噛み合わせの悪さを放置していると、肩こりや頭痛だけでなく様々な身体の不調を引き起こす原因となってしまう可能性があります。
様々な不調の原因となり得る噛み合わせの悪さは、歯科矯正で治療が可能です。
この記事では噛み合わせの悪さを放置するリスクを紹介し、治療法や治療にかかる費用の目安を解説しています。
矯正方法にもいくつかの選択肢がありますので、自分に合った治療法を見つけてください。
噛み合わせは矯正で治療できる?
噛み合わせの悪さは、歯科矯正での治療が可能です。
そもそも歯科矯正治療というのは、歯並びや噛み合わせの悪さを改善し、上下の歯がきちんと噛み合うようにしていく治療を指しています。
基本的に歯並びを改善するためには、歯を削ったり差し歯にしたりする治療は行いません。
矯正装置を用いて歯や顎の骨に力をかけて、ゆっくりと歯を移動させることにより噛み合わせを治療していくのです。
噛み合わせが悪い状態のことを専門的には不正咬合といいます。不正咬合とはその名の通り、咬合(噛み合わせ)が不正(正常ではないこと)を表している言葉です。
主な不正咬合には、以下の6種類が挙げられます。
- 叢生(そうせい)歯が顎に入りきらずにガタガタに生えている状態
- 反対咬合(はんたいこうごう)前歯が反対に噛んでいる状態
- 過蓋咬合(かがいこうごう)前歯の噛み合わせが深すぎる状態
- 切端咬合(せったんこうごう)上下の前歯がちょうど合わさっている状態
- 開咬(かいこう)奥歯で噛んでも前歯が当たらない状態
- 上顎前突(じょうがくぜんとつ)いわゆる出っ歯になっている状態
これらの不正咬合を持っていると、状態によっては歯科矯正での治療が必要となるのです。
また不正咬合と同時に顎変形症が見られる場合には、矯正治療と併せて顎の手術が必要になる場合もあります。
噛み合わせの悪さを放置するリスク
日常生活に支障がないからといって噛み合わせの悪さを放置してしまうと、様々なリスクを負う結果となってしまいます。
それはやがて通院が必要なほど悪化してしまう可能性も十分考えられます。
「自分は噛み合わせが悪いのではないか?」という自覚がある場合は、早めに治療を検討した方が良いでしょう。
虫歯や歯周病にかかりやすくなる
歯並びが悪いと、歯が重なっている部分のブラッシングが不十分になりがちです。
そのため磨き残しが発生しやすく、虫歯や歯周病にかかりやすくなってしまうのです。
さらに噛み合わせの悪さが原因で特定の歯に強い力がかかっていると、歯周病の悪化を招きやすくなってしまいます。
虫歯と歯周病は、歯を失う二大原因といわれています。歯の健康を守るためにも、歯並びや噛み合わせは重要なのです。
顎関節症になりやすくなる
噛み合わせが悪いと、噛むときの顎への負担が通常より大きくなり、顎関節症を発症しやすくなります。
顎関節症とは、口を大きく開けづらくなったり、口を開けると顎からカクカクと音が鳴るようになったりする病気です。
痛みをともなうことも多く、最悪の場合は手術が必要となってしまいます。
口臭が強くなる
噛み合わせの悪さが原因できちんと口を閉じることができないと、口呼吸の癖が付いてしまいます。すると口の中が常に乾燥した状態になり、雑菌が繁殖しやすい環境になるのです。
また噛み合わせが悪く日頃からよく噛まずに食事をしていると、唾液の分泌量が減少して口の中がさらに乾燥しやすい状態となっています。
その結果口内の雑菌が増えて、口臭が強くなってしまうのです。
胃腸への負担が大きくなる
噛み合わせが悪いためによく噛まずに食事をすると、胃腸への負担が大きくなり、消化不良の原因となってしまいます。
消化不良を引き起こすと、食欲不振・吐き気・下痢・便秘などの症状が発現することがあります。
さらに、しっかり噛まないことで口周りの筋肉や顎の成長が阻害され、ますます歯並びや嚙み合わせが悪くなってしまうという悪循環に陥ってしまう可能性があるのです。
肩こりの原因になる
意外に思われるかもしれませんが、噛み合わせの悪さが肩こりの原因になっている場合があります。
正常な噛み合わせの場合、噛んだときに奥歯にかかる力は左右均等です。
しかし噛み合わせが悪いと、上下の歯を噛み合わせたときに奥歯のどこか一点に噛む力が集中してしまいます。
そのため顎が左右どちらかに傾いてしまい、顎を支えている筋肉に緊張が生じます。この筋肉は首や肩とも繋がっているため、肩こりを引き起こす原因となるのです。
さらに肩こりがひどくなると頭痛を併発することがあります。
噛み合わせを矯正する方法
噛み合わせを矯正する方法にはいくつかの選択肢が挙げられます。そしてそれぞれの矯正方法には特徴があり、矯正治療に向いている症状もそれぞれです。
また歯科矯正は、長期にわたっての治療となることが一般的です。
自分のライフスタイルや症状に向いている治療法を選び、治療期間をより快適に過ごせるようにしてください。
マウスピース矯正
マウスピース矯正は1999年に誕生した、比較的新しい矯正方法です。
患者ひとりひとりの歯並びに合わせたマウスピースを作製し、それを装着することにより歯に力をかけて少しずつ動かしていく矯正方法です。
矯正に使用するマウスピースは、歯の動きに合わせて新しいものに交換し、理想の歯並びへと近づけていきます。
マウスピース矯正はワイヤー矯正と比べると痛みも少なく、費用も抑えられることが多いというメリットがあります。
また透明で目立ちにくい素材でできているため、矯正装置装着時の見た目が気になる人には人気のある矯正方法です。
唯一患者自身で取り外しが可能な矯正方法で、口腔内の清潔を保ちやすいという点もメリットとして挙げられます。
