ワイヤー矯正

床矯正装置とは?治療の仕組みや装置の種類についても解説

床矯正装置とは?治療の仕組みや装置の種類についても解説

子供の歯並びの治療で用いられる機会が多い床矯正。大人の矯正治療では馴染みがないため、どのような装置なのか気になる人も多いことでしょう。装着方法が同じマウスピース型矯正とは何が違うのか。どのような仕組みで歯並びを良くするのか。ここではそんな床矯正装置の特徴や種類、メリット・デメリットなどを詳しく解説します。床矯正装置による歯並びの治療を検討中の人は、ぜひ参考にしてください。

床矯正とは

床矯正はどのような矯正ですか?抜歯矯正との違いはなんですか?
床矯正とは、プラスチック製の床(プレート)とワイヤーやスプリングなどで構成された装置を使う治療法です。顎の前後的・水平的な成長を促したり、歯列を拡大したりするのに適しています。顎の骨が成長する力を利用することから、原則としては子供の矯正治療で用いられる装置です。

抜歯矯正との違いは、改善するポイントにあります。抜歯矯正というのは、悪い歯並びを細かく整えることを主な目的としており、スペースを作るために小臼歯などを抜きます。一般的には、永久歯列が完成して、顎の骨の成長も終わりに近づくか、もうすでに終わっているケースに適応されます。 一方、床矯正は、歯並びを細かく改善することはできません。あくまで、顎の成長を促したり、歯列を拡大したりすることを治療目的としています。原則として抜歯をすることもなく、患者さんの心身にかかる負担はそれほど大きくはないでしょう。

床矯正には対象年齢がありますか?
床矯正は、6〜12歳くらいまでが対象です。これは乳歯と永久歯が混在する混合歯列期であると同時に、顎の骨の成長が活発な時期でもあります。そうした歯の生え変わりや顎の成長速度には個人差が見られるため、一概に年齢だけで対象を区切ることはできないのですが、大まかな目安として小学生の時期と考えておくと良いでしょう。
大人でも床矯正は受けられますか?
受けられる場合もあります。上段で解説した通り、床矯正の対象年齢は6〜12歳くらいが原則となっていますが、臨床の現場では25歳くらいまでの患者さんにも例外的に床矯正装置を使うことがあるのです。ただし、大人になってからだと、小児期に行う床矯正ほど大きな効果が期待できませんので、その点は正しく理解しておくことが大切です。

床矯正装置について

床矯正装置の治療の仕組みを教えてください。
取り外し式の床矯正装置を1日のうちの決められた時間に装着することで、顎や歯列が拡大されていきます。床矯正装置の構造にはいくつかのバリエーションがあり、矯正力の働かせ方にもそれぞれに違いが見られます。マウスピース型の装置を単に装着するだけで治療できるタイプもあれば、患者さんがスクリューを回して、顎や歯列の拡大を促すタイプもあります。すべての床矯正装置に共通しているのは、治療の管理を患者さん自身が行う必要がある点です。
床矯正装置の1日の着用時間はどれくらいですか?
最低でも8時間、理想的には12〜14時間程度、装着するのが望ましいです。床矯正装置の1日の着用時間については、使用する装置のタイプや患者さんのお口の状態、歯科医師の方針によって変わるため、詳細については主治医に尋ねてください。
床矯正の装置をつけている治療期間はどのくらいですか?
床矯正装置は一般的に1年半から3年程度、装着します。治療全体にかかる期間は症例によって大きく変わるため、気になる人は矯正相談を受けましょう。

床矯正装置の種類

床矯正装置の種類

床矯正の装置の特徴はなんですか?
床矯正装置の特徴は、顎の骨の発育正常に促せる点です。顎の骨が前後的に短い、水平的に狭いなど、発育上の問題を抱えている場合に、自然な形で治療できます。装置を自由に着脱できる、外出時には装着する必要がない点も一般的な固定式装置との大きな違いといえます。
床矯正の装置にはどのような種類がありますか?
床矯正の装置には、拡大プレート、バイトプレート、アクティブプレートなどの種類があります。

◎拡大プレート
拡大プレートは、一般的に「拡大床(かくだいしょう)」と呼ばれる装置で、歯列全体を側方に広げる際に有用です。プレートの中央に設置されているスクリューを定期的に回すことで、歯列を拡げる力が加わります。

