「歯列矯正でエラが変化する」と聞いたことはありませんか。
結論からいうと、歯列矯正でエラ(顎角部)の形態が変化することはありません。しかし、エラの印象には顎の筋肉が深く関わっています。
そのため、全ての人に変化が見られるわけではありませんが、顎の筋肉がエラの張りの原因になっている場合は改善した印象になる可能性があるのです。
今回は歯列矯正で変化が見られやすい方と見られにくい方の特徴・治療方法・エラに限らず顔に変化が見られるケースなどについて解説します。
歯列矯正や他の治療法を行うときは、歯科医師としっかり相談してから治療に臨むことが重要です。
歯列矯正でエラの変化が起こる?
歯列矯正は主に歯並び・噛み合わせなどを改善するメリットのある治療方法ですが、それが顔の形状に影響を及ぼすデメリットがあります。費用は種類にもよりますが、たとえばマウスピース矯正の相場は一般的に50万円〜100万円(税込)です。
噛み合わせが改善されると咬筋が適切に使われ、筋肉が原因のエラ張りが軽減する可能性があります。しかし、骨格によるエラ張りの場合、エラ(顎角部)の形態が変わることはありません。
全てのケースにおいてエラ張りが改善されるわけではないので、原因を知り適切な治療を行うことが大切です。
エラ張りが改善されるケースはある
歯列矯正によってエラ張りが改善する可能性があります。
歯列矯正を行うことで、咬筋を正しく使えるようになるためです。実際に、顔のエラ部分は咬筋が過剰に発達することで目立つようになります。
歯並びが改善され噛み合わせ位置が正しくなると、食事・会話で無駄な力が抜けて咬筋を使いすぎることがなくなるでしょう。
そのため、咬筋の筋力が適切になりエラ張りが目立たなくなります。
しかし、骨格や歯ぎしりが原因の場合は改善されない可能性があるので、自身のエラ張りの原因を解明して正しい治療を受けましょう。
脂肪や親知らずによるものの場合も
エラが張って見える原因に脂肪や親知らずによるものがあります。これらの場合は歯列矯正では改善が見られない場合が多いです。
しかし、このようなケースの場合は「自身の生活習慣を見直す」「美容整形を受ける」などの方法でエラが目立つのを抑えられます。
脂肪が原因の場合に多く行われる方法として、ボトックス注射があります。
また、親知らずが原因となっていることは少ないです。しかし、親知らずを抜くと親知らずを支えていた骨が痩せるので、その結果としてエラが目立たなくなるといわれています。
歯列矯正でエラ張りが改善しやすいケース
歯列矯正でエラ張りが治りやすいケースには咬筋という顎の筋肉が深く関わっています。
咬筋を正しくつかうことや噛み合わせを治すことによってエラ張りは改善されることが多いです。どちらも歯並びが関わっているので歯列矯正によって改善が可能です。
- 咬筋が正しく使えるようになる
- 噛み合わせが改善される
この2つについて詳しく解説していきます。
ただし、歯列矯正によって必ずしも改善が見られるわけではありません。あくまで改善が見られやすいケースとして解説します。
咬筋を正しく使えるようになる
歯列矯正によって咬筋が正しく使われるようになると、エラの張りが改善されることがあります。
咬筋とは会話・食事など顎を動かす動作のときに必ず使われる筋肉です。咬筋の過剰な発達によってエラが目立って見えることがあります。
咬筋が過剰に発達する原因として歯並び・噛み合わせ・歯ぎしりなどがあります。また無意識のうちに歯を噛み締めている人も、咬筋が発達しやすいでしょう。
歯列矯正で歯並び・噛み合わせを治すと、噛むときに不要な力がなくなるため咬筋の余計な筋肉が落ち、その結果エラ張りが軽減されます。
このように咬筋が正しく使われると、筋肉量が適切になりエラ張りが目立たなくなるでしょう。
噛み合わせが改善される
噛み合わせが改善されることで、エラ張りが目立たなくなることがあります。
噛み合わせの症状のうち、エラ張りに関わっているものが過蓋咬合です。過蓋咬合は下の前歯が上の前歯によって隠れている深い噛み合わせのことを指します。
過蓋咬合は噛み合わせが深く、噛む力が強くなるため顎にかかる負担が大きいとされています。
顎への負担が大きくなると咬筋も良く使われるため、咬筋が過剰に発達しエラが目立ってしまうでしょう。
