

◎見た目

ワイヤー矯正は金属製のブラケットとワイヤーを使用するため、矯正装置が目立ちます。一方、マウスピース型矯正は透明なプラスチック製のマウスピースを使用するため、装着していることが目立ちにくいです。これは、特に見た目を気にする患者さんにとって大きな利点ではないでしょうか。

◎歯磨き

ワイヤー矯正ではブラケットとワイヤーが固定されているため、歯磨きが難しく、ブラケット周りに食べ物が詰まりやすくなります。その結果、むし歯や歯周病のリスクが高まることがあります。しかし、マウスピース型矯正は取り外しが可能なため、通常どおりの歯磨きが可能で、口腔内を清潔に保つことが容易です。

◎食事

ワイヤー矯正では装置を壊さないためにも硬い食べ物や粘着性のある食べ物を避ける必要がありますが、マウスピース型矯正では食事の際にマウスピースを取り外すことができるため、食べ物の制限がほとんどありません

◎治療中の痛み

ワイヤー矯正はブラケットやワイヤーが口内にあたり、痛みや不快感が生じることがあります。また、定期的なワイヤーの調整時にも痛みを感じることがあります。その一方、マウスピース型矯正はやわらかいプラスチック製であるため、痛みや不快感が少なく、治療が進むにつれて徐々に歯が移動するため、痛みが軽減されやすいです。

◎自己管理の必要性

ワイヤー矯正は固定式であるため、患者さんが装置を外すことはできません。一方で、マウスピース型矯正は取り外しが可能であるため、患者さんの自己管理が重要です。なお、マウスピースを1日20時間以上装着することが推奨されており、装着時間を守らないと治療が遅れる可能性があります。このため、自己管理能力が求められます。

マウスピース型矯正に適しているケース

マウスピース型矯正は、特定のケースにおいてとても効果的です。

◎軽度から中等度の歯並びの不正

マウスピース型矯正は、軽度から中等度の歯並びの不正に対して効果的です。特に、歯の前後のズレや軽い噛み合わせの不正、スペースの問題などに適しています。

◎ここぞというときに装置を取り外したい

マウスピース型矯正は取り外しが可能なため、重要なイベントやスポーツ活動の際にマウスピースを外すことができます。これにより、仕事や学校、日常生活に支障をきたさずに矯正治療を進めることができます。

◎矯正中の見た目が気になる

マウスピース型矯正は、一見すると何もつけていないように見えるため、矯正中の見た目が気になる人に向いている治療法です。ワイヤー矯正のブラケットやワイヤーが嫌だという場合は、マウスピース型矯正を第一に検討するとよいでしょう。

マウスピース型矯正の仕組み

マウスピース型矯正の仕組み マウスピース型矯正では、次のような仕組みで悪い歯並びを矯正します。

歯に矯正する力がかかる

マウスピース型矯正は、患者さんの歯型をもとにカスタムメイドの透明なプラスチック製マウスピースを作成し、それを装着することで歯を矯正します。矯正力はマウスピースの形状によって生じます。マウスピースは歯に軽い圧力をかけ、その圧力が歯の動きを促進します。この圧力はとても精密に計算されており、歯が少しずつ理想の位置に移動するように設計されています。

患者さんは通常、2週間ごとに新しいマウスピースに交換します。これにより、継続的に適切な矯正力が歯にかかり、計画どおりに歯が動いていきます。マウスピースは1日20時間以上装着することが推奨されており、食事や歯磨きの際のみ取り外すことができます。

歯が動く分のスペースができる

マウスピース型矯正が効果的に歯を動かすためには、歯が動くためのスペースが必要です。このスペースは、間隙と呼ばれ、歯を削ったり、ほかの歯を少しずつ移動させたりして作られます。間隙が適切に作られることで、歯が無理なく移動できるようになります。

また、歯が動く際には、骨が再生される過程も重要です。歯が動く方向には新しい骨が形成され、逆に歯が離れる方向には骨が吸収されます。この骨のリモデリングがスムーズに行われることで、歯がよりしっかりと移動し、安定した位置に固定されます。

歯根膜が元の厚みに戻ろうとする

歯の移動には、歯根膜の役割も重要です。歯根膜は歯と骨を繋ぐ組織で、歯が移動する際に伸びたり縮んだりします。マウスピース型矯正では、歯にかかる圧力によって歯根膜が圧縮され、移動方向に応じて厚みが変わります。

歯根膜は元の厚みに戻ろうとする性質があり、これが歯の移動を促進します。移動が完了すると、歯根膜は再び均一な厚さに戻り、歯が新しい位置で安定します。このプロセスが繰り返されることで、徐々に歯が理想の位置に移動していきます。

ほかの治療と併用することもある

マウスピース型矯正は、単独で行うこともありますが、ほかの治療と併用することもあります。例えば、噛み合わせの改善が必要な場合や、重度の歯列不正がある場合には、部分的にワイヤー矯正を併用することがあります。また、むし歯治療や歯周病治療と並行して行うことで、口腔内の健康を総合的に向上させることができます。

併用治療により、マウスピース型矯正の効果をできる限り引き出し、患者さんにとってよりよい治療結果をえることができます。

このように、マウスピース型矯正は歯に矯正力をかけ、適切なスペースを作り、歯根膜の性質を利用して歯を移動させる仕組みを持っています。また、必要に応じてほかの治療と併用することで、より効果的な矯正治療が可能となります。

