マウスピース矯正

小児矯正は保険適用される?費用相場と費用を抑える方法を解説

小児矯正は保険適用される?費用相場と費用を抑える方法を解説

食べ物を噛んだり、飲み込んだりするためのお口の健康は、お子さんの健やかな成長に欠かせません。お子さんの歯やお口の問題は、歯列矯正で治療できる場合があります。

歯並びや噛み合わせを装置を使って改善する歯列矯正には、治療期間や費用もかかるイメージを持つ方もいるでしょう。

この記事では、小児矯正の費用には健康保険が適用されるのかどうかを解説します。

小児矯正の費用相場と費用を抑える方法も紹介していますので、子どもの歯列矯正を検討している親御さんは参考にしてください。

小児矯正は保険適用される?

小児 歯並び

小児矯正は一部のケースを除き、健康保険が適用されません。原則として、健康保険が適用されない自費診療となります。

健康保険が適用される小児矯正は、以下のとおりです。

  • 厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常
  • 3歯以上の萌出不全に起因する咬合異常
  • 3顎関節症の手術前後の歯列矯正治療

健康保険が適用される小児矯正が実施できる医療機関は、地方厚生局に届出を出している医療機関に限定されます。

小児矯正に保険が適用されない理由

子供 歯並び

健康保険法では、疾病や負傷などに対して保険給付を行うとしています。

健康診断や予防接種、正常な妊娠・分娩と同様に、一部のケースを除いた歯列矯正には健康保険が適用されません。

小児矯正に保険が適用されない理由を紹介していきます。

審美治療のため

歯列矯正を検討する患者さんには、歯並びを整えて見た目をよくしたいと希望される方が少なくありません。出っ歯や受け口などは目立ちやすく、顔の印象に影響します。

歯並びは会話したり、笑ったりしたときの表情を印象づける要素です。歯列矯正をして歯並びを整えると、性格がポジティブになる傾向があるとされています。

口元の見た目を改善する治療は、前向きな気持ちで充実した社会生活を送りたいと考える患者さんのサポートでもあるのです。

しかし、健康保険が適用されるのは、疾病や負傷などに対しての治療です。外見の美しさに配慮した審美治療は、疾病や負傷に対する治療とは異なるみなされ、健康保険が適用されません。

予防治療のため

小児 診察

歯列矯正の主な目的は、不正咬合の改善です。歯並びが整っておらず、上下の顎の歯並びがお互いに噛み合わない状態を不正咬合と呼びます。

不正咬合には以下のような種類があります。

  • 歯が重なり合うように並んだ叢生
  • 上の歯が著しく前方に突出している上顎前突
  • 下の前歯が上の前歯よりも前に出ている下顎前突
  • 歯と歯の間に隙間がある空隙歯列
  • 奥歯で噛んでも前歯が噛み合わない開咬

その他に、上下の歯の正中のずれ・歯の生え方の異常による不正咬合もあります。

上顎前突や開咬の状態では、前歯で食べ物が噛みきれなかったり、正しい発音ができなかったりするお子さんが少なくありません。

一方、咀嚼や嚥下の動作がスムーズでないことが原因で顎の発育を妨げたり、歯並びを歪めたりしているお子さんもいます。叢生は歯磨きでの磨き残しが多くなり、むし歯や歯周病のリスクを高めます。

多くの不正咬合は、ただちに痛みや障害を引き起こすものではありません。不正咬合の改善により歯科疾患や顎の成長発育障害を予防する歯列矯正は、疾病や負傷などに対しての治療ではないため、保険の適用にはなりません。

小児矯正で保険が適用されるケース

矯正

小児矯正で保険が適用されるケースは、厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常と診断された患者さんへの歯列矯正です。

