お子さんの歯のこと、親御さんとしては心配ではないでしょうか。
歯列矯正治療は進歩の一途をたどっており、次々と新しい矯正器具が登場しています。そして、歯列矯正に対する知識や技術も日に日に増えています。
ご自身が子どもの頃に歯のことで苦労した場合、我が子には自分の歯のことで苦労をかけて欲しくないと思うのは、親心ですね。
そのような小児矯正の治療期間や第1期・第2期治療と呼ばれる治療方法について解説していきます。
治療を長引かせないための注意点についても触れていますので、子どもの歯列矯正を考えている親御さんは参考にしてみてください。
小児矯正の開始時期
小児矯正とは、子どもが小さいうちに行う歯列矯正のことです。
大人になってから歯並びの悪さが気になり、歯列矯正したいと感じることはありませんか。実は歯列矯正は、まだ乳歯のあるうちから行えます。
子どもの頃から歯列矯正を行っておくことのメリットは以下のとおりです。
- 歯並びを整えることで、むし歯や歯周病のリスクを減らせる
- よく噛めるようになり、胃腸の働きを改善させることがある
- 発音の改善につながることがある
- 歯並びや口元が整うことで、自分に自信を持てるようになる
大人になって顎の骨の成長が止まってからでは、歯列矯正に時間や手間がかかり治療費が高額になる場合があります。
また、歯列矯正を行うために抜歯をしなければならなくなるケースもあるようです。
そのため、子どもの頃から矯正治療を行うことは、生活の質を高めるうえで重要といえるでしょう。
乳歯・混合歯列期
主に6〜7歳の頃にあたるのが、乳歯・混合歯列期です。ちょうど上下の前歯が4本ずつと、6歳臼歯が生えてきている頃であり、これ以降は永久歯に生え変わる頃まで時間の余裕があります。
永久歯列期
12歳頃になると永久歯が生え揃っており、この時期は、歯並びの乱れを細かく整えられる時期となります。
後述するワイヤー矯正やマウスピース型矯正が適切でしょう。
小児矯正の種類と治療期間の目安
小児矯正は、第1期と第2期があります。どのような違いがあるのか、見てみましょう。
第1期治療
第1期治療は6〜12歳頃の間に行われます。この期間は乳歯から永久歯に生え変わる時期であり、上下顎のバランスを整えやすく歯の生えるスペースをキープしやすいといわれています。
歯の生えるスペースがないと、歯並びが悪くなりがちです。その他、指しゃぶりや口呼吸が原因で歯並びが悪くなることもあり、特に指しゃぶりによって悪くなった歯並びも第1期治療のときに歯列矯正することもできます。
顎の幅を広げて、のちに生えてくる永久歯がきれいに並ぶスペースを確保することが、第1期治療の目的の一つです。
第2期治療
永久歯が生え揃った12〜13歳以降に行われる矯正治療が第2期治療です。第1期治療で治療できなかった歯列矯正方法がある場合、次に行われるのが第2期治療の期間となります。
矯正治療の方法は成人と同じですが、年齢を重ねる程歯の諸問題は起こるものです。子どもの頃に矯正治療を行うと、成人してから矯正治療を行うよりも歯にまつわる問題が少ないことが多く、治療期間も短くて済む傾向にあるため極力第2期治療を行うことをおすすめします。
また第2期は、すべて永久歯に生え変わっているものの、上下の顎の骨は成長段階にあるようです。そのため、顎の骨や顔貌の変化を含めた治療を目指せます。
小児矯正第1期治療に用いる器具ごとの特徴と治療期間の目安
床矯正
床矯正とは、歯を抜くことなく顎を広げることによって歯列矯正を行う治療法です。
しかし、顎を広げても全ての症例で歯を抜かずに治療ができるわけではありません。
6歳前後から始められるため、早い段階で治療に臨むことが可能です。
床矯正の治療期間は症例にもよりますが、1〜2年で終了する事例がほとんどだといわれています。
しかし、顎の発達具合によって期間が変わることもあるため、具体的な治療期間が知りたい場合は歯科医院で診察を受ける必要があります。
犬歯が生え揃うまでの間に、前歯がきれいに並ぶスペースがあれば簡単な治療で終了できるケースが多いとされているため、できる限り早めに治療を受けるようにしましょう。
ヘッドギア
ヘッドギアは矯正器具の一つであり、上顎顎外固定装置とも呼ばれています。
頭もしくは首で固定し、上顎の骨や歯列に矯正力を働かせます。これにより、上顎の骨が前方または下方に成長しないよう抑制したり、奥歯を後ろに移動させたりできるそうです。
いわゆる出っ歯を歯列矯正する際に用いるのがヘッドギア矯正です。上顎の成長をコントロールすることには以下のメリットがあります。