歯列矯正によって噛み合わせが良くなると、余計な負担が少なくなりエラ張りが目立たなくなります。
歯列矯正でエラ張りが改善しにくいケース
歯列矯正でエラ張りが改善しにくいケースに、歯ぎしりなどの悪習慣・骨格によるものがあります。
歯ぎしりによるものは歯列矯正でも改善しにくいため、歯ぎしりの改善が必要です。
骨格によるものの場合、顎角部の形態修正術(美容整形)が必要となります。歯列矯正に比べると費用が高くなるため、しっかり考えて行いましょう。
ただし、どちらも歯列矯正では改善しにくいだけであって、エラ張りを治すことが不可能ではないため、自身に合った選択を取りましょう。
歯ぎしりなどの悪習慣がある
歯ぎしりなどの悪習慣があると、噛み合わせに異常がなく、咬筋が正しく使われていても改善しにくいことがあります。
歯ぎしりの原因はストレスといわれています。また、無意識のうちに行っている場合もあり、歯ぎしりをしないようにするのは大変です。
朝起きたときに歯が痛む方は、寝ているときに歯ぎしりをしている可能性があります。
無意識に行っている歯ぎしりを改善できないと、噛み合わせが良くても歯ぎしりによって咬筋を過剰に使ってしまうため注意が必要です。
歯ぎしりを予防するものとして、寝るときに装着するマウスピースがあります。このようなもので対策できると、エラ張りが改善できる傾向にあります。
骨格によるもの
骨格によるエラ張りは歯列矯正では改善できません。
エラが張って見える特徴として、下顎角(エラ)部分が突出していることがあります。下顎角は耳下の顎骨のことです。
横顔で顎からつながる下顎底に対して下顎角の骨が外に出ていると、歯列矯正で治すことは難しいでしょう。
このような場合は、美容整形による外科手術で改善できます。しかし、美容整形手術は決して安いものではありません。場合によっては歯列矯正より費用が高くなることがあります。
自身で気になり、改善したいと強く思うのであれば歯科医師に相談するのが良いでしょう。
歯列矯正治療でエラが張ってしまうリスクはある?
歯列矯正を行うときに、エラが張ってしまうリスクは低いといえます。
稀にそういう情報を見かけますが、エラが張っている原因は前述した通り「咬筋によるもの」か「骨格によるもの」のためです。
現に、歯列矯正をするだけで骨格は変わらず、咬筋が過剰に使われることもありません。
しかし、治療中にエラ周辺に違和感をおぼえたり張りを感じたりすることがあります。
これは治療によって口腔内の状態が一時的に変わることで起こるため、実際にエラが張るわけではありません。
歯列矯正による顔の変化は?
歯列矯正によって顔に変化が見られるときがあります。歯並びが悪いと口周りが前に出て見えたり、エラが張ったりすることがあるでしょう。このような場合は良くなる可能性があります。
- Eラインが整う
- 小顔になる
- スマイルラインがきれいになる
- フェイスラインがすっきりする
- 顔のゆがみが改善する
こちらについて詳しく解説していきます。
ただし、歯列矯正を行った人が必ず改善するわけではありません。それぞれの歯並びや骨格によって結果が異なるため注意しましょう。
Eラインが整う
歯列矯正で歯を正しい位置に戻すとEラインも綺麗になるといわれています。
Eラインとは理想的な横顔の目安になるもので、鼻先と下顎の出ている部分を結んだラインのことです。
例えば、出っ歯・受け口・上下の歯がどちらも前に突き出している場合は、横顔に影響がでやすくなります。
これらは歯列矯正で改善することで、綺麗な横顔を手に入れられるでしょう。
歯列矯正でEラインも綺麗にしたい場合は、歯科医師に「Eラインのことを伝える」ことで、それに合わせた矯正をしてもらえます。
小顔になる
歯列矯正には直接的に小顔にする効果はないといわれています。しかし、歯並びによっては効果を実感できることはあるでしょう。
例えば、出っ歯や叢生(そうせい)は唇付近に歯があるので、歯列矯正で改善できると口元がすっきりして、小顔になったと感じられます。
またエラ張りが改善されて、小顔の実感を得ることも可能です。噛み合わせが良くなると奥歯が合わさっている状態を治すことで、エラが張らず小顔に見えることがあります。
