噛み合わせ

歯列矯正の治療期間が短縮できる?通常よりも短期間で矯正を行う方法について解説

歯科矯正 短期間

歯列矯正は、歯の健康を第一に考え、適切な時間をかけて歯を動かす必要のある治療です。いくつかの治療方法では、歯列矯正の治療期間が短縮できるといわれていることを知っていますか? 本記事では歯列矯正を短期間で行う方法について以下の点を中心にご紹介します。

  • 歯列矯正の歯科矯正用アンカースクリューとは
  • 歯列矯正のコルチコトミー併用矯正とは
  • 歯列矯正のセルフライゲーションブラケットとは

歯列矯正を短期間で行う方法について理解するためにもご参考いただけますと幸いです。 ぜひ最後までお読みください。

歯列矯正の治療に必要な期間

歯列矯正の治療に必要な期間

歯列矯正の治療期間を教えてください。
歯列矯正の治療期間は、患者さんの口腔の状態によって異なります。軽度な不正咬合は短期間で改善し、重度な不正咬合を改善するには時間がかかります。 治療期間の目安としては、生えている全ての歯を動かす「全体矯正」と、前歯部分のみなど数本の歯を動かす「部分矯正」のどちらに該当するかによって、おおよその期間が判断できます。 全体矯正は全ての歯が対象になり、見た目だけでなく、噛み合わせから治していくのが特徴で、必要であれば抜歯をすることもあります。そのため、矯正期間が1年〜3年程度です。部分矯正では、2ヵ月〜1年程度といわれています。
歯列矯正の治療が長期間に及ぶのはなぜですか?
歯列矯正が長期間に及ぶ主な原因は、歯が動く仕組みが関係しています。歯を支える骨(歯槽骨)は、矯正器具で歯に力をかけると、力がかかっている部分の歯槽骨は徐々に破壊され、その後吸収されていきます。吸収された場所に歯が移動し、歯が元々あった位置には新しい歯槽骨が再生されて歯が動いていくのです。このように、骨の吸収と再生を繰り返して歯が動いていきますが、そのスピードは1ヶ月に1mm程度と、とてもゆっくりです。 また、歯の矯正治療では、歯を動かす治療がフォーカスされがちですが、実は2つの段階を経て治療が終了となります。まずは矯正装置をつけて歯を動かしていく「動的治療」から始めていきます。その後、歯を支えている歯槽骨がまだ柔らかく不安定な状態であるため、しっかりと保定装置(リテーナー)を使った「保定期間」が必要になります。これらの要因により、歯列矯正は長期間の治療が必要といわれています。

歯科矯正用アンカースクリューによる治療

歯列矯正用アンカースクリューによる治療

歯科矯正用アンカースクリューとは何ですか?
歯矯正用アンカースクリューは、一時的に歯槽骨部に取り付けられる小さなスクリュー(ネジ)型の器具を使用します。アンカースクリューは歯の移動を助けるための固定点として機能し、通常の矯正装置と組み合わせて使用されます。この方法の利点の一つは、治療期間を短縮できることです。従来のブラケットとワイヤーによる矯正では、ワイヤーで繋がれた歯が互いに影響し合うため、段階的に歯を移動する必要がありました。しかし、アンカースクリューを使用すると、固定源が移動しないため、歯をより効率的に、計画通りに動かせるようになります。 また、アンカースクリューを用いることで、特に顎の後方へと歯を移動させるときなど、抜歯を極力避けながら、必要なスペースを作り出すことが可能とされています。 顎の骨の成長が終わった高校生以上の患者さんを対象に、従来のヘッドギアなどの補助的な矯正装置を使用する必要がなくなります。ただし、この治療法の効果には個人差があり、すべての症例で同じメリットが得られるとは限りません。
歯科矯正用アンカースクリューのデメリットを教えてください。
歯科矯正用アンカースクリューは多くの利点を持ちますが、以下のようなデメリットも存在します。 1.アンカースクリューを取り付けるためには、手術が必要となる 2.アンカースクリュー周辺の衛生管理が不十分な場合、感染のリスクが生じる可能性がある 3.アンカースクリューが治療中に脱落してしまうことがあり、脱落した場合の再埋入に追加の手術と時間が必要となる これらのデメリットは、歯科矯正用アンカースクリューを使用する際に慎重に検討すべき要因です。ただし、これらのリスクは適切な手術技術と衛生管理によって最小限に抑えることが可能といわれています。

