ワイヤー矯正

歯列矯正で歯茎が下がるのを防ぐには?歯茎が下がる原因や予防方法などを解説

歯列矯正で歯茎が下がるのを防ぐには?歯茎が下がる原因や予防方法などを解説

歯列矯正にはいくつかのリスクを伴いますが、そのなかでも気になる人が少なくないのが歯肉退縮(しにくたいしゅく)です。歯茎が下がる現象で、見た目が悪くなるだけでなく、歯の健康にも悪影響が生じるため注意が必要です。ここではそんな歯列矯正で歯茎が下がる原因や予防方法、実際に歯茎が下がってしまった場合の対処法について解説します。歯列矯正は受けたいけれど歯茎が下がるのが怖い方や歯列矯正中に歯茎が下がって困っているという方は、参考にしてみてください。

歯列矯正で歯茎が下がる原因

歯列矯正で歯茎が下がる原因 そもそもなぜ歯列矯正で歯茎が下がるのか?という疑問に答えます。さらに、歯茎が下がることで生じるリスクも解説します

矯正治療で歯茎が下がるのはなぜですか?
矯正治療で歯茎が下がる主な原因は、歯槽骨の吸収です。矯正治療では、歯槽骨という顎の骨に埋まった歯を人為的に動かしていきます。その過程で骨が溶ける現象と再生する現象が起こります。これを骨のリモデリングと呼び、矯正治療における正常な反応のひとつなのですが、もともと骨が薄かったり、歯が生えている位置が悪かったりすると、骨の再生が追い付かずに歯の露出面が多くなります。歯茎は歯槽骨を覆う形で分布している組織なので、歯槽骨が下がれば、歯茎も下がります。これが矯正治療における歯肉退縮のメカニズムです。

骨の厚みが正常で、歯が生えている位置にも問題がなかったとしても、必要以上に強い矯正力を働かせると、歯槽骨の吸収が過剰に起こり、歯茎も下がる場合があります。そのため矯正治療というのは、力の加減が極めて重要となるのです。

◎その他の原因

歯列矯正中には、治療とは直接関係がない原因によって歯茎が下がることもあります。その代表例は歯周病です。歯周病が進行すると、強い炎症反応によって歯茎や歯槽骨が下がることがあります。また、歯列矯正中だからといって一生懸命歯磨きしすぎると、歯周組織に過剰な圧力が加わって、歯茎が下がるという症状が現れることもあります。とりわけワイヤー矯正では歯磨きがしにくく、歯ブラシの圧の調整が難しくなりやすいため、歯周組織への影響を十分配慮しながら口腔ケアを行わなければなりません。

歯列矯正で歯茎が下がるとどうなりますか?
歯列矯正で歯茎が下がると、見た目が悪くなります。歯茎のラインは歯列全体で統一されているのが望ましく、1本でも大きく下がっている歯があると、審美性の低下を免れません。歯茎が広範囲に下がった場合も、露出している歯質の面積が大きくなることから、同様に口元の審美性が低下します。
歯茎が下がることで生じるリスクを教えてください
歯茎が下がると、上段で解説した審美障害に加えて、以下に挙げるリスクが生じます。

◎知覚過敏が起こりやすくなる

歯茎が下がると、冷たいものがしみやすくなります。これは歯根面にエナメル質が分布しておらず、外からの刺激を受けやすくなるからです。知覚過敏自体は深刻な病気ではないものの、歯がキーンとしみる症状は不快であり、頻繁に起こるようであれば歯科医院での治療が必要となります。

◎むし歯になりやすい

歯茎が下がることで歯根面が露出すると、むし歯菌が産生する酸への抵抗力が低下します。歯根面に分布する象牙質やセメント質は、エナメル質よりもやわらかく、表面もザラザラしていることから、歯垢や歯石、むし歯菌などが付着しやすい点に注意が必要です。

◎歯周病になりやすい

歯根面の露出によって歯垢や歯石が定着すると、むし歯だけでなく歯周病のリスクも高まります。歯周病では歯周組織の破壊が進み、歯茎が下がる症状が悪化します。

◎歯の安定性が低下する

歯列矯正で歯槽骨が吸収し、それに伴って歯茎も下がると歯の安定性が低下します。歯を支える組織が減少するため、深刻な症例では歯がグラグラと動揺するようになります。

歯列矯正で歯茎が下がるのを予防する方法

歯列矯正で歯茎が下がるとさまざまなリスクが生じるため、可能な限り予防したいものです。ここでは矯正治療中の歯肉退縮を予防するためにすべきことを解説します。

矯正治療中に歯茎が下がるのを予防するにはどうすればよいですか?
矯正治療中の歯肉退縮を予防するうえで重要なのは歯科医院選びです。近年は歯列矯正に対応している歯科医院が増加していますが、この分野の知識や技術、経験にはバラつきが見られます。歯列矯正の経験が乏しい歯科医師に治療を任せると、矯正力のかけかたを間違えて、歯槽骨や歯茎が下がる症状を引き起こしやすくなります。具体的には、ブラケットをつける位置やワイヤーを曲げる角度を1ミリ間違えるだけでも、歯や歯周組織に必要以上の力がかかってダメージを与えかねないのです。

