歯並びを治す方法としては、歯列矯正が一般的です。歯列矯正を行うことで、口腔内の機能向上はもちろんのこと、外見も大きく改善されるケースが多いでしょう。
歯列矯正により、顔の印象が変化し、小顔効果を感じるかもしれません。歯並びが悪い方は、歯列矯正をすることで、顔がすっきりとしてきれいになる可能性があります。
今回は、歯列矯正を行うことで小顔になるのか、また効果のあるケースや費用の相場について解説します。
歯列矯正で小顔になる?
歯列矯正をすることにより、小顔効果があるという主張はありますが、科学的な根拠はありません。
歯並びの悪さによって顔のバランスが崩れ、それが修正されることで顔の印象が変わる可能性があります。
ただし、具体的な変化や効果は個人によって異なることが多いです。
歯列矯正による小顔効果のメカニズムは、咬合(かみ合わせ)の改善や顔の筋肉の働きに関係していると考えられます。
歯並びが整うことで、噛み合わせが正常になり顎の位置や筋肉のバランスが整いやすくなるでしょう。
このような修正が行われると、顔のシルエットがスッキリとした印象になることがあります。
特に下顎が前に出ていたり後ろに下がっている場合は、歯列矯正により顎の位置が調整され、顔の印象に変化が現れやすいです。
ただし、歯列矯正による小顔効果は、骨格や筋肉の構造にも依存します。個人の顔の形や骨格の特徴によって、小顔効果の程度は異なる場合があります。
小顔効果を期待する場合でも、歯列矯正の主な目的は噛み合わせや口腔の健康を改善することです。歯列矯正を考える際には、小顔効果についてはあくまで副次的な効果と捉えましょう。
主な目的となる噛み合わせや口腔の健康改善を重視することが大切です。
歯列矯正で小顔効果があるケースは?
小顔効果はあくまで副次的なものとしてですが、歯列矯正で小顔効果があるケースは下記のような場合です。
- 上顎前突(出っ歯)の場合
- 反対咬合・下顎前突(受け口)の場合
- 乱ぐい歯(歯列が乱れている)の場合
- 歯並びが原因で顎がゆがんでいる場合
- 筋肉の付き方がアンバランスな場合
上記について詳しく解説していきましょう。
上顎前突(出っ歯)の場合
出っ歯は歯が通常よりも前に突出している状態を表現します。このような状態では、顔のバランスが崩れてしまうでしょう。
出っ歯は先天的な要因によって生じる場合もありますが、指しゃぶりや過剰な口呼吸などの習慣が原因の可能性もあります。
この症状は噛み合わせが悪くなるだけでなく、健康上のリスクも生じることがあり、特に顔の印象には大きな影響を与えるでしょう。
出っ歯を矯正治療によって改善すると、顔のバランスが正常化することが期待されます。このような改善によって、小顔の印象に変わる可能性が高いのです。
反対咬合・下顎前突(受け口)の場合
受け口とは、通常上顎の歯が下顎の歯よりも前に位置しているべきなのに対して、下顎の歯が前に突き出ている状態です。 受け口の状態は反対咬合や下顎前突症とも呼ばれることがあります。
このままで噛み合わせを続けると、上下の歯を無理に噛み合わせることになり、歯や顎の位置の不調和が悪化する原因となることが多いです。
受け口の場合、あごが突き出たような印象になりやすいので、矯正治療によってあごの突出を改善することで小顔効果を感じられる可能性があります。
下あごが大きい受け口の場合には外科的矯正治療(顎矯正手術を併用する矯正治療)を受けると、劇的に小顔になります。
乱ぐい歯(歯列が乱れている)の場合
乱ぐい歯とは顎のスペースが不足しているか、歯が大きすぎるために歯が重なって生えている状態で、叢生(そうせい)とも呼ばれます。 八重歯(やえば)は特に犬歯が突き出ている状態で、乱ぐい歯の一種です。
叢生では、開咬・反対咬合・過蓋咬合などのさまざまな不正咬合がしばしば見られます。 乱ぐい歯は顎のスペース不足や歯の大きさによって起こる現象であり、乱杭歯や八重歯などの特定の形態を含むものです。
歯並びが原因で顎がゆがんでいる場合
顎のズレの原因は、頭蓋骨と上下顎の骨のズレ・歯の生え方や角度、さらにはその組み合わせによるものです。
顎のズレによる症状は、下顎の先端のズレや下顎角の膨らみが見られます。奥歯の嚙み合わせにも影響し、反対咬合やはさみ状の咬み合わせが起こる可能性があります。
顎のズレは遺伝的要因・生活習慣・歯の生え方によるものです。 顎のズレは軽度から重度まであり、治療対象は噛み合わせに関わる顎のズレが認められる方です。他の不正咬合との併発もあり、治療の難易度は異なります。
筋肉の付き方がアンバランスな場合
口の周囲の筋肉バランスが崩れると、さまざまな問題が生じます。例えば、歯列矯正の進行が妨げられる場合や、治療後に歯並びが元に戻るリスクが高まる場合があります。
そのため、矯正治療中に筋肉バランスを整えることは重要です。これにより、保定期間が終了しても美しい歯並びを維持することが可能です。
筋肉バランスの崩れは、咀嚼や嚥下といった機能に悪影響を及ぼすでしょう。 また、歯並びの悪化・治療後の後戻り・発音の不明瞭さ・顔のアンバランスさなどの問題も引き起こす可能性があります。
エラが張る原因は?
