横顔の美しさを測る基準のひとつに、Eラインという言葉があります。Eラインを美しく、理想の状態に近づけるためには歯列矯正による治療が有効です。
そもそも歯列矯正の手段は大きく分けて、口腔内外から歯列や噛み合わせを整える全体矯正と、一部分だけに絞って短期間で歯並び改善を試みる部分矯正の2種類があります。
部分矯正は時間や費用面の負担が少ない一方で治療箇所が限定されますが、Eラインは部分矯正のみでも改善するのでしょうか。
本記事では、気になる部分矯正とEラインの関係性はもちろん、部分矯正に向いている人・全体矯正の方が合っている人との違いについても解説するのでぜひ参考にしてください。
部分矯正が顔に与える影響
- 部分矯正で横顔(Eライン)は変わりますか?
- 部分矯正の対象となる歯は、上下の歯4~6本が目安です。この箇所の歯並びを整えると、Eラインが整って横顔の印象が変わる可能性があります。ただし、日本人はその特性上ほかの国の人より鼻が低い人が多いため、なかなか条件を満たせないケースも珍しくありません。そもそもEラインとは、顔を横側から見たときに鼻先から顎先(頤)を一直線に結んだラインを指します。
このラインよりも内側に唇があれば美しい横顔に近づきますが、日本人は骨格により顔の彫りが浅い傾向にあるため、欧米人よりも条件の達成が難しいとされています。とはいえ、前にせり出していたりばらばらだったりする歯列を整えると唇の位置が変わり、理想のEラインに近づきやすくなるのも事実です。
ちなみにEラインを歯列矯正以外の手段で整えるには、鼻を高くしたり顎の位置や形状を調整したりといった整形手術を伴うケースが多いため、ハードルはより高く感じる人が少なくありません。どうしてもEラインが気になる場合は、1度歯科医師に相談することをおすすめします。
- 部分矯正で横顔の変化を感じやすいのはどういう人ですか?
- 横から見て上唇顎や下唇顎が突出している場合、あるいはすきっ歯や乱杭歯(叢生)の場合などは、横顔の印象がよい方向に変わる見込みがあります。これらは部分矯正だけでも歯並びを改善しやすく、必然的にEラインが整う可能性も高くなるためです。
ただし、治療を受けた患者さんすべてに有効とは断言できません。部分矯正に対応できるのは軽度の症状のみのため、治療が完了してもEラインはそれ程変わっていなかったり、思った程改善されていると感じなかったりするケースも珍しくありません。
- 部分矯正で横顔以外にも顔が変わる可能性がありますか?
- 個人差はありますが、歯列矯正が進むにつれて治療前よりも小顔に見えると感じるケースがあります。ただし先述のとおり、部分矯正では全体矯正程のわかりやすい変化は期待しづらいでしょう。歯列矯正でお顔の印象が変わりやすいのは、全体矯正で噛み合わせの問題が大きく改善された場合です。
乱れた歯並びでうまくお口を閉じることができなかったり不自然に力が入ったりしてしまう場合は、歯列が整うとしっかりお口を閉じられるようになり、小顔に見えやすくなります。一方で、部分矯正により顔のたるみが気になってきたり、マウスピースの使用で人中(鼻と上唇の間の箇所)が長く見えたりする場合もあります。顔のたるみは、歯のせり出しに伴い皮膚が前方に引っ張られているのが要因のひとつです。歯が正しい位置に移動したことで緩みが出て、たるみが出たと誤解してしまうのです。
また、マウスピースの使用中は唇の上下に厚みが出るため口元が伸びて、人中が長く見えることがあります。このケースで、マウスピースの使用に伴い皮膚が伸びて変化することはありません。Eラインは歯列矯正前よりもしっかり整いやすいため、顔全体で見ると美しく見えるケースがあります。歯列矯正の間は口元にばかり目が行きがちになりますが、一時的な変化のため、気にする必要はありません。
- 歯列矯正で顔以外に起こる変化を教えてください。
- 歯列矯正を行うと歯並びが改善されるため、歯磨きが容易になり、口腔内の健康を維持しやすくなります。歯の位置がばらばらだったり歯と歯が重なり合っていたりすると、歯ブラシを当てるだけでも一苦労です。結果的に磨き残しが出やすくなります。
歯列矯正にワイヤーを使っている場合などは却って歯磨きしづらいこともありますが、治療後に歯並びが整うと汚れを落としやすく、糸ようじも通しやすいためむし歯や歯周病予防につながるでしょう。その他にも、噛み締める癖や歯ぎしりが軽減されて、頭痛や肩こりの症状が軽くなることもあります。
部分矯正が可能な症例・向いていない症例
- 部分矯正が可能な症例を教えてください。
- 部分矯正により歯並びが改善されるケースは、主に以下のとおりです。
- 出っ歯(上顎前突)
- 受け口(下顎前突)
- すきっ歯
- 叢生(乱杭歯)
上下の前歯や、前歯を含めて4~6本程度の歯並びが乱れている場合、部分矯正による治療が受けられます。該当の歯が前や後ろに向かって生えていたり、歯と歯の間に必要以上の隙間があったりするケースです。歯があちこちから生えてバランスがよくない叢生も、歯の状態次第で部分矯正に対応できる場合があります。
- 部分矯正が向いていないのはどのような歯並びですか?
