最近、人気のマウスピース型矯正の治療方法に、インビザラインがあります。マウスピースを装着して、それを交換していくことで歯を動かす矯正治療方法で、マウスピースが薄くて透明なため目立ちにくく、矯正治療中であることが他の人に気づかれにくいのは嬉しいポイントです。
他の矯正治療方法に比べて通院回数も少なくて済むなど、さまざまなメリットのある治療方法ですが、治療中に痛みを伴うことはあるのでしょうか。この記事では、インビザラインによる矯正治療は痛いのか、痛みがある場合の原因と対処法について解説していきます。
インビザラインとは
- インビザラインとはどのような矯正治療方法ですか?
- インビザラインは、マウスピースを使った歯列矯正の方法です。マウスピースを1日20〜22時間程度、装着することで歯並びが改善されていきます。従来のワイヤー矯正とは異なり、装置が目立ちにくく、食事や歯磨きの際に取り外すことが可能です。日本で最も普及しているマウスピース型矯正のひとつで、年々、その人気は高まっています。
- インビザラインの仕組みについて教えてください。
- インビザラインでは、アライナーと呼ばれるマウスピースを順番に交換していくことで、歯が動いていきます。一般的な症例では、50枚程度のマウスピースを製作し、それを1〜2週間に1回くらいの頻度で交換していくことで、最終的には悪い歯並びを改善することが可能となります。インビザラインのマウスピースは1枚あたり0.25mm程度、歯を動かせるように調整されているため、一見すると同じようなマウスピースに見えるかもしれませんが、ひとつずつ形態が異なります。そのためマウスピースの交換順序をひとつ間違えるだけでも、歯が計画通りに動かなくなります。マウスピースの交換頻度が早すぎても、治療計画を乱してしまうことがある点に注意しなければなりません。
- インビザラインによる矯正治療の流れについて教えてください。
- インビザラインによる矯正治療は、以下のような流れで進行します。
- STEP1:カウンセリング
- STEP2:検査・診断
- STEP3:治療計画の立案・説明
- STEP4:マウスピースの製作・装着
- STEP5:保定処置
上記はあくまでインビザライン矯正の大まかな流れです。各ステップでは、さまざまな処置や検査が実施されます。
インビザラインのメリット・デメリット
- インビザラインによる矯正治療のメリットは何ですか?
- インビザライン矯正には、次のようなメリットがあります。
メリット1:審美性に優れている
マウスピースは透明で目立ちにくいです。メリット2:快適性に優れている
マウスピースは薄く、表面は滑らかなので、装着時の異物感や違和感が少ないです。歯の移動に伴う痛みも比較的少ないといえます。メリット3:食事や歯磨きがしやすい
マウスピースは、食事と歯磨きの時に取り外せます。メリット4:通院する頻度が低い
インビザラインは、2ヵ月に1回程度の通院で治療を進めていくことになります。
- インビザラインによる矯正治療のデメリットは何ですか?
- インビザライン矯正には、次のようなデメリットがあります。
デメリット1:適応範囲が狭い
インビザラインは、主に軽度から中等度の歯並びが対象となります。しかし、矯正歯科医が適切な治療計画を立てていれば、重度の不正咬合にも対応できるケースもありますデメリット2:マウスピースの管理が大変
マウスピースの着脱や清掃、交換はすべて自分で行わなければなりません。デメリット3:噛み合わせを改善しにくい
インビザラインは、噛み合わせを細かく調整するのにはあまり向いていない矯正法といえます。もちろん、ケースによっては噛み合わせまできちんと正常化することができます。
インビザラインによる治療は痛いのか
- 他の矯正治療方法に比べて、インビザラインはどの程度痛みを伴いますか?
- マウスピース型矯正のインビザラインは、その他の矯正治療法よりも痛みが少ないといえます。それは主に、以下の2つ理由からです。
理由1:比較的弱い力で歯を動かす
インビザラインは、ワイヤー矯正よりも弱い力で歯を動かします。矯正力が弱いということは、歯にかかる力も弱いことを意味するため、治療に伴う痛みも少なくなります。
理由2:装置がシンプル
ワイヤー矯正では、ゴツゴツとしたブラケットと金属製のワイヤー、先端が鋭利な結紮線(けっさつせん)などを使用します。これらが舌や歯茎に当たると強い痛みが生じます。一方、インビザライン矯正では、薄くて滑らかなマウスピースを使うだけなので、装置による刺激がほとんどありません。その結果、痛みも少なくなるのです。
- インビザラインによる矯正治療で痛みを感じるときはどんなときですか?
