悪い歯並びを快適な方法で治したい。そんなときに第一の選択肢として挙げられるのがマウスピース型矯正のインビザラインです。インビザラインは、従来のワイヤー矯正とはまったく異なる装置を使うため、歯列矯正に対するイメージが一変した人も少なくありません。なかでも食事や歯磨きを普段どおりに行える点は、インビザラインをはじめマウスピース型矯正の大きな利点といえます。ただし、インビザライン矯正でも食事中や食後のケアなどに注意すべき点がいくつかあります。ここではそんなインビザライン矯正中の食事の注意点を詳しく解説します。
インビザラインとは
はじめに、インビザライン矯正の基本事項から確認していきましょう。
- インビザラインとはどのような治療方法ですか?
- インビザラインとは、透明な樹脂製のマウスピースを使って歯並びを治療する方法です。従来のワイヤー矯正が固定式の装置を使用するのに対し、インビザラインは着脱式の装置を使用する点で大きな違いが見られます。従来法とは歯を動かすメカニズムや矯正中の生活、通院頻度などにも違いがあり、その特徴を正しく理解したうえで選択することが大切です。
- インビザラインのメリットを教えてください。
- インビザラインによる矯正治療では、次のようなメリットを伴います。
- 装置が目立ちにくい
- 歯の移動に伴う痛みが少ない
- 装置が粘膜を刺激しにくい
- 通院頻度が低い(2ヵ月に1回程度)
- 食事や歯磨きの際に装置を外せる
このなかでも特に食事を普段どおりに行える点は、矯正中のQOLを大きく向上してくれることでしょう。
- インビザラインのデメリットを教えてください。
- インビザラインによる矯正治療では、次のようなデメリットを伴います。
- 装置の着脱は自分で管理する必要がある
- 装置を着けたままでは食事ができない
インビザライン矯正中の食事に関しては、誤解されている部分も少なくないため、正確な知識を学んでおくことが大切です。
インビザライン矯正中の食事で気を付けること
次に、インビザライン矯正中の食事で気を付けるべき基本事項を解説します。
- インビザラインを着けたまま食事はできますか?
- インビザライン矯正では、マウスピースを着けたまま食事をすることはできません。原則として、食事をする前にインビザラインのマウスピースを取り外す必要があります。インビザラインは食事のときにマウスピースを“外してもよい”のではなく、“外さなければならない”点に気を付けなければなりません。
- インビザラインを着けたまま食事するとどうなりますか?
- インビザラインのマウスピースを着けたまま食事をすると、装置が破損したり、変形したりします。なぜならインビザラインのマウスピースは上限の歯列全体を覆っており、その状態で噛むことを想定していないからです。また、インビザラインのマウスピースはとても薄い素材で作られており、食事によって壊れてしまう可能性もあります。あまり噛まずに飲み込めるものでも、その一部が歯とマウスピースの間に入り込んだり、マウスピースを変色させたりするリスクを伴うことから、食事の際は必ず取り外すようにしてください。加えて、マウスピースを着用したまま食事は、食事からの色移りなどの影響で不衛生になり、むし歯につながりやすいというリスクも生じます。
- インビザラインを着けたまま飲み物は飲めますか?
- インビザラインのマウスピースを着けたまま口にできる飲み物は水だけです。水以外の飲み物を飲む場合は、必ずマウスピースを外してください。インビザラインを着けたままコーヒーや紅茶を飲むと、マウスピースおよび歯に色素が沈着します。糖質が含まれる清涼飲料水は、歯とマウスピースの間に停滞することでむし歯リスクを増加させます。酸性度の強い飲み物は、エナメル質を溶かす酸蝕症(さんしょくしょう)の原因にもなりかねないため、十分な注意が必要です。
- インビザライン矯正中に外食や食べ歩きはできますか?
- もちろん、インビザライン矯正中にレストランなどで外食をしたり、タピオカやたこ焼きなどを食べ歩きしたりすることは可能です。ただし、インビザラインのマウスピースを外していることが前提条件となります。インビザラインを着けたまま外食や食べ歩きをすると、マウスピースの破損や変色を招き、むし歯リスクも増加するため、飲食を始める前に必ず外すようにしてください。
インビザライン矯正中の食事に関する注意点
続いては、インビザライン矯正中の食事で注意すべき点を解説します。
- インビザライン矯正中の食事に関する注意点を教えてください。
- インビザライン矯正中の食事は、以下の点に注意する必要があります。
- 食事の際は必ずマウスピースを外す
- マウスピースを着けたまま口にするのは水だけにする
- 食後は必ずマウスピースとお口の両方をケアする
インビザラインのアタッチメントが付いている場合は、食事の際に外れないよう配慮する必要があります。
- インビザライン矯正中に避けた方がよい食べ物はありますか?
