顎関節症の治療に歯列矯正治療は必要なのでしょうか?顎関節症による歯列矯正治療は保険適用になるのでしょうか?本記事では顎関節症改善のための歯列矯正治療について、以下の点を中心に解説していきます。
- 顎関節症について
- 顎関節症の治療法について
- 顎変形症と顎関節症は別物
さらに、歯列矯正治療の費用を少しでも抑える方法についても書いておりますので、ぜひ最後までお読みください。
顎関節症による歯列矯正治療の保険適用について
顎関節症による歯列矯正治療は、保険は適用されません。顎関節症とは、顎関節周囲の筋肉や骨、軟骨の異常により、顎関節が正常に機能しなくなり、痛み、口を開けると関節の部分で音がする、口を開けづらいなどの症状が出る状態を指します。保険適用されないため自費となり、治療費が高額になります。
そもそも顎関節症とは
顎関節症とは一体どんなものなのでしょうか?
顎関節症の原因
顎関節症の原因は複数ありますが、代表的なものとしては以下が挙げられます。まず、顎関節周囲の筋肉や靭帯の異常な収縮によるものがあります。これは、ストレスや緊張などの精神的要因や、歯の噛み合わせが合わないことによる歯科的な問題が原因です。また、顎関節周囲の骨や軟骨の変形や破壊によるものもあります。これは、外傷や炎症、遺伝的な要因が原因です。顎関節症は、原因によって症状や治療法が異なりますので、詳しく検査を行い適切な治療を受けることが重要です。
顎関節症の症状、進行してしまったら
顎関節症は放置しておくと、症状が悪化する可能性があります。症状は、口を開け閉めするときに音がする、痛みを感じるなど、さまざまです。重度の場合には、顎の開口が制限されたり、口が開けられなくなったりすることもあるので注意が必要です。また、顎関節症が原因で頭痛や肩こりなどの症状が出ることもあります。放置せずに、早めに歯科医師に相談し、治療を受けることが大切です。治療には、口腔内の検査やレントゲン検査、リハビリテーション(理学療法)があります。治療方法については、症状や状態に応じて、医師が適切な方法を選択します。
顎関節症の治療
顎関節症はどのように治療するのでしょうか?歯列矯正治療は必ず必要なのでしょうか?保険適用でできる治療があるのか解説します。
顎関節症と顎変形症は別物
本顎関節症と顎変形症は、顎に関する疾患ですが、それぞれ異なる病態を示します。顎関節症は、顎の関節部分に問題があることによって引き起こされます。主な症状には、口を開けると痛みや音が発生したり口を閉じる際に違和感を感じるなどがあります。一方、顎変形症は、顎が大きい、顎が小さい、顎が曲がっているなどの原因で上下の歯が良く噛みあわない状態をいい、歯列矯正治療が必要となる場合があります。顎関節症と顎変形症は異なる病態のため、それぞれに適切な治療方法を行うことが重要です。顎関節症の場合は、保冷やマッサージ、口内環境の改善などが効果的とされます。顎変形症の場合は、歯列矯正による治療が必要となります。
スプリント治療は保険適用
顎関節症のスプリント治療は、顎関節症の症状を軽減するための治療法の一つです。スプリントは、歯科医師が作成したマウスピースのような装置で、上下の歯にかぶせます。スプリントを装着することで、かみあわせを正常な状態にし、顎関節症の症状を緩和できます。スプリント治療は、軽度から中等度の顎関節症の症状に対して有効であり、通常は2〜3か月の期間で治療を行います。また、スプリント療法は健康保険の適用範囲に含まれ、通常の検査やスプリント自体の費用が健康保険でカバーされます。治療にかかる費用は一般的には約8000円程度ですが、症状の程度や個別の状況によって異なる場合があります。
顎変形症の治療
顎変形症の治療にはどんなものがあるのでしょうか?
