ワイヤー矯正

乳児の歯並びはすきっ歯(空隙歯列)が理想?理由・対処法などを解説

乳児の歯並びはすきっ歯(空隙歯列)が理想?理由・対処法などを解説

親として、子どもの歯並びは気になるところです。歯並びがよいと見た目の印象もよくなるので、我が子にはぜひきれいな歯並びを手に入れてほしいと思うことでしょう。

とはいえ、乳歯の歯並びがそのまま永久歯の歯並びと同じになるわけではありません。乳歯の歯並びはどのようなものが理想なのでしょうか。

当記事では、乳歯の理想の歯並びを詳しく解説していきます。乳歯の歯並びのために避けるべきポイントや、歯列矯正の方法も紹介するので、最後までお読みいただければ乳歯の歯並びに対する理解を深められるはずです。

乳歯の歯並びはすきっ歯(空隙歯列)が理想的

笑顔の赤ちゃん

一般的に乳歯の歯並びはすきっ歯(空隙歯列)が理想だといわれています。大人であればすきっ歯は歯列矯正で治療するケースもありますが、なぜ乳児の場合はすきっ歯が理想なのでしょうか。

ここからは、乳歯のすきっ歯が理想的であるといわれる理由を解説します。

乳歯は必ず永久歯に生え変わる

乳児に生えている歯は乳歯であり、一生の歯ではありません。成長とともに顎が発達していき、6歳~12歳頃に乳歯から永久歯へと生え変わります。

生え変わりの時期には個人差がありますが、どのような乳歯でも一度抜けてしまうのが成長の段階です。乳歯の段階ですきっ歯でも、永久歯に生え変わるまでは大きな心配はいりません。

乳歯の歯並びがきれいだと永久歯のスペースが足りない

乳歯の段階で歯並びがきれいな状態だと、永久歯が生えてくるスペースがない可能性があります。

その理由のひとつが、歯の本数です。乳歯は20本しか生えてきませんが、永久歯は全部で28本、親知らずがある場合は32本生えてきます。そのため、乳歯の段階ではある程度のすき間が必要です。

もうひとつの理由は、乳歯と永久歯の大きさの違いが挙げられます。個人差もありますが、歯によっては、乳歯よりも1.3~1.5倍ほど永久歯が大きいケースも少なくありません。

乳歯よりもサイズが大きくなり、さらに本数も増えるため、すきっ歯でないと永久歯が生えてくるスペースがなくなってしまいます。

乳歯のすき間は顎が発達している証拠

乳歯は2歳頃から生え始め、3歳頃までにはすべての歯が生えそろうのが一般的です。この生え始めの時期は、あまりすき間がなく、きれいに歯が生えそろっている子どもが多いでしょう。

しかし、成長に伴い、顎が大きくなるにつれて乳歯のすき間が目立ってきます。このすき間は発育空隙(はついくくうげき)と呼ばれる、永久歯にとって大事なすき間です。

だんだんとすきっ歯になってくると心配になる方も多いですが、顎が正常に発達している証拠だと考えて、過度に心配しないようにしましょう。

乳歯の歯並びは後天的に変化する

乳歯の歯並びは遺伝だけでなく、後天的な要因も関係しています。普段の生活習慣が悪かったり硬い食べ物が嫌いだったりすると、顎の発育が遅れ、歯並びが悪くなる原因になるため注意が必要です。

乳児期に歯並びがよい・悪いを判断するのではなく、永久歯になったときに歯並びが悪くならないよう、乳児期から生活習慣の見直しをするようにしましょう。

乳歯の歯並びが美しいのは理想的ではない

歯医者に来る子ども

乳歯がすき間なくぎっしり生えている状態は、一見美しく見えますが、理想的ではありません。乳歯が抜けた後に、永久歯が生えるすき間がないと、大人になってから歯並びが悪くなる可能性があります。

歯が重なるように生えてしまったり、噛み合わせが悪くなってしまったりなどのトラブルが起こりやすくなるでしょう。また、歯と歯が重なっていると、そこに食べ物のカスが溜まりやすくなります。

歯と歯の間の清掃も難しくなるので、歯周病やむし歯にかかるリスクも高くなるでしょう。また、見た目がコンプレックスになることもあるので、お子さんのためにも永久歯の歯並びには気を配りたいところです。

乳歯の理想的な歯並びのためにできること

楽しくおしゃべり中の子ども

すきっ歯が理想とはいえ、現在きれいにぎっしり歯が並んでいるお子さんもいることでしょう。乳歯の時点で歯並びがよいお子さんは、顎の発育を促すことで永久歯の生えるスペースを空けられる可能性があります。

具体的にどのようなことを意識すればよいのか、詳しく解説します。

硬いものをよく噛んで食べる

顎は食べ物をよく噛むと、鍛えられます。硬いものを何度も噛むと、筋肉や骨が刺激されて成長するからです。硬いものを噛んで顎の骨に適度な負担をかけると骨密度が向上し、丈夫になっていきます。

