前歯のねじれは、見た目だけでなく、口腔の健康にも影響を及ぼす可能性があります。そこで!部分矯正という選択肢があることをご存知でしょうか?本記事では、以下の点を中心に解説します。美しい笑顔と健康な口腔のための第一歩を、この記事とともに踏み出しましょう。
- 前歯がねじれる原因
- 前歯のねじれを放置するリスク
- 部分矯正で前歯のねじれを矯正できるのか
さらに前歯のねじれを治す矯正方法についても解説します。前歯のねじれの部分矯正について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
前歯のねじれとは
歯がねじれて生える現象は「捻転(ねんてん)」と呼ばれ、その具体的な形状によりさらに細分化されます。中切歯(上の歯の中央の歯)が左右対称に逆ハの字にねじれて生える状態は「翼状捻転(よくじょうねんてん)」、逆にハの字状にねじれて生える状態は「相対捻転(そうたいねんてん)」と呼ばれます。
捻転歯(ねんてんし)は、歯が左右いずれかの方向にねじれて生えてしまう状態を指します。ねじれの度合いは歯により異なり、中には180°もねじれて生えるケースも存在します。 前歯だけの捻転であれば部分的な治療が可能な場合もありますが、多くの場合は全体的な矯正が必要となり、長期間に及ぶとされています。
単に歯を動かすだけでなく、歯を回転させる必要があるからです。さらに、歯を動かすためのスペースを確保するためには、複数の歯を動かす必要があり、それも時間がかかる要因となります。
前歯がねじれる原因
なぜ前歯がねじれてしまうのでしょうか?原因を3つ解説します。
顎が小さい
歯がねじれて生える現象は、顎のスペースが不足していることが一因となります。顎が小さい方は歯がきちんと並ぶスペースが足りず、その結果、歯が無理に並べられ、ねじれてしまうことがあります。
また、大人になってから歯がねじれてくる場合、親知らずが一因となることが多いといわれています。親知らずが横向きに生えてくると、ほかの歯を押し出す力が働き、前歯がねじれることがあります。
これらの情報から、歯がねじれる原因は、顎のスペースの不足や親知らずの影響など、複数の要素が複雑に絡み合っていることがわかります。
歯が大きい
歯が大きい場合、前歯のねじれの一因となることがあります。顎の大きさが普通であっても、歯が大きいと、顎が小さい方と同様に、歯が並ぶためのスペースが不足することがあります。その結果、歯が叢生(ガタツキ)したり、捻転(ねじれ)したりする可能性が高まります。
スペースが不足して捻転が生じた場合、前歯を単に回転させるだけでは矯正が難しく、歯並び全体の治療が必要となることが多い傾向です。 また、歯並びがそのまま遺伝するわけではなく、歯の大きさや骨格が遺伝することで、同じような歯並びになることがあります。
したがって、両親や親族の前歯がねじれて生えている場合、同じように前歯がねじれて生える可能性があります。
指しゃぶりなどの癖
指しゃぶりや舌の癖は、前歯がねじれる原因となることがあります。永久歯が生えてきた時点ではねじれていなくても、その後に指しゃぶりや舌で歯を押す癖があると、歯が捻じれたり、歯の隙間が開いたりすることがあります。
また、爪を噛む癖や頬杖をつく癖、猫背なども歯並びに悪影響を及ぼし、噛み合わせが悪くなる可能性があります。 舌の位置も重要で、通常は上顎のスポットという位置にあるのが正常です。しかし、舌の位置がスポットではなく、前歯の後ろにあると、これを「舌癖」と呼び、歯がねじれる原因となることがあります。
これらの悪習慣は、日頃の心がけにより改善できるとされています。したがって、指しゃぶりや舌癖などの悪習慣には注意が必要です。
前歯のねじれを放置するリスク
前歯のねじれを放置するとどのようなリスクがあるのか解説します。
むし歯や歯周病のリスク
歯のねじれがあると、ブラッシングによるケアが十分に行えないため、歯磨きが困難になります。前歯がねじれている場合、その部分の歯ブラシが届きにくくなるため、プラークの除去が不十分になりがちです。この状態を放置すると、プラークが歯石に変化し、むし歯や歯周病の原因となる細菌が増えやすくなります。
