自分の歯に隙間があると鏡で見るたびに気になったり、友達や家族にすきっ歯を指摘されたりして笑顔に自信が持てない方もいるのではないでしょうか。
楽しいと感じた瞬間も思いきり笑えず気分が落ち込み、日常生活に支障をきたすことがあります。
すきっ歯は審美的な面だけでなく、口腔内の健康にも影響を与えます。
この記事では、すきっ歯ができる原因や治療法、治療にかかる期間や費用についても紹介しますのでぜひ最後までお読みいただけますと幸いです。
すきっ歯(空隙歯列)が気になって笑えない方へ
前歯にすきっ歯があると、笑うことに抵抗を感じる方は少なくありません。
友人や恋人にすきっ歯を指摘され、悩んでいる方もいるのではないでしょうか。周りからは何も言われていなくても、自分の歯列を鏡で見るたびに気になる方もいるでしょう。
しかし、不安や失望から衝動的に歯列矯正をするのはリスクがあります。歯列矯正にはさまざまな種類があり、治療を受けるときはどの治療法が自分にあっているのか冷静に考えることが大切です。
また、すきっ歯が軽度であれば進行を防ぐ方法もあります。
すきっ歯の原因
すきっ歯の原因には、以下のようなものがあります。
- 顎と歯のバランスが合っていない
- 生まれつき歯の本数が少ない
- 噛み合わせが深い
- 指しゃぶりや舌の癖がある
すきっ歯になる原因は主に遺伝的なものと生活習慣に分けることができます。遺伝的なものは歯科医院で診察や検査によって確認してもらうとよいでしょう。
ただ、生活習慣が原因ですきっ歯になってしまった場合、原因が見えづらくなってしまうかもしれません。
すきっ歯は見た目だけでなく口腔内に悪い影響を与えてしまう可能性もあります。これから紹介する原因が自分に当てはまっていないかを確認していきましょう。
顎と歯のバランスが合っていない
乳歯は3歳頃までに自然と20本生えてきます。一方、顎骨の成長度合いは個人差が大きいです。やわらかいものを多く食べていたり、咀嚼する回数が少なかったりすると顎骨が十分に発達しません。
通常、顎骨は奥方向に成長していきます。しかし成長が十分でないと、顎骨の奥に歯が生えるスペースがなくなる場合があります。
乳幼児期はまだ乳歯のため、歯が小さい傾向にあり、歯の隙間ができていても問題はありません。しかし永久歯に生え変わっても歯のサイズが小さいままだと、すきっ歯の原因になります。
生まれつき歯の本数が少ない
生まれつき歯が少ない主な原因は大きく分けて2つです。
1つ目は隣り合う2つの歯がくっついてしまう癒合歯(ゆごうし)です。癒合歯があると将来的に本来なら生えてくるはずの箇所に永久歯が生えてこない可能性があります。
見た目では1本の大きな歯のように見えるため見落とされてしまいがちですので、レントゲン検査を受けてみて初めて判明することがあります。
2つ目は歯が生えてくる箇所に生えてこない先天性欠如です。乳歯がそもそも生えてこないパターンもあれば、乳歯が抜けた後に永久歯が生えてこないパターンもあります。
幼児期に歯科医院でレントゲン検査を受けると、将来的に永久歯が生えそろうかどうかを確認できますので、定期的に通院することが大切です。
噛み合わせが深い
噛み合わせが深いことを過蓋咬合(かがいこうごう)といいます。噛んだ際に、上の歯が下の歯に3mm以上覆いかぶさってしまう状態です。
顎にハリや疲労感を感じたり、咀嚼時に違和感があったりする場合は過蓋咬合の疑いがあります。歯科医院に通院して確認してもらいましょう。
過蓋咬合になる原因には生活習慣や遺伝的要素があります。就寝中の歯ぎしりや歯を食いしばる癖があると歯が削れてしまい噛み合わせが深くなる可能性が高くなるでしょう。
過蓋咬合を治療せずに放置してしまうと、顎骨への負担が大きくなり、顎関節症につながる可能性もあります。むし歯や歯周病の治療が優先され、過蓋咬合は後回しにされる傾向があるため、後回しにしないことが大切です。
指しゃぶりや舌の癖がある
指しゃぶりを続けると、歯列や噛み合わせに問題が生じやすくなります。理由としては、指を吸うときに歯や歯茎に大きな力が働くからです。
また舌で歯を動かしたり、歯で舌を噛んだりする習慣があると、指しゃぶりと同様に歯と歯茎に悪影響を及ぼします。