マウスピース型矯正の流れ

マウスピース型矯正の流れ マウスピース型矯正は、次の流れで進行します。

デジタルシミュレーションを行う

マウスピース型矯正の第一歩は、患者さんの歯並びを正確に把握することです。まず、歯科医院で患者さんの口腔内を3Dスキャンします。このスキャンデータをもとに、専用のソフトウェアでデジタルシミュレーションを行います。このシミュレーションでは、患者さんの歯がどのように動くかを詳細に計画し、仕上がりを予測します。

デジタルシミュレーションを用いることで、患者さんが治療の過程を視覚的に理解することができます。また、治療が進むごとにどのように歯が動いていくかを確認できるため、不安も軽減しやすいです。 このデジタルシミュレーションで得た情報をもとに歯科医師は患者さんにとって適切と考えられる治療計画を立てます。

マウスピースを作成する

デジタルシミュレーションが完了すると、そのデータをもとにカスタムメイドのマウスピースを作成します。これらのマウスピースは、患者さんの歯並びにぴったりと合うように設計されており、透明で目立ちにくい素材でできています。

なお、マウスピースは、一連のステップとして複数枚作成され、それぞれが少しずつ歯を動かすように設計されています。患者さんは、2週間ごとにマウスピースに交換し、治療を進めていきます。各マウスピースは、特定の位置に歯を移動させるための微調整が施されており、これによって、徐々に理想的な歯並びに近づけていきます。

定期的にマウスピースを交換する

マウスピース型矯正中、患者さんは定期的にマウスピースを交換します。通常、1〜2週間ごとに新しいマウスピースに交換となります。しかし、歯の動き具合に応じて治療途中で変更することもあります。なお、マウスピースの着用は1日に20時間以上の装着が推奨されます。この着用時間を守ることにより、計画どおりに歯が動き、効果的に矯正が進行します。

治療中は、定期的に歯科医師の診察を受け、治療の進捗を確認します。また、必要に応じて、次のステップに進むための微調整が行われます。患者さんは、診察時に疑問や不安を感じている場合は相談しましょう。

マウスピース型矯正は、患者さん自身の協力が重要となります。装着時間を守り、定期的な診察を受け、理想の歯並びを手に入れましょう。

マウスピース型矯正で知っておきたいこと

マウスピース型矯正で知っておきたいこと ここでは、マウスピース型矯正を受けるうえで知っておきたいことについてお伝えします。

メリット

マウスピース型矯正には多くのメリットがあります。まずは、見た目が自然で目立ちにくいことが大きな利点です。透明なプラスチック製のマウスピースは、装着していてもほとんど気付かれることがありません。また、取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に外して通常の生活を送ることができます。また取り外しができることにより、むし歯のリスクを減らし、口腔内を清潔に保つことができるというメリットもあります。

さらに、マウスピース型矯正は痛みが少なく、矯正装置もやわらかい素材で作られているため、口内に傷をつける心配がほとんどありません。そして、治療の進捗が可視化できるため、患者さん自身が治療の効果を実感しやすい点も魅力です。

デメリット

一方で、マウスピース型矯正にはいくつかのデメリットも存在します。それは、自己管理ができないと治療の効果が得られにくい点です。マウスピースは1日20時間以上装着する必要があり、装着時間を守らないと治療効果が低下する可能性があります。また、取り外しが可能なため、紛失や破損のリスクもあります。また、重度の歯並びや噛み合わせの問題には適していない場合もあります。

注意点

マウスピース型矯正を始める前に、いくつかの注意点を把握しておくことが重要です。まず、食事や飲み物を摂取する際には必ずマウスピースを外し、再装着する前にはお口を清潔に保つことが必要だという点です。特に、むし歯や歯周病のリスクを避けるために、甘い飲み物やスナックを摂取した後には丁寧な歯磨きが求められます。

また、定期的な検診を受けることやマウスピースの取り扱いには注意が必要です。紛失や破損を防ぐために、専用のケースに保管し、丁寧に扱うよう心がけましょう。

マウスピース型矯正の費用

マウスピース型矯正の費用 マウスピース型矯正の費用は、全体矯正と部分矯正で異なります。以下に、それぞれの費用の目安を紹介します。

全体矯正の場合

マウスピース型矯正を用いた全体矯正の場合、費用は一般的に高めになります。これは、すべての歯を対象にした矯正治療が必要なためです。具体的には、治療の期間や歯の状態により異なりますが、一般的には60万円から100万円程度の範囲です。矯正治療は長期間にわたる治療になるため、患者さんは、治療の前に詳細な見積もりを歯科医師に相談し、自分に適したプランを選びましょう。

部分矯正の場合

部分矯正の場合、全体矯正に比べて費用は低くなります。部分矯正は、特定の歯のみに対して行う治療であり、軽度の歯並びの乱れや噛み合わせの改善を目的としています。一般的な費用の範囲は、10万円から40万円程度です。部分矯正は短期間で効果を実感できることが多く、費用面でも手頃な選択肢となります。

どちらの場合も、費用はクリニックによって異なるため、詳細は各クリニックに相談することをおすすめします。また、分割払いのオプションや保険の適用など、費用面でのサポートについても確認しておくとよいでしょう。

まとめ

今回は、マウスピース型矯正の方法や歯を動かす仕組みについて解説しました。従来のワイヤー矯正とは、治療方法も歯を動かす仕組みも大きく異なるため、戸惑う面も少なくないことでしょう。そんなマウスピース型矯正についてさらに詳しく知りたい、もしくは疑問や不安に感じている点がまだあるという人は、歯科医院でカウンセリングを受けることをおすすめします。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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