インビザラインはマウスピース型矯正治療の方法の1つで、薄くて透明なマウスピースを装着することで歯を動かしていく治療方法です。さまざまな歯並びの不正に対応していますが、中には適用できない場合もあります。
この記事では、インビザラインを用いて八重歯を治療できるのか、できるとしてその治療方法はどういうものになるのかなどについて解説します。
インビザラインで八重歯は治療できる?
- インビザラインについて教えてください。
- インビザラインとは、透明なマウスピースを使って歯並びを治すマウスピース型矯正装置の一種です。アメリカのアラインテクノロジー社が開発・提供しているシステムで、マウスピース型矯正装置の黎明期から世界的に広く普及しています。その技術は年々、進歩しており、いろいろなケースに適応できるようになってきています。標準的な全体矯正だけではなく、部分矯正や子どもが受ける小児矯正にまで対応できる点は、特筆すべきといえるでしょう。
- 八重歯はインビザラインで治療できますか?
- 八重歯とインビザラインで治療することは可能です。実際、多くの歯科医院で八重歯の治療をインビザライン矯正で行っています。ただし、ひと言で八重歯といっても、症例によって重症度が大きく異なるため、すべてのケースにインビザラインを適応できるわけではありませんので、その点は注意が必要です。基本的にインビザラインは、軽度から中等度の歯並びに向いている矯正法なので、八重歯も重症度が高い場合は適応外となりやすいです。
八重歯を放置するリスク
- 八重歯とはどのような状態のことを指しますか?
- 八重歯は、上の犬歯(けんし)が歯列の外側に飛び出している状態を指します。犬歯とは、前から三番目の歯で、その名の通り犬の歯のような形態をしています。ちなみに、八重歯という診断名は、医学的に存在していません。八重歯の正確な診断名は、叢生(そうせい)です。叢生とは、デコボコの歯並びを指す言葉で、一般的には乱ぐい歯と呼ばれています。その中でも上の犬歯が外側に飛び出している状態を八重歯と呼んでいます。
- 八重歯を放置するとどのようなリスクがありますか?
- 八重歯は、悪い歯並びの一種なので、放置することでさまざまな悪影響が生じます。具体的には、八重歯を放置すると以下に挙げるような4つのリスクを伴うことになります。・むし歯や歯周病になる可能性が高くなる
八重歯の人は、歯磨きのしにくさを毎日、実感していることでしょう。犬歯が外に飛び出している部分は、普通に歯磨きしていても汚れを取り除けません。歯ブラシの角度や位置、動かし方を工夫しなければ、きちんとブラッシングできないのです。そのため磨き残しが多くなり、細菌も繁殖しやすくなることから、むし歯・歯周病になる可能性も高まります。・噛み合わせが悪くなる
歯列の外側に出ている八重歯は、基本的に他の歯と噛むことがありません。それだけではなく、全体の噛み合わせまで乱してしまうこともあるのです。実際、八重歯になっている人は、そこだけではなく他の部分にも歯並び・噛み合わせの乱れが認められます。噛み合わせが悪いと、食べ物を効率よく咀嚼できません。また、歯列の一部分だけ強く当たることから、特定の歯の寿命が縮まる傾向にあるのです。・口の粘膜を傷つけることがある
八重歯の状態によっては、唇の内側の粘膜を傷つけることがあります。とくに上唇をぶつけたときに、内側の粘膜が傷つきやすいです。・口が閉じにくくなる
八重歯の傾きが大きいと、口を閉じにくくなることがあります。その結果、口呼吸が促されたり、口内乾燥が引き起こされたりするなどのリスクも生じます。
インビザラインで八重歯を治療する方法
- インビザラインで八重歯を治療する方法について教えてください。
- インビザライン矯正では、はじめにカウンセリングや精密検査を実施した上で、治療計画を立案します。その計画に同意したら、インビザライン用のマウスピース(アライナー)を作って八重歯を治していきます。マウスピースは、1日20〜22時間装着し、1〜2週間に1回の頻度で新しいものに交換します。そのサイクルを続けていくことで、外側に飛び出している犬歯が正常な位置へと戻り、八重歯の症状もなくなります。
【具体的な治療方法】
八重歯の根本的な原因は、スペース不足であるケースがほとんどです。そのスぺ-スを補うために、八重歯の治療では以下のような処置を行うことがあります。- 小臼歯などを抜歯する
- 歯列を側方に拡大する
- 奥歯を後ろに下げる
- 歯の側面を少しだけ削る
- インビザラインで八重歯を治療するのが難しい場合はありますか?