上記のような行動が習慣化すると、歯が移動したり、歯茎が広がったりすることで歯の隙間が広がりやすくなるでしょう。また指の爪や唇を噛む癖があると、歯が消耗したり、歯が移動したりする可能性が高くなるでしょう。
それ以外にも口呼吸や一見すると歯の健康には関係なさそうな日常の動作が原因で歯の健康を損なったり、すきっ歯になったりします。
うつ伏せ寝や頬杖などの姿勢が習慣化すると、塵も積もれば山となるように歯や歯茎へのダメージが蓄積します。
すきっ歯のリスク
すきっ歯のリスクは以下のとおりです。
- 見た目への不安
- むし歯や歯周病
- 発音困難
笑顔を見せたり、ほかの方と会話したりする際に、不安を感じやすくなります。結果として自己肯定感が低下する可能性があります。
食事面では、歯の隙間に食べ物が挟まりやすくなるでしょう。食べかすが残ると、むし歯や歯周病になる原因になります。
そしてすきっ歯がある状態での発音は、隙間から空気が漏れることで話している言葉が相手に伝わりにくくなる可能性があります。
すきっ歯の治療法
すきっ歯の治療は以下のとおりです。
- ワイヤー矯正
- マウスピース型矯正
- 補綴治療
ワイヤー矯正は聞き馴染みのある歯列矯正法ではないでしょうか。知人や家族がワイヤーを歯につけているのを見たことがある方もいるでしょう。
ただワイヤー矯正以外にも選択肢があります。それがマウスピース型矯正や補綴治療です。各治療がどのような流れで行われるかを詳しく説明していきます。
ワイヤー矯正
治療の流れとしては、まず歯列矯正器具のブラケットを歯の表面または裏側に装着します。そしてブラケットにワイヤーを通し、ワイヤーを動かすことで歯を適切な位置に移動させます。
歯列矯正中は1ヶ月に1度通院し、歯の状態を確認したり、ワイヤーの調整を行ったりすることが必要です。歯列矯正中に定期的に通院する目的は2つあります。
1つ目は歯の健康を保つためです。ワイヤー矯正をしながらの歯磨きは大変難しいため、どうしても汚れが残ってしまうことが少なくありません。そのため定期的なクリーニングが必要です。
2つ目はワイヤーの調整です。歯列矯正の進行状況を見て、ワイヤーを締めたり緩めたりすることで歯を移動させるための力を微調整していきます。
歯列矯正は長期にわたる治療です。そのため、ワイヤーを装着しながらの生活で悩みや心配ごとがあれば、歯科医師に伝えましょう。
歯並びが整ったら、固定する段階に移行します。固定にはリテーナーというマウスピースのような器具を装着します。リテーナーは着脱式のため、食事や歯磨きをするとき以外は外すことが可能です。
この時期の通院頻度は3ヶ月に1回の割合で、固定が完了したら歯列矯正は終了です。ただ固定する前にリテーナーをやめてしまうと、歯列矯正前の状態に戻ってしまう可能性があるので注意しましょう。
ワイヤー矯正のメリットは、伝統的な歯列矯正方法で多くの症例があることです。そして自分でワイヤーを操作する必要はないので、自己管理をする煩わしさは少ないでしょう。
デメリットは、お口を開くときに装置が目立ちやすいことです。友達や知人からの目線が気になってしまう方もいるかもしれません。そのような方向けに裏側に歯列矯正器具をつける方法もございます。
そして、歯が動いたり、ワイヤーが歯茎や舌に当たったりすると痛みを感じる可能性があります。なぜかというと歯の表面だけでなく歯茎に埋まっている歯根も移動させるからです。
また、食事の面では避けるべき食べ物が少なくありません。歯にくっつきやすい食べ物(ガムやキャラメル)やワイヤーに絡まりやすい食べ物(麺類など)、固い食べ物(お煎餅など)が挙げられます。
全体矯正では全部の歯にブラケットやワイヤーを装着しますが、部分矯正では歯並びやすきっ歯が気になる箇所だけに装着します。
マウスピース型矯正
マウスピース型矯正では、歯科医院が作成したマウスピースを患者さん自身が装着することで歯並びをよくする方法です。
メリットはマウスピースが透明のため審美的な点で不安が少ないでしょう。また、着脱式のため普段どおりに食事や歯磨きを行えることも利点です。
ワイヤー矯正ですと、着脱ができないため、ブラケットを装着したまま歯磨きをする方法を身につける必要があります。
