お子さんの乳歯が生えてくると、歯並びが正常なのか気になってしまうお父さんお母さんも多いことでしょう。
子供の歯は大人のものとは違うので、一概に自分の歯と比べて大丈夫かを判断することはできません。
またお子さんのお友達の歯と見比べたところで、見るべきポイントが分かっていなければかえって不安は増すばかりでしょう。
お子さんの歯並びは家庭でケアできる役割が大きいので、ぜひしっかり見てあげたいものです。
そこで乳歯の歯並びや永久歯に生え変わる際に注意したいポイントについてお伝えします。
乳歯の歯並びで気をつけること
- 乳歯の歯並びで気をつけることは何ですか?
- 乳歯は簡単にいうと子供の歯で、3歳頃までに全20本が生えそろうと言われています。
歯が生える頃から食べ物をかむことができるようになり、同時に顎周りの発達やかむ力を養うことになります。
乳歯には、大きく分けて乳中切歯と乳側切歯、第一乳臼歯、乳犬歯、第二乳臼歯の5種類があります。
6歳前後になると乳歯は抜けて永久歯が生えてくるため、もしかすると乳歯の歯並びにはあまり注意を払わない方もいるかもしれません。
しかし、乳歯の歯並びの悪さは心身の健全な成長や永久歯の歯並びにもかかわることがあるので、なるべく注意して見てあげたいものです。
乳歯の歯並びで気をつけるポイントを知るには、正常な歯並びと良くない歯並びにはどんなものがあるかを知っておくと安心でしょう。
- 乳歯の歯並びが悪くても気にしなくていいケースはありますか?
- 乳歯の状態でのすきっ歯はあまり気にする必要はありません。
将来的に生えてくる永久歯は乳歯よりも大きな歯になりますので、乳歯のすきっ歯は永久歯が生えてくる際に好都合とも言えます。
サイズの大きい永久歯が並べるスペースがあることの証明とも考えられますので、このようなケースでは歯並びが悪くてもあまり気にしなくても良いと言えます。
乳歯の歯並びが悪くなる原因
- 乳歯の歯並びが悪くなる原因は何ですか?
- 乳歯の歯並びに影響を与える要素には、遺伝的なものと習慣によるものが挙げられます。
歯並びにかかわる骨格は、親から子へと遺伝で受け継がれていく要素の一つですが、歯並びの問題まで必ずしもそっくり受け継がれるわけではありません。
好ましくない習慣については、気をつけることで防げたり軽減したりできる要素なので、家庭でしっかり見てあげましょう。
たとえば、おしゃぶりの長時間使用や指しゃぶり、かみ癖 、口呼吸 、悪い姿勢、食事の偏りなどは歯並びに悪影響を与える好ましくない習慣と言えます。
指しゃぶりやおしゃぶりによって日頃から上顎に力が加わっていると、開咬や上顎前突になることがあります。
- 乳歯の歯並びを悪化させない方法はありますか?
- 3歳頃までなら問題ありませんが、4歳を迎えても度々指しゃぶりしている場合には対策をした方がいいでしょう。
ストレスを感じたときに爪や唇などをかんでしまうお子さんもいます。
そうしたかみ癖があると、上下の歯両方に強い力が加わって歯並びに悪影響を及ぼします。 指しゃぶりやかみ癖を改善するには、お子さんが安心できる環境づくりが大切です。
口が開いたままでいることが多いお子さんは口呼吸になっており、放置すると口周りの筋肉や顎の成長が不十分になり、歯並びが乱れることもあります。ただ、口呼吸の裏にかみ合わせの問題や耳鼻科系の病気が隠れている場合もあるため、単なる癖なのかを調べてもらうことが重要です。
また偏った姿勢で寝ていたり頬杖をついたりするなど、好ましくない姿勢が癖づいていると顎の一方に力が加わり、歯並びにも影響します。
左右どちらか一方でかんでいたり柔らかい食事ばかり食べていたりするなど、食事の癖も同様です。
このように日常生活を整えることで、お子さんの歯並びをケアできます。
乳歯の歯並びが永久歯に悪影響を及ぼすケース
- 乳歯と永久歯の違いは何ですか?
- 永久歯は乳歯よりも大きく、本数も28本(親知らず以外)と乳歯より8本も多いです。
そのため永久歯がきれいに並ぶためには、顎に十分なスペースを必要とします。
- 乳歯の歯並びが永久歯に悪影響を及ぼすことはありますか?