- 部分矯正のみで治療しきれないのは、顎の位置や噛み合わせに問題がある場合です。通常部分矯正が受けられる症状でも著しく歯並びが乱れている場合や、むし歯や歯周病などの治療も必要な場合など、複数の問題が重なる程部分矯正だけでは対応しきれなくなります。
部分矯正と全体矯正の違い
- 部分矯正の特徴を教えてください。
- 部分矯正は、歯並びをきれいにする治療方法のひとつです。全体矯正は、その名のとおりすべての歯並びをきれいにするため、場合によっては大がかりな治療が必要になるケースもあります。対して部分矯正は、歯の一部分を動かして整えることと、治療箇所以外は極力触らないことを重視している点が特徴です。
例えば、前歯1本だけが飛び出していたり捻じれた向きで生えていたりする場合は、その1本にだけアプローチして、より美しい歯並びに近づけます。時間や費用が短くて安価に抑えられる一方で、口腔内の治療対象の箇所以外は動きがないため、噛み合わせがずれていたり歯列が著しく乱れていたりする場合は全体矯正が必要です。
- 部分矯正と全体矯正の治療期間の違いを教えてください
- 部分矯正の治療期間は、およそ数ヵ月から1年前後が目安です。全体矯正では通常治療に2~3年前後を費やすので、長く見積もっても半分以下の期間に抑えられる傾向にあります。歯並びが部分的に気になるけれど時間はかけたくない場合などにも対応可能です。
また一部分だけの治療のため、過去に全体矯正を受けたものの歯並びが戻ってしまった(後戻り)場合でも、少ない負担で治療ができます。
- 部分矯正と全体矯正の費用の違いを教えてください。
- 歯列矯正は原則保険が適用されないため、自費での支払いになります。部分矯正は短期間で治療が完了する分、費用も全体矯正より安価に抑えられます。治療内容によって異なるものの、半年以内であればおおよそ300,000円(税込)前後・1年以内でも500,000円(税込)以内で完結することがほとんどです。
全体矯正は1~3年程の期間でトータル1,000,000~1,500,000円(税込)弱が目安なので、金額はかなりの差があります。なお、歯列矯正の治療費は分割払いに対応してもらえる場合があるほか、医療費控除の対象です。治療費や歯科医院への交通費などの領収書は、忘れずに保管して申請を行いましょう。
編集部まとめ
部分矯正は軽度の歯列矯正に有効です。笑って歯を見せたときに表れる箇所を整えると、全体の歯並びや印象が改善される場合に向いています。
時間も費用も抑えられますが、Eラインは全体矯正に比べると変化の度合いを実感しづらい可能性もあります。
しかし、どちらの治療方法でも本来あるべき箇所に歯が収まり、位置が固定されることには違いありません。
印象が明るくなったり口腔内の健康状態が改善されたりして、自信を持って歯を見せられるようになるでしょう。
お顔全体の印象を美しく健康的に見せる治療方法はさまざまです。Eラインだけにとらわれ過ぎず、歯科医師と相談しながらより理想に近い横顔美人を目指してみてください。
参考文献