マウスピース型矯正治療とは、透明なプラスチックあるいはセラミック製のマウスピースを装着して歯並びを改善していく治療法です。
ワイヤー矯正とは異なり透明なので、目立ちにくく人目を気にせず歯列矯正ができます。金属アレルギーがある人も使用できます。
自分で取り外しができるため、今までどおり食事を楽しみながら歯並びを改善していくことが可能です。歯並びや噛み合わせの改善でメリットが複数あります。
本記事では、マウスピース型矯正治療の流れや治療経過を早める方法を詳しく解説していきます。
マウスピース型矯正治療の経過の目安
マウスピース型矯正治療の治療期間は、患者さん一人ひとりによって性格や生活習慣が異なるため個人差があります。
マウスピース型矯正治療は患者さん主体で治療をしていくため、治療の目的や目標を明確にしておくことが重要です。
治療の目的や目標を明確にすると、マウスピースを装着するモチベーションも上がりやすくなります。
逆に治療の目標や目的が明確ではないと、モチベーションを保てず治療が進みにくくなるでしょう。
すべての患者さんが上手に装着できるとは限らないので、自分に合った治療法の選択が重要です。
治療期間の目安
一般的な治療期間の目安は、患者さんそれぞれの歯の状態にもよりますが、大体1〜5年です。初めは口腔内に違和感や不快感がある方もいます。
一般的には数日〜1週間で慣れてくるでしょう。治療の段階に合ったマウスピース型矯正装置を2週間毎に交換して、徐々に歯並びを改善していきます。
軽度の場合は短期間で治療が完了しますが、重度の場合は長期間の治療となる傾向です。
また、徐々に歯を移動させるので長時間マウスピース型矯正装置を着ける必要がありますが、装着時間を守らないとその分治療期間が延びる可能性が高まります。
なるべく短期間で治療を終わらせたい場合は、装着時間を守ることが重要です。
効果が実感できる時期
効果が実感しやすい時期は個人差がありますが、一般的には3〜6ヵ月です。
治療を始めてすぐに歯が移動することはありません。歯の移動はゆっくりなので、長期間マウスピース型矯正装置を着けておくことで、徐々に歯並びを調整していきます。
効果が実感できる歯並び
マウスピース型矯正治療で効果を実感しやすい歯並びを紹介します。
- 上突咬合(出っ歯)
- 下突咬合(うけ口)
- 乱杭歯(デコボコに生えている状態)
- 開咬(前歯の噛み合わせが合わない状態)
- 空隙歯列(すきっ歯)
上記に挙げた歯並びが軽度〜中程度であれば、マウスピース型矯正治療で効果を実感しやすいです。ただし歯はゆっくりと移動するため、すぐには効果を実感しにくいでしょう。
また、患者さんによっては歯周病の治療や抜歯などの影響で歯が移動しづらい方がいます。
日にちをおいて鏡で少しずつ移動していることを確認するなど、モチベーションを維持する習慣をつくるのもおすすめです。
マウスピース型矯正治療の流れ
マウスピース型矯正治療は、ワイヤー矯正治療とは異なり、患者さん自身で取り外しが可能な治療法です。
手軽な治療法である一方、患者さんによっては歯並びや噛み合わせの度合によりマウスピース型矯正治療が合わない場合もあります。
治療を始める前に、治療の流れを把握しておくことはとても重要です。流れを理解したうえで、不安なことや気になることを相談してから治療を始めましょう。
カウンセリング
まずは、カウンセリングです。カウンセリングでは、患者さんの悩みや気になっていることをヒアリングします。
治療計画を立てていくためには、検査が必要です。口腔内を確認し、歯の状態や口元などを見て治療法や治療期間、費用などを説明します。
また、マウスピース型矯正治療のメリットとデメリットも詳しく説明します。カウンセリングで、治療への心配事や気になることを歯科医師に相談しましょう。
精密検査
カウンセリングで治療内容を理解し納得したらマウスピース型矯正治療が始まりますが、その前に精密検査が必要です。
精密検査の結果によって治療計画を立てていきます。治療計画は治療をスムーズに進めるためにも重要です。
精密検査では、歯型の採取や口腔内の状態、噛み合わせの状態などを見ながら治療を始めるための情報を集めていきます。
口腔内スキャン・写真撮影
次に顔全体や口元、口腔内の写真撮影と歯や顎のレントゲン撮影です。口腔内スキャンで歯型のデータを採ります。