スマイルラインがきれいになる
スマイルラインとは口角を上げて笑ったときに見える上の前歯の先端を結んだものを指します。
スマイルラインは、前歯のラインが下唇に沿ってカーブを描いている状態が理想的です。
歯並びがガタガタしていたり隙間が多かったりすると、スマイルラインが崩れていて綺麗な笑顔を作れないことがあります。
歯列矯正によって歯の位置を調整し、スマイルラインを美しく整えることが可能です。
見た目の美しさだけではなく、正しい噛み合わせによる口腔内の健康維持にも効果が期待できます。
フェイスラインがすっきりする
歯並びや噛み合わせを整えると、顔の輪郭がすっきりすることがあります。
エラが張って見える人・角張ったラインの人・下膨れ顔の人は、歯列矯正を行うことでフェイスラインをすっきり見せられる可能性があります。
歯列矯正を行うとき抜歯を伴うことがあり、抜歯によって歯を支えていた骨が痩せて、結果としてフェイスラインがすっきりします。
顔のゆがみが改善する
顔は歯並び・骨格・悪習慣などが原因となってゆがんでしまうことがあります。歯並びや噛み合わせが悪いと、筋肉を均等に使えずゆがみの原因になるためです。
顔のゆがみの症状には、左右の位置がズレている・顎の関節が痛むなどがあります。歯並びや噛み合わせが悪い場合は、歯列矯正で改善が可能です。
しかし、骨格が原因となっている場合は歯列矯正では治せず美容整形外科手術が必要になります。また悪習慣が原因となっている場合は、悪習慣を正さなければ改善できません。
歯列矯正以外にエラの治療法はどんなものがあるの?
歯列矯正以外での治療法としてボトックス注射・美容整形手術があります。
どちらも実績が多く安全なものですが、リスクや副作用があるため注意しましょう。
リスク・副作用には、痛み・腫れといった軽い症状から神経麻痺の症状が見られることもあります。
また、これらの方法を取ったにもかかわらず、歯列矯正が必要な場合があるため歯科医師との話し合いが重要です。
歯列矯正に比べて美容整形手術は費用が高くなる可能性があるので、自身の経済状況も合わせて判断すると良いでしょう。
ボトックス注射
ボトックスとは、天然のタンパク質を精製した成分で、世界中で実績があるものです。安全性は確立されています。
ボトックス注射は筋肉の緊張を和らげる効果があり、エラ張りに使用した場合は咬筋を緩めることでフェイスラインをすっきり見せることが可能です。
効果の持続期間は一般的に4〜6ヶ月程度といわれており、持続期間が過ぎた場合は元に戻ることがあります。
また副作用・リスクとして内出血・腫れ・むくみ・違和感などがあります。
ボトックス注射は手軽にできる美容整形となりましたが、副作用やリスクが少なからずあるので、歯科医師と話し合い不安があれば事前に解消することが重要です。
外科手術
エラ張りを治療する方法に美容整形手術があります。
エラ張りを改善する手術法はいくつかあり、骨格・咬筋のどちらが原因となっているかで手術法が異なるでしょう。
またエラの美容整形手術では口腔内から手術をするので、顔に手術痕が残りにくいとされており、安全な手術です。
しかし、安全とはいっても何らかのリスク・副作用・不確実性を持つことが多いです。口腔内を切開して骨を削るため、腫れ・痛み・神経麻痺を起こす可能性があります。
また、ダウンタイムもボトックス注射に比べて長くなることが多いです。
このような副作用・リスク・不確実性も含めて、必ず医師と相談してください。自身の不安や悩みがあればしっかりと確認して、不安を解消してから治療に臨みましょう。
まとめ
歯並びによって、エラの張りが見られる可能性があります。エラの張りには咬筋という顎の筋肉が関係しており、歯並びが悪いと咬筋が過剰に発達するためです。
歯列矯正によって咬筋を正しく使えるようになれば、エラの張りを抑えられる可能性があるでしょう。
歯列矯正以外にもボトックス注射・美容整形外科手術がありますが、歯列矯正に比べるとリスクや副作用の可能性が高く、費用も高くなります。
理想の自分に近づきたい場合は、歯科医師にしっかりと相談して、適切な治療を受けることが大切です。
治療に対する不安・悩みを解消してから、治療を開始しましょう。
参考文献