コルチコトミー併用矯正について

コルチコトミー併用矯正について

コルチコトミー併用矯正とは何ですか?
コルチコトミー併用矯正は、従来の矯正治療に外科的手術を組み合わせた方法です。この手術では、歯を支える骨である歯槽骨の硬い部分である皮質骨に対して、切除や切れ目を入れる処置を行います。この手術の主な目的は、歯の移動を容易にし、矯正治療の期間を短縮することにあります。 従来の歯列矯正では、歯にかけられる力が限られており、歯の移動速度が遅くなり、治療には数年を要することがあります。ですが、コルチコトミーを併用して行うことで、歯槽骨の密度が高く硬い部分を取り除くか、切り込みを入れることで、歯が動く際の抵抗を減らし、移動速度を高められるといわれています。通常の歯列矯正に比べて、約半分の期間で治療が完了する場合もあります。 また、コルチコトミー併用矯正は、歯根吸収や歯肉退縮、治療後の後戻りのリスクを軽減するという利点も持っています。この方法により、抜歯をせずに済むケースも増え、矯正治療の選択肢が広がります。
コルチコトミー併用矯正のデメリットを教えてください。
コルチコトミー併用矯正は多くの利点を持ちますが、以下のようなデメリットも存在します。 1.局所麻酔下での外科手術を必要とし、痛みや腫れ、出血のリスクが伴う 2.従来の矯正治療に比べて費用が高くなる傾向がある 3.年齢制限があり、若年層への治療には適用しない 治療の選択にあたっては、これらのリスクと費用、適用条件などを総合的に評価し、歯科医との相談を通じて決定しましょう。

セルフライゲーションブラケットについて

セルフライゲーションブラケットについて

セルフライゲーションブラケットとは何ですか?
セルフライゲーションブラケットの特徴は、従来のブラケットシステムと比較して「低力・低摩擦」を実現している点にあります。つまり、より少ない力で、そして少ない摩擦で歯を動かせるのです。これにより、治療期間が短縮されるとともに、患者さんの痛みも軽減されます。 セルフライゲーションブラケットの主な仕組みは、ワイヤーを歯に対して緩やかに装着することにあります。従来のブラケットでは、ワイヤーを強固に固定するためにゴムや細い針金を使用していましたが、これにより摩擦が大きくなり、歯を動かすのに強い力が必要でした。これは、痛みの原因となり、また歯の移動にも時間がかかる要因にもなっていることが示唆されました。 ブラケットシステムは、歯列の自然な拡大を促し、無理な力を加えないため、歯周組織への負荷も少なくなります。結果として、非抜歯での治療が可能なケースも増えます。このように、セルフライゲーションブラケットは、治療期間の短縮、痛みの軽減、非抜歯治療の可能性という、矯正歯科治療における複数のメリットを提供する装置です。
セルフライゲーションブラケットのデメリットを教えてください。
セルフライゲーションブラケットは、多くのメリットを持つ矯正装置ですが、以下のようなデメリットも存在します。
1.結紮用のシャッターやクリップが組み込まれているため、その構造がやや複雑で厚みがあり、装着した際に口内での違和感を感じることがある
2.ブラケットのシャッター部分が金属製の場合、外見上目立つことがある
3.セルフライゲーションブラケットは従来の矯正装置に比べて高価で、特に、保険適用外の治療である場合、費用について検討する必要がある
4.一部のセルフライゲーションブラケットには、使用されている金属によってMRIなどの強磁場を発する医療機器の使用時に影響を及ぼすことがあり、金属が発熱する可能性や、MRIの撮影画像に乱れを引き起こすことがある
これらの点を含め、矯正治療の全体的なメリットとデメリットを十分に理解し、歯科医と相談の上で適切な治療法を選択することが重要です。