- 八重歯の重症度が高い症例では、インビザラインで治すことが難しい場合もあります。例えば、スペースの不足が大きくて歯を複数本、抜かなければならないような症例は、比較的重症度が高い八重歯といえます。そうしたケースでも、インビザラインで治すことは不可能ではないのですが、歯を大きく動かすのが得意なワイヤー矯正が適していることが多いです。その判断は精密検査を実施してみなければわかりません。
インビザラインで八重歯を治療する際の注意点
- インビザラインで八重歯を治療する際の注意点について教えてください。
- インビザラインは、マウスピース型矯正なので、標準的なワイヤー矯正とはいろいろな面で異なります。その中でもとくに以下の点には注意が必要です。
注意点1:マウスピースの装着・交換は自己管理
インビザラインで八重歯を治療する場合は、矯正装置の管理に注意しなければなりません。インビザラインのマウスピースの着脱、ケア、交換はすべて自分で行わなければならないからです。これらをルール通りに行えないと、適切な矯正効果が得られなくなります。最悪の場合は、治療計画を立て直し、マウスピースも作り直さなければならなくなるのです。この点に不安がある場合は、装置の着脱から調整まですべて歯医者さんが行ってくれるワイヤー矯正の方が向いているといえるでしょう。注意点2:マウスピース装着中は水しか口にできない
インビザライン矯正は、食事を普段通りに行えるという点が大きなメリットとして広く認知されていますが、マウスピースを装着中は水しか口にできないということを知っておきましょう。マウスピースと歯との間には、わずかに隙間が存在しているため、飲み物の成分が流れ込んでしまうのです。砂糖入りの清涼飲料水であればむし歯、色素の強いコーヒーや紅茶の場合は歯の着色が促されます。当然ですが食べ物を噛めば、マウスピースが破損します。
注意点3:噛み合わせを改善できないことがある
インビザラインは、歯並びをきれいに整えるのが得意な矯正システムです。八重歯も軽度から中等度であればきれいに治せることが多いのですが、噛み合わせに関しては注意が必要です。インビザラインは、矯正のシステム上、噛み合わせを細かく調整するのに向いてはいないからです。そのため噛み合わせまできれいに矯正したいのであれば、インビザラインではなくワイヤー矯正の方が適しているかもしれません。あるいは、インビザラインとワイヤー矯正を併用する方法を検討してみても良いでしょう。
- インビザラインとワイヤー矯正を併用するケースはありますか?
- インビザライン単独ではきちんと治せないと診断されたケースでは、ワイヤー矯正を併用する場合があります。例えば、複数本の抜歯を行って歯を大きく移動しなければならないケースでは、最初にワイヤー矯正を行うことがあります。ワイヤー矯正によって歯並びが大まかに整ったら、インビザラインで仕上げるという流れです。もちろん、治療の手順等はケースによって変わってきます。
インビザラインで八重歯を治療する際の費用と期間
- インビザラインで八重歯を治療する際の費用はいくらぐらいですか?
- インビザラインで八重歯を全体矯正する場合は、80万〜90万円程度の費用がかかります。部分矯正で治す場合は、30万〜60万円程度の費用がかかります。
- インビザラインで八重歯を治療する際の期間はどれぐらいですか?
- インビザラインによる標準的な全体矯正では、八重歯を1〜2年程度で治すことができます。これは歯を動かすのに要する期間です。八重歯の後戻りを防止する保定期間を合わせると、2~4年程度かかります。重症度が比較的高い場合は、さらに長い期間を要することがあります。
編集部まとめ
今回は、インビザラインで八重歯を治す方法について解説しました。八重歯は放置することで、むし歯や歯周病になる可能性が高くなる、噛み合わせが悪くなる、口の粘膜を傷つけることがある、口が閉じにくくなるといったリスクが生じることから、早期に矯正を受けた方が良いといえます。
軽度から中等度の八重歯なら、インビザラインでも治せることが多いです。必要に応じてワイヤー矯正を併用することもありますので、まずは歯科医院に相談してみることをおすすめします。
参考文献