ワイヤー矯正

ワイヤー矯正で失敗しないために注意することは?失敗する原因や失敗を防ぐ方法などを解説

ワイヤー矯正で失敗しないために注意することは?失敗する原因や失敗を防ぐ方法などを解説

ワイヤー矯正の失敗について気になるという方もいるのではないでしょうか。
歯並びの改善を目的として行われる歯列矯正のなかでも、古くから行われてきているワイヤー矯正ですが、治療が適切に行われていないと、失敗に感じる状態が発生する可能性もあります。
この記事では、ワイヤー矯正の失敗パターンなどについて解説していきますので、歯列矯正を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。

ワイヤー矯正とは

ワイヤー矯正とは

ワイヤー矯正は歯列矯正の方法の一つで、細い金属製のワイヤーの力を利用して治療を行うことから、ワイヤー矯正と呼ばれます。
歯列矯正では、このほかにマウスピース型矯正装置を使用して行う方法などがあり、それぞれメリットやデメリットがあります。
まずはワイヤー矯正の方法やメリット、デメリットなどについてご紹介します。

ワイヤー矯正の治療法

ワイヤー矯正は、歯の表や裏側にブラケットと呼ばれる装置を取り付け、そこに金属製のワイヤーを通すことで行います。
ワイヤーは形状記憶の性質を持っているため、歯に取り付けられたワイヤーが元の形に戻ろうとすると、歯に対して一定の力がかかり続けます。この力を利用することで、歯並びを整えていきます。
通常、ワイヤー矯正を始める際には丸く細いワイヤーが使用され、治療が進むにつれて、ワイヤーは太く、四角い形状になっていきます。これは、治療が後半に差しかかって歯を動かす必要がある幅が小さくなるほど、強い力のワイヤーが必要になるためで、丸より四角、細いものより太いものの方が歯にかかる力が強いからです。
このように、ワイヤー矯正では歯並びの状態を見ながら適切に力がかかるように治療を進める必要があるため、4~6週間に1度程度は歯科医院に通院して、装置の調整をする必要があります。 また、これはワイヤー矯正に限らないのですが、歯列矯正の治療では、歯並びを整えた後で、保定という対応が必要となります。
歯列矯正は歯に持続的な力をかけて動かしていきますが、一方で人体には自然治癒能力があり、これが歯を元の状態に戻そうと働いてしまいます。そのため、歯列矯正で歯を動かした後、そのまま何もしないで放置しておくと、せっかく治した歯並びが元の歯並びが悪い状態に戻っていってしまう、後戻りという現象が起こります。
この後戻りを防ぐために、リテーナーという歯並びを固定させるための装置を使用し、歯をしっかりと治療後の位置で固定していくケアを保定と呼び、治療後1年から2年ほどの期間がかかります。

ワイヤー矯正のメリット

歯列矯正では、歯並びを整えて美しい口元を目指せることはもちろん、噛み合わせの修正を行うことができます。歯列矯正によって歯並びが整うと、咀嚼による特定の歯への負担が軽減できるといったメリットがあり、歯の健康を維持しやすくなります。
歯列矯正のなかでも、ワイヤー矯正におけるメリットとしては、幅広い症例に対応できるという点や、治療を受ける本人が頑張らなくても、治療を進められるという点があります。
歯列矯正では、ワイヤー矯正のほかにマウスピース型矯正装置を使用した方法などがありますが、この方法は歯を動かせる方向や範囲に限界があるため、歯並びが大きく乱れているような方の場合、治療が行えない可能性があります。
一方で、ワイヤー矯正は大多数の症例に対応できるため、マウスピース型矯正装置では対応が難しい内容でも、ワイヤー矯正であれば治療を行える場合があります。 また、マウスピース型矯正装置による治療の場合、矯正装置が自分でつけ外し可能となっているため、治療を適切に行うためには、患者さん本人の意思でマウスピースを長時間装着するようにする必要があります。人によっては装着を忘れてしまったりして、これが原因でなかなか歯列矯正が計画通りに進められないという場合も生じます。
ワイヤー矯正の場合、歯科医院で歯に装置を装着や調整をしたら、後は普段通り生活しているだけで治療が進められるため、マウスピースの管理などが難しいという方でもしっかりと治療に取り組むことができます。