前歯のねじれがある場合には、日々の歯磨きだけでなく、フロスや歯間ブラシを使って、隙間や届きにくい箇所の清掃を丁寧に行うことが重要です。また、定期的な歯科診療を受けることで、専門的なケアを受けられ、むし歯や歯周病のリスクを減らせます。
歯並びが悪くなる
前歯に捻転が生じると、その影響で全体の歯並びが悪化する可能性があります。捻転した歯は、周囲の歯との間に不自然なスペースを作り出し、これが隣接する歯に影響を与え、傾斜や移動を引き起こす原因となります。このようにして歯列の左右のバランスが乱れると、次第に全体の歯並びが悪くなってしまいます。
この問題は、見た目にも影響を与え、ときには精神的なストレスを引き起こすことがあります。前歯の捻転は笑顔で目立ちやすいため、自信の低下や対人関係の悩みに繋がることもあるでしょう。そのため、歯並びの問題を放置せず、早めに医師に相談し治療を受けることが重要です。
健康な歯にも負担がかかる
前歯に捻転が生じると、正常な咬む機能が損なわれ、効率良く食べ物を噛み切ることが難しくなります。これにより、捻転した前歯の代わりにほかの健康な歯が食事時の負担を背負うことになり、主に臼歯に不均衡な力がかかり続けることで歯の耐久性に影響が及びます。
この結果、咬合外傷(異常な力による歯の痛みや長期的なダメージ)、歯冠破折(歯の一部が割れたり欠けたりする事態)、歯根破折(歯の根が割れる重大なダメージ)といった問題が発生するリスクが高まります。
前歯のねじれを治療する矯正方法
前歯のねじれを治すための矯正方法を3つ紹介します。
ワイヤー矯正:表側矯正
ワイヤー表側矯正は、一般的によく知られている矯正治療の一種で、歯の表面にブラケットを取り付け、ワイヤーを用いて歯を徐々に動かしていきます。この方法は主に捻転や歯並びの問題を治療するため、多くの矯正治療が求められる場面で採用されています。
ワイヤー矯正の利点は、適応範囲の広さと、歯を動かす速度の速さにあります。これにより、さまざまな複雑な歯並びの問題に対応することが可能で、矯正期間を短縮できるとされています。しかしながら、矯正装置が外から見えやすいために見た目が気になる点、また装置による痛みや不快感が強いことがデメリットとして挙げられます。
ワイヤー矯正:裏側矯正(舌側矯正)
裏側ワイヤー矯正は、ブラケットとワイヤーを歯の裏面に取り付けて行う矯正治療方法です。この技術は、表側に装置を装着する通常の矯正とは異なり、見た目の美観を損なうことなく治療を進められるため、外見に配慮する必要がある成人や社会人におすすめです。
裏側矯正(舌側矯正)の主な利点は、治療中でも矯正装置が目立たないことです。また、多くの複雑な歯並びの問題に対応可能であるため、捻転を含む多様なケースに適用できます。しかし、この方法にはいくつかの欠点も存在します。まず、表側矯正より治療期間が長くなりがちであり、また治療費も高額になる傾向があります。
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正は、透明なマウスピースを使用して歯を段階的に動かす矯正方法で、目立たない装置と、痛みや不快感が少ない点で評価されています。
マウスピース型矯正は、捻転を含む軽度から中度の歯並びの問題に効果的とされていますが、重度の歯並びの問題や奥歯を動かす必要がある場合は、ワイヤー矯正の方が適していることがあります。マウスピース型矯正のデメリットとして、装置の着脱を自己管理する必要があるため、治療の成功は患者さんの管理に依存します。
マウスピース型矯正は日常生活において目立ちにくく、快適性が高いため、社会人や見た目を気にする方に推奨される選択肢です。ただし、治療を進める上での自己管理能力が求められるため、患者さん自身の責任感が成功の鍵となります。
部分矯正で前歯のねじれは改善できるのか
前歯のねじれは部分矯正によって改善が期待できますが、治療が適切かどうかは個々の状況によります。部分矯正は特定の歯、通常は前歯のみを対象に行われるため、軽度の歯のねじれに有効とされています。この方法で歯並びを整えられます。
しかし、全体の噛み合わせに問題がある場合や、歯がねじれる原因がスペース不足によるものである場合は、部分矯正だけでは解決しないことがあります。全体矯正により、適切なスペースを作りながら全体のバランスを整える必要が出てくるかもしれません。
