ワイヤー矯正

歯列矯正中に歯肉炎が起きやすい理由とは?原因と治療方法、予防方法を解説

歯列矯正中に歯肉炎が起きやすい理由とは?原因と治療方法、予防方法を解説

悪い歯並びを整える歯列矯正では、歯茎が腫れる歯肉炎(しにくえん)の症状が起こりやすいです。歯並びの治療をしているのになぜ歯茎が赤く腫れるのか。矯正治療中に歯肉炎になるとどのようなリスクが生じるのかなど、疑問に感じることもあるでしょう。ここではそんな歯列矯正中に歯肉炎が起きやすい原因や治療方法、予防方法について詳しく解説します。矯正治療を無事に終えるためにも、矯正治療中の歯肉炎の正しい知識を身に付けておきましょう。

矯正治療中に歯肉炎が起きる原因

矯正治療中に歯肉炎が起きる原因 歯肉炎とは、歯茎に炎症や出血が生じる病気で、いわゆる歯周病のひとつの病態です。炎症反応が歯茎だけにとどまっているため、歯周病のなかでも軽度に分類されますが、なぜ矯正治療中に起こりやすいのか。その原因から解説します。

歯肉炎が矯正装置周辺で起こりやすいのはなぜですか?
矯正装置周辺は、歯磨きがしにくく、汚れがたまりやすくなっています。とりわけワイヤーとマルチブラケットを使うワイヤー矯正は、装置がとても複雑な構造をしていることから、清掃性が極めて悪くなります。その結果、歯垢や歯石が堆積して、歯周病の一種である歯肉炎を発症してしまうのです。ちなみに、透明な樹脂製のマウスピースを使うマウスピース型矯正もマルチブラケット装置ほどではありませんが、装置の周りに汚れがたまりやすく、歯肉炎が起こりやすくなっています。
矯正器具は歯茎にどのような影響を与えますか?
矯正器具は、装置の形態や歯並び・噛み合わせの状態によっては、歯肉を物理的に刺激することがあります。例えば、デコボコの歯並びである叢生(そうせい)では、個々の歯が大きく傾斜していることがあるため、そこにバンドやブラケット、ワイヤーを装着すると歯茎に刺激を与えて炎症反応をもたらすことがあります。また、噛み合わせが深い過蓋咬合(かがいこうごう)でも、上下の歯や歯茎に矯正器具が刺激を与えることも珍しくありません。稀なケースではありますが、金属製のワイヤーやブラケットが歯茎に金属アレルギーを引き起こして、歯肉炎のような症状を引き起こすことも考えられるでしょう。

歯列矯正中の歯肉炎と健康への影響

次に、歯列矯正中の歯肉炎がお口や身体の健康にどのような影響をもたらすのかについて解説します。

歯列矯正中のストレスは歯肉炎に関係しますか?
歯列矯正中にストレスや疲れがたまったり、睡眠時間が不足したりすると、歯肉炎の症状が現れやすくなります。これらは全身の免疫力を下げることにつながるため、細菌感染症である歯肉炎のリスクがその分だけ上昇するのです。普段どおりに歯磨きをして、口腔衛生状態にも大きな変化が見られないにも関わらず、歯肉炎になりやすくなっている場合は、ストレスや疲れがたまっているのかもしれません。
歯肉炎を放置すると全身にどのような影響があるか教えてください
歯肉炎を放置していると、やがては歯周炎へと進行します。歯周炎では、歯茎や顎の骨が破壊されていくため、顎骨の状態が健全でなければならない歯列矯正においては、絶対に避けなければならない病気といえます。歯周炎で顎骨がボロボロになれば、歯が正常に動かず、歯列矯正自体を中断しなければならなくなる可能性もあるのです。

また、進行した歯周病では、誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)、糖尿病、脳梗塞、心臓血管疾患、骨粗鬆症(こつそしょうしょう)、関節リウマチ、アルツハイマー型認知症のリスクが高くなることがわかっています。いずれも深刻な全身の病気で、ケースによっては命に関わるような症状にまで発展しかねないことから、十分な注意が必要といえます。

矯正治療中における歯肉炎の予防方法と治療方法を防ぐセルフケア方法

矯正治療中における歯肉炎の予防方法と治療方法を防ぐセルフケア方法 ここでは、矯正治療中の歯肉炎を予防する方法と治療する方法について解説します。

食生活や習慣は歯肉炎に影響を与えますか?
歯周病は、生活習慣病の一種と考えられているため、食生活や習慣が歯肉炎に影響を与える可能性は十分に考えられます。具体的には、以下に挙げるような生活習慣が歯肉炎のリスクを高めたり、症状を悪化させたりします。

