歯列矯正を行っている方のなかには、マウスピースを使用した方法を選んでいる方も少なくないでしょう。
マウスピースによる歯列矯正は審美性がよく、取り外しもできるため便利な矯正器具です。
しかし、マウスピースを日々お手入れをして清潔にしなければ、むし歯や歯周病の原因となってしまうリスクもあります。
そこで今回は、歯列矯正用のマウスピースの洗い方やお手入れの注意点などを解説します。
歯列矯正用のマウスピースの洗浄頻度
- マウスピース型矯正の矯正器具の特徴を教えてください。
- マウスピース型矯正器具の特徴は、矯正器具が目立ちにくい状態で歯列矯正ができる点です。歯科矯正でよく使用されるワイヤーを使った矯正器具は、笑ったときなどに見えてしまうデメリットがあります。一方で、マウスピース型矯正器具は透明のマウスピースを歯に被せる歯列矯正方法なので、歯を見せてもわかりにくいです。
また、取り外しが可能なため、食事や歯磨きの際に邪魔になることもありません。ただし、マウスピースの種類にもよりますが、1日に17〜20時間以上装着しなければ歯列矯正の効果が下がる点には注意が必要です。さらに、すべての症例でマウスピース型矯正器具が使用できるわけではなく、歯を大きく動かす必要がある場合は適用が難しいといったデメリットもあります。
- マウスピースを自分でお手入れをする必要がありますか?
- マウスピースを自分でお手入れすることは必須です。マウスピースによる歯列矯正は、通常1〜2週間程度で新しいものと取り替えますが、使用中のマウスピースは基本的に自分で磨いてお手入れしなけばなりません。
マウスピースは食事や歯磨きのときには外す必要があるので、その際にお手入れをしましょう。再び装着するときは、歯磨きを終えてからでないと汚れが付着してしまうので、歯磨きの後にしてください。
- マウスピースの洗浄を怠るリスクを教えてください。
- マウスピース洗浄を怠ると臭いや病気の原因となる恐れがあります。口腔内には多くの菌が存在しているので、マウスピースを着用すると菌が付着してしまいます。また口腔内は菌が増殖しやすい環境であることに加えて、マウスピースの内側は唾液と接触しにくいので唾液による自浄作用が低下しやすいです。
そのため、洗浄せずに使い続けるとマウスピースに付着した菌が増殖し続け、臭いの原因になる可能性やむし歯・歯周病を発症する可能性が高まります。むし歯や歯周病になるとマウスピース治療を一度中止する場合があるので、歯列矯正の進行に影響を及ぼしかねません。
- 適切な洗浄頻度を教えてください。
- マウスピースの洗浄は毎日行ってください。上記でも説明したようにマウスピース装着中は細菌にとって増えやすい環境ですので、早いスピードで菌が増えてしまいます。そのため、1日に1度はマウスピースの洗浄を行うことがおすすめです。
また1週間に一度は洗浄剤を使用した掃除をしましょう。菌は目に見えないため、指やブラシで洗ったとしてもマウスピースに残っている可能性があります。しかし、洗浄剤には除菌効果があるので見えない菌を殺菌するのに有効です。
歯列矯正用のマウスピースの洗い方
- マウスピース専用の洗浄剤は市販されていますか?
- マウスピース専用の洗浄剤は市販されており、ドラッグストアなどで購入可能です。洗浄剤は錠剤を水に溶かすタイプや泡スプレータイプなどいくつか種類があるので、自分の好みに応じて購入するとよいでしょう。注意点として、マウスピースに入れ歯用の洗浄剤は使わないようにしてください。
入れ歯用の洗浄剤はマウスピース用洗浄剤とは使用成分が異なっているため、マウスピースに使用すると変形してしまうリスクや破損するリスクがあります。ただし、マウスピースと入れ歯両方に使用できる洗浄剤もあるので、そちらであれば使用は可能です。また、洗浄剤を使用するときは使用量や洗浄時間を守って使うようにしましょう。
- 歯磨き粉を使用して洗っても大丈夫ですか?
