歯列矯正治療における手術とは、どのようなものなのでしょうか? 本記事では、歯列矯正治療における手術について、以下の点を中心にご紹介します。
- 歯列矯正治療における手術とは
- 歯列矯正治療における手術の流れ
- 歯列矯正治療における手術のリスク
歯列矯正治療における手術について理解するためにも、ご参考いただけると幸いです。 ぜひ最後までお読みください。
歯列矯正治療における手術について
- 歯列矯正治療の手術とはどのようなものですか?
- 歯列矯正治療における手術は、顎外科手術と呼ばれ、顎の骨の手術を行い噛み合わせを改善させる治療のことを指します。 上・下顎の骨の位置がずれていたり、顎の骨の大きさやバランスが悪かったりする場合に、歯列矯正治療だけでは改善が困難であるため、外科的矯正治療が行われます。
- 歯列矯正治療の手術の流れを教えてください
- 外科的矯正治療における流れを以下で解説します。
- 初診相談: まず歯科医院を受診し、現在の歯並びの問題点やそれに対する治療法の説明を受けます。
- 検査: 問診や視診だけでなく、レントゲンや顔貌及び口腔内写真撮影、歯列石膏模型の作成など必要な検査を受けます。 また、2回目の検査において、顎の運動検査や顎の筋肉の節電図をとることもあります。
- 診断: 現在の歯並びに対応する治療方針が立てられ、外科的矯正治療を行うかどうか相談します。 保護者や配偶者などが同伴することもあります。
- 口腔外科の受診: 外科的矯正治療を受けるとなった場合、手術を担当する口腔外科を受診します。 歯科医院が立てた治療方針を口腔外科医が確認した上で、詳しい手術の手順や注意点などの説明をしてもらいます。 また、必要な場合はCTなどの検査や、親知らずの抜歯なども行われます。
- 術前矯正治療: 顎の手術をした後に噛み合わせが整うよう、マルチブラケット装置を使って歯を並べます。 術前矯正治療は月1回、10〜24ヶ月程度継続して行われます。
- 手術日程決定: 口腔外科を再度受診し、心電図や血液検査、尿検査、胸部レントゲンなどの術前検査を受けます。 また術中の出血に備え、自分の血液を採取し貯めておく自己血貯血などの処置を行うこともあり、数回通院が必要となります。
- 入院・手術: 手術の前日から入院し、手術します。 入院期間は、手術法や患者さんの回復状態によって異なりますが、通常1~2週間、早くて約5日と言われています。
- 術後矯正: 手術によって移動させた顎の骨は、筋肉などに引っ張られ後戻りが生じることがあります。 後戻りを防ぎつつ、噛み合わせを安定させるために行われるのが術後矯正治療です。 上下の矯正装置にゴムをかけ、噛み合わせを微調整します。 術後矯正治療は、月1回行われ、6ヶ月〜1.5年前後継続します。
- 保定・観察: 噛み合わせが安定し、顎の骨も後戻りしなくなったのち、矯正装置を外し、自身で取り外し可能な保定装置をつけて経過観察します。 保定は2〜3ヶ月に1回通院し、2~3年間かけて観察します。
- 歯列矯正で手術が必要な場合とはどのようなケースですか?
- 外科的矯正歯科治療は、下記の場合に必要とされています。
- 下顎前突症
- 上顎前突症
- 顔面非対称
これらの顎の骨の異常は、咀嚼や嚥下、発音、呼吸などの機能面に障害を引き起こす可能性があり、また笑うと歯茎が目立つなど審美的な面でも障害を感じる場合があります。 顎の骨に異常がある場合は、通常の歯列矯正治療だけでは治療することは難しいため、外科的矯正治療をすることがあります。
- 歯列矯正治療で手術が必要な場合、入院期間はどのくらいですか?
- 手術法や患者さんの回復状態によって異なりますが、一般的には術後1週間〜10日前後と言われています。 手術の前日から入院することが多く、術後は鼻に挿入したチューブから流動食を摂取しながら、1週間後に抜糸をし、食事指導などが行われます。
歯列矯正治療の手術費用について
- 歯列矯正治療の手術費用はどのくらいですか?
- 手術費用は、保険が適用されるかどうかや、症例、矯正治療の内容や期間、手術の内容、入院日数などにより変動します。 一般的には、矯正治療で平均30万前後、手術費用で平均20〜50万円前後と言われていますが、高額医療制度が適用になる場合があります。 自身が手術をするとなった場合、保険適用の有無や発生する費用について歯科医師に確認しましょう。
- 外科的矯正治療の手術にリスクはありますか?
- 顎外科手術には、以下のようなリスクがあります。
- 合併症: 顎外科手術は全身麻酔をした上で行われます。 そのため合併症がおこる可能性があり、合併症は主に吐き気や悪寒などの症状がみられ、人工呼吸器を装着することによる喉の痛みがおこる場合もあります。 また、全身麻酔の薬に対してアレルギー反応がおこる場合は、発疹や咳が生じる可能性もあります。
- 知覚麻痺: 手術の中で下顎神経が損傷し、知覚麻痺が残る可能性があります。 知覚麻痺は、感覚神経に障害が生じている状態であり、痺れがでたり口が開かなかったりする場合があります。 ただ、知覚麻痺があらわれたとしても、時間が経過することで自然と症状がなくなることもあると言われています。
- 外科的矯正治療の手術に保険は適用されますか?
- 不正咬合の改善のために手術を併用する外科的矯正治療(顎変形症)と診断された場合には、顎外科手術に保険は適用されます。 ただし審美目的(美容整形)の場合には保険は適用されません。条件を満たし、歯科医師が手術が必要と診断した症例である場合は、保険適用のもと歯列矯正治療を受けられます。 自身が保険適用の条件に適応した疾患があるか、どの医療機関で治療を受けられるかなどを事前に調べておきましょう。
- 顎外科手術に高額療養費制度は適用できますか?
- 高額療養費制度とは、医療費における自己負担額が高額になる場合、月初から月末まで一定の金額を超えた分が還付される制度です。 高額医療費制度が適用できるのは、歯列矯正治療の中でも保険が適用される症例のみとされています。 自己負担の上限額がどのくらいの金額になるかは、居住地域や収入、年齢などによっても変動するため、予め厚生労働省のホームページを確認しておきましょう。
編集部まとめ
ここまで、歯列矯正治療における手術についてお伝えしてきました。 歯列矯正治療における手術の要点をまとめると、以下の通りです。
- 歯列矯正治療における手術は、外科的矯正治療と呼ばれ、顎の骨の手術をし、噛み合わせを改善させる治療のことである
- 歯列矯正治療における手術は、初診相談、検査、診断、口腔外科の受診、術前矯正治療、手術日程決定、入院・手術、術後矯正、保定・観察という流れで行われる
- 外科的矯正治療における手術には、合併症や知覚麻痺などのリスクが考えられる
これらの情報が、少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただき、ありがとうございました。