歯列矯正をすると、エラの張りが変化する場合があります。
エラの張りの原因は、大きく「骨格」と「筋肉」の2つに分けられます。筋肉が原因でエラが張っている場合、歯列矯正によってエラの張りが軽減し、よりすっきりとしたフェイスラインを得る可能性があるでしょう。
咬筋の発達
噛み合わせが悪いと、咬筋(エラ付近の筋肉)に余分な負担がかかり、筋肉が発達してエラが張った顔立ちになることがあります。
歯列矯正によって噛み合わせを改善すると、噛む際に必要な力が軽減されるため、余分な筋肉の発達が抑制されエラの張りが軽減するでしょう。
実際に、歯列矯正を受けた結果フェイスラインがすっきりしたという報告は多くあります。
骨格
骨格が原因でエラが張っている場合、歯列矯正では改善することはできません。 例えば顔の骨の形状が四角形やベース型であったり、骨格自体が突出していたり、下顎の骨の角度の問題によってエラが目立つ場合です。
このような場合、骨の形状を改善するには美容整形外科にて外科手術が必要となる可能性があります。 歯列矯正は主に歯並びや咬合の調整に効果を発揮し、顔の骨格の変化を引き起こすことはありません。
骨格的なエラの改善を希望する場合は、美容整形外科の専門医との相談が必要です。彼らは顔の骨格を整えるための外科手術や治療法を提案してくれるでしょう。
歯列矯正でエラ張りを改善できる可能性があるケースは?
歯列矯正でエラ張りを改善できる可能性があるケースは下記のような場合です。
- 噛み合わせの悪さによる食いしばりがある場合
- 歯ぎしりがある場合
上記について詳しく解説していきましょう。
噛み合わせの悪さによる食いしばりがある場合
噛み合わせが悪いと、片側で食べる癖・歯ぎしり・食いしばりなどの悪い癖が生じることがあります。 これらの癖は、咬筋に過度な負荷をかけ、筋肉の発達によるエラの張りの原因です。
歯列矯正によって噛み合わせが改善されると、悪い癖が解消されることがあります。 これにより、咬筋への負荷が軽減され、筋肉の発達やエラの張りが目立たなくなる可能性があるでしょう。
歯ぎしりがある場合
歯ぎしりや食いしばりの習慣がある場合、上下の歯を噛み締めることで顎の筋肉が過度に発達することがよくあります。 歯ぎしりの原因は複数ありますが、歯並びや咬み合わせの改善によって歯ぎしりも改善するでしょう。
自分で意識することによって歯ぎしりが改善する方もいますが、歯列矯正により噛み締めるときの力が軽減され、エラの状態も改善する可能性があります。
ただし、小顔効果は個人によって異なり、歯列矯正治療自体は主に歯並びや咬み合わせの改善が目的です。 小顔効果を重視する場合は、矯正歯科専門の医師と相談し、最適な治療プランを検討しましょう。
歯列矯正の費用相場
歯列矯正の効果についてはわかりましたが、気になる費用はどうでしょうか?