現在の歯並びや噛み合わせを記録しておくことは、治療の経過を確認するためにとても大切です。また、治療後にどのように変化したかを比較できます。
シミュレーション作成
シミュレーション作成とは、ソフトウェアで治療後に歯並びや噛み合わせがどのように変化するかを予測しシミュレーションすることです。
シミュレーションにより、歯がどのように移動するのか、最終的にどのような歯並びになるのかの確認が可能です。
治療期間や治療内容などもあらためて詳しく説明します。治療前にシミュレーションしておくと治療の方向性が見えやすく、順調に進めやすくなります。
マウスピース型装置による歯列矯正
いよいよマウスピース型矯正装置を着けて治療開始です。患者さんそれぞれに合ったマウスピース型矯正装置を着けます。
着け始めはまだ慣れないので口腔内に違和感や不快感がある方も少なくないでしょう。一般的には数日〜1週間で慣れてきます。
マウスピース型矯正装置は、治療の段階に合ったマウスピースを2週間毎に交換し、徐々に歯並びを改善していきます。
装着時間は、食事と歯磨き以外は装着するので1日20時間以上です。
装着時間は長いですが、食事中と歯磨きのときは取り外すことができるので、今までどおり食事を楽しみながら治療できます。
保定
歯並びや噛み合わせが改善されたら、リテーナーと呼ばれる保定装置を着けます。
人の身体は変化があるともとに戻そうとする性質があるので、何もせず日常生活を送っているともとに戻ってしまう可能性があります。
保定装置は、歯の位置がもとに戻らないよう歯並びを維持しておくために必要です。歯の位置が戻ってしまっては、長時間かけて治療した意味がありません。
歯並びが改善した後も、歯科医師の指示にしたがって保定装置を着け、きれいな歯並びを維持していきましょう。
マウスピース型矯正で顔は変化する?
マウスピース型矯正をすると、顔の印象が変わることがあります。
歯並びや噛み合わせが改善され、顔全体のバランスに影響を与えるためです。ほとんどの場合大きな変化はありません。
変化の度合いは個人差によりますが、歯並びが整うことで口元のバランスが変わり顔全体が明るく見えることがあります。
変化が見込める部分と見込めない部分があるため、それぞれ詳しく解説していきます。
変化が見込める部分
マウスピース型矯正によって見込める部分は、歯並びの改善による口元の印象です。
個人差はありますが、歯並びや噛み合わせが改善すると口元の印象が変わり、顔全体の雰囲気も明るく見えることがあります。
また、正面からの印象だけでなく横から見た印象も変わることがあります。横顔の印象が変わる主な要因は、上顎前突(出っ歯)や反対咬合(うけ口)の改善です。
上突咬合(出っ歯)や下突咬合(うけ口)が改善されると、唇の閉口時の位置が変わり、すっきりとした印象を与えます。
口元の印象ひとつで、他人からの第一印象が変わるケースも少ないでしょう。
変化が見込めない部分
逆にマウスピース型矯正により変化が見込めない部分は、骨格による顔の大きさや歯の大きさです。
治療後に歯並びや噛み合わせが改善されても、骨格が変わることはほとんどありません。そのため顔の大きさの変化は見込めないでしょう。
骨格を変えるには、基本的に外科的な治療が必要です。
また、マウスピース型矯正では歯の大きさも変わりません。ただし歯並びが改善することで前歯や八重歯が目立ちにくくなり、小さく見えるケースはあります。
歯並び以外にマウスピース型矯正で改善できること
マウスピース型矯正治療で、歯並びの改善だけでなく、噛み合わせや口腔内の健康の改善も期待できます。
また、滑舌がよくなったり食事の幅が広がったりする効果も期待できるでしょう。
歯並びが悪いと、歯ブラシやフロスが行き届かず歯垢や歯石が溜まり、口腔内が不衛生になりやすいです。
歯に磨き残しがあるとむし歯になりやすい傾向ですが、歯並びが改善されることで磨き残しのリスクが減り、口腔内の健康が維持しやすくなります。
また、噛み合わせにより発音に影響を与えることもあります。噛み合わせの改善により舌の動きがスムーズになり、滑舌がよくなることが期待できるでしょう。
食事に関しては、噛み合わせがよくなると硬い物をしっかり噛みやすくなるため、食事の幅が広がり今まで以上に食事の時間を楽しめるようになるでしょう。
