ワイヤー矯正

部分矯正の適応ケースは?メリット・デメリットと併せて解説

部分矯正の適応ケースは?メリット・デメリットと併せて解説

部分歯列矯正は、歯並び全体ではなく限定した部分だけを治療する方法です。 前歯だけが気になる方や、短期間で治療を終えたいと感じている方のなかには、部分歯列矯正を検討している方も少なくないでしょう。

しかし、部分歯列矯正が適応されるのはどのようなケースなのでしょうか? 本記事では部分歯列矯正について、以下の点を中心にご紹介します。

  • 部分歯列矯正が適応されるケース
  • 部分歯列矯正のメリット
  • 部分歯列矯正のデメリット

部分歯列矯正を理解するためにも、ご参考いただけますと幸いです。

部分歯列矯正とは?

部分歯列矯正とは?

部分歯列矯正は、全体的な歯列矯正ではなく、限定した部位のみを対象とした治療法です。主に前歯部分や軽度の歯並びの乱れを改善するために用いられます。

全顎矯正と比べて治療期間が短く、費用も抑えられるため、限定的な歯並びの問題を抱える方におすすめです。ただし、適用できる症例には制限があるため、医師との相談が不可欠です。

部分歯列矯正の主な種類

部分歯列矯正の主な種類

部分歯列矯正には、患者さんの症状や希望に応じてさまざまな方法があります。ここからは、代表的な3つの部分歯列矯正の種類を詳しく解説します。

マウスピース型矯正

マウスピース型矯正は、透明な樹脂製のマウスピースを使用して歯を移動させる方法です。目立ちにくいため、見た目が気になる方におすすめです。

部分歯列矯正の場合、全体をカバーするマウスピースを使用しますが、移動させる歯のみに力がかかるよう設計されています。装置の着脱が可能なため、食事や歯磨き時に取り外せること、ワイヤーがないため口内の違和感が少ないことなどが特徴です。

ただし、1日20時間以上の装着が必要なため、自己管理能力が求められます。

ワイヤー矯正(表側)

表側ワイヤー矯正は、歯の表面にブラケットを装着し、ワイヤーを通して歯を移動させる従来の方法です。

部分歯列矯正の場合、必要な歯にのみブラケットを装着するため、全顎矯正よりも装置が少なくなり、複雑な歯の移動にも対応できます。また、装置が固定されているため、患者さんの自己管理の負担が少ないのも特徴です。

一方で、装置が目立つことや、装置周りの清掃が難しいことや食事制限などがデメリットとして挙げられます。

ワイヤー矯正(裏側)

裏側ワイヤー矯正は、歯の裏側にブラケットを装着する方法です。表側矯正と同様の原理で歯を移動させますが、装置が外から見えない仕組みになっています。

そのため、人目が気になる方や、装置を見せたくない方におすすめです。一方で、装置が舌に当たるため、慣れるまで発音や違和感の問題が生じる場合があります。

部分歯列矯正が適応されるケース

部分歯列矯正が適応されるケース

部分歯列矯正は、全体的な歯列矯正ではなく、限定した部位のみを対象とした治療法です。主に前歯部分や軽度の歯並びの乱れを改善するために用いられます。

全顎矯正と比べて治療期間が短く、費用も抑えられるため、限定的な歯並びの問題を抱える方におすすめです。ただし、適用できる症例には制限があるため、医師との相談が不可欠です。ここからは、部分歯列矯正が適応される具体的なケースを詳しく解説します。

前歯の矯正

前歯の歯並びが気になる場合、部分矯正がおすすめです。前歯は見た目が気になる部位です。前歯の歯並びが乱れていると、笑顔に自信が持てなくなることがあります。部分矯正では、前歯だけを対象に装置を装着し、短期間で歯並びを整えることが可能とされています。

利点は治療期間が短く、費用も全顎矯正に比べて抑えられることです。また、前歯のみを対象とするため、装置が目立ちにくいことも特徴です。

ただし、前歯の歯並びが乱れている原因が奥歯の位置にある場合は、全顎矯正が必要になることもあります。治療期間は6ヵ月〜1年程度で、定期的な通院が必要です。治療後も後戻りを防ぐために、リテーナー(保定装置)の使用が推奨されます。

歯1本だけなど軽度な矯正

軽度な歯列不正、例えば歯1本だけがずれている場合にも部分歯列矯正が適用されます。全体的な歯列矯正を行う必要がないため、部分的な治療で十分でしょう。

利点としては、治療が簡単で短期間で済むことが挙げられます。また、装置が少ないため、口内の違和感も少なく、日常生活に支障をきたしにくいです。

ただし、歯1本だけのずれがほかの歯に影響を与えている場合は、部分矯正だけでは不十分なこともあります。治療期間は3〜6ヵ月程度で、定期的な通院が必要です。

すきっ歯

すきっ歯は、歯と歯の間に隙間がある状態を指します。見た目に影響を与えるだけでなく、食べ物が詰まりやすくなるため、口内環境にも影響を与えます。

部分歯列矯正では、すきっ歯を改善するために、歯を移動させて隙間を埋める治療が行われます。短期間で見た目の改善が期待できるうえ、装置が目立ちにくいため、見た目を重視する方にもおすすめです。