- ワイヤー矯正
- 裏側矯正
- 部分矯正
- マウスピース矯正
上記の費用について詳しく解説していきましょう。
ワイヤー矯正
ワイヤー矯正は、金属製のワイヤーを使用して歯の位置を調整する一般的な歯列矯正方法です。 この治療法は、矯正専門医が歯にブラケットと呼ばれる小さな金属、またはセラミックの部品を取り付けます。
そのブラケットにワイヤーを通し、歯に軽い圧力をかけるやり方です。 この炎症反応により、歯根が進もうとする方向の既存の骨が一時的に溶けるのです。同時に、反対側では新しい骨が形成されます。
歯根の移動は時間をかけて行われ、ワイヤーを定期的に調整し、新しい位置に合わせて調節されます。 ワイヤー矯正治療の費用はおよそ80万〜95万円です。
裏側(舌側)矯正
矯正治療をしていることがわかりにくい方法がいいという要望に対しては、裏側矯正が適しています。 裏側矯正は、下の歯の外側にワイヤー矯正装置が装着される方法であり、上下の舌側装置と比べても目立ちにくいです。
特に出っ歯の傾向がある場合、下の歯は上の歯に隠れていることが多く、他人にはほとんど見えません。前歯を後ろに引っ込めたい方に適しています。 しかし、裏側矯正の施術には時間がかかります。
歯の裏側は狭く矯正装置も小さく細かいため、調整に時間がかかるのです。 通常、裏側矯正の処置時間は45分程度となります。また、患者さんは長時間口を開ける必要があり、休みながら処置が行われます。
裏側矯正治療の費用はおよそ100万〜130万円です。
部分矯正
歯並びの症状が軽度であり、全ての歯を矯正する治療に抵抗がある方には、部分矯正が選択肢として考えられます。 部分矯正では、具体的に気になる部分の歯のみを治療できます。
他の歯には触れずに、特定の部分だけを改善するため効率的です。 通常、前歯6本のみに矯正装置を装着することが一般的で、反作用を最小限に抑えるために限定的な範囲での歯の移動となります。
部分矯正の費用は下記のとおりです。
- 準備矯正(小児矯正) およそ40万~50万円
- 目立たない部分矯正 およそ38万~45万円
- 唇側部分矯正 およそ30万~35万円
症状によって違うので歯科医院に相談しましょう。
マウスピース矯正
マウスピース型矯正装置(アライナー)は、ワイヤー型矯正装置とは異なる治療方法です。 この方法では、プラスティック製のマウスピース(アライナー)を7〜10日ごとに交換しながら歯列矯正を進めます。
アライナーは個々の歯列に合わせて作られており、痛みが少なく、目立ちにくい上に取り外しも可能です。しかし、患者さん自身が装置の管理をする必要がありますし、適応症も限定されています。
インビザラインでは、1〜2週間ごとに交換するマウスピースを使用するでしょう。 事前に行われたシミュレーションに基づいて、毎回少しずつ歯を動かすようにマウスピースの形状が変更されます。
マウスピースと歯の間に生じたすきまによって、歯が動くメカニズムです。このサイクルを繰り返すことで、歯列を徐々に移動させていきます。 治療の終了までには数十枚のマウスピースを使用するでしょう。
マウスピース型矯正装置も、従来のワイヤー型矯正装置と同様に生体反応を利用して歯を動かします。 費用はおよそ80万〜100万円です。
歯列矯正で小顔効果を実感したいなら
顔が大きく見える悩みを抱える方の中には、エラの張りが原因で顔が大きく見えてしまう方もいるでしょう。エラの張りは見た目に大きな影響を与えます。
そこで、歯列矯正によって噛み合わせを改善すると、咬筋の筋肉の厚みが軽減されることがあります。その結果、エラの張りが解消される可能性があるのです。これによって小顔効果が期待できるかもしれません。
ただし、個人の顔の特徴や状態によって結果は異なります。歯列矯正は個々の状態に合わせた治療計画が必要ですので、矯正歯科医師との相談が重要です。
彼らはあなたの具体的な状態を評価し、小顔効果を実感できる最適な治療法を提案してくれるでしょう。
まとめ
歯列矯正をすることで歯並びが整い、嚙み合わせが正常になります。正常な嚙み合わせになることで、顎の位置や筋肉のバランスが整ったりエラ張りも改善されたりするのです。
このような理由によって、歯列矯正では小顔効果を感じる可能性があるといわれています。 歯列矯正治療は、患者さんの歯並びや咬み合わせの改善を目指すための重要な治療法です。
小顔効果はあくまで副次的なものですが、歯並びが悪い方は歯列矯正をすることで、顔がすっきりとしてきれいになる可能性があります。
歯列矯正の治療期間や痛みの程度は個人差がありますが、定期的な通院・指示通りの装置の着用・適切なケアの実施が重要です。
歯並びや咬み合わせの問題を抱えている方は、小顔効果も期待しつつ、矯正歯科専門の医師と相談してみるのはいかがでしょうか。