外科的矯正治療の利点
顎変形症の治療には、矯正治療だけではなく、顎外科手術が必要になります。外科的矯正治療は、手術によって顎骨を移動させることで、顔のバランスや機能を改善する治療法です。外科的矯正治療の利点は、以下のようになります。
- 顎関節症が改善する可能性がある:外科的矯正治療は、矯正治療だけでは改善しないような大きな顎の骨格異常や咬み合わせ異常に対して、大幅な改善が期待できます。
- 一度の治療で完了:矯正治療では、装置を着用する期間が長く、治療期間も長引くことがありますが、外科的矯正治療は一度の手術で完了するため、治療期間が短くて済みます。
- 患者さんの負担が少ない:手術中には全身麻酔を使用するため、患者さんは手術中には痛みを感じることがありません。また、手術後の経過も順調であれば、2週間ほどで通常の生活に戻れます。
外科的矯正治療は、手術によって行われるため、リスクや副作用もあります。そのため、治療前には医師との十分な相談が必要です。
治療する際の期間
顎変形症の治療期間は症状の程度や治療方法によって異なります。軽度の場合であれば、約1年半から2年程度の治療期間で改善されることがありますが、中程度や重度の場合は、2年から3年以上の治療期間が必要な場合もあります。治療期間中は、定期的な歯科医院の受診や治療器具の装着などが必要になります。ただし、個人差があるため、自身の症状について詳しく医師に相談し、適切な治療期間を確認することが大切です。
歯列矯正治療を少しでも安くする方法
顎関節症治療での歯列矯正治療は保険適用にならない事がわかりました。少しでも歯列矯正治療の費用を安くするためのポイントを紹介します。
保険適用ができるか確認する
歯列矯正は基本的には自費診療ですが、一部の場合には保険が適用されることがあります。具体的な保険適用条件は以下の通りです。
- 「厚生労働大臣が定める疾患」に起因した咬合異常に対する矯正歯科治療
- 前歯3歯以上の永久歯萌出不全に起因した咬合異常(埋伏歯開窓術を必要とするものに限る)に対する矯正歯科治療
- 顎変形症(顎離断等の手術を必要とするものに限る)の手術前・手術後の矯正歯科治療
ただし、これらの場合でも保険適用を受けるためには正式な届出を行ったクリニックで治療を受けることが必要です(障碍者自立支援指定医、顎口腔機能診断施設)。 一方、マウスピースの矯正装置は保険適用外です。たとえば顎変形症の場合でもマウスピースを使用する場合は、自費診療となります。 保険適用外であっても、医療費控除の対象になることもあります。歯列矯正治療が見た目の改善ではなく、噛み合わせの改善などの目的で行われる場合は、医療費控除の対象になる可能性があります。 医療費控除は年間10万円以上の医療費を支払った場合に申請が可能であり、一定額が還付されます。歯列矯正治療は費用が高額なため、対象になる場合は申請して負担を軽減できます。 申請には診断書が必要な場合がありますので、クリニックに相談してみることをおすすめします。
部分矯正で済まないかよく相談すること
歯列矯正治療の費用は、症状や治療期間、治療方法によって異なります。一般的に、全顎矯正よりも部分矯正の方が費用が安くなります。部分矯正とは、歯並びの悪い部分だけを矯正する方法です。しかし、部分矯正は全体の咬合バランスを考えると、しばしば治療後に再び歯並びが悪くなることがあるため、適切な治療を行うことが重要です。また、治療費用を抑えるために、一度に全ての治療をせず、段階的に行うプランもあります。しかし、部分矯正や段階的な治療には、治療期間が長くなることや、治療中に歯並びが悪化する可能性があることも覚えておく必要があります。
まとめ
顎関節症のための歯列矯正治療は保険適用になるのかについてお伝えしてきました。顎関節症のための歯列矯正治療は保険適用になるのかの要点をまとめると以下の通りです。
- 基本的に顎関節症の治療のための歯列矯正治療は保険適用にならない
- 顎変形症の場合は歯列矯正治療が保険適用になる場合が多い
- 顎関節症治療にはスプリント治療があり、保険適用である
以上が顎関節症での歯列矯正治療についてお考えの方の参考になれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。