◎バイトプレート
バイトプレートは、下顎の前方成長を促進する効果が期待できる装置です。プラスチック製のプレートと矯正用ワイヤーで構成されています。バイトプレートを装着することで、下顎臼歯部の挺出が促されて深い噛み合わせが改善され、下顎の成長も正常に進むようになります。

◎アクティブプレート
アクティブプレートは、歯列や顎全体ではなく、部分的な歯の位置移動に適した床矯正装置です。歯を動かしたい部分にスクリューを設置して、適切な矯正力を働かせます。そのためアクティブプレートの構造や設計は、ケースによって変わります。

床矯正のメリットとデメリット

床矯正のメリットとデメリット

床矯正のメリットを教えてください
床矯正には、次に挙げるような6つのメリットがあります。

【メリット1】普段通りに食事ができる
床矯正装置は、食事の時に取り外すことができるため、好きなものを自由に食べられます。矯正期間中でも食事の面で不便やストレスを感じることは一切ありません。

【メリット2】清掃性が良く、むし歯リスクが低い
床矯正装置は、歯磨きの際にも取り外せます。口腔内はもちろん、装置自体もていねいにケアできることから、むし歯になるリスクは低いです。

【メリット3】歯列矯正よりも費用が安い
床矯正にかかる費用は、10〜40万円程度です。60〜100万円程度かかる歯列矯正と比較すると費用はかなり安くなります。ただし、ケースによっては2期治療としてワイヤー矯正やマウスピース型矯正を行わなければならないこともありますので、その点はご注意ください。

【メリット4】矯正に伴う痛みが少ない
歯列矯正は、1本1本の歯に対して強い矯正力がかかりますが、床矯正装置が作用するのは歯列や顎全体です。そのため矯正に伴う痛みは、歯列矯正よりも少なくなっています。歯が痛くて食事ができない、といったストレスを感じることもまずありません。

【メリット5】抜歯を回避しやすくなる
床矯正の主な目的は、歯をきれいに並べるための土台作りです。顎の骨の発育が正常に進めば、十分なスペースが確保されるので、抜歯する必要性がなくなります。

【メリット6】顔立ちが健やかになる
大人になってからの歯列矯正では、複数本の歯を抜いたり、歯を大きく動かしたりしなければなりませんが、床矯正で顎骨が正常に発育すると、無理な処置を施さずともきれいな歯並び・噛み合わせを作ることが可能となります。その結果、左右対称で健やかな顔立ちへと成長していくことでしょう。

床矯正のデメリットを教えてください
床矯正には、次に挙げるような3つのメリットがあります。

【デメリット1】適切な時期に受けないと効果が薄れる
床矯正を受けるタイミングは、お子さんによって大きく異なります。そのタイミングを逃すと十分な矯正効果が得られなくなります。

【デメリット2】装置をつけないと効果が出ない
患者さんが自由に取り外しできる床矯正装置には、「装着時間を守らない」「装着を怠る」といったリスクを伴います。当然ですが装置をルール通りにつけなければ、矯正効果も発揮されません。

【デメリット3】ワイヤー矯正が必要になることもある
床矯正で改善できるのは、顎や歯列の幅・大きさ・長さです。細かい歯並びの乱れは、ワイヤー矯正を始めとした歯列矯正を併用しなければ治せないこともあります。

【デメリット4】後戻りすることがある
床矯正にも後戻りするリスクがあるため、その原因となる口腔習癖や不適切な筋肉の使い方は改善する必要があります。

編集部まとめ

このように、床矯正装置は6~12歳くらいの子供に適応されるもので、例外的に成人してから使うこともあります。顎や歯列の大きさや長さ、幅を正常に促すことができ、抜歯をせずに出っ歯や受け口、乱ぐい歯などを改善可能です。

歯並びや噛み合わせの状態、発育のスピードは個人差が大きいことから、どんな床矯正装置で適していて、何歳から治療を開始すべきなのかは精密検査を行ってみなければわかりません。それだけにお子さんの歯並びや噛み合わせを自然に治したいという人は、早い段階で矯正治療を受けることが重要といえます。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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