ただし、すきっ歯の原因が顎の成長や歯の大きさにある場合は、ほかの治療法が必要になることもあります。治療期間は1年程度で定期的な通院が必要です。

乱杭歯

乱杭歯は、歯が重なり合って生えている状態を指します。見た目に影響を与えるだけでなく、歯磨きがしづらくなるため、むし歯や歯周病のリスクが高まります。

部分歯列矯正では、乱杭歯を改善するために、歯を移動させて整列させる治療が行われます。ただし、乱杭歯の原因が顎の成長や歯の大きさにある場合は、ほかの治療法が必要になることもあります。治療期間は1年程度で、定期的な通院が必要です。

再矯正の場合

歯列矯正を受けたものの、後戻りが生じた場合にも部分歯列矯正が適用されます。後戻りは、リテーナーを適切に使用しなかった場合や、歯の移動が不十分だった場合に起こります。部分矯正では、後戻りした部分のみを対象に再度矯正を行います。

この方法の利点は、再度全顎矯正を行う必要がないため、治療期間が短く、費用も抑えられることです。また、装置が少ないため、口内の違和感も少なく、日常生活に支障をきたしにくいです。治療期間は3〜6ヵ月程度です。

部分歯列矯正の適応が難しいケース

部分歯列矯正の適応が難しいケース

部分歯列矯正は、限定した部位のみを対象とした歯列矯正治療であり、全体的な歯列矯正と比べて短期間で済む傾向にあります。しかし、すべての症例に適応できるわけではありません。ここからは、部分歯列矯正が適応されにくい具体的なケースを詳しく解説します。

治療や改善が必要な場合

部分歯列矯正は、軽度から中等度の歯列不正に対して有効とされていますが、治療や改善が必要な場合には適応が難しいことがあります。

例えば、歯の位置が大きくずれている場合や、歯の回転が必要な場合などです。このような症例では、全体的な歯列矯正が推奨されます。

治療や改善が必要な場合、部分的な治療では歯並び全体のバランスが取れず、結果として噛み合わせや見た目の問題が解決しないことがあります。また、大きな歯の移動には、強い力が必要であり、部分的な装置では対応しきれないこともあります。

治療期間も長くなることが予想され、定期的な通院が必要です。治療後は、後戻りを防ぐためにリテーナーの使用が推奨されます。

顎の骨格に問題がある場合

顎の骨格に問題がある場合、部分歯列矯正では対応できないことがあります。例えば、上顎や下顎の成長が不均衡な場合や、顎の位置が大きくずれている場合です。このような症例では、骨格自体を調整する必要があり、外科手術が必要になることがあります。

骨格に問題がある場合、部分的な歯列矯正では歯の位置を調整するだけでは不十分であり、全体的なバランスが取れないことがあります。また、顎の位置がずれていると、噛み合わせが正常に機能せず、食事や発音に影響を及ぼすことがあります。

治療には、歯列矯正と外科的手術の併用が多く、治療期間も長くなります。治療後は、後戻りを防ぐためにリテーナーの使用が推奨されます。

噛み合わせが悪い場合

噛み合わせが悪い場合、部分歯列矯正では対応できないことがあります。噛み合わせの問題は、歯列全体のバランスに影響を与えるため、部分的な治療では解決しないことがあります。例えば、上下の歯が正しく噛み合わない場合や、噛み合わせが深すぎる場合などです。

噛み合わせが悪いと、食事や発音に支障をきたすだけでなく、顎関節にも負担がかかり、顎関節症のリスクが高まることがあります。また、噛み合わせが正常でないと、歯の磨耗が進みやすくなり、歯の健康にも悪影響を及ぼします。

治療には、全体的な歯列矯正が必要となり、場合によっては外科的手術を併用することがあります。治療後は、後戻りを防ぐためにリテーナーの使用が推奨されます。

部分歯列矯正のメリット

部分歯列矯正のメリット

部分歯列矯正は、限定した部位のみを対象とした治療法であり、全顎歯列矯正と比べてさまざまなメリットがあります。ここからは、部分歯列矯正の主なメリットを詳しく解説します。

費用が安い

部分歯列矯正の大きなメリットの一つは、治療費が全顎歯列矯正に比べて安いことです。全顎歯列矯正では、すべての歯に装置を装着し、長期間にわたって治療を行うため、費用が高額になります。

しかし、部分歯列矯正では、限定した部位のみを対象とするため、装置の数も少なく、治療期間も短くなる傾向にあります。

例えば、前歯部分のみの歯列矯正を行う場合、全顎歯列矯正に比べて治療費が抑えられることがあります。これは、装置の数や調整の回数が少なくなるためです。

また、部分歯列矯正では、取り外し可能なマウスピース型歯列矯正装置の使用が多く、これも費用を抑える要因となります。

費用が安いことは、治療を検討する際の大きなメリットとなりますが、症例によっては部分歯列矯正が適用できない場合もあります。歯科医師と相談し、適切な治療法を選択しましょう。

