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不正咬合は保険適用される?適用条件や顎変形症ついても解説

不正咬合は保険適用される?適用条件や顎変形症ついても解説

出っ歯や受け口といった不正咬合に悩まされている人は、保険で矯正治療が受けられないかと考えていることでしょう。矯正治療にかかる費用は、1,000,000円前後かかることも珍しくないため、3割負担で受けられたら家計への影響を大きく減らすことができます。

実際、インターネットで調べてみると、不正咬合の治療に保険適用されることがあるという記載を目にすることもあります。ここではそんな不正咬合の治療に保険が適用される条件について詳しく解説をします。

不正咬合について

不正咬合について そもそも不正咬合とは何なのか?その原因や種類の説明から始めます。

不正咬合とは?

不正咬合とは、悪い歯並び・噛み合わせの総称です。歯列不正や咬合不全と呼ばれる場合もあります。日常的にはあまり耳にしない言葉なので戸惑ってしまうかと思いますが、「悪い歯並び・噛み合わせの状態」というニュアンスで理解しておけば問題ないでしょう。冒頭でも述べたように、出っ歯や受け口などが不正咬合の代表として挙げられます。

不正咬合の原因

不正咬合の原因は、生まれる前を意味する「先天的」なものと、生まれた後の「後天的」なものの2つに大きく分けられます。

・先天的な不正咬合の場合
先天的な不正咬合の原因としては、遺伝による骨格的な異常が挙げられます。例えば、上の顎の骨が生まれつき長い場合は、先天的な出っ歯の症状が現れることでしょう。下の顎の骨が生まれつき長い場合は、先天的な受け口の症状が現れやすいです。こうした遺伝による先天的な不正咬合は、家族内で共通していることが多いです。

自分が骨格的な異常に由来する出っ歯で、父親や母親、兄弟なども同じような症状が認められる場合は、遺伝的な要因が強く現れていると考えられます。 歯の数の異常もある意味で、先天的な不正咬合の原因と捉えることができます。

例えば、本来28本生えてくる永久歯が30本生えてきたら、スペースが不足して歯並びが悪くなります。先天的な歯の欠損が見られるケースでは、今度は逆にスペースが余ることですきっ歯が誘発されます。こうした歯の数の異常は、生まれてからの生活習慣や習癖が原因ではなく、生まれる前から決まっていることが多いため、先天的な不正咬合の原因と考えても間違いではないでしょう。

・後天的な不正咬合の場合
後天的な不正咬合には、いろいろな原因が考えられます。主に以下の6つに注意する必要があるといえるでしょう。

原因1:口呼
呼吸は鼻を介して行うのが正常です。いわゆる「鼻呼吸」をしていると、口周りの筋肉が弛緩して歯列に対する圧力が弱まります。その結果、前歯が前方に倒れ込んだり、顎骨の発育に遅れが生じたりするのです。「口呼吸」は口内を乾燥させることから、むし歯や歯周病リスクを上昇させる点にも注意が必要です。

原因2:口腔習癖
指しゃぶりや舌を前に突き出す癖、唇を噛む癖などがあると、歯並びが悪くなります。歯ぎしり・食いしばりにも要注意です。こうした口腔酒癖は、一時的なものであれば大きな問題となることは少ないのですが、長期的に続くと不正咬合のリスクが高まります。

原因3:むし歯・歯周病
乳歯のむし歯を重症化させると、永久歯の発育や生えてくる時期に深刻な悪影響を及ぼすことがあります。極端な例では、永久歯が生えてこなくなることもあるため、歯並び・噛み合わせも当然、悪くなります。歯周病は、顎の骨を破壊する病気です。歯が埋まっている歯槽骨(しそうこつ)が歯周病によってボロボロになると、歯並び・噛み合わせが乱れてきます。最終的には歯そのものを失うことになるのです。

原因4:咀嚼の仕方
あまり噛まずに飲み込めるやわらかいものばかり食べていたり、片側だけで噛む癖があったりすると、歯並び・噛み合わせに乱れが生じます。とくに小児期の噛む習慣は、歯並び・嚙み合わせを作る大事なものとなるため、保護者がしっかり観察し、必要に応じて改善してあげることが大切です。

原因5:歯の喪失
むし歯や歯周病、外傷などが理由で歯を失い、その状態を放置していると不正咬合が誘発されます。歯というのは、お互いが支え合って歯列を構成しているため、ひとつでもなくなると全体のバランスが崩れてしまうのです。失った歯の両隣の歯は、すき間に向かって倒れ込み、もともと噛み合っていた歯は、垂直的に伸びてくることでしょう。

