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小児矯正は後戻りする?後戻りの原因や予防法も解説します

小児矯正は後戻りする?後戻りの原因や予防法も解説します

小児矯正は、将来の健康な歯並びを手助けするために欠かせない治療です。しかし一度矯正が完了しても、その後に後戻りが起こる可能性があります。後戻りとは、矯正治療で整えた歯並びが元の状態に戻ってしまう現象を指します。

本記事では小児矯正の後戻りについて以下の点を中心にご紹介します。

  • 小児矯正後に後戻りする原因
  • 小児矯正後に後戻りした場合の対処法
  • 小児矯正の後戻りを予防する方法

小児矯正の後戻りについて理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

小児矯正とは

小児矯正とは

小児矯正とは、子どもの成長段階に合わせて行う歯並びや噛み合わせの矯正治療を指します。乳歯と永久歯が混在する時期や、永久歯が生え揃い始めた時期に行われ、顎の成長や歯の位置を理想的な状態に導くことを目的としています。

小児矯正の治療には、主に以下の3つの段階があります。

    • 第0期治療

3〜5歳頃を対象に、将来的な不正咬合を防ぐための治療を行います。

    • 第1期治療

6〜12歳頃を対象に、顎の骨の発育や歯並びの土台を整える治療を行います。

    • 第2期治療

12歳以降、永久歯列が完成した段階で、歯そのものの位置を整える本格的な矯正治療を行います。

第0期と第1期をまとめて、第1期治療とする場合もあります。
小児矯正の開始時期は子どもによって異なり、すべてのケースで第0期治療から始めるわけではありません。
第0期・第1期治療を必要としない場合もあれば、受診する年齢の都合で、第2期治療から始めることもあります。

治療のタイミングや方法は、お子さんの成長や症例、受診の時期に合わせて柔軟に決定されます。

小児矯正は後戻りする?

小児矯正は後戻りする?

小児矯正は、成長中の顎の発育を活用して歯を理想的な位置に導く治療法であり、成人矯正より後戻りが少ないとされています。成長中の顎は柔軟性が高く、歯の位置を安定させやすいため、後戻りのリスクが軽減されるのです。 しかし、小児矯正であっても、後戻りを防げるわけではありません。 理由は以下のとおりです。

    1. 歯並びに悪影響を及ぼす癖:

指しゃぶりや舌で歯を押す癖、頬杖をつく習慣など、日常的な行動が歯並びに影響を与えることがあります。日常の癖が矯正治療後に続いている場合、歯が元の位置に戻る原因となり得ます。保護者の方はこれらの癖を見逃さず、改善に導いてあげましょう。

    1. 成長による骨格の変化:

子どもの成長が続く間、顎の骨や顔の骨格が変化する可能性があります。 顎の骨や顔の骨格が変化すると歯並びに影響を与え、治療後の歯列にわずかなずれが生じる可能性もあります。自然な変化は防げませんが、定期的なチェックで早期に対処しましょう。

    1. 親知らずの影響:

親知らずが生えてくる際、歯列に圧力をかけると歯並びに変化を及ぼす場合があります。レントゲン検査を活用して親知らずの位置や状態を把握し、必要に応じて早期に対策するのがよいでしょう。

    1. メンテナンス不足:

矯正治療後も、歯並びを維持するためには定期的なメンテナンスが欠かせません。歯並びや噛み合わせに問題がないか確認するだけでなく、リテーナー(保定装置)の使用や適切な口腔ケアを続けると後戻りの予防につながります。

小児矯正後に後戻りする原因

小児矯正後に後戻りする原因

後戻りの原因は、治療不足ではなく、生活習慣や成長過程などさまざまな要因が関係している可能性があります。小児矯正後に後戻りする原因を以下に詳しく解説します。

保定装置(リテーナー)の装着不足

矯正治療が完了した後も、歯はすぐには新しい位置に固定されません。歯が移動したばかりの状態では、元の位置に戻ろうとする力が働いてしまうため、この後戻りを防ぐためには保定装置(リテーナー)の使用が必要不可欠です。

保定装置(リテーナー)とは、歯を新しい位置に安定させるための保定期間で使用されます。保定期間は通常1〜2年程続き、この間に固定式や取り外し式のリテーナーを適切に使用して、歯並びの安定を図ります。

しかし、この装置を正しく装着しなかったり、装着を怠ったりすると、歯が元の位置に戻りやすくなります。
小児矯正の場合は成長期特有の骨の柔軟性があるため、リテーナーの装着を軽視すると後戻りのリスクが高まるといわれています。

成長による骨格や歯並びの変化

子どもと成人の矯正治療で異なる点の一つが、子どもの成長期特有の変化です。
子どもは成長に伴い、歯や顎の骨、さらには顔全体の骨格が発達し続けるため、治療が終了した後でもこれらが変化し、歯並びに影響を与える可能性があります。