- 正しい噛み合わせに導ける
- 唇が閉じやすくなる
- むし歯や歯周病のリスクを下げられる
- 歯を抜かずに治療ができる可能性が高まる
また、ヘッドギアは取り外しが容易な矯正装置です。装着時間は1日のうち8〜10時間以上とされており、就寝時と在宅時にこの期間装着できれば、それ以外の時間帯は外していても問題はないとされます。
そのため、人前でヘッドギアをつけることに恥ずかしさを感じてしまう子でもおすすめできます。
主に就寝時に装着しますが、つけはじめは違和感があってなかなか寝付けない子でも、数日で気にならなくなり寝付けるケースが少なくないようです。
ただし、8〜10時間以上は装着したほうがよいとされており、スポーツなどの習い事をしている子どものなかには装着時間が確保できないケースがあるかもしれません。
その点、歯科医師へ相談してみてください。
上顎前方牽引装置
本来は上の前歯が下の前歯よりも前に出て咬合するはずが、下の前歯の方が上の前歯よりも前に出てきてしまう現象を受け口といいます。
反対咬合や下顎前突で、上の前歯と下の前歯が逆の噛み合わせになってしまっている現象ですが、小児における治療においては上顎前方牽引装置というものを取り付けることもあります。
上顎前方牽引装置は、反対咬合で上顎が後退しているケースの際に、上顎をゴムの力で前に牽引し成長を誘導するための装置です。リンガルアーチや拡大装置よりは治療期間が長い治療方法です。
4〜10歳頃までで適応される装置で、ゴムの力で上顎を前に牽引するという治療の仕組みとなっています。
治療期間は1年半から2年となっており長く感じる方もいるかもしれませんが、寝るときに使用するので、歯列矯正をしていることが他人からはわからないという特徴もあります。
リンガルアーチ
リンガルアーチは、受け口の改善や歯の生えるスペースを作り出すために行われる矯正治療です。
歯の裏側から金具を取り付け、歯を動かしたり固定したりします。細いバネによって歯を正しい方向へ動かせます。
奥歯に金属のバンドを巻き、太めの針金でつなげたシンプルな作りです。なお、大臼歯にバンドを引っかけてセメントで固定するため、途中で取り外せません。
リンガルアーチの治療期間の目安は1〜2年とされています。
バイオネーター
筋肉の動きを利用して、上下顎の骨の成長をコントロールします。主に出っ歯や受け口、噛み合わせが極端に深いなどの症状のときに使用されます。
なお、取り外しが可能な矯正器具です。
小児矯正第2期治療に用いる器具ごとの特徴と治療期間の目安
小児矯正の第2期治療では、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正など大人と変わらない矯正治療を行うことになります。
大人と同じですが、第2期は顎の骨がまだ成長段階にあるため、治療にかかる期間などは大人よりも短く済む可能性があります。詳しく見ていきましょう。
ワイヤー・ブラケット
歯にブラケットと呼ばれる金属製の器具を取り付け、ワイヤーを通して矯正力を働かせる歯列矯正方法です。ワイヤーにより、歯を少しずつ動かしていきます。
奥歯のように強い力がかかる部分にも使えて、また治療費も後述するマウスピース型矯正よりは高額になりやすいのが特徴です。
ワイヤー矯正は昔からある歯列矯正方法ですが、矯正器具が目立ってしまうため、審美面で人の視線を気にする方もいます。
そのため最近では、目立ちにくいプラスチック製の矯正器具が登場しています。
ワイヤー矯正の治療期間は症状によって異なる場合がありますが、1年半〜2年半程度が目安です。
マウスピース
上述したワイヤー矯正における審美面のデメリットを克服した歯列矯正方法がマウスピース型矯正治療となります。
これはマウスピースを装着することで矯正力を働かせる歯列矯正方法であり、歯列が移動していくのに合わせてマウスピースを交換していき、段階的に歯列を整えていく治療方法です。
メリットとしては以下の点があります。
- 透明であり矯正器具を装着していることがわかりづらく、審美面を気にすることが少ない
- 食事や歯磨きのときには取り外すことが可能
- 歯磨きのときに取り外せるので、磨き残しによるむし歯や歯周病のリスクを軽減できる
- 1日20時間程度は装着する必要があり、食事や歯磨きのとき以外は就寝時も含めて装着し続ける必要がある
マウスピース型矯正の治療期間は通常2〜3年程度とされていますが、小児矯正の場合は歯列の変化も大人よりは容易になりやすいため、治療にかかる期間が少し短くなることも考えられるでしょう。
小児矯正で感じる痛みの期間は長い?