治療期間が短い

部分歯列矯正のもう一つの大きなメリットは、治療期間が短いことです。全顎歯列矯正では、すべての歯を移動させるため、治療期間が数年にわたります。しかし、部分歯列矯正では、限定した部位のみを対象とするため、治療期間が数ヵ月〜1年程で完了するでしょう。

例えば、前歯部分のみの歯列矯正を行う場合、治療期間が6ヵ月〜1年程度で完了します。これは、移動させる歯の数が少なく、調整の回数も少なくなるためです。

また、治療期間が短いことは、忙しい日常生活を送る方にとって大きなメリットとなります。ただし、症例によっては部分歯列矯正が適用できない場合もあるため、歯科医師との相談が重要です。

負担が少ない

部分歯列矯正は、患者さんにとって負担が少ない治療法です。全顎歯列矯正では、すべての歯に装置を装着し、長期間にわたって治療を行うため、口腔内の違和感や痛みが続くことがあります。

しかし、部分歯列矯正では、限定した部位のみを対象とするため、装置の数も少なく、口腔内の違和感や痛みも軽減されます。例えば、前歯部分のみの歯列矯正を行う場合、装置が前歯に集中するため、奥歯や顎関節にかかる負担が少なくなります。

負担が少ないことは、治療を受ける際の大きなメリットとなりますが、症例によっては部分歯列矯正が適用できない場合もあります。治療を開始する前に、歯科医師と相談し、適切な治療法を選択しましょう。

部分歯列矯正のデメリット

部分歯列矯正のデメリット

部分歯列矯正は、限定した部位のみを対象とした治療法であり、全顎歯列矯正と比べて短期間での治療となる傾向ですが、いくつかデメリットもあります。ここからは、部分歯列矯正のデメリットを詳しく解説します。

適応できる症例が限られている

部分歯列矯正の主なデメリットの一つは、適応できる症例が限られていることです。この治療法は、軽度から中等度の歯列不正に対して有効とされていますが、複雑な症例や全体的な歯列の問題がある場合にはおすすめできません。

例えば、大きな歯の移動が必要な場合や、顎の骨格に問題がある場合には、部分矯正では十分な改善が見込めないことがあります。また、噛み合わせの問題が全体的に存在する場合も、部分的な治療では解決できないことがあります。

このため、治療を検討する際には、歯科医師による詳細な診断が必要です。場合によっては、全顎歯列矯正や外科的処置を含む治療計画が提案されることもあります。適応症例を見極めることが、治療の成功につながります。

抜歯や歯を削る場合がある

部分歯列矯正では、歯を移動させるスペースを確保するために、抜歯や歯を削る処置が必要になる場合があります。これは、特に歯列が密集している場合や、前歯が大きく前に出ている場合に行われることがあります。

抜歯は、主に小臼歯を対象に行われますが、慎重に検討する必要があります。また、歯を削る処置も、健康な歯質を削ることになるので、慎重さが大切です。

歯列矯正の結果を長期的に維持するために歯を削りますが、患者さんにとっては心理的な負担になることもあります。治療前に、処置の必要性や利点、デメリットについて十分に説明を受けましょう。

矯正後の維持が困難

部分歯列矯正後の維持が困難であることも、デメリットの一つです。部分的な治療では、全体的なバランスを考慮した歯の移動が行われないため、治療後に歯が元の位置に戻りやすい傾向があります。

特に、歯列全体の問題が解決されていない場合、歯列矯正した部分にのみ力がかかり、歯が動きやすいです。このため、治療後も長期間にわたってリテーナーの使用が必要になることがあります。

また、部分歯列矯正では、噛み合わせの問題が解決されないことがあります。歯に不均等な力がかかり続け、長期的には歯の位置が変化してしまうおそれもあります。

維持の困難さを軽減するためには、治療後も定期的な歯科検診を受け、必要に応じて調整を行うことが推奨されます。また、適切な口腔衛生管理も継続しましょう。

まとめ

まとめ

ここまで、部分歯列矯正が適応されるケースについてお伝えしてきました。
部分歯列矯正についての要点をまとめると以下のとおりです。

  • 部分歯列矯正が適応されるケースは、前歯の歯並びが気になる場合、軽度な歯列矯正の場合、すきっ歯の場合など
  • 部分歯列矯正のメリットは、治療費が全顎歯列矯正に比べて安いこと、治療期間が短いこと、患者さんにとって負担が少ないことなど
  • 部分歯列矯正のデメリットは、適応できる症例が限られていること、抜歯や歯を削る処置が必要になる場合があること、部分矯正後の維持が困難であることなど

自身にあった治療を受け、歯や口内の健康を維持しましょう。
本記事が少しでもお役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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