歯列矯正を始めたり、装置の調整を行ったりした際に歯が痛むことがあります。痛みが出た場合の食事ではどういうことに気を付けたらよいのでしょうか。
また歯列矯正中に避けるべき食べ物はどういったものでしょうか。このような疑問を解消するために以下の内容を解説します。
- 調理方法や食べ方のコツ
- 避けるべき食べ物
- 食事制限はあるのか
また、歯列矯正中の方でも食べやすく、歯への負担が少ない料理も紹介します。
歯列矯正を終えるまでには長い期間を要します。そのなかで発生する装置や口腔内のトラブルのリスクを極力抑える手段を解説しますので、今後に役立てていただければ幸いです。
歯列矯正中の食事や調理のコツ
- 歯列矯正中の食事のコツを教えてください。
- 歯列矯正を始めたり、装置の調整を行ったりした場合、食べ物を噛む際に痛みを感じてしまうことがあります。こういった場合に有効な食事方法・調理方法がありますので解説します。食事方法や調理方法のコツや内容によっては痛みに対する対処だけでなく、健康面にとってのメリットにもつながりますので参考にしていただければ幸いです。
歯列矯正の痛みは、装置が歯を移動させようとする力を伝えていることが原因です。そのため歯に痛みを感じたり、圧迫感を自覚したりしてしまいます。また、この力を常に受け続けている歯は刺激に敏感になっています。前歯で噛まず、奥歯でゆっくりか強く噛むようにしましょう。
食べ物のサイズはなるべく細かく切って食べるようにすると、歯の負担が減るため痛みが軽減されます。また、よく噛むことは以下のようなメリットにもつながります。- 満腹中枢を刺激し食べ過ぎることを防ぐ
- 唾液が十分に分泌され口腔内の衛生が保たれる
- 食べ物が細かく咀嚼され消化効率が上がる
唾液は弱アルカリ性のため、食べ物を食べた後に酸性化することを防ぎ、歯が溶けないようにします。歯の表層に発生する初期状態のむし歯を修復できる成分もあることからむし歯予防につながるのです。
さらに唾液中のリゾチームやペルオキシダーゼには殺菌効果があり、粘性のムチンは粘膜を細菌やウイルスから守ります。これにより衛生を保ち、ブラケット矯正のデメリットとなる口腔内環境のトラブルを減らすことが可能です。また、消化器官では消化液の分泌が抑えられるため負担を軽減できます。
- 歯列矯正中の食事を調理する際のコツを教えてください。
- 調理をする際のコツは具材をやわらかくすることに加えて細かくすることです。具体的な方法は以下の2つです。
- 食べ物を細かく切る
- フォークでほぐす
これにより少ない力で噛みやすくなり、歯への負担を減らすことができます。また、食べ物を細かくすることでブラケットに食べ物が詰まりにくくなります。これによって装置が故障してしまうリスクを回避することが可能です。また前述のとおり、口腔内の衛生を保ったり、消化器官の負担を減らしたりできるメリットをもたらしやすくなります。
- 歯列矯正中に外食をする場合の注意点はありますか?
- ブラケット・ワイヤーの破損につながりやすいもの、色素沈着をおこしやすいものが扱われている食材は避けるべきです。グルメサイトで事前に料理メニューを確認し、歯の痛みの状態を鑑みて食べられそうな料理を選ぶことをおすすめします。料理店によっては調理方法を調整してくれる場合があるため、相談しましょう。また、ほかの方と食事に行く場合は、自分の治療状況を説明し理解してもらうことも大切です。
歯列矯正中におすすめの食べ物や注意点
- 歯列矯正中におすすめの食べ物を教えてください。
- やわらかいものを食べるようにするのがおすすめです。特に歯列矯正を始めた初期は痛みを伴い食べ物が噛みにくいため、歯に負担がかからない物を食べるのがおすすめです。
具体的にどのようなものを食べればよいのかを主食・主菜・副菜・デザートに分けて紹介します。- 主食:うどん・パスタといった麺類やお粥
- 主菜:煮魚や蒸し魚・鶏肉のソテー・ハンバーグ・卵焼き・茶碗蒸し
- 副菜:温野菜・豆腐・スープ
- デザート:ヨーグルト・プリン・ゼリー・スムージー・アイスクリーム
主食はのどごしのよい温かい麺類や、お粥といった痛みが強くて噛めなくても食べられるものがおすすめです。主菜や副菜でタンパク質やカルシウムといった歯に必要な栄養分を摂りましょう。鶏肉は細かく切ったり、フォークでほぐすことをおすすめします。スープでは火の通った野菜、魚介系といった具材を使ったものがよいでしょう。デザートのアイスクリームは低温のため、歯の痛みを軽減できる効果を期待できます。
- 歯列矯正中に避けた方がよい食べ物はありますか?