厚生労働大臣が定める施設基準に適合し、地方厚生局長に届け出た保険医療機関で治療した場合に限られます。治療には、厚生労働大臣が定める医薬品や歯科材料を使います。

厚生労働大臣が定める疾患に起因した咬合異常

先天的な疾患による噛み合わせの異常に対する歯列矯正には、保険が適用されます。保険が適用されると厚生労働大臣が定めている疾患は59種類です。

例えば、先天性の疾患である唇顎口蓋裂では、上口唇・口の中の天井部分である口蓋・上顎の骨が裂けている症状を認めます。

これらの症状により、飲食や発音に支障を生じ、歯の萌出に影響を及ぼす病気です。複数の手術や術後の歯列矯正が必要となり、治療には保険が適用されます。

また、ダウン症候群のお子さんには、下顎前突や開咬を認める方が少なくありません。生まれつき歯の形の異常があったり、歯の数が少なかったりするお子さんもいます。

このようなお口の状態から噛み合わせを改善する歯列治療が必要な場合には、保険が適用されます。保険適用が可能な医療機関は、歯科矯正診断料算定の指定医療機関です。

3歯以上の萌出不全に起因した咬合異常

治療

萌出不全とは、永久歯が生えてこなかったり、大幅に生えてくる時期が遅れたりする状態です。

永久歯は5歳前後から生え始め、第2大臼歯がほぼ生えそろう時期が12歳前後です。萌出不全には、先天的に永久歯が作られていないケースと歯茎に埋まったまま生えてこない埋伏歯になっているケースがあります。

埋伏歯のなかでも、噛み合わせや周囲の歯や骨に悪影響を及ぼすものは治療が必要です。埋伏歯は位置や方向の異常を伴うことが多く、隣の歯の根にぶつかり、隣の歯を溶かしながら移動する場合があります。

乳歯が抜けて生じた隙間に隣の歯が倒れこんだり、向かい合う歯が伸びたりしたケースでは、噛み合わせの異常が起こります。

このような状態を改善する外科治療が歯茎を切開して歯を引き出す埋伏歯開窓術です。

前歯・小臼歯のうち3歯以上の萌出不全に対し、埋伏歯開窓術と歯列矯正を組み合わせた治療を行う場合は、歯列矯正の治療費にも保険が適用されます。保険適用が可能な医療機関は、歯科矯正診断料算定の指定医療機関です。

顎変形症の手術前後の歯列矯正治療

顎変形症とは、顎骨の変形による噛み合わせの異常・顔の輪郭の変形を起こす病気です。

下顎が大きすぎて強い受け口になったり、側方に歪んだ下顎に伴って顔が曲がったりします。上顎前突・正中線のずれ・開咬などを伴う症例も少なくありません。

このように、骨格的要因で著しい咬合異常をきたしている患者さんには、歯列矯正と外科的手法を併用した外科矯正治療が必要です。

顎の骨を切断して、位置を調整して接合する顎離断手術をはじめとした、手術前後の歯列矯正の治療費は保険適用の対象になります。

保険適用が可能な医療機関は、顎口腔機能診断料算定の指定医療機関です。

保険適用外となる小児矯正の費用相場

医療費

健康保険が適用されない小児矯正の費用は、装置や治療期間によって異なります。

マルチブラケット装置を使用した場合、初診から治療後の保定期間の通院までの総額の相場は、880,000円(税込)〜1,320,000円(税込)程度です。

健康保険が適用されない自由診療は、国の独占禁止法により料金を設定することができません。金額や料金体系は、医療機関の裁量で決められています。

ホームページに料金を掲載している医療機関もありますが、実際には診断時に患者さんに合う治療方針とともに料金をお伝えするのが一般的です。

費用の内訳としては、初診・相談料は11,000円(税込)以下、検査と診断にかかる費用は44,000〜165,000円(税込)程度になります。

歯列を動かす治療の費用は440,000〜935,000円(税込)程度、矯正力を調整する調整料が1回3,300〜11,000円(税込)程度必要です。

また、費用を治療前に一括で設定するトータルフィー制の医療機関もあれば、毎回の通院ごとに調整料を支払う調整料制の医療機関もあります。

経過を確認するためのレントゲン撮影の費用は、その都度支払う医療機関もありますので、契約する前によく確認することをおすすめします。

小児矯正の費用を抑える方法

医療費控除

一部のケースを除き、小児矯正の費用には保険が適用されません。小児矯正の費用相場を知り、高額だと感じた親御さんもいるでしょう。

ここからは、小児矯正の費用を抑える方法を紹介していきます。

医療費控除を利用する

医療費控除とは、1月1日から12月31日までの間に支払った医療費が一定額を超えるときに、定められた計算式で算出した金額を所得金額から差し引くものです。

不正咬合を改善するための歯列矯正は、発育段階にある子どもの成長を阻害しないために行う治療として医療費控除の対象となります。

健康保険が適用されない小児矯正の治療費にも、医療費控除の利用が可能です。

例えば、小児期に噛み合わせが悪いままでは咀嚼と嚥下に支障をきたし、成長に必要な栄養が十分に摂れなくなるおそれがあります。

滑舌の悪さが、学習や遊びでのコミュニケーションの支障となるケースもないとはいえません。

一方で、見た目をよくするだけの審美的な目的の歯列矯正は、医療費控除の対象外です。

医療費控除を利用するには、医療費控除の明細書を添付した所得税の確定申告書を提出します。

ちなみに、デンタルローンを契約した場合は、デンタルローンの契約が成立した年の医療費が医療費控除の対象となります。デンタルローンの金利や手数料は、医療費控除の対象外です。