小児矯正治療は歯や顎の骨を動かすため、痛みを伴うことが少なくありません。
しかしながら、子どもの骨は成長段階にあることからやわらかく、大人程の痛みは生じにくいとされています。
顎の骨の成長に合わせて徐々に行うため、極力強い痛みが起きないように配慮した治療が行われます。痛みの感じ方には個人差もあるため一概にはいえませんが、感じにくいといえるでしょう。
なお、痛みが出やすいタイミングは以下のものがあります。
- 矯正装置を初めて取り付けたとき
- 矯正装置を調節したとき
- 矯正装置が口腔内の粘膜にあたっているとき
矯正装置を初めて取り付けたときは、炎症反応が起こり、取り付け後の2〜3日が痛みを感じる時期でしょう。ただし、慣れの問題でもあるので、1週間程度経過すれば痛みを感じにくくなるといわれています。
また、矯正装置を調節したときも痛みを感じやすいです。
矯正器具は歯や骨の移動とともに場所を変えて矯正力を働かせるため、調整した後は痛みを感じる傾向にあります。ただし、最初程は痛みを感じないことが少なくないようです。
ほかにも、矯正装置が口腔内の粘膜にあたっているときも痛みを感じることがあります。
特に歯肉や舌・頬や唇などはあたると痛いことがあり、場合によっては口内炎が生じることもあるようです。
小児矯正の治療期間を長引かせないための注意点
小児矯正は適切に治療しなければ、治療期間が長期に渡ってしまうことがあります。以下の点をしっかり守り、なるべく短期間で歯列矯正を行えるようにしましょう。
歯磨きを丁寧に行う
矯正期間中は歯磨きをしっかり行う必要があります。磨き残しによるむし歯の発生は、矯正治療を中断することにもなりかねません。
これは、矯正治療とむし歯治療が同時にはできないためです。また、むし歯が悪化すると歯を削る必要が生じることもあり、その場合は矯正治療を考え直すこともあります。
マウスピース型矯正をしている際は、マウスピースが合わなくなることで再度、マウスピースを作製する必要が出てくるかもしれません。
これらは矯正治療期間が長期に渡ってしまう原因となるため、矯正期間中もそれ以外の時期と同様に、食後の歯磨きはしっかり行うようにしてください。
器具の装着時間を守る
器具の装着時間をしっかり守ることも、矯正期間を長引かせないために必要でしょう。
矯正器具の装着による痛みや煩わしさ・磨き残しが出てくるなどの理由から、器具の装着時間が守れないケースがあるようです。
気持ちはわかりますが、矯正器具は適切な装着時間を守って初めて、効果が出るものです。治療した後の姿をしっかりイメージして、乗り越えられるように頑張りましょう。
まとめ
小児矯正の治療期間は長引かせない工夫が必要です。
上記に挙げた矯正治療について、なかには痛みを感じて嫌がるお子さんもいるかもしれません。無理強いは良くありませんが、大抵の痛みは一時的なものであり、次第に気にならなくなることがほとんどだとされています。
それ以上にきれいに整った歯並びは親御さんはもちろん、お子さんが大きくなったときにきっとうれしいと感じてくれるはずです。
そして、子どもの頃に歯科矯正することは、大人になってから歯列矯正をするよりも期間も短く治療費も抑えられることもあります。
ぜひ、お子さんとともに乗り越えていきましょう。
参考文献