噛み合わせ

噛み合わせの正しい位置とは?治療した方がいいケースや治療方法

噛み合わせの正しい位置とは?治療した方がいいケースや治療方法

噛み合わせとは、上下の歯列が噛み合っている状態を指す言葉で、専門的には咬合(こうごう)とも呼ばれます。 いわゆる“歯並び”とは異なり、鏡で見るだけでは確認できない部分も多いため、噛み合わせが気になる場合は、歯科医院で診てもらった方が良いといいます。なぜなら噛み合わせに異常があると、歯や歯周組織、顎関節にまで多大な悪影響が及ぶこともあるからです。

ここではそんな噛み合わせの正しい位置や治療した方が良いケース、具体的な治療方法などを詳しく解説します。

噛み合わせの正しい位置とは

噛み合わせの正しい位置とは

どのような歯並びが正しいとされていますか?
正しい噛み合わせとは、次のような状態を指します。
◎オーバーバイトとオーバージェットが2~3mm以内
上下の前歯の位置関係を表す指標に、オーバーバイトとオーバージェットがあります。

オーバーバイトは上の前歯が下の前歯に覆い被さる上下関係を示し、噛んだ時に2〜3mm程度被さる状態が正常なオーバーバイトです。オーバーバイトの値がマイナスになると、上下の前歯の間にすき間が生じます。出っ歯や開咬(かいこう)などでは、マイナスが大きくなります。

オーバージェットは、前歯の水平的な位置関係を表す指標で、今度はすき間がある状態がプラスとなります。一般的には2〜3mm程度のオーバージェットがあれば、上下の前歯が直接的に接触しないことから、良好な咬合関係にあると考えられています。この値が0だと前歯同士がぶつかる切端咬合(せったんこうごう)で、マイナスになると下顎前突である受け口です。

◎きれいなU字型の歯列弓を形成している
上下の歯列がともにきれいなU字型のアーチを描いていると、咬合関係も良好となります。

◎早期接触がない
自然に噛んだ時に特定の歯が先に当たる状態は、噛み合わせに異常があることを意味します。そうした早期接触がなく、自然に咀嚼できる状態であれば正しい噛み合わせの位置といえます。

◎上下の前歯の正中が合っている
一番前の歯である「中切歯」の中央部分が、上下できれいな一本線で結ばれている状態が正しい噛み合わせの位置です。また、その一本線は口唇の正中と一致している必要があります。

自分の歯並びが正しいかを調べる方法はありますか?
歯並びや噛み合わせの状態は、次の方法で簡易的に調べることができます。

◎鏡で確認する方法
上下顎の正中線のずれは、自分でも鏡を見て確認ができます。左右非対称な部分があれば、歯並びや噛み合わせに異常がある可能性が高いです。

◎割り箸を噛む方法
割り箸を横にして噛んだときにガタガタとグラつく場合は、噛み合わせに水平的な異常があることを意味します。とくに奥歯でグラつきがある場合は注意が必要です。奥歯は咀嚼機能の主体となる歯なので、正しく噛み合っていない時の悪影響も自ずと大きくなります。

悪い噛み合わせとはどのような状態ですか?
顎や前歯が前に出る上顎前突、下顎前突、上下顎前突のほか、前歯が下の歯に被さりすぎる過蓋咬合(かがいこうごう)、噛んでも前歯の間が開く開咬(かいこう)、歯が重なってしまう叢生(そうせい)、一般的に「すきっ歯」と呼ばれる空隙歯列、一部の下の歯が上の歯よりも前に出る交叉咬合などが挙げられます。いずれも見た目が悪いだけではなく、咀嚼機能にまで異常をきたすため、矯正治療で改善するのが望ましいです。
噛み合わせが悪いとどんな問題がありますか?
悪い噛み合わせには、審美障害、咀嚼障害、発音障害、嚥下障害などを伴います。中でもとくに咀嚼に関する障害は影響が大きく、歯の寿命を縮めたり、歯茎や歯槽骨に炎症をもたらしたりすることがあるため、十分な注意が必要です。その状態を長年放置していると、顎関節症の発症確率も高めます。
過蓋咬合について教えてください。
噛み合わせが深い状態を過蓋咬合といいます。上記で解説した「オーバーバイト」のプラスが大きい症例で、ひどい場合は噛んだ時に上の前歯しか見えなくなります。上下の前歯が過剰に接触することで摩耗や破折を招いたり、奥歯や顎関節に大きな負担がかかったりするなどのデメリットを伴います。過蓋咬合は鏡で見て自分で確認することができますので、心配な人はセルフチェックしてみましょう。

