歯並びが悪く悩んでいる人は、歯科矯正に関して興味を持っているのではないでしょうか。
ワイヤーなどの金具が目立つため、見た目を気にして治療に進む勇気がないという人も多いと思います。
日本人の歯並びは欧米に比べて悪いイメージがありますが、先進国の多くでは歯科矯正は当たり前なので、歯並びが整っている人が多くいます。
日本人の食生活も変わり、噛む行為が少なくなったことも歯並びが悪い原因の一つで、その結果として顎が小さくなり歯並びが悪くなったといわれているのです。
このように、子供の頃からの食生活が歯並びにも影響を及ぼしているのです。
この記事では、歯科矯正を検討している人のために、歯科矯正で歯が動く仕組みやメカニズム・歯科矯正の種類などを詳しく解説します。
歯科矯正で歯が動く仕組みは?
歯科矯正で歯がどのように動くかというと、動かしたい歯に矯正装置を装着して適度な力を加えると、歯と歯槽骨の間にある歯根膜を圧迫すると骨を吸収する細胞が現れます。
歯の反対側の引っ張られている歯根膜にも細胞が現れるので、その結果ゆっくりと歯が動き出すのです。
この動作は、通常人間の歯が骨の中を通じて生えてくる現象と同じです。
歯科矯正をする際には、力を加える大きさやどちらの方向へ動かすかなどを十分にシミュレーションしながら無理なく予定の場所へ動かします。
治療を開始する際に、3Dスキャナーで口腔内を撮影して歯列状態を確認した上で、治療計画を立てますのでデジタルデータの正確な情報が重要です。
その情報にそって治療計画が立てられますので、間違った計画を立ててしまうと取り返しがつかない状態になってしまいます。
歯が動く仕組みなどにも精通した歯科医師が所属した矯正の専門医院を選ぶようにしましょう。
歯科矯正のメカニズム
歯科矯正のメカニズムについて、知らない人は多いのではないでしょうか。 下記にメカニズムについて、記載します。
- 矯正装置で力を加える
- 歯が動く方向の歯根膜が縮み反対側の歯根膜は伸びる
- 縮んだ歯根膜が伸びようとして接している骨を溶かす細胞が活発になる
- 伸びた歯根膜が元の厚さに戻ろうとして骨を作る細胞が活発になる
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
矯正装置で力を加える
前述でも軽く述べましたが、歯を動かすメカニズムは槽膜にある歯根膜に細胞が発生して骨に変化が起きます。
最初に、歯列を整えたい歯に矯正装置を取り付けてワイヤー装置やマウスピース型の装置で歯に力を加えます。
力を加える加減が重要になりますので、どの程度力を加えるか算定するためにも、事前の歯の正確な型取りが必要です。
歯が動く方向の歯根膜が縮み反対側の歯根膜は伸びる
歯が動く方向の歯根膜が縮み、反対側の歯根膜は伸びますが、伸びた方は元の厚さに戻そうとします。
この動作が歯が動くメカニズムであり、自然に歯が生える状態に起きる現象と同様です。
元々の歯が動くメカニズムを上手く利用して、歯科矯正が行われているということを忘れないようにしましょう。
縮んだ歯根膜が伸びようとして接している骨を溶かす細胞が活発になる
縮んだ歯根膜が伸びようとして接している骨を溶かす細胞が活発になりますが、縮んだ方は元の厚さに戻そうとして、骨を溶かす細胞が作られます。
歯槽膜にはある性質があり、それは一定の厚さを保つことです。
歯根膜の厚さに変化が起きると歯槽膜に隣接した骨に変化が発生するのです。
伸びた歯根膜が元の厚さに戻ろうとして骨を作る細胞が活発になる
伸びた歯槽膜は、縮んだ方と同じように元の厚さに戻ろうとして骨を作る細胞が活発になります。これによって骨を作る細胞が作られます。
このように骨を溶かす細胞・骨を作る細胞の働きが、繰り返されることで歯根膜が元の厚さに戻り、歯が動くのです。
歯科矯正の種類
歯科矯正の方法は、さまざまな手法があります。 主な種類を下記に記載します。
- ワイヤー矯正(ブラケット矯正)
- 舌側矯正(裏側矯正・リンガル矯正)
- マウスピース型矯正
上記について、ここでは詳しく解説します。
ワイヤー矯正(ブラケット矯正)
矯正装置には複数ありますが、従来日本で使用されていたのはワイヤー矯正(ブラケット矯正)です。
銀色をしたブラケットを歯の表面に取り付けて、ワイヤーを通して歯列を矯正していく方法です。
装置が目立ってしまうため敬遠されがちでしたが、近年では、目立たない矯正としてブラケットとワイヤーが白色で歯と同化して目立ちにくい素材が出てきました。
以前は遠目からでも気づかれてしまいましたが、現在はよく見ないと分からないほどで気づかれない人も多いといわれています。