- 歯磨き粉を使っての洗浄は控えてください。歯磨き粉には研磨剤が含まれている場合があり、マウスピースの洗浄に使用すると傷がつく場合があります。
マウスピースに傷がつくと、細菌がその傷に入って増殖してしまったり、マウスピースの透明度が低くなる恐れがあります。マウスピースを洗浄するときは歯磨き粉の使用は控えてブラシのみで行いましょう。
- マウスピースの洗い方のポイントを教えてください。
- 毎日の洗浄では、マウスピースを水で流しながら指の腹で優しく洗いましょう。マウスピースには白い汚れがついていることがありますが、これは歯垢(プラーク)と呼ばれるものでそのなかには細菌が多く潜んでいるため、残さずきれいに落としてください。水と指だけでも十分汚れを落とすことはできますが、時間があればやわらかいブラシを使ってマウスピースを磨くとさらにきれいになります。
ブラシを使うことで、指では届きにくいマウスピースの窪みの奥の汚れを落とせるのでおすすめです。また、1週間に一度は専用の洗浄剤を使用してマウスピースをきれいにしましょう。洗浄剤はマウスピースの除菌ができるので清潔に保つためには行った方がよいです。
歯列矯正用のマウスピースのお手入れの注意点
- マウスピースのお手入れで注意するべき点を教えてください。
- マウスピースをブラシでお手入れする際は、やわらかいブラシを使って汚れを落とすようにしてください。硬いブラシを使うとマウスピースに細かな傷がついてしまい、細菌が付着しやすくなります。ブラシを使用するときはやわらかいものを使用して歯磨き粉などは使用せずに磨いてください。
また、洗浄剤を使用するときはマウスピース用のものを選び、量や使用時間を守って使うことが大切です。錠剤を水で溶かすタイプの洗浄剤を使用するときは、40度程度のぬるま湯で溶かす必要があります。水温が低いと錠剤が溶けにくい場合があるので注意が必要です。
- 煮沸消毒やアルコール消毒をしても大丈夫ですか?
- マウスピースに煮沸消毒は避けてください。マウスピースは熱に弱い素材のため煮沸消毒をすると、変形や破損の恐れがあります。お湯を使うときは40度程度のぬるま湯の使用がおすすめです。また、煮沸消毒の際に限らず熱いものを飲む際もマウスピースを外すように注意する必要があります。
アルコール消毒も煮沸消毒と同様にしないようにしましょう。マウスピースはアルコールに弱い素材が使用されている場合があり、アルコールに触れると変形するリスクがあります。マウスピースを消毒したい場合は、煮沸消毒やアルコール消毒は避けて専用のマウスピース専用の洗浄剤を使用するとよいです。
- マウスピースは破れることもありますか?
- マウスピースは強い力が加わると破れることがあります。特にマウスピースを外し忘れたまま食事をとってしまうと、噛む力に耐えられず破損するリスクが高いです。また、マウスピースをつけたまま食事をすると、マウスピースに色がついてしまい見栄えが悪くなってしまう場合があるので外し忘れないよう注意してください。さらに、歯ぎしりによってマウスピースが破損してしまうケースがあります。
歯ぎしりは、食事のときよりも強い力が加わります。また、歯ぎしりは起きているときだけでなく、寝ている間にも無意識に発生するため自覚症状がない場合もあるでしょう。そのため、いつの間にか破損していたといったときは、夜間の歯ぎしりが原因の可能性があります。マウスピースが破れたり変形したりした場合は作り直しとなってしまい、その間は歯列矯正が中断されるので治療期間が伸びてしまいます。歯列矯正用のマウスピースはデリケートなものなので、丁寧に扱うようにしましょう。
編集部まとめ
マウスピースの洗浄は毎日行うことが大切です。毎日行うことで、むし歯や歯周病といった病気や臭いの発生を抑えられます。
洗浄の際は水で流しながら指の腹で優しく洗いましょう。窪みの部分はやわらかい歯ブラシを使用すると奥まできれいにできるのでおすすめです。
また、1週間に一度は洗浄剤を使用するとマウスピースを清潔に保てます。洗浄剤には除菌効果があるので見えない菌を殺菌することが可能です。
洗浄時の注意点は、歯磨き粉や硬いブラシの使用を控えることです。これらはマウスピースに傷がつく原因となるため行わないようにしましょう。
また、煮沸消毒やアルコールによる除菌もマウスピースを変形や破損させるリスクがあります。マウスピースの除菌を行いたい場合は専用の洗浄剤を1週間に一度使用するとよいです。
歯列矯正用のマウスピースを使用している方はこれらのことに注意しながら、マウスピースをきれいに使用しましょう。
参考文献