小児矯正において、歯並びや顎の発達を改善するために使用される装置の一つが、急速拡大装置です。顎の幅を広げることを目的としており、顎の成長が進む時期に効果が期待できます。
本記事では小児矯正の急速拡大装置について以下の点を中心にご紹介します。
- 小児矯正の急速拡大装置とは
- 急速拡大装置のメリットとデメリット
- 急速拡大装置の使用について
小児矯正の急速拡大装置について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。ぜひ最後までお読みください。
小児矯正の急速拡大装置
- 急速拡大装置とは何ですか?
- 急速拡大装置は、上顎を広げるための矯正装置で、小児矯正で使用されます。永久歯が生えるためのスペースが不足している場合に、急速拡大装置を使用することで、上顎の骨を広げ、歯列に十分なスペースを作れます。急速拡大装置は、金属製のバンドやワイヤーを中心に、拡大ネジが取り付けられており、ネジを回すことで上顎を広げる仕組みです。
上顎の骨は成長中の子どもにおいてはまだ結びついておらず、急速拡大装置の力で骨を広げ、成長とともに新しい骨ができることによって顎の幅を広げます。
- 床矯正と急速拡大装置にはどのような違いがありますか?
- 床矯正と急速拡大装置はどちらも歯並びを改善するために使用される装置ですが、主に装着方法、使用期間、治療の結果に違いがあるとされています。まず、装着方法ですが、床矯正は取り外し可能な装置で、上顎と下顎の両方に使用できます。 一方、急速拡大装置は固定式で、上顎にのみ使用され、治療が終わるまで外すことができません。
次に使用期間は、床矯正は10ヶ月程度を要することがありますが、急速拡大装置は2〜3ヶ月程で効果が期待でき、短期間で上顎のスペースを広げられます。
さらに、治療の結果についてですが、急速拡大装置は短期間で顎の骨を拡大し、鼻腔が広がることで鼻呼吸がしやすくなるというメリットもあります。
床矯正は自身で取り外しできますが、装着時間を守らないと効果が期待できない場合があり、長期間使用することで歯列を広げます。
- 急速拡大装置だけで歯列矯正できますか?
- 急速拡大装置だけで歯列矯正が完了することはないとされています。
急速拡大装置は主に顎の広がりを助けるのであって、歯並びそのものを整えることは難しいです。そのため、急速拡大装置を使用した後は、歯並びや噛み合わせを整えるために、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正などの追加装置を併用します。
これらの装置を使って、歯の向きや位置を三次元的に調整し、理想的な歯並びを作り上げていきます。
- 急速拡大装置の費用相場を教えてください
- 急速拡大装置を使った矯正治療は自由診療となるため、歯科医院によって費用が異なります。
装置自体の費用の相場は、3〜5万円程度ですが、治療に伴う追加費用も考慮する必要があります。例えば、定期的な受診料は1回につき3,000〜5,000円程度かかります。また、急速拡大装置を単独で使用する場合と、ほかの矯正装置(ワイヤー矯正やマウスピース型矯正など)と併用する場合では、トータルの治療費が異なります。
ほかの歯科矯正治療を併用する場合は、10万〜100万円以上の費用がかかることもあります。
急速拡大装置のメリット・デメリット
- 急速拡大装置のメリットは何ですか?
- 急速拡大装置の主なメリットは、以下のとおりです。
- 短期間で顎を拡大できる
急速拡大装置の利点は、上顎の幅を短期間で拡大できることです。 子どもの顎骨は未成熟で柔軟性があるため、3〜6ヶ月程度で顎の拡大が完了します。この短期間での治療は、子どもや保護者の負担を軽減し、効率的に治療を進めることにつながります。 - 抜歯のリスクを軽減できる
急速拡大装置で上顎を拡げることで、永久歯が自然に生えるスペースが確保できると、将来的な抜歯のリスクを減らせます。 歯並びを改善し、抜歯を避けたい方にとって、急速拡大装置は理想的な選択肢となり得ます。 - 口呼吸の改善
急速拡大装置を使用することで、上顎が拡大され、鼻腔が広がります。よって、鼻呼吸がしやすくなり、無意識に行っていた口呼吸を改善できます。 口呼吸が改善されると、歯並びが整いやすくなり、お口の乾燥やむし歯リスクを防ぐことにもつながります。
- 短期間で顎を拡大できる
- 急速拡大装置にはどのようなデメリットがありますか?
