子どもの頃はきれいだったのに、いつの間にか歯並びが悪くなってきた、と感じたことはありませんか?
歯並びは、日々の姿勢や癖、食習慣、さらにはむし歯や歯周病といった口腔内のトラブルによって、大人になってからも変化し続けています。
そして、その変化が引き起こすリスクは、見た目の問題だけではありません。噛み合わせの悪化は、むし歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、顎関節症、消化器官への負担、さらには全身の健康や運動能力、そして人とのコミュニケーションにまで影響を及ぼす可能性があるのです。
この記事においては、歯並びが悪くなる具体的な原因から、ご自身でできるセルフチェック、今日から始められる生活上の改善ポイント、そして悪化してしまった歯並びを歯科医院でどのように治療できるのかについて解説します。
歯並びの変化

- 歯並びが悪くなったりよくなったりすることはありますか?
- 子どもの歯並びは少しの叢生(ガタガタ)なら側方歯の交換の際に改善することはありますが、残念ながら永久歯列完成後はよくなることはありません。
大人になってからの歯並びの変化に影響を及ぼす要因は、姿勢や歯ぎしり、舌の癖、むし歯、歯周病、食習慣、加齢による骨の変化など、さまざまなものが挙げられます。
これらによって歯の位置は少しずつ動くため、歯並びが悪くなります。
- 歯並びが悪くなる主な原因を教えてください
- 歯並びが悪くなる原因は一つではなく、複数の要因が絡み合っています。
まず、生活習慣や癖が挙げられます。例えば、力強く噛んだり、片側の顎ばかりで噛んだりする噛み癖や歯ぎしりは、歯に不必要な力を加えて歯並びを乱す大きな原因です。また、頬杖をつく、うつ伏せで寝るといった姿勢の癖や、舌が前歯に常に当たる、口呼吸をするといった習慣も、歯の位置に悪影響を与えます。 次に、口腔内のトラブルも直接的な原因です。むし歯によって歯を失うと、残った歯同士が支えを失って位置がずれたり傾いたりします。また、むし歯治療後の詰め物が噛み合わせのバランスを変化させることもあります。さらに、歯周病になると歯を支える骨が破壊され、歯がぐらついて正しい位置に定着できず、移動しやすくなってしまいます。 そのほかにも、加齢や抜歯などによって顎骨の量が減少することも、歯を支える土台が不安定になるため、歯並びの変化に影響を与える要因となります。
- 歯並びが悪くなったらどのようなリスクがありますか?
- 歯並びが悪いことによるリスクは、見た目だけでなく、全身の健康や精神面にまでおよびます。
まず口腔内では、歯並びの凹凸や隙間が多いと歯磨きがしにくくなるため、磨き残しによるむし歯や歯周病、口臭のリスクが高まります。また、噛み合わせの悪さが顎に無理な負担をかけ、顎関節症や咀嚼障害を引き起こしやすくなるほか、身体に十分な力を入れられなくなるため、日常動作はもちろん、運動のパフォーマンスにも悪影響を及ぼします。さらに、その負担によって歯や歯根へのダメージが蓄積し、将来的な抜歯につながる恐れもあります。
また、歯並びへのコンプレックスは人前で笑うことをためらわせ、歯並びや舌の位置が発音や滑舌にも影響するため、人とのコミュニケーションに消極的になり、性格や社会生活にまで悪影響を及ぼすリスクが考えられます。
- 歯並びのセルフチェック方法はありますか?
- 自分の歯並びや噛み合わせの状態を、鏡を使って簡単にチェックする方法があります。
もし一つでも気になる点があれば、歯科医師に相談してみましょう。 まずはじめに、正面からみて噛み合わせのチェックを行いましょう。
奥歯をしっかり噛み合わせたとき、上の前歯と下の前歯の中心線(正中線)が、顔の中心と一直線に合っているかを確認してください。また理想的な前歯の垂直的な重なりは、上の前歯が下の前歯に2〜3mm重なっている状態です。
また、上下の中心が著しくずれていたり、歯並びがデコボコと乱れていたり、歯と歯の間に隙間が空いている場合は要注意です。さらに、上の前歯が下の前歯より極端に突き出ている(出っ歯)、または逆に下の前歯が上の前歯の前にかぶさっている(受け口)、あるいは奥歯を噛んでも前歯がまったく噛み合わず隙間ができている(開咬)といった状態も、歯列矯正の対象です。 また横顔のシルエットでも確認することができます。
具体的な方法としては、姿勢を正して自然に立ち、鏡やカメラで横顔を確認します。
特に注目するべきなのが、横顔の美しさの基準とされるEライン(エステティックライン)です。これは、鼻の先と顎の先を結んだ線のことで、唇がこのEラインよりも大きく外側に突き出ている、あるいは逆に引っ込みすぎている場合は、歯列矯正が必要な可能性があります。
歯並びを整える生活上のポイント