小児期は、乳歯から永久歯への生え変わりが進む時期であり、この過程で歯並びや噛み合わせに予期しない変化が起こることも少なくありません。また、成長する顎の骨が空間のバランスに影響を及ぼし、治療後にわずかなずれや後戻りなどが発生する可能性もあります。

成長による変化は、自然な現象であり防ぐことはできないとされています。
定期的なフォローアップや歯科医師による検診を受け早期に問題を発見し、必要に応じた対応を行うことが必要です。

口腔内の癖や習慣

歯並びや噛み合わせに影響を与える癖や習慣は、矯正治療後に後戻りを起こす原因の一つです。
小児期には、指しゃぶりや舌で歯を押す癖、頬杖をつくといった行動が、歯並びや顎の発達に悪影響を及ぼすことがあります。

指しゃぶりは4歳頃までにやめさせないと、前歯が傾き、隙間が気になって舌で触る癖がつくことがあります。また、重度のむし歯などで乳歯の前歯が本来より早く抜けると、永久歯が生えてくるまで、歯がない状態が長く続き、抜けた所が気になって舌で触る癖につながります。

離乳食を食べる際に唇を使えていない場合も、舌を前方に出す癖がつく可能性があります。
食べ物が乗ったスプーンを唇で挟み込み、「パクッ」と食べることが大切です。

そして、アレルギー性鼻炎などに伴う慢性的な鼻づまりは、口呼吸の原因となります。口から空気を通すために舌の位置が後方へと下がり、舌癖が生じやすくなります。

よくない癖が長期間続くと、矯正で整えた歯が元の位置に戻ったり、顎のバランスが崩れる可能性があります。
例えば、舌で前歯を押し出す癖がある場合、前歯が徐々に前方に移動し、噛み合わせが乱れることがあります。
お子さんに正しい舌の位置を伝え、覚えさせるほか、上記のような癖を早期にやめられるよう対策が必要です。

定期検診を受けていない

小児矯正が終了したからといって安心せず、定期的な検診の受診が重要です。なぜなら、治療後の歯並びはまだ安定しておらず、後戻りが起こりやすい状態です。噛み合わせのチェックや、歯並びの変化を早期に発見するために定期的に歯科医院でのメンテナンスが欠かせません。

矯正後、定期的に歯科医院を訪れないでいると、後戻りの兆候を見逃す可能性が高まります。
小児矯正直後の歯は元の位置に戻ろうとする力が強いため、歯科医院での適切なフォローアップが必要です。

また、歯ぎしりや舌癖といった無意識の行動や、保定装置(リテーナー)の不使用も、後戻りを加速させる要因となります。

小児矯正後に後戻りしてしまった場合の対処法

小児矯正後に後戻りしてしまった場合の対処法

歯列矯正で整えた歯並びが再び乱れるのは、成長期の変化や習慣的な癖、保定装置の不使用など、さまざまな要因が影響している場合があります。 小児矯正後に後戻りしてしまった場合の対処法を以下に解説します。

歯科医院に相談する

小児矯正後に歯並びの変化や噛み合わせの違和感、リテーナー装着時の痛みを感じた場合、後戻りの初期サインの可能性があります。違和感や痛みを放置せず、早めに治療を受けた歯科医院に相談しましょう。 特に、リテーナーがしっかりと装着できなくなった場合は、歯が元の位置に戻りつつある可能性が高いため、速やかに診察を受けましょう。 後戻りが軽度であれば、リテーナーの調整や再装着で歯並びを維持できることもあります。しかし、後戻りが進んでリテーナーが機能しない場合や歯並びに大きな変化が生じた場合は、再治療が必要になることがあります。 再治療には費用や期間がかかるため、早期発見と対応が後戻りを抑えるカギとなります。

再治療を検討する

リテーナーの装着や調整では改善が難しいくらい後戻りが進行している場合、再治療の必要があります。再治療が必要かどうかは、歯の状態や後戻りの進行具合によって異なり、歯科医師が診察して判断します。

後戻りの範囲や原因によって、治療方法や費用も大きく変わります。例えば、後戻りが軽度であれば、部分矯正で対応可能な場合があります。この場合、費用や治療期間も少なく抑えられる可能性があります。

一方で、歯並び全体や噛み合わせに影響が出ている場合は、全体的な矯正が必要になることもあります。

再治療を検討する際には、まずリテーナーの装着感を確認しましょう。もしリテーナーに違和感や圧迫感がある場合、無理に使用せず、歯科医院に持参して調整を依頼してください。場合によっては、現在のリテーナーを活用しつつ治療を進められることもあります。