ワイヤー矯正のデメリット

まず、ワイヤー矯正に限らず歯列矯正の治療では、健康な歯を抜いたり削ったりする可能性があります。
これは、歯列矯正で歯を動かすためには、歯をキレイに収めるためのスペースが必要になるためです。歯並びが悪い方は、そもそも顎が小さいなどで歯がキレイに生えそろうためのスペースがないケースが多く、キレイに歯を並べるためには、抜歯などの対応が必要になりやすいのです。 歯列矯正のなかでも、ワイヤー矯正特有のデメリットとしては、まず一つ目に装置が目立ちやすいことが挙げられます。
ワイヤー矯正では、歯の表面または裏側にブラケットと呼ばれる装置を貼り付け、そこにワイヤーを通していくのですが、一般的な方法ではブラケットとワイヤーは銀色の金属パーツで作られているため、歯列矯正中は口を開けると装置が見えてしまい、不自然な口元になりやすいのです。
ブラケットやワイヤーを白いものや透明なものにしたり、歯の裏側に装置をつけることで目立ちにくい治療を行うことは可能ですが、それでも透明なマウスピース型矯正装置を使用した歯列矯正と比べると、装置が目立ってしまいやすいといえるでしょう。 また、ブラケットやワイヤーによって歯ブラシが届きにくい場所が増えるため、口腔環境を清潔に維持しにくくなる点もデメリットの一つです。
ブラケットの隙間やワイヤーの裏側などに歯垢が蓄積されることで、むし歯や歯周病といった口腔トラブルも発生しやすくなります。
さらに、口腔環境が不衛生になりやすいことに加え、ブラケットがお口のなかの粘膜に触れて刺激になることで、口内炎もできやすくなります。
ワイヤー矯正は、こうした口腔環境のリスクをできる限り抑えるためにも、しっかりとした歯磨きの実施や、定期的な歯科医院の通院が重要です。

ワイヤー型矯正装置の種類

ワイヤー型矯正装置には、いくつかの分類があります。
まずはブラケットを装着する位置に関する分類で、一般的な治療では歯の表面に装置をすべて取り付ける表側矯正とよばれるものですが、歯の裏側に装置を取り付ける裏側矯正(舌側矯正)や、上の歯は裏側、下の歯は表側に装置を取り付けるハーフリンガルと呼ばれる方法もあります。
矯正装置を裏側に装着することで、お口を開けたときに装置が見えにくくなりますが、装置が舌にあたって痛みを感じやすくなり、しゃべりにくくなるといったデメリットもあります。 さらに、ブラケットやワイヤーの素材にもさまざまな種類があります。
一般的に使用される銀色のブラケットはメタルブラケットと呼ばれるもので、金属性のため壊れにくく、しっかりと治療を行いやすいものの、どうしても目立ってしまいやすいという難点があります。
装置が目立ちにくいように改良されたものがセラミックブラケットやホワイトワイヤーと呼ばれるもので、歯と同じような色味のセラミックで作成したブラケットや、白い金属でコーティングしたワイヤーを使用することで、装置が見えても違和感を与えにくいというメリットが得られます。
白いブラケットのほか、透明なクリアブラケットなどもあり、こうした装置を組み合わせることでワイヤー矯正も周囲からの眼を気にせずに受けやすくなります。

ワイヤー矯正で起こりがちな失敗

ワイヤー矯正で起こりがちな失敗

ワイヤー矯正で起こりがちな失敗について、具体的に解説します。

治療期間が長引く

ワイヤー矯正でよくある失敗の一つが、思ったように歯が動かず、治療期間が長引いてしまうというものです。
治療期間が長引くと、それだけ通院回数や歯科医師の対応も増えるため、治療費用の総額も高くなってしまいます。

歯並びが悪くなったように見える

歯並びを改善したくて歯列矯正を受けたのに、結果として歯並びが悪化したように見えてしまう場合があります。
歯並びや噛み合わせ自体は改善されていても、歯の中心部分がズレてしまっていたりすると、全体的な歯並びとしてはむしろ悪くなったように感じる可能性などがあります。
また、歯並びは治っていても、例えば歯の位置を調整したことで口元に皮膚があまり、これがほうれい線などの悪化につながって、顔全体の見た目としては悪くなってしまったと感じることもあります。

噛み合わせが悪化する

歯列矯正を行ったのに、噛み合わせが余計に悪化してしまう場合があります。これは、全体矯正ではなく部分矯正を行った場合に起こりやすいといえるでしょう。
部分矯正とは、前歯から奥歯までのすべての歯を対象として治療するのではなく、見た目が気になる前歯だけといった、部分的に治療を行う方法のことです。
部分矯正は歯の一部しか効果がないため、全体的な噛み合わせを改善することができず、むしろ一部分だけ歯が移動することで噛み合わせを悪化させてしまう可能性もあります。
また、全体矯正であっても、治療中は歯が動くことによって噛みあわせが悪くなったと思うような状態になることがあります。この場合は一過性なので、治療を続けていくことで噛み合わせは改善していきます。

後戻りしてしまう

治療後の保定が適切に行えていない場合、後戻りして治療前の状態に近い歯並びに戻ってしまう可能性があります。

むし歯や歯周病によって治療が中断する

むし歯や歯周病は放置しておくとどんどん進行して歯の健康に影響を与えてしまうため、ワイヤー矯正を行っている期間であっても、トラブルが見つかればすぐに治療を行う必要があります。
ワイヤー矯正は汚れが溜まりやすくなることからむし歯や歯周病のリスクも上がりやすく、適切なケアができてないと中断のリスクが大きいといえるでしょう。

歯がグラつく

歯列矯正中は、歯が動きやすくなっているため、歯がグラついたように感じる場合があります。
治療の失敗や、歯周病などのトラブルが進行しているのでなければ、治療を進めていけばグラつきは軽減されます。

