若い頃は歯並びがきれいだったのに、大人になってから悪くなったと感じる方もいるのではないでしょうか。加齢とともに気になるのが、歯並びの変化です。
年齢を重ねることで歯が動きやすくなり、放置すると見た目の変化や健康に影響が及ぶことがあります。
本記事では、加齢による歯並びの変化の原因や予防策、改善方法について詳しく解説します。悪化を防ぎ健康な歯並びを保つためにも、参考にしていただければ幸いです。
加齢で歯並びが変化する原因

- 加齢で歯並びはどのように変化しますか?
- 歯並びは、年を重ねるごとに変化します。永久歯は12〜13歳頃に生えそろい歯並びがほぼ決まりますが、歯は日々わずかに動いており、それに伴い噛み合わせも変化します。これは、歯を支える土台である歯茎や骨が弱くなっていくことや長年の歯の摩擦によるもので、歯周病や口元の筋肉の衰えも歯並びに影響するためです。通常歯並びの変化は動き始めてからしばらくして気が付くことが多く、最初の目に見える変化としては、前歯が出てきたと感じることが一般的です。特にアジア人は欧米人と比べて歯茎が薄く、年齢とともに歯茎が痩せていきやすいという特徴があります。
- 加齢で歯並びが変化する原因を教えてください。
- 加齢による歯並びの変化は、歯周組織が弱くなっていくことが主な原因です。歯周病が進行すると歯肉が痩せていき、歯を支える骨である歯槽骨が減ってしまいます。さらに、歯を維持するうえで重要な歯根膜が、加齢や慢性的な刺激などによって本来の柔軟性や構造を失ってしまいます。その結果、歯を支える力が弱まることで、歯が移動しやすくなり歯並びが悪くなる仕組みです。また、特定の歯がすり減ることで噛み合わせがずれ、周囲の歯に負担がかかって動いてしまうことがあります。
- 歯並びの変化を放置するとどのような悪影響がありますか?
- 歯並びの変化を放置すると、以下のような健康上の問題が引き起こされるリスクがあります。
- むし歯や歯周病
- 顎関節症
- 消化不良による胃腸への負担
- 歯の欠損
歯並びが崩れると、歯の間に食べ物が詰まりやすくなることで歯磨きが難しくなり、むし歯や歯周病になるリスクが高まります。むし歯や歯周病が進行すると、顎関節への負担がかかり顎関節症になることや、最終的に歯が抜けてしまうこともあるので注意が必要です。また、噛み合わせが悪くなると食事の際にうまく噛めなくなり、消化不良になることがあります。消化不良が続くと胃腸に負担がかかり、お腹のハリや便秘、胃もたれなどの症状を引き起こします。特に前歯が出るとお口が閉じづらくなることや、笑顔を作りにくいなど見た目への影響も考えられるので、変化を感じたら放置せず歯科医師に相談しましょう。
加齢で歯並びが変化するのを予防する方法

- 加齢で歯並びが変化するのを予防する方法はありますか?
- 加齢による歯並びの変化を予防するには、毎日の歯磨きとフロスでのお手入れや歯を支える骨を強化するカルシウムやビタミンDを摂取することで、歯並びの維持が期待できます。スキマ時間を利用して、口腔筋機能療法(MFT)を実践することも効果的です。舌や唇、頬などを鍛えることで歯並びと噛み合わせの改善や、お口の中が清潔に保たれ、むし歯や歯周病の予防にもつながります。また、歯を失ってしまった場合早めに代わりとなる人工歯で補うことで、歯が動くスペースがなくなり歯並びの悪化を防ぐことができます。むし歯や歯周病のリスクを高める飲酒や喫煙も、できるだけ控えることが望ましいでしょう。
- 歯並びの変化を防ぐために気を付けるべき癖を教えてください。
- 日常的に行う以下のような癖があると、歯並びの変化が起こりやすくなります。
- 食いしばりや歯ぎしり
- 爪を噛む
- 頬杖をつく
- 口呼吸
- うつ伏せや横向きで寝る
このような癖は、歯や顎に強い力を加え、歯並びに悪影響を与えるおそれがあるため注意が必要です。食いしばりや夜間の歯ぎしりは無意識であることも多いため、マウスピースを装着して寝ることもおすすめです。自分専用のマウスピースは、歯科医院で歯の型を取り作成することができるので検討しましょう。
- 定期的に歯科検診を受ければ歯並びの変化を防げますか?
- 定期的に歯科検診を受けることは、歯並びの変化を防ぐためにとても大切です。お口や歯の健康状態を確認してもらうことで、むし歯や歯周病を早期発見し、歯並びの変化を防ぐことができます。自分では落としきれなかった歯石や歯垢などのクリーニングを、プロの手で受けることができるのも歯科検診の大きなメリットであり、お口の中を清潔に保つことでトラブルも予防できます。歯科検診は、3ヶ月に1回のペースで通うとされていることが一般的です。
加齢で変化した歯並びの改善方法