◎栄養が偏った食生活

歯茎はコラーゲンで構成されているため、その材料となるビタミンCが不足すると歯肉炎の症状が悪化しやすいです。ビタミンAは歯茎を保護する役割を果たすことから、その摂取量の不足も避けたいところです。あまり噛まずに飲み込めるものばかり食べていると、唾液の分泌量が減って、口内環境が悪くなるので、適度に硬く、咀嚼回数が多くなるような食品を選ぶことが歯肉炎予防にも重要といえます。

◎喫煙習慣

喫煙は、歯周病のリスクファクターです。タバコの煙に含まれるニコチンや一酸化炭素は、歯茎の血流を悪くし、酸素や栄養素、免疫細胞の供給を滞らせます。その結果、歯周病菌への抵抗力も低下して、歯肉炎になりやすくなるのです。また、喫煙習慣は、歯列矯正における歯の動きも悪くすることから、歯並びの治療を受けている方は基本的に禁煙した方がよいといえます。

◎飲酒

お酒には、利尿作用があるため、飲酒が習慣化している人は口内乾燥に悩まされやすいです。自浄作用や殺菌作用、緩衝作用などが期待できる唾液の機能が低下すると、歯周病菌をはじめとした口腔内細菌が活発に活動し、その一環として歯肉炎の症状も悪化することがあります。

◎歯ぎしり・食いしばり

矯正治療中は、装置によるストレスや噛み合わせが不安定になることなどで、歯ぎしり・食いしばりが現れやすくなります。歯ぎしり・食いしばりは、歯と歯茎、顎の骨にとても大きな負担を強いることになるため、歯肉炎のリスクを高める場合もあるのです。

矯正器具をつけたまま歯肉炎を予防する方法を教えてください。
矯正器具をつけたまま歯肉炎を予防する場合は、まず口腔ケアを徹底する必要があります。毎食後に歯磨きをすることはもちろん、矯正器具の周りに食べカスや歯垢が残らないよう、工夫を凝らしながら歯磨きやフロッシングをしなければなりません。それでもやはり矯正治療中は、セルフケアだけでプラークコントロールすることは不可能に近いので、歯科医院でのメンテナンスも定期的に受けていきましょう。矯正歯科によっては、毎回の調整の度にクリーニングを行ってくれるところもありますが、そうではない歯科医院も少なくありません。後者の場合は、自発的に歯科医院を受診して、メンテナンスを受けるようにしてください。

それに加えて、矯正器具に残りにくい食生活を心がけることも大切です。繊維質の食べ物や粘着性の高いお菓子などは、口腔ケアを行っても矯正器具に残り続けることが多く、歯肉炎の原因となりやすいです。そのため矯正治療中は、唾液による自浄作用や歯磨きで容易に取り除けるような性状の食品を選ぶようにしてください。その他、喫煙習慣やお酒を飲む習慣、歯ぎしり・食いしばりをする癖がある場合は、それらを取り除くよう努力しましょう。

歯科医院では歯肉炎に対してどのような治療を行いますか?
歯肉炎に対しては、プラークコントロールを目的とした歯周基本治療を行います。歯周病菌の温床となる歯垢や歯石を取り除き、患者さんに正しい口腔ケア方法を身に付けてもらうことで、歯茎も改善されていきます。歯肉炎の段階であれば、短い期間で治すことができるため、歯茎の腫れや出血が認められた時点で歯科を受診しましょう。
定期的な歯科検診を受けることで歯肉炎対策になりますか?
歯科の定期検診では、歯のクリーニングやスケーリング(歯石除去)に加えて、歯磨き指導も受けられるため、むし歯予防だけでなく、歯肉炎対策にもつながります。特に矯正治療中は装置の周りに汚れがたまりやすくなることから、定期的な歯科検診の受診が歯肉炎対策に大きな効果を発揮することでしょう。

編集部まとめ

今回は、歯列矯正中に歯肉炎が起きやすい原因と治療方法、予防方法について解説しました。歯列矯正中は、装置による影響で汚れがたまりやすく、歯肉炎のリスクが高くなっているため、十分に注意しましょう。歯列矯正を成功させるためにも、歯肉炎の症状が認められたら、できるだけ早く歯科で歯周病治療を受けるようにしてください。また、歯列矯正中も歯科検診を定期的に受けて、歯肉炎の予防に努めることも大切です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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