原因6:悪い姿勢
姿勢が悪いことで、不正咬合が誘発される場合もあります。近年、問題となっているストレートネックや猫背などは、歯並びや噛み合わせ、骨格の歪みを促すからです。悪い姿勢は口呼吸になりやすい点にも注意が必要です。

不正咬合の種類

不正咬合には、次のような種類があります。

◎叢生(そうせい)
ガタガタの歯並びで、一般的には乱ぐい歯と呼ばれています。上の犬歯が外側に飛び出しているケースは八重歯と呼びます。八重歯も叢生の一種です。

◎上顎前突(じょうがくぜんとつ)
上の前歯や顎の骨が前方に出ている歯並びです。一般的には出っ歯と呼ばれています。見た目が悪いだけではなく、前歯で噛めない、前歯に外傷を受けやすい、口呼吸が促されるといったデメリットを伴います。

◎下顎前突(かがくぜんとつ)
下の前歯や顎の骨が前方に出ている歯並びです。一般的には受け口と呼ばれています。顎がしゃくれていると表現されるように、特徴的な顔貌を呈します。食べ物を前歯で噛みにくいという点は出っ歯と共通しています。

◎開咬(かいこう)
奥歯で自然に噛んだ時に、前歯で噛むことができない歯並びです。前歯部に隙間が生じるため、口呼吸が促されます。奥歯に過剰な負担がかかるというデメリットもあります。

◎空隙歯列(くうげきしれつ)
歯列内に不要な隙間がある歯並びです。一般的にはすきっ歯と呼ばれています。上の歯列の真ん中に隙間がある歯並びを「正中離開(せいちゅうりかい)」といいます。

◎過蓋咬合(かがいこうごう)
噛み合わせが正常よりも深い歯並びです。噛んだ時に上の歯列が下の歯列を覆い隠してしまうのが特徴です。

◎交叉咬合(こうさこうごう)
私たちの歯並びは、上の歯がやや外側、下の歯がやや内側に位置しているのが正常な状態です。それが部分的にではあれ、反対になっている噛み合わせを交叉咬合といいます。

一般的な不正咬合は保険適用されない

一般的な不正咬合は保険適用されない ここからは、不正咬合の治療における保険適用の説明になります。結論からいうと、一般的な不正咬合の治療には、原則として保険が適用されません。おそらく、皆さんの周りでも不正咬合の治療を保険で受けたという人はいないことでしょう。

出っ歯や受け口、乱ぐい歯といった歯並びは、口元の審美性を低下させたり、食べ物の噛みにくくしたりするものですが、全身の健康に深刻な悪影響をもたらすようなものではありません。そのため現状では、不正咬合の矯正治療に保険が適用されていないのです。

そもそも矯正というのは、高額な費用がかかる治療となることから、一般的なケースにまで保険を適用していたら、国の医療費はあっという間に膨れ上がってしまうことでしょう。ですから、今後も一般的な不正咬合のケースに保険が適用される可能性は極めて低いといえます。ただし、後段で説明するような例外的なケースでは、不正咬合の矯正治療にも保険適用される場合がありますので、その点はご注意ください。

保険適用される不正咬合の条件

保険適用される不正咬合の条件 現状、不正咬合に保険が適用される条件としては、以下の2つが挙げられます。

外科手術を伴う不正咬合の治療

重度の顎変形症(がくへんけいしょう)を患っていて、外科手術と矯正治療で噛み合わせの異常を改善しなければ、そしゃく機能などに大きな支障をきたすケースには、保険が適用されることもあります。これは一種の病気なので、保険診療で治すべきだと国が判断しています。

ちなみに、顎変形症に伴う噛み合わせの異常は、外科手術単独できれいに治すことはできません。外科手術ではあくまで上下の顎のバランスを大きく改善し、細かい噛み合わせの異常は、矯正治療で治すことになります。その際の歯列矯正には、保険適用される場合とされない場合があります。

厚生労働大臣が定める疾患に起因する不正咬合

厚生労働大臣が定める疾患が原因で不正咬合になっているケースも、条件を満たせば保険適用で矯正治療が受けられます。具体的には、唇顎口蓋裂(しんがくこうがいれつ)やダウン症候群、ピエール・ロバン症候群などです。