- 歯並びを悪化しにくくするためのポイントを教えてください
- 歯並びの悪化を防ぐためには、生活習慣の見直しが大切です。
特に、口呼吸は歯並びに影響するだけでなく、お口の中が乾燥してむし歯になるリスクも高まるため、できるだけ鼻呼吸を心がけるようにしましょう。
また、頬杖をついたり、うつ伏せ寝をしたりといった悪い姿勢は、身体の歪みとともに顎の変形や歯並びに影響を及ぼします。正しい姿勢を心がけ、身体に無理な負担がかからないようにすることも重要です。
姿勢だけではなく、唇や爪を噛んだり指をしゃぶったりする癖がある方も注意が必要です。癖に気がついたら、意識してやめるようにしましょう。 なお、歯並びはある日急に悪くなるものではなく、時間をかけてゆっくり変化しますので、セルフチェックだけでなく、プロに判断してもらうことが重要です。
歯科医院で定期的な検診を行うことで、予防と早期治療が可能です。
むし歯や歯周病は歯並びに影響しますので、歯並びが悪くなる前に定期検診と治療によって対策しましょう。
- 悪くなった歯並びはセルフケアで改善できますか?
- 成長期の子どもであればセルフケアでも歯並びを改善できる可能性があるかもしれませんが、自力で正しい噛み合わせにすることはとても難しいことでしょう。また、歯並びの状態によっては、セルフケアだけではどれだけ頑張っても治すことができません。
まずは、自分の歯の状態を知るために、歯科医院での検査をうけるとよいでしょう。セルフケアで十分な場合は、そのケア方法を指導してもらいましょう。
- 歯並びが悪くなったと感じたら歯科医院に相談するべきですか?
- 歯並びが気になったら、できるだけ早く歯科医院に相談しましょう。
そのまま放置してもよくなる可能性は低く、ほとんどの場合悪化していく一方ですので、対策は早いほどよいでしょう。
歯科医院で行う歯並びの治療

- 歯科医院で歯並びを整えることは可能ですか?
- 歯科医院で行われている歯列矯正を受けることで、歯並びを整えることができます。
ただし、すべての歯科医院で歯列矯正を行っているわけではありません。歯列矯正を行っている歯科医院を受診することで、歯並びを整えることが可能です。
- 大人と子どもで歯並びの治療法は異なりますか?
- 大人と子どもでは歯並びの治療法が異なります。
大人の歯列矯正の場合は、ワイヤー矯正またはマウスピース型矯正装置による矯正治療が行われ、生えそろっている歯を動かして歯並びと噛み合わせを整えていきます。 子どもの場合もそれらを適用することはありますが、顎の成長や歯の生え替わりのある子どもの矯正治療の場合は歯の移動だけではなく、顎の成長発育や永久歯の正しい萌出に重点を置くことが必要になります。
例えば下顎の劣成長による出っ歯の場合は下顎の前方への成長を促進したり、反対に受け口であれば下顎の成長を抑制したり、上顎の成長を促進させたりすることが重要です。
このように永久歯が生え揃うまでの子どもの矯正治療の期間は、歯並びを揃えるよりも土台の不正を改善しながら永久歯が正しく生えてくるように誘導することをめざします。
- 歯科医院で歯並びの悪化を予防することはできますか?
- 歯科医院での治療と定期検診で歯並びの悪化を予防することが可能です。
歯並び悪化の原因となるむし歯や歯周病の治療を歯科医院で行うこともとても有効です。
また、歯科医院での定期的な検診とプロによるクリーニングにより、むし歯や歯周病の予防や早期治療ができるため、歯並びが悪くなるリスク要因を軽減することができます。
編集部まとめ
歯並びの変化は、加齢や遺伝的なものだけではなく、日々の生活習慣や口腔内の状態が深く関わっていることがおわかりいただけたかと思います。
まずはご自身の歯並びをチェックし、もし気になる点があれば、それを放置せず、すぐに歯科医院に相談することが大切です。自己判断するよりも、プロの診断を受けることが、悪化を防ぐよりよい方法です。