高額療養費制度を利用する

医師 治療費説明

高額療養費制度は、月の初めから終わりまでのひと月で医療機関や薬局の窓口で支払った金額が上限額を超えたときに、超過した金額を支給する制度です。

上限額は、年齢や所得に応じて定められています。小児矯正の場合は、お子さんを扶養する健康保険の被保険者の年齢と所得に応じた上限額となります。

高額療養費制度の対象となるのは、保険が適用される診療に対し、患者さんが支払った自己負担額です。

健康保険が適用される小児矯正の費用を抑える制度であり、健康保険が適用されない小児矯正の治療費は対象外となります。

高額療養費の申請先は、加入する健康保険の窓口です。申請から支給されるまでには、受診した月から少なくとも3ヵ月程度かかります。

分割払いにする

小児矯正の費用が高額で一括での支払いが難しいときに、医療機関によっては分割払いを可能としている場合もあります。

現金や口座引き落としによる分割払い、もしくはクレジットカードを使った分割払いが可能かどうか、医療機関に確認してみましょう。

デンタルローンを組む

デンタルローンとは、信販会社が小児矯正の費用を立替払いし、立替分と金利を患者さんが分割で信販会社に返済する仕組みです。

支払回数を少なくすると金利が生じない商品もあります。小児矯正を行う患者さんの多くは18歳未満であるため、保護者の代理契約となります。

小児矯正の費用や治療期間の負担を軽減するポイント

小児 床矯正

小児矯正を検討している親御さん・治療中の子どもがいる親御さんのなかには、治療法の選択や治療の取り組み方によって小児矯正の費用を抑える方法があれば、参考にしたいと考える方もいるでしょう。

ここからは、小児矯正の費用や治療期間の負担を軽減するポイントを紹介していきます。

1期治療から始める

1期治療とは、乳歯のみの時期と乳歯と永久歯が混ざった時期の歯列矯正です。永久歯列になってからの治療を2期治療といいます。

4歳くらいから永久歯の前歯がそろう9歳ぐらいまでに始める1期治療の時期は、お子さんの顎の成長が完了していない時期です。そのため、顎の成長発育を利用した治療によって、骨格の問題を解決できるメリットがあります。

また、舌の位置や口呼吸などのお口の癖が歯並びに影響しているお子さんは、少なくありません。1期治療から始めると、お口の癖を改善するトレーニングを早い時期から始めることができます。

1期治療を行うことで2期治療が短くなったり、不要になったりするケースもあり、結果的に費用を軽減する可能性があります。

医師の指示通りに矯正装置を使用する

マウスピース矯正

医師の指示通りに歯列矯正の装置を使用しないと、治療の効果が出にくかったり、治療期間が長くなってしまう可能性があります。

取り外しが可能な装置の場合は、決められた装着時間を守れるように保護者の見守りが必要です。

歯列矯正の治療中には装置の調整力が緩んだり、ワイヤーが曲がってしまったりすることは珍しくありません。通常は定期的な受診の際に医師が調整していますが、通院が滞ると治療期間が延長するおそれがあります。

医師の指示通りに矯正装置を使用し、指示された間隔での通院をおすすめします。

部分矯正での治療を検討する

少数の歯を治療する部分矯正は、全顎矯正よりも費用が安く、治療期間も短くなります。ただし、部分矯正は全体的な噛み合わせを改善できる治療ではありません。

歯と顎の状態によっては、部分矯正では対応できない場合もあります。部分矯正で治療できるかは、お子さんのお口の状態の正しい診断が必要です。

ワイヤーブラケット矯正だけでなく、マウスピースによる部分矯正を行っている医療機関もあります。

まとめ

子供

一部のケースを除いて小児矯正の費用は、健康保険が適用されません。

健康保険が適用されない小児矯正の費用相場は数十万円から数百万円で、お子さんのお口の状態や治療法によって費用が異なります。

健康保険が適用されない小児矯正の費用を抑える方法は、医療費控除の利用や分割払い、デンタルローンです。

健康保険が適用される場合は、高額療養費制度の利用もできます。健康保険が適用されるお口の状態かどうかは、検査に基づいた医師の診断が必要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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