マウスピース型矯正は歯にマウスピースを装着し、歯列矯正を行う治療法です。
マウスピース型矯正によって歯の位置を整えることで、歯並びや噛み合わせの改善が期待できます。
透明なマウスピースを歯に取り付けるだけなので、目立ちにくく周りに歯列矯正中と気付かれにくいメリットがあります。
しかし、マウスピース型矯正は口臭の原因となる場合があるため、注意が必要です。
この記事では、マウスピース型矯正で口臭が発生する原因について解説し、口臭を放置した場合のリスクや対処法についても解説します。
これからマウスピース型矯正を行う方や、現在マウスピース型矯正を行っている最中で口臭が気になる方にとって、参考になる情報をまとめています。
マウスピース型矯正の特徴
歯列矯正に使用される治療方法は、マウスピース型矯正とワイヤー型矯正があります。
ワイヤー矯正は強い力で歯列矯正するので重度の場合でも治療できますが、痛みが生じやすいです。
お口を開けたときに目立ちやすく、途中で取り外すこともできないため、外見にも影響が出やすいです。
マウスピース型矯正は、歯に透明なマウスピースを装着して歯列矯正を行います。
マウスピースは歯列矯正の進み具合に応じて形が異なる複数個を順番に使用するため、その都度新しいものに交換が必要です。
歯列矯正する力はワイヤー型よりも弱く、治療できるのは軽度なものに限られるので、矯正範囲によっては使用できないこともあります。
しかし痛みが生じにくく、透明であることから装着していてもあまり目立ちません。
会話をしたり笑ったりするのも気にせずに行うことができるでしょう。
また、マウスピースは自分で取り外しができるので、普段どおりに食事を楽しんだり歯を磨いたりできるのがメリットです。それ以外の時間は睡眠中でも装着したままにする必要があります。
治療期間中は自分で付け外しを行う必要があり、付け忘れてしまっていると治療が遅れてしまうので注意が必要です。
マウスピース型矯正で口臭が発生する原因
自由に取り外すことができ、見た目にも目立ちにくいので便利なマウスピース型矯正ですが、口臭の原因にもなるケースがあります。
見た目には目立ちにくくても、口臭が目立ってしまうと周りの目が気になるかもしれません。
取り外すことができるマウスピースが、なぜ口臭の原因になってしまうのでしょうか。
マウスピース型矯正で口臭が発生する原因について解説します。
マウスピースの洗浄が不十分
マウスピースはプラスチックで作られています。
プラスチックには臭いが付着しやすいという特徴があり、洗浄が不十分であると臭いが長く残ります。
マウスピースの表面にぬめりがあったり、白っぽい色が付いていたりすると、汚れが残っている可能性が高いです。
マウスピースは毎日しっかりと洗浄するようにしましょう。
マウスピースに傷がついている
マウスピースの原料となるプラスチックは、一見するときれいでも、表面に見えない傷がついている場合があります。
マウスピースに傷があると、その傷の部分に汚れが入り込み溜まっていきます。
汚れは臭いの原因にもなるので、傷が口臭の原因となっているケースもあり注意が必要です。
マウスピースに雑菌が繁殖している
マウスピースの洗浄が不十分であったり、傷があったりすると、汚れが原因となりマウスピースに雑菌が繁殖します。
雑菌は臭いも伴うため、口臭が悪化する原因です。雑菌は目には見えず、繁殖していることに気付かないケースもあります。
しっかりと洗浄するなど、雑菌の繁殖にも注意するようにしましょう。
マウスピースの装着前に歯磨きをしていない
食後に歯磨きをせずそのままにしていると、歯と歯の隙間や歯茎に食べかすや汚れが残ったままになります。
マウスピースがきれいでも、装着する歯が汚れていたらマウスピースに汚れが移ってしまいます。
通常であれば唾液である程度の汚れは流れ落ちますが、マウスピースを装着していると、唾液では流れ落ちません。
装着前には必ず歯磨きをするようにしましょう。
マウスピース型矯正による口臭を放置するリスク
マウスピース型矯正をしている最中の口臭が気になっても、歯列矯正が終わればもとに戻るから大丈夫と思ってしまうかもしれません。
ですが、口臭を放置しておくと臭い以外の問題が出てくるケースがあります。
口臭を放置した場合に起こりうるリスクについての理解も必要です。
むし歯・歯周病のリスクが高まる
マウスピース型矯正による口臭の原因は、歯に残った食べかすや汚れが原因となっていることもあります。
食べかすや汚れがあるままで放置をしておくと、歯とマウスピースの間に残ったままになり、むし歯や歯周病になりやすくなります。
