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歯列矯正失敗の原因となる歯根吸収とは?症状と対処法などを解説

歯列矯正失敗の原因となる歯根吸収とは?症状と対処法などを解説

歯列矯正失敗の原因としてはいくつか挙げられますがそのなかでも歯根吸収は、患者さんにとってイメージしにくい症状かと思います。そもそも歯根は口腔内に露出しておらず、歯科医院でレントゲンを撮影しなければ確認することができないため、吸収しているかどうかもわかりません。ここではそんな歯列矯正失敗の原因となる歯根吸収の症状や対処法を解説します。歯列矯正による歯根吸収を予防する方法もあわせて紹介します。

歯列矯正失敗の原因となる歯根吸収とは

歯列矯正失敗の原因となる歯根吸収とは はじめに、歯列矯正で起こりうる歯根吸収の基本事項を確認しましょう。

歯根吸収とは何ですか?
歯の根っこの部分である歯根が溶けて短くなる現象です。私たちの歯は、歯の頭の部分である歯冠(しかん)と根っこの部分である歯根にわかれており、後者は歯茎と顎の骨のなかに埋まっています。歯列矯正では、顎の骨のなかでいろいろな細胞が活発に活動し、さまざまな反応を引き起こすため、歯根が溶けるという現象が起こる場合もあるのです。歯列矯正における歯根吸収は、以下の原因が考えられます。

◎過剰な矯正力

歯を適切に動かすためには、適度な矯正力をかけなければなりません。矯正力が弱すぎても強すぎても適切に動かないのが私たちの歯なのです。このときに強すぎる矯正力をかけると、歯に大きな負担がかかり、周囲の細胞の活動も過剰となることで、歯根吸収が起こることがあります。

◎ジグリング

ジグリングは、前後や左右など歯を揺らすような形で矯正力を働かせることを意味し、歯根に想定以上の負担をかけるおそれが出てきます。

◎歯の移動距離が長い

抜歯をして歯を大きく移動させるようなケースでは、強い矯正力がかかりやすいです。歯を動かす期間も長くなることから、歯根吸収のリスクが高まります。

これらはあくまで歯根吸収のリスクを高める要因でしかありません。そのため歯列矯正で歯根吸収が起こるかどうかは、患者さんのもともとの歯の性質や矯正治療の方法、歯科医師の技術によっても大きく変わります。ちなみに、歯列矯正における軽度の歯根吸収は、ほとんどのケースで見られます。

歯根吸収が起こるとどのような症状がありますか?
歯根吸収に伴う症状は、重症度によって異なります。軽度から中等度の歯根吸収では、自覚症状が現れることはほとんどありません。レントゲン撮影を行って、歯根がやや短くなったと感じる程度にとどまります。重度の歯根吸収では、歯の安定性が低下することから、硬い食べ物が噛みにくくなったり、舌や指で圧力をかけると、グラグラしたりする症状が見られます。重症化したケースでは、歯が抜けやすくなります。
歯根吸収が起きると歯列矯正が失敗する理由を教えてください
歯根吸収は、歯列矯正に伴う一般的な副作用なので、歯の根っこが溶けた時点で治療が失敗するということはありません。歯根吸収で歯列矯正が失敗するのは、あくまで重症例に限られます。重症度の高い歯根吸収では、歯の根が短くなり、安定性も低下して、歯を移動させることが困難となります。歯根吸収で歯が抜けた場合は、いうまでもなく歯列矯正が失敗します。
歯列矯正の治療期間と歯根吸収の発生リスクには関連性がありますか?
この2つには関連性があると考えられています。なぜなら歯列矯正の治療期間が長くなる程、歯にかかる負担も蓄積していくからです。また、歯列矯正の治療期間が長いということは、抜歯が必要であったり、複雑な歯並びであったりする可能性が高く、上段で解説した過剰な矯正力やジグリング、歯の移動距離が長いなどの悪条件もそろうことが多くなります。その結果、歯列矯正における歯根吸収の発生リスクも高くなるといえます。

歯列矯正中の歯根吸収を予防する方法

歯根吸収は、歯列矯正失敗の原因ともなりえることから、可能な限り予防したいものです。ただ、歯列矯正における歯根吸収を完全に予防するのは困難なので、早期発見する方法もあわせて知っておく必要があります。