ワイヤー矯正を行うには、患者さんの不正咬合の状態を診断して、治療方法や概略・治療期間・費用などの説明を受けます。
必要となるワイヤーの交換や矯正装置の調整を行いながら歯を動かしていき、治療は進められるのです。
治療の進捗具合は、歯並びの状態によってそれぞれですが、1ヶ月に一度通院をして装置の調整を行います。
舌側矯正(裏側矯正・リンガル矯正)
ワイヤー矯正は、白い素材を使用して目立ちにくくなりましたが、更に目立ちにくい方法があります。
その方法とは、舌側矯正(裏側矯正・リンガル矯正)と呼ばれるもので、歯の表面に取り付けるブラケットを歯の裏側に装着する手法です。
舌側矯正(裏側矯正)は目立ちにくいですが、舌が圧迫されるため発音に影響があるといわれているので、下側の歯の表面にブラケットをつける手法を用いる人もいます。
下の歯は、表面にブラケットを装着しても上の歯よりも目立ちにくいためです。
歯の表面に装着しないため、ほとんど気づかれることがないというメリットがあります。
以前は装置が大きく舌があたるため、発音への影響などもありましたが、現在はブラケットも小さくなり発音しずらいなどの難点も軽減されました。
舌側矯正(裏側矯正)のメリットは下記になります。
- 歯の裏側に装着するため、目立ちにくい
- 矯正治療中のむし歯リスクが軽減される
- 前歯が出ている症状の方に特に効果がある
- 見た目を気にする接客業などのお客様と接する人に向いている
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正とは、透明なプラスチック素材のマウスピース型を歯に取り付けて歯列を矯正する方法です。
一人ひとりの不正咬合の症状に応じて、マウスピース型を制作して歯並びを治します。
マウスピース型矯正の中でもインビザライン(※)を使用している歯科医院は多く、日本での症例も1500万件以上と豊富です。
インビザラインは、米国アライン・テクノロジー社が開発・製造しています。日本国内ではインビザライン・ジャパン社から入手できます。
取り外せるので使いやすいマウスピース型矯正ですが、重度の不正咬合には適していませんので、患者さんの症状に応じて検討が必要です。
マウスピース型矯正のメリットを下記に記載します。
- 透明なマウスピース型なので、目立ちにくい
- 自分で取り外し可能
- 違和感や痛みが他の治療法より少ない
- 食事や歯磨きの際に取り外せる
- 口内環境を清潔に保てる
(※) 未承認医薬品等であるため医薬品副作用被害救済制度の対象とはならない可能性があります。
歯科矯正の治療期間は?
気になる治療期間は、症状や治療方法によって異なりますがマルチブラケット装置の場合は、平均2〜3年程度必要です。
治療期間は、年齢が上がると長くなる傾向があるので、3年近くかかる人も多くなるといわれています。
また、歯科矯正で移動させた歯が不安定な状態の時にリテーナーを装着しますが、こちらも平均して1〜3年の装着が必要です。
リテーナーの期間に、せっかく歯列矯正が終了した歯が後戻りしてしまう可能性もありますので、この期間は注意が必要です。
なお、後戻りの速度はリテーナーを適切に使用することで年々だんだんと遅くなりますが、何年経過しても全く後戻りが起こらなくなることはありません。
リテーナーは後戻りが起こらない程度に生涯使用する必要があります。
悪習癖・ブラキシズム・歯周病が認められず咬合が安定している方であれば、最終的には週一回夜間だけなどに頻度を減らして使用することで良好な保定状態を保つことができます。
通常、1〜2年半程度の治療期間が平均とされ、ワイヤー矯正は1ヶ月に1度通院します。対してマウスピース型矯正は2ヶ月に1度です。
歯科矯正でよく行われる歯の動かし方
歯科矯正は、歯を少しずつ移動して歯列を整える治療方法ですが、歯科矯正でよく行われる歯の動かし方を下記に記載します。
- 水平移動させる
- 引っ込める
- 引っ張り出す
- 回転させる
- 起こす
- 歯根を動かす
上記の内容について、ここでは詳しく解説します。
水平移動させる
歯科矯正で歯を水平方向に移動させることは、歯の位置を調整して、咬み合わせや歯並びを改善するための重要な方法の1つです。
歯根を水平移動させて平行にきれいな歯並びになるように矯正をします。この方法をするためには、歯冠にしっかりと正確な力をかける必要があるのです。
歯が過剰に突き出した症状や、逆に内側に寄りすぎた症状などの場合は、その状態に応じて歯を水平方向に移動させ適切な噛み合わせを実現します。