- インビザライン矯正では、新しいマウスピースを装着した時や歯が動いている時などに痛みを感じます。とくにインビザラインによる矯正治療を始めたての頃は、痛みを強く感じやすいことでしょう。時間が経過すると、マウスピースを装着している違和感や歯の移動に伴う痛みにも慣れてくるため、そうした不快症状が気にならなくなります。
インビザラインで痛いと感じる原因と対処法
- インビザラインで痛いと感じる原因を教えてください。
- インビザライン矯正中に痛いと感じる原因としては、以下の5つが挙げられます。
・歯が圧迫されている
インビザラインは、マウスピースで歯を圧迫することによって矯正する方法です。歯に対して強い力がかかれば、それを痛いと感じる場合もあります。ただし、1歯1歯にブラケットを装着して、歯を力強く動かすワイヤー矯正の痛みほど強くはないでしょう。・新しいマウスピースに慣れていない
新しいマウスピースは、ひとつ前のマウスピースとは少しだけ形が変わっています。その形態に慣れるまでには、少し時間がかかります。インビザライン矯正の進み具合によっては、新しいマウスピースの違和感が痛みとして感じられる場合もあります。・マウスピースやアタッチメントが口内を傷つけている
患者さんの口腔内の状態によっては、インビザラインのマウスピースでも粘膜を傷つけてしまうことがあります。歯の表面に設置するアタッチメントと呼ばれる突起にもそのリスクがあります。・歯が後戻りしてしまった
インビザライン矯正の途中で歯の後戻りが生じると、次のマウスピースが合わなくなってしまいます。無理にそのマウスピースを装着すると、想定していたよりも強い力がかかるため、痛みが生じます。矯正中の後戻りは、マウスピースの装着時間が少ないことが原因となりやすいです。・抜歯した部分の痛み
歯をきれいに並べるために抜歯をした場合は、その部分が痛むことがあります。抜歯した直後はもちろんのこと、マウスピースの装着が始まってからも何かの拍子に痛むことがあるため注意が必要です。我慢できないような痛みが生じている場合は、細菌に感染している可能性も考えられます。
- インビザラインで痛いと感じたときの対処法を教えてください。
- インビザライン矯正中に痛いと感じた場合は、以下の6つの方法で対処してみてください。
・ひとつ前のマウスピースに戻す
歯の後戻りが原因で痛みが生じている場合は、ひとつ前のマウスピースに戻すことで、痛みを軽減できます。何らかの理由で、マウスピースの交換時期がずれてしまったのでしょう。・着脱用のスプーンを使用する
マウスピースの着脱時に、アタッチメントが邪魔になって痛みが生じている場合は、着脱用のスプーンを使うと良いでしょう。マウスピースに無理な力をかけなくても取り外せるようになります。・マウスピースの尖っている部分を削る
マウスピースの尖っている部分が歯茎に当たって痛い場合、該当箇所を削ることで症状の改善が見込めます。自分自身で上手に対処できそうであれば、紙やすりで出っ張っている部分を研磨しましょう。自分では対処できない場合は、主治医に相談してください。・マウスピースを外す時間を短くする
マウスピースを外している時間が長くなると、歯の後戻りが生じてしまいます。その結果、今使っているマウスピースが合わなくなり、装着した時に痛みが出やすくなります。ですから、マウスピースを外している時間をできるだけ短くして、矯正力をきちんと働かせることが大切です。少なくとも1日20時間以上はマウスピースを装着しましょう。・鎮痛剤を服用する
インビザライン矯正に伴う痛みが強い場合は、市販の鎮痛剤を服用しても構いません。普段、飲み慣れているバファリンなどの痛み止めを用法・用量を守った上で服用しましょう。・治療計画を再検討する
インビザライン矯正では、上記の方法では改善できない痛みが生じることもあります。それは治療計画自体に不備がある可能性が高いです。そうしたケースでは、そのまま無理に治療を進めていくのではなく、一度、検討し直すと良いでしょう。もちろんそれは患者さんと主治医とで相談しながら決めていくことになります。
編集部まとめ
今回は、インビザラインによる矯正治療にはどのような痛みが伴うのかについて、その原因と対処法も併せて解説しました。インビザライン矯正では、マウスピースによって歯が圧迫されている、新しいマウスピースに慣れていない、マウスピースやアタッチメントが口内を傷つけている、歯が後戻りしている、抜歯部位の疼痛、といった理由で痛みが生じることがあります。
それぞれ対処法が用意されていますので、該当する症状がある人は、本文で紹介した内容を参考にしてみてください。
参考文献