歯列矯正は、悪い歯ならびや噛み合わせを、歯列矯正装置を用いて改善していく歯科治療です。しかし、装置の使用によりお口の中に傷ができることがあり、苦痛を感じている方もいると思います。本記事では、なぜ歯列矯正でお口の中に傷ができるのか、その原因と予防法、対処法、さらに日常生活での注意点まで詳しく解説します。
歯列矯正で口の中が傷だらけになる原因
- 歯列矯正でお口の中が傷だらけになる理由を教えてください。
- 歯列矯正によってお口の中が傷だらけになる主な理由は、歯列矯正装置が頬や唇、舌の粘膜に接触し、物理的に擦れてしまうためです。特にワイヤー矯正では、ブラケット(金属の留め具)やワイヤーの先端が突出していることがあり、これが話したり食べたりする際に粘膜を刺激し、痛みや傷が発生します。痛みの程度や持続期間には個人差がありますが、通常、子どもでは3日間程度、成人では1週間程度痛みが持続します。それ以降になると、痛みは徐々に軽減し、食事もできるようになってきますが、我慢できないほどの痛みであれば、早めに相談してみてください。また、歯の移動により一時的に噛み合わせが不安定になることで、自分の歯でお口の内側を噛んでしまうことも傷の原因になります。
装置の不具合や、ワイヤーの飛び出しなども要因となるため、担当の歯科矯正医に診察してもらうことが重要です。
- 歯列矯正でお口の中が傷だらけになる方とならない方の違いはありますか?
- 傷の生じやすさに個人差はありますが、以下のような要因が影響しています。
- 粘膜の強さ:口腔内の粘膜が薄い方は傷ができやすい傾向があります
- 口腔内の乾燥:唾液が少ないと装置との摩擦が増え、傷ができやすくなります
- 歯列矯正装置の種類:金属製の装置を使用している方の方が傷つきやすいです
- 装置への慣れ:装着初期は誰でも傷ができやすいですが、数週間〜数ヶ月で慣れてきて傷が減るケースが多いです
歯列矯正で口の中を傷だらけにしないための予防法
- 歯列矯正でお口の中に傷ができないようにする方法はありますか?
- 傷ができてしまうと、しばらくお口の中の痛みが続きます。そのため、以下のような対策をとることで、傷の発生を予防しましょう。
- 歯列矯正用ワックスを活用する:ブラケット部分にワックスを貼ることで、粘膜への摩擦を軽減できます
- 口内を保湿する:唾液の分泌を促すためにこまめに水分をとる、口腔保湿ジェルを使うなどが有効です
- 定期的な調整とチェック:装置の飛び出しやゆるみを早期に発見・修正してもらいましょう
- 正しい歯磨き方法と口腔ケア:炎症があると傷が悪化しやすいため、清潔を保つことが大切です
- お口の中に傷がつきにくい歯列矯正方法は何ですか?
- 以下の歯列矯正方法は、複数ある歯列矯正治療のなかでも、傷がつきにくいとされています。
- マウスピース型矯正:装置が滑らかで、頬や舌に接触しにくく、傷ができにくいです
- セラミックブラケット矯正:金属よりも滑らかで口腔内を傷つけにくい素材が使われています
歯列矯正でお口の中が傷だらけになった場合の対処法
- 歯列矯正中にお口の中に傷ができたら、どのような治療を受けられますか?
- 歯列矯正中にお口の中に傷ができた場合は、担当の矯正歯科に相談してください。状態に応じて以下のような治療を受けられます。
- ワイヤーの調整:飛び出たワイヤーや尖った部位を削ったり、短く切ったりしてくれます
- 歯列矯正用ワックス:粘膜との摩擦を軽減する目的で、装置に塗るワックスを提供してくれることがあります
- 口内炎用の塗り薬やパッチの処方:粘膜の修復を促す薬で痛みや炎症を軽減します
- 歯列矯正装置によってお口の中に痛みが生じる際に、自宅でできる対処法を教えてください。
- 歯列矯正装置によって痛みが生じた場合、自宅でできる対処法としては以下のとおりですが、痛みが強い場合や続く場合は早めに担当の矯正歯科に相談してください。
- 歯列矯正用ワックスを使う
- うがい薬でお口を清潔に保つ
- 食事内容の工夫(刺激物・硬いものを避ける)
- 痛みが強い場合は、市販の鎮痛薬を一時的に使用する
歯列矯正中の注意点
- 歯列矯正中に日常生活で気を付けるべきことはありますか?
- 歯列矯正中は、トラブルを回避するためにも、日常生活でも以下のようなことに注意してください。
- 硬いものや粘着性のある食べ物を避ける
- 装置に引っかからないように、お口の中を意識して動かす
- 就寝前や外出時にはワックスを適宜使用
- こまめな口腔内の観察とセルフケア
- 違和感や痛みがあるときは早めに担当歯列矯正医へ相談
- 歯列矯正中に食べない方がよいものはありますか?
- 歯列矯正中には食事にも注意が必要です。装置が外れる可能性や歪む可能性があるもの、装置に絡まったり挟まったりしやすいもの、着色しやすいものは避けてもらうのが望ましいです。キャラメル、ガム、お餅などの粘着性食品
装置についてしまうと取り除くことが難しいです。無理やり取ろうとすると一緒に装置が外れてしまう可能性があります。フランスパンや硬いクラッカー、ナッツなどの硬質食品
硬さがあるものは、咬んだ衝撃で装置が外れたり、歪んだりする可能性があり、注意して食べる必要があります。とうもろこし・骨付き肉など噛みちぎるもの
歯列矯正装置に絡まったり、挟まってしまう可能性があります。そのまま除去せずに放置しておくとむし歯や、歯周病のリスクが高まりますので、フロスなどを使って清掃しましょう。カレー、トマトソース、デミグラスソース
歯列矯正装置が着色する可能性があります。食べた後に水でお口をゆすぐようにしましょう。
- 歯列矯正中はどのような飲み物がおすすめですか?
- 歯列矯正中は、口腔内の衛生状態を維持することが重要です。そのため、以下のような飲み物をおすすめします。
- 常温の水:粘膜を潤し、口腔内の清潔を保つために特に適しています
- 無糖のお茶(麦茶・緑茶など):カフェインが少なめで口腔内をさっぱり保てます
- 乳酸菌飲料(無糖タイプ):口内環境の改善にもつながる可能性があります
一方で、以下の飲み物は避けることをおすすめします。これらの飲み物を接種した場合は、必ず水でお口をすすぐか、可能な限り歯磨きを行いましょう。
コーヒー、紅茶
歯に着色しやすい飲み物です。また、これらの飲み物に含まれるカフェインは、過剰に摂取すると口腔内を乾燥させ、唾液の分泌を抑えるため、むし歯や歯周病のリスクを高める可能性があります。炭酸飲料、スポーツドリンク、ジュース
酸性度が高い飲み物は、歯のエナメル質を溶かしてしまうリスクがあります。また、糖度が高い飲み物はむし歯のリスクを高める可能性があります。アルコール
赤ワインは、歯や装置を着色するリスクが高い飲み物です。ビールや、カクテルなどは酸性度が高いため、歯のエナメル質を溶かす恐れがあります。
まとめ
歯列矯正は美しい、健康的な噛み合わせを得るための大切な治療ですが、その過程ではお口の中に傷ができてしまうこともあります。装置の種類や使い方、日々のケアによってそのリスクは軽減できます。痛みや傷がひどい場合は自己判断せず、早めに担当の矯正歯科医に相談することが大切です。安心して治療を継続するためにも、正しい知識と対処法を身につけましょう。
参考文献