- 加齢で変化した歯並びは改善できますか?
- 変化した歯並びを改善するには、歯列矯正が必要です。歯列矯正には年齢制限がなく、基本的には何歳でも治療が可能です。ただし、歯や歯茎、骨の健康状態が重要な判断材料となります。具体的には、以下の理由によって治療の難易度が高くなり、治療期間が長引くことがあります。
- むし歯や歯周病
- インプラントが埋め込まれている
- 糖尿病や高血圧などの全身疾患
これらの要因により、歯列矯正治療は計画的に行う必要があります。むし歯や歯周病がある場合は、先に治療を行う必要があります。インプラントがある場合、治療が複雑になることがあるため、治療計画に工夫が必要です。また疾患があると治療中の回復力が低下し、歯周組織の炎症が起きやすくなるため、治療の進行が遅れるおそれがあります。こうした点を考慮し、歯列矯正を検討しましょう。
- ワイヤー矯正の特徴を教えてください。
- ワイヤー矯正とは、歯の表面にブラケットと呼ばれる装置を装着し、ワイヤーを通して歯を移動させる歯列矯正方法です。ワイヤー矯正には、以下の3種類の治療方法があります。
- 表側矯正
- 裏側矯正(舌側矯正)
- ハーフリンガル矯正:上の歯は裏側矯正(舌側矯正)、下の歯は表側矯正
ワイヤー矯正は、歯並びが大きく崩れている症例などにも対応できる場合があり、歯の移動が早く細かい調整ができます。また、取り外しの必要がないため自己管理の手間がありません。一方、食べ物が装置に挟まりやすいため歯磨きがしづらいことや、歯が動くときに痛みがあるというデメリットもあります。裏側矯正は目立ちにくいのがメリットですが、表側矯正より費用が高くなる傾向にあります。
- マウスピース型矯正の特徴を教えてください。
- マウスピース型矯正とは、透明なプラスチック素材のマウスピースを装着して、歯を動かす歯列矯正方法です。ワイヤー矯正に比べて痛みを感じにくく、通院頻度は少なくなることが多いです。透明なので装着していることが目立ちにくいことや、マウスピースを取り外せるため、歯列矯正を始める前と同じように食事や歯磨きができるというメリットがあります。一方マウスピースの装着時間や交換時期などの管理を、自分で行う必要があることがデメリットです。
- 歯列矯正の費用相場はどのくらいですか?
- 歯列矯正の費用は、ワイヤー矯正で800,000〜1,200,000円(税込)ほど、マウスピース型矯正で600,000〜1,000,000円(税込)ほどかかります。歯科矯正は健康保険が適用されない自由診療となります。治療費はクリニックや患者さん一人ひとりの歯並びの状態によって異なるため、歯科医師とよく相談し治療方法を決めましょう。
編集部まとめ

加齢による歯並びの変化は、歯を支える歯周組織の衰えが主な原因です。歯茎や歯槽骨が弱くなり、歯が動きやすくなることで噛み合わせが悪化し、歯並びが崩れることがあります。
これにより、むし歯や歯周病、顎関節症などのリスクが高まり最終的に歯を失うこともあります。
加齢による歯並びの変化を予防するには、日々の歯磨きやフロス、カルシウムやビタミンDの摂取や口腔筋機能療法(MFT)で舌やお口周りの筋肉を鍛えることが効果的です。
歯を失った場合は、早期に人工歯で補うことにより歯並びの悪化を防ぐことができます。歯列矯正治療を検討する際には、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正などの選択肢があります。
日常のケアと定期的な歯科検診を継続することで、加齢による歯並びの変化を抑え、健康を保ちましょう。
参考文献