- 急速拡大装置には、いくつかのデメリットも存在します。これらを理解したうえで、治療の選択を行うことが重要です。
急速拡大装置の主なデメリットは、以下のとおりです。- 装着時に不快感を感じる 急速拡大装置は金属製の部品を使い、上顎に取り付けるため、初めて装着したときに不快感や違和感を覚えることがあります。強い力で歯を押し広げるため、最初の数日は慣れるまで不快感が続くことがあります。
1週間程度でその違和感は軽減するとされていますが、治療初期には我慢が必要です。 - .お口を開けたときに装置が目立つ
急速拡大装置は固定式のため、お口を開けた際に装置が見えてしまうことがあります。
10歳前後の子どもの場合、外見に敏感な時期もあるため、見た目が気になることがあります。 もし見た目が気になる場合、ほかの歯列矯正の方法を検討することも一つの選択肢です。 - 痛みを感じることがある
装置は上顎の骨を広げるため、一定の力が加わります。そのため、最初の数日間は鼻の奥や口周りに痛みを感じることがあります。 この痛みは数日程度で和らぎますが、痛みがストレスになることも考慮しておく必要があります。 - 発音しにくく、飲み込みにくくなることがある
急速拡大装置を装着すると、発音がしにくくなることがあります。また、食べ物を飲み込む際に、装置が邪魔になることもあります。
食事中に装置に食べかすが付着しやすいため、歯磨きや食事後のケアが少し面倒になることもあります。 - 顔つきの変化
急速拡大装置により、上顎の幅が広がると、鼻腔も広がることになります。結果、小鼻が横に広がる感覚を感じることがあります。
また、お口のなかが広がったように感じることもありますが、成長が進むにつれて自然とその変化は目立たなくなることが多いようです。
- 装着時に不快感を感じる 急速拡大装置は金属製の部品を使い、上顎に取り付けるため、初めて装着したときに不快感や違和感を覚えることがあります。強い力で歯を押し広げるため、最初の数日は慣れるまで不快感が続くことがあります。
急速拡大装置の使用について
- 急速拡大装置はどのくらいの期間使用しますか?
- 急速拡大装置の使用期間は、3〜6ヶ月程度です。この期間は、上顎の幅を広げるために必要な時間ですが、ほかの矯正装置と比べると短期間で治療が進みます。
しかし、上顎の幅を拡げる過程で、すぐに装置を外すと再び元の状態に戻ろうとすることがあります。そのため、治療が完了した後も後戻りを防ぐために、一定期間装置を付けたままにしておく必要があります。また、1度で十分に広がる場合もありますが、場合によっては2度目の拡大が必要になることもあります。
患者さんの状態によって使用期間は異なるため、治療を開始する前に歯科医師としっかりと相談し、計画を立てることが重要です。
- 急速拡大装置の適応年齢はありますか?
- 急速拡大装置は、主に8〜15歳頃の子どもを対象にした小児矯正治療で使用されます。
急速拡大装置は、顎の横幅を短期間で広げることができ、永久歯が生えるためのスペースを確保する目的で利用されます。
成長が活発な時期に装着することで、より顎の骨を拡げやすくなります。
- 急速拡大装置を使用するうえでの注意点を教えてください
- 急速拡大装置を使用するうえでの注意点は以下のとおりです。
- 徹底的な口腔ケア
急速拡大装置は取り外しができないため、食べ物や汚れが装置に詰まりやすくなります。
ガムや繊維質が多い食べ物、麺類などは装置の隙間に入り込みやすいです。
歯磨きはいつもよりも丁寧に行い、食後には歯磨きをして食べかすを取り除きましょう。 - 粘着性のある食べ物を避ける
キャラメルやチューインガムなどの粘着性のある食べ物は、装置に付着しやすく、装置が変形したり破損したりするリスクを高めます。
治療期間中はこれらの食べ物を避けるようにしましょう。 - スクリューを正しく回す
急速拡大装置では、スクリューを1日1〜2回まわすことで顎の骨を拡大していきます。
もしスクリューの回し忘れがあると、顎の骨に必要な力がかからず、治療計画に影響を与えることがあります。
そのため、毎日スクリューをしっかり回すことが大切です。 - 設置されている歯科医院の選定
急速拡大装置を使用するには、外科的な知識と経験が必要です。すべての歯科医院が対応できるわけではないため、装置を使う前に対応している歯科医院を選ぶことが重要です。
治療が進んでいくなかで、しっかりとサポートを受けられる歯科医院で治療を行いましょう。
- 徹底的な口腔ケア
編集部まとめ
ここまで小児矯正の急速拡大装置についてお伝えしてきました。
小児矯正の急速拡大装置について、要点をまとめると以下のとおりです。
- 急速拡大装置は、上顎を広げるための矯正装置で、小児矯正で使用される
- 急速拡大装置の主なメリットは、短期間で顎を拡大したり抜歯のリスクを軽減したりすることで、デメリットは、装着時に不快感を感じたり、お口を開けたときに装置が目立ったりすること
- 急速拡大装置の使用期間は、3〜6ヶ月程度で自身での取り外しはできない
急速拡大装置は、子どもの成長期に合わせて歯列を広げる矯正方法です。治療のタイミングを見極めるためにも、歯科医師と相談し、お子さんに応じた治療法を見つけましょう。
これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。
最後までお読みいただき、ありがとうございました。