- インビザライン矯正中は、次に挙げる食べ物・飲み物を避けた方がよいといえます。
◎硬い食べ物・弾力性の高い食べ物
インビザライン矯正中は、歯に対して強い圧力がかかっており、刺激に敏感です。その状態で硬い食べ物や弾力性の高い食べ物を噛むと、痛みが生じやすくなります。特に新しいマウスピースに交換した直後は強い痛みが生じやすいことから、あまり噛まずに飲み込めるものを口にした方がよいです。◎粘着性の高い食べ物
ネバネバとしていて噛んだ後も歯に残るような食べ物は食後のケアがしにくいので、可能な限り避けた方が望ましいです。具体的にはキャラメルやアメなどは歯に残りやすいだけでなく、むし歯リスクも大きく上がるため、インビザライン矯正中は食べないようにしましょう。◎歯と歯の間に詰まりやすいもの
一部の野菜や果物、海藻類は繊維質が多く、歯と歯の間に詰まりやすいです。食べ物が詰まってもその都度、爪楊枝やデンタルフロスで取り除ければよいのですが、出先ではそれが難しいことから、インビザライン矯正中はできるだけ避けた方がよいといえます。また歯と歯の間に食べ物が詰まった状態でマウスピースを着けると装置の変形やむし歯の原因になるため、なるべく歯に挟まりにくい食べ物にするようにしましょう。◎極端に熱い飲み物
高温のコーヒーやお茶、スープなどは、樹脂で作られたインビザラインのマウスピースを変形させるおそれがあります。一見すると何も変わっていないように見えても、本来の形状から変化することで、適切な矯正力をかけられなくなるため要注意です。そもそもインビザラインのマウスピースを着けた状態で水以外の飲み物・食べ物を口にすることはNGとなっている点も忘れてはいけません。ちなみに水も高温になっている場合はマウスピースを変形させる可能性があるので、冷ましてから飲むようにするか、マウスピースを外すようにしましょう。◎色が濃い飲み物
コーヒーや紅茶、赤ワインなどは色素が濃く、歯やマウスピースを着色させる原因になるため、インビザライン矯正中は避けるようにしましょう。色の濃い飲み物はマウスピースを着けたまま口にすることは前提としていないので、インビザラインのルールを守れている人は特に気にする必要はありません。またマウスピースを外している状態であれば、色の濃い食べ物や飲み物を口にしても何ら問題はありません。
- インビザライン矯正中の食後ケアはどのように行えばよいですか?
- 歯磨きはマウスピースを着けていない状態で、普段どおりに行ってください。マウスピースはやわらかめの歯ブラシで歯磨き粉を使わずやさしく丁寧に磨き、常温の水道水で汚れを洗い流しましょう。また、別のケア方法としては、リテーナー洗浄剤があります。リテーナー洗浄剤の使用は、水洗いだけでは落ちない汚れも落とすことができ、マウスピースを清潔に保つことができます。
- マウスピースを外す頻度が少なくないと矯正治療の効果に影響がありますか?
- マウスピースの装着時間を守れているのであれば、大きな影響が及ぶことはありません。マウスピースを外す頻度が多く、1日20~22時間の装着ルールを守れなくなると、歯に適切な矯正力がかからず、治療に遅れが生じます。歯の後戻りが起こるリスクもあるため、マウスピースを外す時間・頻度はできる限り抑えましょう。
編集部まとめ
今回は、インビザライン矯正中の食事で気を付けることや食後のケア、注意点などを解説しました。インビザライン矯正では食事の際に装置を外せますが、極端に硬い食べ物や弾力性の高い食べ物を噛むと、痛みが生じることがあるため注意が必要です。また、食後に食べかすが残るような食品もできるだけ避けた方が望ましいです。その他、インビザライン矯正中に食べ歩きするときやマウスピースを着けたまま飲食するときにもさまざまな注意点がありますので、本文の内容を参考にしてみてください。
参考文献