また硬いものを食べるときは、奥歯ですりつぶすように動かすため、横の動きで顎の成長が促されます。反対に舌でつぶせるようなやわらかさのものばかり食べていたり、噛まずに飲み込んだりしていると、噛む回数が減るので顎の発達が遅れてしまうでしょう。

とはいえ、過度に硬い食べ物は消化不良や歯が欠けるなど逆効果になる可能性もあるため、注意が必要です。

歯ごたえのある根菜類を料理に使う、具材を大きく切るなど一工夫するだけで、噛む回数を増やすことができます。よく噛んで味わえるよう、焦らずゆっくり食事ができる時間を取ることも大切です。

外遊びによって全身を鍛える

食べ物だけでなく、たくさん外遊びをさせて全身を鍛えるようにしましょう。全身を鍛えることで、自然と顎も鍛えられます。

体幹も鍛えられるので、食事中の姿勢もよくなり、顎に余計な負担がかかりません。また、外でたっぷり遊んで身体を動かせば自然とお腹も空くので、好き嫌いなく食べ物をよく噛んで食べられます。

近年ではテレビゲームや動画などが普及し、一日中家にいても平気な子どもも増えていますが、姿勢が悪くなったり全身の発達が遅れたりするリスクもあるため注意が必要です。

健康維持だけでなく、将来の歯並びのためにも、できるだけ外遊びをさせて身体を鍛えましょう。

乳歯の歯並びのために避けるべきこと

青空と女の子

乳歯の歯並びは、普段の生活で悪くなるケースがあります。顎を鍛え、歯並びをよくするためにも、普段の姿勢や生活習慣には気を付けるようにしましょう。

ここからは、乳歯の歯並びのために避けるべきポイントを詳しく解説します。

猫背・ほおづえなど悪い姿勢

頬杖をついてノートパソコンを見る女の子

姿勢が悪いと、歯並びも悪くなるため、乳児期から注意が必要です。猫背は背中が丸まった状態なので、下顎が前方にずれ、いわゆる受け口の状態になってしまいます。

そのため、上の歯と下の歯が常に噛み合わせていることになり、顎関節への負担が大きくなる姿勢です。同じくほおづえも下顎がずれて、顎関節に負担がかかるので、歯並びが悪くなるリスクが高まります。

猫背もほおづえも、普段のちょっとした意識で大きく改善できるので、早めに改善しましょう。

4歳以降の指しゃぶり

指しゃぶりをする赤ちゃん

指しゃぶりは生後2~4ヶ月頃から始まり、乳児期の赤ちゃんによく見られる行為のひとつです。発達を促したり安心感をもたらしたりする効果があり、健全な成長段階の証でもあるため、乳児期には無理にやめさせる必要はありません。

多くのお子さんは成長に伴い、自然に指しゃぶりをやめるようになります。3歳頃を指しゃぶり卒業の目安とし、4歳以降も続くようなら注意が必要です。

指しゃぶりは指を上の歯の裏側に押し付けるため、上の前歯が前に出てしまったり、上下の前歯の噛み合わせが悪くなったりするリスクがあります。

4歳頃になると、言葉で説明してわかるお子さんも多いので、無理強いするのではなく少しずつ指しゃぶりをやめるよう促していきましょう。

口呼吸の習慣

通常、人間の舌は口腔内の上側におさまっていますが、口呼吸中は舌が下がった状態です。顎や歯には舌や唇、頬からの適度な圧力がかかることで、正常に発達していきます。

口呼吸ではその圧力がかかりにくくなるため、上顎の発達が遅れる可能性があります。上顎の発達が妨げられることで、上の前歯が前に出てしまったり、歯がバラバラの方向に生えてしまったりするので注意しましょう。

ただし、もともとの歯並びが原因で口呼吸になってしまうお子さんもいます。出っ歯といわれる上顎前突や受け口といわれる下顎前突が原因の場合は、歯列矯正で歯並びを改善すると鼻呼吸になる可能性もあるため、歯科医師に相談してみましょう。

食べ物を丸呑みする癖

食卓の家族

食べ物を丸呑みする癖があると、普段から歯や顎をあまり使わなくなります。そのため、歯や顎の発達が遅くなる可能性があるでしょう。

丸呑みする癖が付いている場合、食材や食べる環境を見直すのがおすすめです。子どもの成長に合った形状や硬さの食材を与えることで、噛む習慣がつくようになります。食べる環境とは、姿勢や食事に集中できる環境が整っているかどうかです。

身体とテーブルが離れていたり、足が浮くなど悪い姿勢だったりすると、噛む行為ができません。身体を安定させる姿勢で、噛む行為を促しましょう。

また、テレビが付いている部屋やおもちゃが近くにある環境だと、気が散ってしまって食事に集中できません。食事中の環境を整えて、楽しく食事ができるようにしましょう。

乳歯の歯列矯正ですき間を作る方法

歯科矯正

すき間なくぎっしり乳歯が生えている場合は、歯列矯正ですき間を作ることができます。永久歯が生えるためのスペースを確保し、永久歯に悪影響が及ばないようにしましょう。

ここからは、乳歯のすき間を開けるための具体的な歯列矯正の方法を解説します。各治療方法にはメリット・デメリットがあるため、歯科医師の説明をよく聞いてから治療方法を決めるようにしましょう。