しかし、マウスピース型は普段の生活スタイルを大きく変えることなく治療を行うことが可能です。また、マウスピースは樹脂製のため、金属アレルギーを持っている方でも装着することができます。
デメリットはマウスピースの装着は患者さん自身が行わなければいけないことです。決められた時間を装着しないと本来の効果が出ずに治療期間が長引く原因となります。
補綴治療
すきっ歯の補綴治療は、大きく分けて2種類あります。
- ラミネートベニア
- セラミッククラウン
ラミネートベニアは歯と歯のスペースが2mm以内であれば施術可能となっています。歯の表面を削り、削ったものとセラミックを接合し、歯の隙間に差込む方法です。
麻酔が必要なく、痛みの少ない治療となります。元の歯を削って詰め物を作成するため、審美的にも自然な仕上がりが実現します。
セラミッククラウンは歯の隙間が2mm以上の場合に行われる治療です。この手法の特徴は歯の全面を削ることです。削った歯にセラミックを被せることにより、歯の隙間を埋める役割を果たします。
上記2つで使用される素材のセラミックの特徴は、丈夫で長持ちしやすいことが挙げられます。また、セラミックは一般的な歯の色と遜色がないことも大きな特徴の1つです。
すきっ歯の治療にかかる期間
ワイヤー矯正やマウスピース型矯正の場合、全体矯正でも部分矯正でもある程度の期間が必要です。というのも、歯を歯根から少しずつ移動させるためです。
歯が1ヶ月でどのくらい移動するかというと、個人差はありますがおよそ0.3mmから0.5mmといわれています。ただし、補綴治療の場合は数回の通院で終了する可能性もあります。
ワイヤー矯正
全体矯正では約1年から3年です。部分矯正は約3ヶ月から1年となります。
ワイヤーを調節することにより歯の位置を少しずつ移動させるため、ある程度の時間が必要です。
マウスピース型矯正
全体矯正では約1年から3年です。部分矯正は約3ヶ月から1年となります。
マウスピース型矯正は自分で着脱の管理が必要です。例えば、装着を忘れてしまい1日に定められた装着時間を下回ってしまうと、それだけ治療期間は伸びてしまいます。一般的には1日20時間以上の装着が必要な場合があります。
補綴治療
ラミネートベニアは、歯や歯茎の状態にもよりますが最短2日程度で治療が完了します。セラミッククラウンは、約1ヶ月から3ヶ月の治療期間となります。
すきっ歯の治療費用相場
基本的に、歯列矯正は保険が適用されません。また、歯科医院や使う素材によっても金額が異なりますのでかかりつけの歯科医院に1度確認するとよいでしょう。
費用の内訳は、歯列矯正前と歯列矯正中の診察や検査、歯列矯正装置の装着やメンテナンスです。歯列矯正終了後も定期的に通院する必要があるため、歯並びを見てもらうための診察費用もかかります。
ワイヤー矯正
歯の表側にブラケットとワイヤーを装着する歯列矯正の治療費用相場からご紹介いたします。全体矯正では約700,000円から900,000円となります。部分矯正では約200,000円から600,000円です。
歯の裏側に装着する歯列矯正の場合、全体矯正は約900,000円から1,500,000円で、部分矯正が約400,000円から750,000円となります。
マウスピース型矯正
全体矯正は800,000円から1,000,000円となります。部分矯正では約300,000円から600,000円です。
補綴治療
ラミネートベニアは、1本約70,000円から100,000円となります。セラミッククラウンは、1本約80,000円から120,000円が相場です。
まとめ
すきっ歯は見た目の問題にとどまらず、口腔内の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。すきっ歯になる原因は遺伝的な面もありますが、生活習慣が大きな原因の1つです。
治療する場合はワイヤー治療が一般的ですが、ほかにも選択肢があるので自分のライフスタイルに合った治療法を選ぶとよいでしょう。
ただ、歯列矯正治療は保険が適用されないことが多く、ほかの歯科治療と比べて高額になる傾向があります。治療を受ける際は、期間や費用、ライフスタイルへの影響を踏まえて慎重に判断しましょう。
参考文献