歯根吸収を早期発見するためのセルフチェックの方法を教えてください
早期の歯根吸収を患者さんが日常生活のなかで発見することは不可能なので、その予兆となるような症状に着目することが大切です。例えば、普段よりも極端に強い痛みが生じている場合は、不適切な矯正力がかかっている可能性も否定できません。もちろん、歯列矯正に伴う痛みは、歯並びや治療の段階、患者さんの体調などによって大きく変化するため、「普段よりも痛い」というだけで歯根吸収が起こっているとは限りません。その症状が長く続いたり、日常生活に支障をきたしたりするようであれば、主治医に相談しましょう。つまり、歯根吸収を早期発見するためには、患者さんが歯列矯正の痛みを日々、分析することが重要となります。また、矯正装置の状態も毎日しっかりと観察していきましょう。例えばワイヤーの脱離や変形は、歯に過剰な力をかける原因となります。
歯根吸収を防ぐために生活習慣で注意すべきことはありますか?
歯に過剰な力をかける生活習慣は控えるようにしてください。まず、ナッツ類やおせんべい、フランスパンなどを歯が動いているときに噛むと、強い痛みが生じます。これは歯に対して過剰な負担を強いていることを意味します。

歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖も歯に対して大きな圧力をかけるため、十分な注意が必要です。ただし、歯ぎしり・食いしばりは患者さん自身で完全にコントロールすることは難しいので、必要があれば歯科医院で治療を受けましょう。歯ぎしり・食いしばりを改善する方法にはいくつかの選択肢があり、歯列矯正中であっても行えることから、まずは歯科医師に相談することが大切です。ちなみに、歯ぎしり・食いしばりは、ストレスや睡眠不足、疲労などが誘因となりやすく、乱れた生活習慣を正すことで改善が見込める可能性もあります。

歯列矯正中に起こる歯根吸収の対処法

歯列矯正中に起こる歯根吸収の対処法 最後に、歯列矯正が原因で起こった歯根吸収への対処方法を解説します。

歯根吸収が生じた場合でも歯列矯正は続けられますか?
基本的には続けられます。歯列矯正における歯根吸収はほとんどのケースで見られ、治療に支障をきたすことは稀です。そもそもレントゲン撮影を行わない限り、軽度から中等度の歯根吸収は確認できないため、歯列矯正が続けられなくなるということはまずないでしょう。もちろん、知識や経験が豊富な歯科医師であれば、レントゲン撮影を行わずとも、歯根吸収の発生を推測することは可能ですが、一般的にはそのまま矯正治療を続けていきます。ただし、歯根吸収が進行して重症化した場合は話が変わります。そのときの対処法は後段で解説します。
歯根吸収が進行してしまった際の対処法を教えてください
歯根吸収が著しく進行したケースでは、矯正治療を中断することがあります。矯正治療をそのまま続けると、歯並びを治すどころか大切な天然歯を失うリスクが生じるからです。一度、吸収した歯根がもとに戻ることはないので、矯正治療を中断している間に状況が改善される可能性も低いです。そのため重度の歯根吸収の対処法では、歯列矯正をやめるという選択肢も当然でてきます。もうすでに歯の動揺が大きく、保存が不可能と判断した場合は、抜歯をしてインプラントや入れ歯、ブリッジなどの補綴治療も検討しなければなりません。歯根吸収を起こした歯の部位や患者さんの歯並びの状態によっては、抜歯をしたうえで治療計画を立て直し、歯列矯正を再開するという選択肢も考えらえます。

編集部まとめ

今回は、歯列矯正失敗の原因となる歯根吸収の症状や対処法、予防方法などについて解説しました。歯の根っこが溶ける歯根吸収は、歯列矯正におけるほぼすべてのケースで起こりうる副作用ですが、大半は軽度にとどまるため、経過を見るだけで済みます。ごく稀に重度の歯根吸収を起こして矯正治療を中断したり、抜歯を余儀なくされたりすることもあるため、予防するに越したことはありません。そんな歯列矯正における歯根吸収が気になったら、まずは主治医に相談しましょう。必要に応じてレントゲン撮影などを行って、現在の状態などを正確に診断してくれるかと思います。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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