水平方向への移動方法は、軽度の噛み合わせの不具合などに用いられます。
引っ込める
歯が歯茎から伸び出している症状の場合などは、骨の中に歯を沈ませて引っ込める動かしかたを実施します。
上下的に歯を動かす確実性は、マウスピース型矯正よりも、ワイヤー矯正の方が確実といわれているのです。
歯を引っ込める方法は、他の動かしかたに比べて難しく、熟練した技術と経験値が必要になるため、矯正の専門医院での治療をおすすめします。
引っ張り出す
歯を引っ張り出す移動方法は、歯根を引っ張り出すように動かす方法で、歯周病や歯肉炎などで歯周ポケットが広がって骨の高さが下がっている場合に実施します。
矯正方法は、ワイヤー矯正でもマウスピース型矯正の両方対応可能ですが目立ちにくい手法を希望する場合は、マウスピース型矯正がおすすめです。
引っ張り出す移動方法は、動かしやすい手法とされており、歯科矯正で多く用いられています。
回転させる
歯を回転させて移動する手法は、元々歯がねじれて生えてしまっている症状の場合に有効で、正しい歯並びを合わせるために歯を回転させます。
歯の中心になる支点に回転力をかけるように歯列を矯正していきます。
徐々に歯を移動させて回転させていくのです。
起こす
歯を起こす手法とは、傾斜移動と呼ばれています。
傾斜した歯を治す方法で、前歯の場合は簡単に治せますが奥歯などは難しくなります。
傾斜した歯は、歯冠部分を引っ張る必要があり、特に奥歯の場合はマウスピース型矯正では傾いた歯を起こす作業は困難なのです。
向いているのはワイヤー矯正で、ワイヤーで歯冠部分を徐々に引っ張り上げて歯列を治すことが可能になるのです。
前歯であれば、マウスピース型矯正・ワイヤー矯正どちらでも難易度は低くなります。
歯の移動の際に、歯根(歯根膜)の動きは、非常に重要です。
通常は食事の時などの衝撃をやわらげるクッションの役割をしています。
歯科治療の時に、この歯根(歯根膜)があることで歯を動かせるのです。
元々1㎜に満たない薄い膜が常に元の状態に戻そうとする力を利用しているからです。
歯根を動かすことはトルキングと呼ばれ、歯冠を中心にトルクをかけて回転して動かす方法で、上顎前突と過蓋咬合が併発している場合などに使われています。
また、歯科矯正が終了した後の後戻り防止の目的でも利用されています。
歯科矯正で定期的に通院が必要な理由は?
歯科矯正で定期的に通院が必要な理由とは、どのようなことでしょうか。
歯科矯正は、基本的に1〜2年はかかりますが4〜6週毎に1回通院が必要です。その症状によって治療期間は異なります。
治療期間中は、ワイヤー矯正だと1ヶ月に1回、マウスピース型矯正だと2ヶ月に1回の通院が必要で、その都度口腔内の状態と歯列の状態を確認するのです。
定期的な通院をすることで、予定していた歯の移動が問題なく進んでいるかの確認や、矯正装置の調整などを行います。
問題の早期発見や、むし歯や歯周病などの予防にもつながりますので、歯科医院への定期的な通院は非常に重要です。
歯の矯正期間が終了しても保定期間があるため、歯科医院には、年に2〜3回位の通院が必要です。
その期間は、後戻りという歯の状態が戻る可能性がある時期になりますので、定期的に通院して歯並びの状態を見てもらうようにしましょう。
歯科矯正は、自由診療になりますので費用も高くなります。
せっかく高い費用を払って治療をしているのですから中途半端にならないことが重要です。
まとめ
ここまで、歯科矯正で歯が動く仕組みやメカニズム・歯科矯正の種類を解説しました。
歯科矯正に対して理解していただけましたでしょうか。
歯科治療には症状に応じてさまざまな対応方法があり、手法もそれぞれです。特に見た目を気にする人には、ワイヤー矯正であれば舌側矯正(裏側矯正)が有効です。
マウスピース型矯正は、目立ちにくく自分で取り外せますので、見た目と機能を考慮すると選ぶ人が多いのではないでしょうか。
歯並びは、見た目だけでなく他の身体の病気にもつながります。歯並びが不正確だと、咬み合わせが悪くなり、この状態が長びくと顎関節症状や顎の疼痛を引き起こす可能性があります。
噛み合わせが悪いと食べ物をしっかり噛めず、消化器系の問題を引き起こしたり、頭痛を引き起こしたりするのです。
単に歯並びが悪いだけでなく、身体の不調にもつながりますので、歯並びを整えることは非常に重要なのです。
歯並びに不安があって、悩んでいる人は矯正の専門医院に相談してみてはどうでしょうか。
自分に自信を持つためにも、一歩踏み出してみると人生が変わるかもしれません。
参考文献