噛み合わせが正しい位置でない「咬合性外傷」

咬合性外傷とは何ですか?
咬合性外傷とは、悪い噛み合わせによって歯や歯茎、歯槽骨にダメージが及ぶ病気です。むし歯治療で装着した詰め物・被せ物の高さが合っていなかったり、さまざまな不正咬合を抱えていたりすることが主な原因として挙げられます。
咬合性外傷はどのような症状が出ますか?
咬合性外傷では、詰め物・被せ物がよく外れる、むし歯になっていないのに歯がしみる、歯周病ではないのに歯茎が赤く腫れる、歯茎が下がる、といった症状が見られます。
咬合性外傷が疑われる兆候があれば、教えてください。
普段から特定の歯が強く当たっていて、その部分に痛みや歯茎の腫れ、歯の動揺などが見られる場合は咬合性外傷が疑われます。歯科医院で検査をすることで、適合の悪い詰め物・被せ物や何らかの不正咬合が認められる可能性があります。歯ぎしりや食いしばりといった悪習癖がある人も咬合性外傷に注意しなければなりません。むし歯や歯周病を発症している場合は咬合性外傷との見極めが難しくなるので、いずれにせよ歯科や口腔外科の受診をおすすめします。

噛み合わせを正しい位置にするための治療方法

噛み合わせを正しい位置にするための治療方法

噛み合わせはどうやって治療するのですか?
悪い噛み合わせは、矯正歯科治療で改善することができます。ワイヤーやマウスピースで歯に適切な矯正力をかけることで、上顎前突や下顎前突、開咬などの不正咬合を根本から改善します。顎変形症のような骨格的異常が背景にある場合は、矯正歯科治療に加えて、外科的に骨を切除する手術が必要となるケースもあります。
矯正歯科治療について、詳しく教えてください。
悪い噛み合わせを治す矯正歯科治療は、小児矯正と成人矯正の2つに大きく分けられます。小児矯正は、成長期に施す歯並びや噛み合わせの治療で、顎の骨の成長を正常に促すことで、上顎前突や下顎前突などを改善することが可能です。成人矯正は歯並びの乱れを細かく整える治療で、前に出ている歯を正常な位置に動かしたり、歯列内のすき間を歯の移動によって埋めたりすることで、噛み合わせを改善します。
矯正歯科治療のメリット・デメリットは?
矯正歯科治療で歯並びと噛み合わせを改善すると、口元や横顔の審美性が高まるため、自分の顔に自信を持てるようになります。その結果、自然と笑えるようになり、人とのコミュニケーションに対して積極的になる人も多いです。そのほか、歯磨きがしやすくなってむし歯や歯周病リスクが低下する、食べ物を咀嚼しやすくなる、歯や歯周組織、顎関節への負担を減らせる、といったメリットが得られます。

ただし、矯正歯科の治療中は歯磨きしにくいことから、むし歯や歯周病リスクが高くなる点に注意が必要です。そのほか、装置が目立って見た目が悪くなる、ワイヤーが口内の粘膜を刺激して口内炎ができる、歯が移動する痛みを伴う、治療の過程で歯根が吸収されるリスク、といったデメリットを伴うことも知っておきましょう。

編集部まとめ

私たちの歯には、正しい噛み合わせが存在しています。上下の歯列がその位置で噛み合っていないと、歯の寿命が縮まったり、顎の骨が下がったりすることがあるため、十分な注意が必要です。そもそも悪い噛み合わせだと、食べ物を噛みにくい、歯磨きがしにくい、見た目が良くない、といったデメリットがあるため、日常生活でストレスを感じる場面も多いことでしょう。悪い噛み合わせは矯正歯科治療で改善できるケースが多いので、気になる症状がある場合はまず矯正歯科治療に対応している歯科医院に相談してください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗歯科医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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