後戻りを放置すると、症状がさらに進行し、治療にかかる時間や費用の負担が増える恐れがあります。小児矯正後に早期の対応を怠ると、再治療が複雑化する可能性もあります。
歯並びや噛み合わせに異常を感じたら、早めに歯科医院を受診し、適切な治療方針を相談しましょう。

小児矯正後の後戻りを予防する方法

小児矯正後の後戻りを予防する方法

小児矯正後に歯並びを安定させ、後戻りを防ぐためには、治療終了後のケアが欠かせません。矯正治療によって理想的な歯並びを手に入れても、適切な対策を怠ると、歯が再び元の位置に戻ろうとする力が働き、治療の成果が失われてしまう可能性があるからです。

ここでは、小児矯正後の後戻りを予防する方法を詳しく解説します。

保定装置(リテーナー)の適切に装着する

矯正治療後、歯を新しい位置にしっかり固定するためには、保定装置(リテーナー)の装着が不可欠です。治療直後の歯はまだ安定しておらず、元の位置に戻ろうとする力が働くため、特に矯正後の最初の6ヵ月間はリテーナーを1日中装着することが求められます。

この期間は後戻りするリスクが高く、装着を忘れるだけでリテーナーが合わなくなることもあります。

口腔内の癖や習慣を改善する

指しゃぶりや舌で歯を押す癖、頬杖をつく等の悪習慣が残っている場合、後戻りが発生する可能性が高くなります。成長過程にある子どもの顎は柔軟性があるため、悪習慣の影響を受けやすい点に注意が必要です。

また、歯科医院では口周りの筋肉を鍛えて機能を改善する、口腔筋機能療法(MFT)が推奨される場合があります。
MFT(Oral Myofunctional Therapy)とは、食べる時や飲む時、発音時、呼吸時の舌や口唇の位置改善を目的としたトレーニングです。MFTを継続して行い、口腔周囲の筋肉バランスを整えることで、癖を直します。特に指しゃぶりと舌癖は、MFTでの症状改善が期待できます。

舌で歯を押すなどの悪習慣は無意識のうちに行われることがあるため、子ども自身だけで改善するのは難しいことがあります。
適切な舌の位置や正しい飲み込み方を身につけるには、保護者の方の協力や、歯科医院での専門的なサポートが欠かせません。

ご自宅でも、以下のような習慣を気にかけてみましょう。

  • 口を閉じて鼻で息をする習慣をつける
  • 口を閉じた状態の時には、上下の歯はほんの少し離しておく
  • 食事をする際は首をまっすぐにして口を閉じ、左右の奥歯でバランスよく噛む
  • 姿勢をまっすぐに整える
  • うつぶせ寝ではなく、仰向け寝にする

好ましくない癖があると、治療がスムーズに進まなかったり、後戻りする可能性が高くなります。
癖は、年齢が大きくなればなるほど直すのが難しくなります。小さな頃から適切なトレーニングを行うのが理想です。

定期的にメンテナンスに通う

小児矯正後も定期的に歯科医院を訪れることで、後戻りを防ぐことにつながります。
歯科医院での定期メンテナンスでは、歯並びやお口の状態をチェックし、リテーナーや矯正器具の調整が必要かどうかを確認してもらえるため、問題が発生しても早期の対処につながります。

また、メンテナンス時にクリーニングを受けることで、むし歯や歯周病のリスクを減らし、口腔内の健康を保つことにも役立ちます。

まとめ

まとめ

ここまで小児矯正の後戻りについてお伝えしてきました。
小児矯正の後戻りについて、要点をまとめると以下のとおりです。

  • 小児矯正とは、子どもの成長段階に合わせて行う歯並びや噛み合わせの矯正治療を指す。この治療は、乳歯と永久歯が混在する時期や、永久歯が生え揃い始めた時期に行われ、顎の成長や歯の位置を理想的な状態に導くことを目的としている
  • 小児矯正は、成長中の顎の発育を活用して歯を理想的な位置に導く治療法であり、成人矯正より後戻りが少ないとされている。成長中の顎は柔軟性が高く、歯の位置を安定させやすいため、後戻りのリスクが軽減される
  • 小児矯正後の後戻りを防ぐために、保定装置(リテーナー)の適切に装着する、口腔内の癖や習慣を改善する、定期的にメンテナンスを行うことが必要である

小児矯正の後戻りを防ぐためには、治療後のケアや習慣の見直し、定期的な歯科検診が欠かせません。矯正治療で整えた美しい歯並びを長く維持するためにも、保護者の方のサポートや歯科医師との連携を大切にしましょう。

これらの情報が少しでも皆さまのお役に立てば幸いです。最後までお読みいただき、ありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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