歯並びが整うことで、顔全体の印象が変化し、第一印象がよくなるケースもあります。
ほかにも、噛み合わせがよくなると姿勢や肩こりが改善されるといわれています。噛み合わせが悪い方は、頭部前傾姿勢になりやすい傾向です。
嚙み合わせの改善で口腔周りの筋肉や下顎の位置が正常になり、首周りの筋肉に影響を与え姿勢が改善されることがあります。
姿勢が改善されると、肩こりが改善されるケースもあるでしょう。姿勢は生活習慣と関連し、長年悪い姿勢を続けているとさまざまな身体症状が出てきます。
噛み合わせの改善とともに、よい姿勢を意識した生活習慣を身につけることも大切です。
マウスピース型矯正は歯並びの改善だけでなく、日常生活の質を向上させ、健康維持にもつながるでしょう。
マウスピース型矯正の治療経過を早める方法
歯列矯正治療はできるだけ早く終わらせ、効率よくきれいな歯並びを手に入れたいと考えている方は少なくないでしょう。
そこで、マウスピース型矯正の治療経過を早める方法を紹介します。
治療計画を重視してクリニックを選ぶ
人によって歯並びの程度が異なり治療期間が変わるのと同様に、クリニックや歯科医師によっても治療計画は異なります。
一般的に大きな差はないものの、歯科医師との意思疎通ができていないと、治療をしていくことがストレスになる場合もあるでしょう。
歯は人にとって生きていくうえで大切なものです。大切な歯の治療を信頼できる歯科医師に任せることで、治療へのストレスも軽減しやすくなります。
治療を始める前にホームページや評判などを確認し、実際にカウンセリングを受けてから自分に合った治療計画を立ててくれるクリニックを選択することが重要です。
心配なことや気になることなど、悩みを解決し理解したうえで治療を始めましょう。
装着時間を守る
治療経過を早めるためには、装着時間をしっかり守ることが重要です。
マウスピース型矯正装置は食事のときと歯磨きのとき以外着ける必要があり、1日20時間以上は着けていなければなりません。
お口のなかに異物があると違和感や不快感があるかもしれませんが、装着時間を守ることで歯が計画どおりに動き、治療が順調に進みやすいです。
外している時間が長いと歯の動きが遅れ、治療も計画どおりに進みにくくなります。
なかには食事や歯磨きの後に着け忘れてしまったり、外食時に外してなくしてしまったりする方もいます。
治療中は専用のケースを持ち歩き、食事のときはケースに入れて忘れないことが大切です。
治療を早く終わらせるためには装着時間を守り、マウスピース型矯正装置を外している食事の時間は思いきり楽しんで、治療へのモチベーションを保つようにしましょう。
マウスピース型矯正を行う際の注意点
マウスピース型矯正治療の注意点がいくつかあるので挙げていきます。
- 装着時間によって効果に差が出てくる
- 歯の傾斜移動が多い
- 抜歯した場合想定外の移動が発生することがある
- 治療前のシミュレーションでは歯根の位置に関する情報が少ない
- 歯の状態によってキープ力に差が出る
- 噛み合わせ部分を覆うため臼歯に圧がかかることがある
- 保険適用外
上記に挙げた注意点をしっかり把握し理解したうえで治療を進めていくことが重要です。注意点については、一般的に歯科医師から詳しく説明があります。
マウスピース型矯正治療は、患者さん自身で取り外すことが特徴です。
患者さんが治療に対するモチベーションを維持し続けることで、スムーズに治療が進みます。
気になる点がある場合は治療前に歯科医師に相談し、不安を解消しておくことをおすすめします。
まとめ
マウスピース型矯正治療は、目立ちにくい透明のマウスピースを使って少しずつ歯を移動させて歯並びを整える治療法です。自分で取り外しが可能なので食事も楽しめます。
治療期間は個人差がありますが、一般的には約1〜5年です。人によって歯並びや噛み合わせの度合が異なるため、マウスピース型矯正を検討している方は歯科医師と相談し、治療計画をしっかり守ることが重要になります。
マウスピース型矯正治療を早めるには、治療計画を重視してクリニックを選択することと装着時間を守ることが大切です。
マウスピース型矯正治療のメリットは、複数あります。歯並びや噛み合わせを改善し、日常生活の質を上げていきましょう。
参考文献