- 通常、永久歯は乳歯の下から生えてくるため、乳歯が好ましくない歯並びになっていると、永久歯の位置にも良くない影響が出ることがあります。
また、通常は永久歯が生える前に乳歯が自然と抜けるものですが、乳歯がむし歯になり抜歯をした場合は、永久歯に生え変わる順番が変化して好ましくない歯並びになる可能性があります。
歯並びが悪いと歯磨きで汚れを落としにくくなり、その結果永久歯になってからもむし歯や歯周病になるリスクも高まります。
永久歯は一生使う歯ですので、乳歯の段階からしっかりケアしてあげましょう。
治療した方が良い乳歯の歯並び
- 治療した方が良い乳歯の歯並びの種類は何ですか?
- 治療が必要と言われる乳歯の歯並びには、反対咬合と開咬、上顎前突、乱ぐい歯の4種類があります。
反対咬合は「受け口」とも呼ばれ、下の前歯の方が上の前歯よりも出てしゃくれているような状態です。
下顎の方が成長しすぎている場合や、下の前歯が前方に傾いている場合に起きます。
開咬(かいこう)は上下の前歯の間が閉じない状態のことで、「オープンバイト」と呼ばれることもあるかみ合わせです。
一般的に「出っ歯」と呼ばれる上顎前突は、前歯が前方に張り出している状態です。
上顎前突では口が閉じにくくなるため、口の中が乾燥して細菌が繁殖しやすくなります。 乱ぐい歯はデコボコに生えている歯並びで、八重歯もこの一種です。
歯が大きすぎたり顎が小さすぎたりして、歯の生えるスペースが十分でないために起こります。
- 乳歯の歯並びの治療方法にはどんなものがありますか?
- 乳歯の歯並びが悪くても経過観察する場合がある。 乳歯の歯並びは状態によって経過観察とする場合もあります。
前述のすきっ歯がそれに当たります。
永久歯は乳歯よりもサイズが大きいため、生え変わる際により広いスペースを必要とします。
そのため乳歯のときは、むしろ隣同士に隙間がある方が好ましいとも言えます。
乳歯の場合、前歯がまっすぐに生えてこないことも多々ありますが、これも心配ありません。
前歯が「ハ」の字に生えていても、顎が成長するにしたがい自然に解消されていくことが多いので、そのまま様子を見るというケースも多くあります。また、口周りの筋肉を強化することで永久歯が生える際に十分な顎周りを形成することができるため、筋肉の訓練をして経過観察というケースも多くあります。
このような筋肉訓練はMFTと呼ばれ、MFTでは正しい舌先の位置である「スポットポジション」や適切な飲み込み方である「スラープスワロー」なども訓練可能です。・1期治療(骨格矯正)
1期治療は主に骨格を矯正する治療で、乳歯と永久歯が混在しはじめる5歳前後から行います。
永久歯に生え変わったとき、きれいに歯が並ぶように十分な顎のスペースを確保したり、歯並びを整えたりする治療です。
顎のスペースを広げる治療では床矯正という装置を使用し、歯の並ぶ場所を確保していきます。
また、バイオネーターという上顎前突の治療に用いられる取り外し可能な装置を使用した治療もあり、こちらの器具で下顎の正しい成長を促していきます。
奥歯の位置が適切でない場合には、頭と顎がストラップでつながったヘルメットのような形状のヘットギアという器具を使用した治療方法もあります。
こちらは顎部分のストラップから出ているワイヤーが上の奥歯につながっており、奥歯を後ろ側に押し込む力を加えていきます。・2期治療(歯列矯正)
2期治療は永久歯に生え変わってからの歯列矯正で、12歳前後から開始します。
ブラケットをワイヤーを用いるワイヤー矯正性が一般的です。
マウスピースを使った治療では、およそ2週間に1回の頻度で「アライナー」というマウスピースを交換しつつ、歯並びをじっくりと矯正していきます。
マウスピースは取り外し式なので、自分で管理しやすいのが良いところです。
リンガルアーチは両側の奥歯をワイヤーでつないだ矯正装置で、自由に着脱はできませんが外からは目立ちにくいです。
編集部まとめ
お子さんの気になる歯並びには遺伝的な要素も絡んでくるものの、日頃の習慣が影響する部分がかなり大きいと思われます。
乳歯はいずれ新しい歯に生え変わりますが、健康な永久歯を育むためには乳歯のケアは欠かせません。
きれいな歯並びはお子さんが健康に成長するだけでなく、明るく日々を過ごすことにもつながります。
小児歯科では、歯のケアやかみ癖の直し方などのアドバイスももらえるので、気になる点があればまずは小児歯科で相談してみてはいかがでしょうか。
参考文献