マウスピース型矯正

子ども用のマウスピースは、目立ちにくく、取り外しができる歯列矯正です。7歳~9歳くらいを目途に治療を開始するのが一般的で、従来のワイヤー治療に比べて痛みが少ない傾向にあります。初期費用が低く、装置が目立ちにくいのがメリットです。

とはいえ、歯並びは常に変動するため、大人になってから再度歯列矯正が必要な場合もあります。治療が完了するまでに1年半ほどかかり、1日20時間以上はマウスピースの装着が必要です。主に歯列不正に対して用いられる治療方法で、顎や骨の成長に影響を与える効果はありません。

マウスピースは定期的に交換しなければならないため、保護者がしっかり管理する必要があるでしょう。マウスピース型矯正は500,000円~800,000円(税込)ほどの費用がかかります。

床矯正

内側に向かって生えている歯を外側に押し出すための治療が床矯正(しょうきょうせい)です。ネジの付いた取り外しができる床矯正装置を使って、歯列矯正します。

ワイヤー矯正よりも弱い力で矯正していくので、痛みは少なく、取り外しが可能です。食事や歯磨きは普段通りできるので、むし歯のリスクが軽減します。

顎の骨の成長を利用して歯列を広げるため、骨が成長する10歳頃までに始めるのが理想です。骨の成長が終わってからは床矯正ができず、治療期間が限られているのがデメリットといえるでしょう。床矯正装置には、下記のような種類があります。

  • 側方拡大装置
  • 前方拡大装置
  • 閉鎖型装置
  • 後方拡大装置

床装置に付いたネジを、週に何度か自宅で回し、少しずつ顎を広げていく治療方法です。5歳~10歳頃に治療を開始し、個人差はありますが1年~1年半ほど使用します。費用相場は300,000円~400,000円(税込)程度です。

ヘッドギア矯正

ヘッドギア調整はお口のなかに装置を入れ、上顎の成長を抑える治療方法で、下顎とのバランスを調整しながら噛み合わせを整えます。

また、奥歯が後方にずれるため、永久歯のためのスペースを空ける効果も期待できます。ほかの歯列矯正装置と違い、上顎が下顎よりも成長している場合や、上顎が突出している場合に用いられる治療方法です。

取り外しができるので、学校に行くときなどは外すこともできます。骨の成長や顎の位置に直接的な影響を与える治療法になるため、歯科医師の指示に基づいた正しい使用が求められます。

6歳~8歳を目安に治療を開始し、ヘッドギアの装着時間は12~14時間程度です。主に就寝時の装着が推奨されています。装着時間が長く、装着時は激しい運動ができないのがデメリットといえるでしょう。

ヘッドギア矯正は保険適用外でも100,000円~300,000円(税込)程度です。ブラケット矯正と併用する場合は、追加で費用がかかります。

ワイヤー矯正

矯正器具を付けた女性の口元

ワイヤー矯正は、ブラケットと呼ばれる器具を一本一本の歯に接着させ、ブラケットに付いたワイヤーで歯を動かす治療方法です。

ブラケットには金属以外に、プラスチックやセラミック素材を用いたものがあります。マウスピースやヘッドギアのように、簡単に取り外すことはできません。費用相場は500,000円~1,000,000円(税込)程度です。

12歳頃から使用でき、軽度の歯列矯正であれば半年ほどで完了しますが、2年ほどかかるケースもあります。歯列を細かく調整できるメリットがありますが、ブラケットが口腔内に触れるので、慣れないうちは痛みや不快感を抱くのがデメリットです。

まとめ

おさげの女の子

乳歯がすきっ歯だと「将来歯並びが悪くなるのでは?」と不安になる方も少なくありません。とはいえ、乳歯の歯並びはすきっ歯が理想です。

乳歯がぎっしりすき間なく生えていると、永久歯が生えるスペースがなくなり、大人になってから歯並びが悪くなる可能性があります。乳歯と乳歯の間にすき間がない場合は、硬いものを噛んだり外遊びで全身を鍛えたりして顎の成長を促しましょう。

ほおづえや猫背・4歳以降の指しゃぶり・口呼吸などは、歯並びが悪くなる要因です。食べ物を丸呑みにする癖がある場合には、食材の大きさや形を調整して、噛む習慣を付けるようにしましょう。

どうしても乳歯の歯並びが気になる場合は、生え変わりの時期からできる歯列矯正もあります。歯科医院に相談し、お子さん一人ひとりに合った歯列矯正の方法を選択しましょう。

参考文献

この記事の監修歯科医師
木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

木下 裕貴歯科医師(医療法人社団天祐会 副理事長)

北海道大学歯学部卒業 / 医療法人社団天祐会 副理事長 / 専門はマウスピース矯正、小児矯正

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