ただし1日20時間程の装着時間を守らないと、思ったような効果が得られなくなる可能性が出てくるので注意が必要です。
症状によっては適用できない可能性もあるため、自身の症状が適用可能かどうかを確認する必要があります。
顎矯正
顎が上下・左右・前後に大きくずれているために不正咬合が起こっている場合があります。
不正咬合は噛み合わせだけではなく、顎の位置のずれが重要な要因となることもあります。いつも噛んでいる位置と顎の関節が楽な位置のずれが大きいと、歯並びを直しても改善できません。
このような状態を顎変形症といい、「前歯でものを噛み切る」という歯本来の機能が失われていることが多いのが特徴です。
しかし顎の骨の成長が完了している大人の場合は、矯正装置による治療だけでは満足な効果を得られません。
そこで症状の重篤度によっては、歯科矯正治療に加えて顎の手術を組み合わせた方法を選択する必要が出てくるのです。
顎の外科的手術を行う際には10~14日間の入院治療が必要となり、手術の前後に術前矯正と術後矯正がそれぞれ行われます。
外科手術をともなう矯正治療は、通常の矯正治療よりも長い期間がかかる場合もあります。
ブラケット矯正
ブラケット矯正とはワイヤー矯正とも呼ばれ、「矯正」と聞いて一般的にイメージされることの多いワイヤーを使用した治療方法です。
歯にワイヤーを通すためのブラケットという装置を装着し、そこにワイヤーを通して力をかけて歯を少しずつ移動させていきます。
適用できる症例に限りのあるマウスピース矯正に対し、ブラケット矯正はほとんどの不正咬合に対応可能な矯正方法となっています。
笑ったときに歯に装着したブラケットが見えてしまうため、見た目が気になる人もいるというデメリットがありますが、透明なブラケットや歯に近い色のブラケットを使用することで目立たなくすることが可能です。
またブラケットを歯の裏側に装着する「裏側矯正」なら、矯正装置が外からは見えなくなるので、見た目を気にすることなく日常生活を送ることができます。
ただし裏側矯正は通常のブラケット矯正より費用が高額になり、治療期間も長引きやすいという特徴を持っています。
噛み合わせの矯正の費用の目安
噛み合わせを改善するための矯正治療は、ほとんどの場合において健康保険の適用外となります。
そのため費用が高額になりやすく、価格も治療を受ける歯科医院によってそれぞれ異なっていることが特徴です。
したがって矯正治療を検討する際には、いくつかの歯科医院でカウンセリングを受けて、比較検討することをおすすめします。
ただし症状によっては健康保険が適用できるケースもあります。自分が保険適用の症例に当てはまるかどうかも含めて、カウンセリング時に確認しておきましょう。
費用の見積もりを確認する際に気を付けたいのが、トータルでかかる費用を確認することです。
矯正治療には矯正装置にかかる費用の他にも、カウンセリング(無料で行っている歯科医院もあります)・精密検査・虫歯などの事前治療・矯正装置の調整費用・通院ごとにかかる受診料・保定にかかる費用などが必要になります。
矯正装置の価格だけを見て治療を始めてしまい、「これほど費用がかかるとは思わなかった…。」と後悔しないためにも、トータルでかかる費用の概算を確認しておきましょう。
保険適用できない場合
ほとんどの場合において保険の適用外となる噛み合わせ矯正は、治療を受ける歯科医院や選択する治療方法によっても費用相場が異なります。
マウスピース矯正を選択した場合にかかる費用の相場は、およそ10万円~100万円程度です。
なぜこれほどの大きな開きがあるかというと、マウスピース治療では部分的に歯並びを矯正するからです。
部分的な治療かつ軽症の場合は、他の矯正方法に比べると費用を抑えられる傾向にあります。
一方ワイヤー矯正にかかる費用の相場は、およそ30万円~170万円程度です。
こちらもマウスピース矯正と同じく、部分矯正の場合は全体矯正に比べると費用を抑えられます。
ただし上記に挙げた費用相場は歯並びの程度・使用する矯正装置・矯正治療を受ける歯科医院によっても異なりますので、治療を検討する歯科医院で確認してください。
保険適用できる場合
ほとんどが保険の適用外となる歯科矯正治療ですが、以下の場合に限り健康保険が適用されます。
- 唇顎口蓋裂など、厚生労働大臣によって定められた先天性異常の疾患に起因した咬合異常の矯正治療
- 顎変形症
- 永久歯萌出不全に起因した咬合異常の矯正治療
これらの場合、実際に支払う費用は、3割負担の保険適用後およそ30万円~40万円前後になることが多いようです。
ただし保険適用で治療を受けられる医療機関は、「厚生労働大臣が定める施設基準に適合しているものとして地方厚生(支)局長に届け出のある保険医療機関」のみとなっています。
保険適用となりそうな症状が見られる場合には、地方厚生局のHPでお近くの保険医療機関を探して受診してください。
まとめ
噛み合わせの悪さを放置してしまうと、口臭・虫歯・肩こり・消化不良など様々な身体の不調を引き起こす原因となってしまいます。
全身の健康状態を維持するためにも、噛み合わせは非常に大切な要素です。
たとえ日常の食事に支障が出ていないとしても、上記のような症状がみられる場合には一度歯科矯正を検討してみてください。
また、歯科矯正は保険適用外の自由診療となります。
いくつかの歯科医院でカウンセリングを受けてみて使用する矯正装置や費用面を比較検討し、自分に必要だと感じたときには治療を開始することをおすすめします。