- 避けた方がよい食べ物は以下の3種類です。
- 硬いもの
- 粘着するもの
- 繊維質のもの
硬いものは歯列矯正に使用されるブラケットやワイヤーを破損・変形させてしまう恐れがあります。ガムやソフトキャンディーなどの粘着する食べ物も破損につながる可能性があります。繊維質の食べ物も装置と歯の間に詰まる原因となるため、これらの食べ物は避けるべきです。ブラケットやワイヤーには食べ物の残りがつきやすいため入念な歯磨きが装置を守るうえで必要になります。
- 歯列矯正中に避けた方がよい飲み物はありますか?
- コーヒー・赤ワイン・その他色の濃い飲み物は避けましょう。ブラケットやワイヤーをとめるエラスティックリガチャーや、歯を移動させるためのエラスティックモジュールといったパーツは透明です。そのためこれらの飲料によって変色してしまう可能性があります。マウスピース型矯正を行っている場合は、マウスピースが変色してしまうため取外して飲むようにしましょう。
- 歯列矯正中の食事の注意点を教えてください。
- マウスピース型矯正を行っている場合、食事をするときは装置を取り外しましょう。理由は食べ物・飲み物によってマウスピースが破損・変色するリスクがあるからです。ブラケット矯正を行っている場合、先述の内容をもとに食事制限を守ることで装置の破損・口腔内トラブルを回避できます。
歯列矯正中の食事による痛みや食事制限
- 歯列矯正による食事中の痛みはいつまで続きますか?
- 歯科矯正を始めたときや、装置の調整を行った場合に痛みを感じることがあります。しかし永続的に続くわけではなく、基本的には2日ほどで痛みが消えます。
- 痛みが強くて食事ができない場合の対処法を教えてください。
- 歯列矯正装置により発生する痛みの度合いには個人差があります。人によって痛みが強く出る可能性もあります。
その対処法として、まず前述の歯に刺激をなるべく与えない食事を摂ることから始めましょう。それでも痛みが強い場合の対処として鎮痛剤の服用があります。しかし鎮痛剤には胃粘膜を荒らしてしまう物もあるため、服用を常態化させた分だけ胃の負担につながります。
マウスピース型矯正の場合でやってはいけない対処方法は、自己判断でマウスピースを外してしまうことです。1日に20~22時間は装着していなければ効果は得られないため、食事や歯磨きなどの必要以外のタイミングで外す時間が増えると治療期間が長引いたり、後戻りしたりするリスクがあります。
- 歯列矯正中に食事が制限されることはありますか?
- マウスピース型矯正を行っている方はマウスピースを外して食べることができるため、食事制限はないです。ブラケット矯正も食事制限はないのですが、前述のとおり硬いもの・粘着するもの・繊維が豊富なものは装置に悪影響を及ぼす可能性があります。それが原因で装置が破損してしまったり、歯列矯正自体に支障をきたしたりするリスクがあります。そのためなるべく避けることが好ましいです。
編集部まとめ
歯列矯正の痛みは装置によって歯を移動させる力を受けていることが原因で引き起こされています。痛みは2日ほどで治まることがほとんどです。
痛みは歯列矯正を始めたときや、装置を調整したときに発生し、歯に刺激が加わることで増強します。
そのため、食材を調理する際はよく切って細かくしたり、ほぐしたりすることが重要です。 歯列矯正に食事制限はありません。しかし、硬いもの・粘着質のもの・繊維が豊富なものはブラケットやワイヤーの破損の原因につながります。なるべく避けて調理することが望ましいです。
食事方法のコツはゆっくりよく噛んで食べることです。これにより唾液の分泌が促され、口腔内の衛生が保たれます。また、食べ過ぎ防止、消化器官の負担が減るメリットもあります。
参考文献