◎歯科医師の指示に従うことも重要

ワイヤー矯正は、装置の装着や調整をすべて歯科医師が行うため、患者さんの過失による歯肉退縮は起こりにくくなっていますが、マウスピース型矯正となると話は変わります。例えば、歯並びを早く動かしたいという一心でマウスピースの交換頻度を高めると、過剰な矯正力がかかって歯茎が下がることがあります。その他、マウスピースの装着時間が短すぎたり、変形や破損を起こしたマウスピースを無理やり装着したりしても、過剰な矯正力がかかって歯茎が下がる可能性があるため、矯正中は原則として歯科医師の指示どおりに行動するようにしてください。

食事や生活習慣で気を付けることはありますか?
矯正治療中は、歯や歯周組織に大きな力がかかっていることから、極端に硬い食べ物を噛むのは避けましょう。歯に想定以上の負担がかかると、矯正による炎症が亢進して、歯茎が下がる・歯槽骨が下がるといった症状が強まりかねません。また、歯を舌で前に押し出す癖や歯ぎしり・食いしばりといった悪習慣も矯正の妨げとなるだけでなく、歯茎が下がる原因にもなるため、意識的に改善するのが望ましいです。強圧で磨きすぎるなど、不適切な歯磨き習慣も改善する必要があります。正しい歯磨き方法を身につけて、歯や歯茎を健康な状態に保ちましょう。
矯正治療中の正しい歯磨き方法を教えてください
矯正治療中の正しい歯磨き方法は、装置の種類によって変わります。まず、歯磨きの際に装置を取り外せるマウスピース型矯正は、歯磨きの際に特別な配慮は必要ありません。歯と歯茎の境目は歯ブラシを斜め45度に傾けて、汚れを掻き出してください。歯と歯の間の汚れは、デンタルフロスか歯間ブラシを使用しましょう。理想はPCR(プラークコントロールレコード)値が10%以下で、少なくとも20%以下に維持できるよう努めてください。PCR値の目標が達成されているかどうかは、定期的なメンテナンスで確認しましょう。その際、自分に合った歯磨き方法を学ぶことも大切です。

◎ワイヤー矯正は歯磨きにコツが必要

歯の表面に金属製のワイヤーやブラケットを固定するワイヤー矯正は、通常の歯ブラシに加えて、ワンタフトブラシやスーパーフロスなどを併用する必要があります。具体的なケア方法は患者さんのお口や装置の状態によって異なるため、歯科医院で歯磨き指導を受けるようにしましょう。繰り返しになりますが強圧でゴシゴシと磨くのはNGです。

歯列矯正で歯茎が下がってしまったときの対処法

歯列矯正で歯茎が下がってしまったときの対処法 最後に、歯列矯正で歯茎が下がった場合の対処法を紹介します。

歯茎が下がっても自然に戻りますか?
歯列矯正や外傷、歯周病などで下がった歯茎は、基本的に元には戻りません。そのため歯茎が下がる現象は可能な限り予防したいものです。
歯科医院で受けられる対処法があれば教えてください
歯列矯正で下がった歯茎は、次の方法で改善できる場合があります。

◎歯茎の移植

患者さん自身の口腔粘膜を採取して、歯茎が下がった部位に移植する治療法です。結合組織移植術や遊離歯肉移植術など、いくつかの種類があります。

◎歯茎の移動

歯茎が下がった部分に、すぐ近くの歯茎を移動させる治療法です。歯肉弁側方移動術や歯肉弁歯冠側移動術などが挙げられます。

◎歯周組織再生療法

歯列矯正によって吸収された歯茎や歯槽骨を薬剤や人工骨などを使って再生させる治療法です。GTR法やエムドゲイン法、リグロスなどが挙げられます。

編集部まとめ

今回は、歯列矯正で歯茎が下がる原因や予防法、下がった場合の対処法などについて解説しました。歯列矯正では、歯に大きな力がかかるため、それを支える歯茎や歯槽骨が吸収することがあります。特に歯茎や顎の骨がもともと薄いケースでは、歯列矯正による歯茎の吸収が起こりやすい点に注意が必要です。歯列矯正で下がった歯茎は自然に戻らないことから、審美性や機能性などを回復させたい場合は歯肉移植や歯周組織再生療法などを行わなければなりません。それでも元どおりにすることは難しいので、歯茎が下がる症状は可能な限り予防したいものです。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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