短期間で歯列矯正を行う時の注意点

短期間で歯列矯正を行う時の注意点

人によっては治療期間が短縮できないことがありますか?
個々の患者さんの歯の状態や治療方法により、必ずしも治療期間が短縮できるわけではありません。例えば、以下のような状況では治療期間が短縮できないことがあります。

  • 重度の歯並びの乱れ:歯並びの乱れが重度である場合、短期間での矯正治療では十分な矯正効果が得られないことがあります。
  • 個々の体質:人によっては、骨の硬さや歯の動き方が異なるため、同じ治療法でも期待した通りの効果が得られないことがあります。
  • 治療の進行状況:治療中に予期せぬ問題が発生した場合(例えば、装置の破損や歯の移動が予定通りに進まない等)、治療期間が延長することがあります。

以上のような理由から、自身の歯の状態や期待する結果について担当の歯科医と詳しく話し合い、懸念点などは相談をしながら治療を進めることが大切です。

アンカースクリュー、コルチコトミー併用矯正、セルフライゲーションブラケットによる治療ができる歯科医院は限られているのですか?
アンカースクリュー、コルチコトミー併用矯正、セルフライゲーションブラケットによる治療を提供している歯科医院は限られています。これらの治療は、特別な技術や知識を必要とします。これらの治療を希望する場合は、その歯科医院がどのような歯列矯正を提供しているかどうかを事前に確認することが重要です。また、治療を行う歯科医院を選ぶ際には、その医院の評判や口コミ、施術経験なども考慮に入れると良いでしょう。

編集部まとめ

編集部まとめ

ここまで歯列矯正を短期間で行う方法についてお伝えしてきました。 歯列矯正を短期間で行う方法についてまとめると以下の通りです。

  • 歯科矯正用アンカースクリューは、小さなスクリュー(ネジ)型の器具のことを指し、歯の移動を助けるための固定点として一時的に歯槽骨部に取り付けられ、通常の矯正装置と組み合わせて歯列矯正を行う
  • コルチコトミー併用矯正は、従来の矯正治療に外科的手術を組み合わせた方法で、歯を支える骨である歯槽骨の硬い部分である皮質骨に対して、切除や切れ目を入れる処置を行う
  • セルフライゲーションブラケットは、従来のブラケットシステムよりも矯正治療のためのワイヤーを緩やかに装着する装置で、治療期間の短縮や痛みの軽減、非抜歯の治療を行う

これらの情報が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。 最後までお読みいただきありがとうございました。

この記事の監修歯科医師
宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

宮島 悠旗医師(宮島悠旗ブライトオーソドンティクス)

愛知学院大学歯学部卒業 / 東京歯科大学千葉病院にて臨床研修医終了 / 東北大学大学院歯学研究科口腔発育学口座顎口腔矯正学分野 助教 / 宮島悠旗ブライトオーソドンティクス起業 / 著書「国際人になりたければ英語力より歯を“磨け”-世界で活躍する人の『デンタルケア』-」(幻冬舎)出版 / 合同会社T&Y Connection設立 / ASIA GOLDEN STARAWARD(企業家賞)受賞 / 著書「歯並び美人で充実人生-幸せを呼ぶゴールデンスマイル-」(合同フォレスト)出版 / 株式会社オーティカインターナショナル認定講師 / 現在は宮島悠旗ブライトオーソドンティクス代表としてフリーランス矯正歯科医を行っている / 専門は矯正歯科(Invisalign®︎、小児矯正、Myobrace®︎、マルチブラケット、アンカースクリュー、PBMオルソ(光加速矯正装置))

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