全部で60種類以上の先天性疾患が指定されていますので、詳細については厚生労働省のサイトでご確認ください。この記事では後段で、唇顎口蓋裂を詳しく解説します。

顎変形症の治療について

次に、顎変形症の症状と治療法について解説します。

顎変形症の症状

顎変形症は、顎の骨の位置が正常でないために発症する病気です。通常、人の上顎と下顎は一定のバランスで位置していますが、顎変形症ではこのバランスが崩れています

これが原因で、見た目にも違和感が生じることがあります。また、噛み合わせの問題が起こることもあり、これにより噛む、話す、時には呼吸にも影響が及ぶことがあります。顎変形症の原因は多岐にわたります。遺伝的要因や成長期の問題、事故による顎の骨折などが挙げられます。

顎変形症の治療方法

顎変形症は、あごの位置が大きくずれており、上下のあごが正常な位置関係にない状態を指します。この症状は、歯の位置や傾きだけでなく、あごの骨自体の問題に起因しているため、単に歯を動かす矯正治療だけでは、かみ合わせの問題を解決するのが困難です。

これを改善するためには、通常、外科的な手法である「あご切り手術」と併せて行う必要があります。 この治療には、下顎だけを手術する場合と、上顎と下顎の両方を手術する必要があるケースがあります。手術は、一般歯科では行わず、口腔外科を備えた病院で受けることになります。手術には、大体7〜10日程度の入院が必要です。

詳細は、手術を担当する医師にご確認ください。 顎変形症の治療は多くの場合外科手術が必要とされるため、保険適用が受けられることが一般的です。しかし、顎変形症と診断されても、矯正歯科だけで治療が可能な場合には、保険は適用されません。

唇顎口蓋裂の治療について

唇顎口蓋裂の治療について 次に、唇顎口蓋裂の症状と治療方法について解説します。

唇顎口蓋裂の症状

唇顎口蓋裂は、生まれつきの顔面の形成不全で、唇、顎、口蓋(口の上部)に裂け目がある状態を指します。一般的に、出生前の早い段階で顔の一部が正常に発達しないことが原因で発生します。

この症状は、唇だけに裂け目がある「唇裂」、口蓋のみの「口蓋裂」、そして両方に裂け目がある「唇顎口蓋裂」の三つに大別されます。 唇顎口蓋裂の症状は、見た目の影響だけにとどまりません。

この状態は、話す際の発音に影響を与え、食事時の食べこぼしや飲み込みにくさを引き起こすこともあります。また、耳の感染症や聴覚問題を引き起こすことがあり、これらは言語や学習にも影響を与える可能性があります。

唇顎口蓋裂の治療方法

唇顎口蓋裂の状態を治療するためには、複数の段階を経て、様々な専門分野の医療チームによる総合的なアプローチが必要です。

◎初期評価と治療計画
唇顎口蓋裂が診断されると、まず医療チームによる詳細な評価が行われます。この段階で、裂け目の種類や程度を正確に把握し、個々の症状に合わせた治療計画を立てます。

◎外科手術
唇顎口蓋裂の治療の主な方法は手術です。手術は通常、以下のような段階で行われます。 唇裂の修復: 生後数ヶ月で行われるのが一般的です。

この手術では、裂け目を閉じ、唇の形状を正常に近づけます。

口蓋裂の修復: 通常、生後12〜18ヶ月頃に行われます。裂け目を閉じて口蓋を再形成し、飲み込みや発音の改善を図ります。

二次手術: 必要に応じて、追加の修正手術が行われることもあります。これには、鼻の形状を整える手術や、顎の成長を促すための手術が含まれます。

◎補助的治療
手術だけではなく、以下のような補助的な治療も重要です。

言語療法: 発音に影響を与えることがあるため、言語療法士による継続的なフォローアップが必要です。 耳鼻科のフォローアップ: 耳の感染症や聴力の問題に対処します。 歯科治療: 歯並び、噛み合わせの治療を行います。

栄養管理: 食べることに影響がある場合、栄養士の指導が必要です。 この補助的治療の中の歯科的なアプローチで、保険が適用されます。矯正治療で歯並び・噛み合わせを正常化しなければ、日常生活に支障をきたしてしまうからです。

まとめ

まとめ 今回は、不正咬合の治療における保険適用の可否について解説しました。不正咬合の治療には、原則として保険が適用されません。ただし、「外科手術を伴う不正咬合の治療」や「厚生労働大臣が定める疾患に起因する不正咬合」といったケースでは、例外的に保険が適用される場合もあります。

この条件に該当する人は、医師や歯科医師に相談してみましょう。一般的な出っ歯や受け口、乱ぐい歯の治療は、急を要するような症状ではないため、自費診療で受けることになります。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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