睡眠時無呼吸症候群が生じる

抜歯をしてワイヤー矯正を行うなどで、口腔内で舌を収めるためのスペースが小さくなってしまうと、収まりきらない舌がのどの方に出てしまい、気道を塞いでしまう可能性があります。
これにより、睡眠時無呼吸症候群となって、睡眠の質が低下してしまうケースが考えられます。

矯正器具によって口元がコンプレックスになってしまう

特に小さい子どもの頃にワイヤー矯正を受けると、笑ったときに装置が見えてしまうことがコンプレックスとなって、お口を開けて笑えなくなるといった可能性があります。

ワイヤー矯正が失敗する原因

ワイヤー矯正が失敗してしまう原因としては、下記のようなものがあります。

不必要に抜歯や歯を削ってしまう

歯列矯正では、歯を動かすためのスペースを作る目的で抜歯や歯を削るといった処置が行われますが、これが過剰に行われると、トラブルの原因となります。
不必要に抜歯や歯を削ることで歯の健康状態が損なわれるだけではなく、歯を動かす距離が大きくなって治療時間が長引くといったトラブルもつながります。

事前にしっかりと歯の状態を整えない

歯列矯正は、治療開始から治療終了まで数ヶ月から数年単位の長い時間が必要になる治療です。
治療を開始するまえに歯の状態を隅々までチェックして、むし歯や歯周病といったトラブルをしっかり解消しておかなければ、歯列矯正中に症状が悪化してしまう可能性が高まります。

歯磨きなどのケアが不十分

ワイヤー矯正をしている期間は、いつも以上に歯磨きが行いにくくなります。
矯正装置が付いた状態での適切な歯磨き方法を身に着け、隅々までキレイに掃除ができるようにならないと、歯垢が蓄積して口腔内が不衛生な状態となり、さまざまなトラブルにつながる可能性があります。

歯科医師の指示通りに治療を受けない

適切な通院頻度やホームケアの方法など、歯科医師は患者さん一人ひとりの歯並びや目的、生活習慣に応じて計画を立て、指示を行います。
こういった指示をしっかりと守らず、自己判断で誤ったケアを行うなどしてしまうと、適切に治療が進まずに失敗する要因となります。

保定が不十分

ワイヤー矯正は、歯を動かしている間は特に患者さん本人が意識をしなくても、ワイヤーによって歯が少しずつ動いていき、治療を進めることができます。
しかし、歯並びを整えた後の保定については、本人がしっかりとリテーナーを取り扱う必要があり、かつ期間も長いため、失敗しやすい要因となります。

ワイヤー矯正で失敗を防ぐ方法

ワイヤー矯正で失敗を防ぐ方法

ワイヤー矯正で失敗を防ぐためには、下記のポイントに気を付けましょう。

ワイヤー矯正で失敗しないための歯科医院選びのポイント

まずは、適切な治療を行ってくれる歯科医院を選ぶことが大切です。
歯科医院選びのポイントとしては、歯列矯正の経験が豊富な医師が在籍していることや、いつでも歯列矯正の相談をしやすいという点が一つのポイントになります。 歯列矯正の経験が豊富かどうかは、クリニックのホームページに歯列矯正に関する経験がしっかりと記載されているかどうかや、日本矯正歯科学会 認定医などの資格を持つ歯科医師かどうかなどが一つの基準にできます。 また、歯列矯正は治療にかかる期間が長くなるため、治療を受けるうえで医師との信頼関係も重要な要素となります。
できれば複数個所で歯列矯正の相談をしてみて、長期間の治療でも任せられると感じたクリニックでの診療を受けるとよいのではないでしょうか。

適切な治療法選びのポイント

歯列矯正には、ワイヤー矯正のほかにもマウスピース型矯正装置による治療などがあります。
どの治療法が適切かどうかは、元の歯並びや目的とする歯並びによっても異なりますが、全体的な噛み合わせをしっかり改善したい方や、歯が重なって生えてしまっているなど、歯並びの悪さが強い方の場合は、ワイヤー矯正でしっかりと治療を受ける方がよいケースが多いといえます。
一方で、前歯の見た目だけを整えたいというような場合であれば、マウスピース型矯正装置の方が手軽で費用も抑えやすいので、まずはどのような歯並びを目指したいかを明確にして、複数の治療法を取り扱う歯科医院で相談してみるとよいでしょう。

日々のケアをしっかりと行う

ワイヤー矯正による治療での失敗を避けるためには、毎日のケアをしっかり丁寧に行うことが大切です。
ブラケットやワイヤーの存在でいつも以上に歯磨きがしにくくなっていますので、歯科医院での歯磨き指導を受けながら、適切なケアが行えるように頑張りましょう。

まとめ

まとめ

ワイヤー矯正は、幅広い症例に対応可能で、歯並びや噛み合わせをしっかりと改善できる治療である一方で、適切な治療やケアができていないと、失敗の可能性もあります。
特に、保定期間の対応が不十分で後戻りしてしまったり、歯磨きなどのケアが適切に行えず、むし歯や歯周病、口内炎といったトラブルになってしまいやすい側面がありますので、やはりセルフケアもしっかりと行えるように気を付けましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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