また、部分矯正を行う際には、歯を動かすことによってほかの歯に影響を与えないよう慎重な計画が必要です。無理に歯を動かしてしまうと、出っ歯になるリスクも考慮する必要があります。
部分矯正で前歯のねじれを改善する方法
部分矯正で前歯のねじれを治すときの流れを解説します。
1.ディスキング・IPRでスペースを作る
部分矯正を行う際、限られた範囲の歯を整列させるためには、十分なスペースが必要です。スペースを確保する1つの方法として、IPR(インタープロキシマルリダクション)と呼ばれる処置があります。IPRは、隣接する歯の間に微細なスペースを作るために、歯の表面を軽く削る技術です。
この処置により、歯のエナメル質を約0.5mmまで削り、必要なスペースを作り出します。エナメル質の厚みは2〜3mmであるため、軽度の削減は大丈夫な範囲内です。IPRは歯を削るわけではなく、ヤスリをかけるような感覚で表面を滑らかにすることにより、歯列矯正中の歯の動きを助け、より適した歯並びの改善が期待できます。
2.矯正装置をつける
ワイヤー矯正は長い歴史を持つ治療法で、広範囲の矯正が必要な場合に適しています。前歯の8本にブラケットを取り付け、ワイヤーを通じて力を加えることで歯を徐々に移動させます。装置は固定式であり、治療期間中は常に装着している必要がありますが、そのため自己管理の手間が少ないというメリットがあります。
ただし、装置が目立つ点や、食事や歯磨きがしにくくなるデメリットも存在します。見た目を気にする場合は、歯の裏側に装置を装着する裏側矯正(舌側矯正)が選択肢として挙げられます。
一方、マウスピース型矯正は半透明のプラスチック製装置を使用し、その目立ちにくさが利点です。また、金属アレルギーの心配がなく、自分で着脱できるため、食事や歯磨きの際に装置を外せます。
しかし、治療の効果を保つためには一日20時間以上の装着が求められ、自己管理が重要になります。装着時間が守られない場合、治療の遅延やマウスピースの作り直しが必要になることもあります。
3.保定
歯列矯正治療が終了した後、美しい歯並びを維持するためには、保定装置の使用が不可欠です。保定装置は、リテーナーとも呼ばれ、歯列矯正によって移動した歯が元の位置に戻るのを防ぎ、新しい位置に歯を安定させる役割を果たします。
保定装置には主に2つのタイプがあります。1つ目は透明なプラスチック製で、自分で着脱できるタイプです。このリテーナーは使いやすく、目立ちにくいため、日常生活においても支障をきたすことなく使用できます。もう1つのタイプは、ワイヤーで作られた固定式リテーナーで、歯の裏側に接着剤で固定されます。このタイプは常に装着されているため、自己管理が不要であり、歯が動くリスクをより防ぎます。ただし歯石がつきやすい方は定期的な除石(スケーリング)などの定期的な口腔管理が必要です。
歯列矯正治療が完了しても、リテーナーの着用は歯科医の指示に従って継続することが重要です。治療後の歯の安定には時間がかかるため、適切な期間リテーナーを使うことで、長期にわたり健康的で美しい歯並びを保てます。歯並びが元に戻るのを防ぐためにも、リテーナーの正しい使用と継続がキーとなります。
まとめ
ここまで前歯のねじれの部分矯正についてお伝えしてきました。前歯のねじれの部分矯正の要点をまとめると以下の通りです。
- 前歯のねじれは、顎の小ささや歯の大きさ、癖(指しゃぶりや舌の位置)によるもので、顎が狭いと親知らずの影響で前歯がねじれることがあり、大きな歯や癖も前歯のねじれに影響する
- 前歯のねじれは歯磨きを困難にし、むし歯や歯周病のリスクを高める。また、全体の歯並びに悪影響を及ぼし、健康な歯にも負担がかかるため、専門的な治療が必要
- 前歯のねじれは部分矯正で改善が期待できるが、全体の噛み合わせ問題やスペース不足が原因の場合は全体矯正が必要。部分矯正は慎重な計画が必要で、無理な動かし方には出っ歯のリスクにもなる
矯正治療を行う際は、慎重な計画と専門的なケアが必要です。無理な歯の動かし方にはリスクも伴うため、医師の診断と適切な治療計画のもとで治療を進めることが重要です。
この記事が前歯のねじれに関する理解を深め、適切な対処への一助となれば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。