マウスピースの洗浄と口腔ケアの両方をしっかりとすることで、口臭予防だけでなくむし歯や歯周病の予防もできるでしょう。
歯列矯正を中断する必要が出てくる可能性も
むし歯や歯周病など、歯列矯正以外の治療を行う必要が出てくると、マウスピース型矯正の中断が必要となる場合があります。
むし歯や歯周病の治療を先に行うことになると、マウスピース型矯正にかかる期間が伸びてしまいます。
その結果、治療期間や治療費が増えてしまうこともあるでしょう。
さらには、抜歯やインプラントなど歯列に対する影響が大きい治療が必要となると、マウスピース型矯正自体ができなくなることも考えられます。
むし歯や歯周病を早期に発見して必要最低限の治療で済ませるためにも、口臭の放置は要注意です。
マウスピース型矯正による口臭の対処法
マウスピース型矯正を行っていくなかで、口臭に対する対処法を覚えることも必要です。
口臭の心配を減らし、毎日安心感を持って歯列矯正を行っていくためにも、正しい対処法を身に付けるようにしましょう。
マウスピース型矯正による口臭の対処法について解説します。
マウスピースのお手入れを見直す
マウスピースは毎日自分でお手入れをしていく必要があります。
マウスピースのお手入れが不十分であると、汚れが残っていたり劣化したりするので要注意です。
日頃のお手入れが間違っている場合には、お手入れを見直してきれいに使い続けるようにしましょう。
歯磨きをしっかり行う
マウスピース型矯正は、歯にマウスピースを被せて歯列矯正を行います。
歯とマウスピースが密着するため、歯に食べかすや汚れがあるとマウスピースに移り、汚れが溜まったり雑菌が繁殖したりします。
食後にはマウスピースを装着する前に、歯磨きをしっかりと行うことが大切です。
特に、マウスピース型矯正を行っていないときよりも時間をかけて十分に磨くとよいです。
唾液の分泌を促す
唾液は、歯の汚れを洗い流す自然のクリーナーとして重要な役割を果たしています。口腔内の清潔を保つうえで、唾液は欠かせない存在です。
しかし、マウスピース型矯正装置を装着していると、歯とマウスピースが密着しているため、唾液の流れが妨げられやすくなります。
その結果、唾液が十分に循環しないと汚れや食べかすが歯に残りやすくなり、口臭・虫歯・歯周病のリスクが高まる可能性があります。
唾液には、食べかすや細菌を洗い流すだけでなく、口腔内のpHを中和して酸による歯のダメージを防ぐ効果や、抗菌作用によって細菌の繁殖を抑える働きもあります。
そのため、唾液の分泌量を増やし、口腔内を健やかに保つことが大切です。
唾液の分泌を促進し、汚れを流し落とすためには、食事中によく噛むという習慣を身につけることが効果的です。
一口一口をしっかり噛むことで、唾液腺が刺激され、唾液の分泌が活発になります。また、ゆっくりと時間をかけて食べることで、唾液の分泌をさらに促すことができます。
特に硬めの食材や噛みごたえのある食品を積極的に取り入れると、自然と噛む回数が増え、唾液の量を増やす助けとなるでしょう。
さらに、よく噛むことは口臭予防だけでなく、健康全般にも多くの利点をもたらします。
例えば、満腹感を感じやすくなるため食べ過ぎを防ぎ、ダイエット効果を期待できることもポイントです。また、顎の筋肉を使うことで顔周りの筋肉が鍛えられ、顔の引き締め効果も期待できます。
このように、よく噛むことは口腔内の健康を守るだけでなく、全身の健康にもよい影響を与える重要な習慣といえるでしょう。
マウスピースの正しいお手入れ方法
マウスピースの正しいお手入れ方法について解説します。
マウスピースのお手入れは毎日かかさずに行うことが大切です。
正しいお手入れ方法を行うことで、マウスピースに汚れや雑菌が付着するのを防ぎ、劣化や変形を抑えることもできます。
毎日行う作業になるので、しっかりと覚えましょう。
洗浄方法
マウスピースは、清潔な状態を保つために、食事や歯磨きなどで外すたびに洗浄を行うことが大切です。毎回の洗浄が習慣化されていれば、口腔内の衛生を保つだけでなく、マウスピース自体の寿命を延ばすことにもつながります。
洗浄を行う際には、必ず水を使うようにしましょう。熱湯をかけると、マウスピースのプラスチック素材が変形してしまう可能性があります。
変形したマウスピースは歯にフィットしなくなり、効果が損なわれる恐れがあるため、熱湯の使用は避けましょう。
洗浄時は、水を流しながら指やブラシを使ってマウスピースを丁寧に擦り、汚れを落とします。このとき、ブラシはやわらかめのものを選ぶのがおすすめです。
硬いブラシで擦ると、プラスチックの表面に傷がつき、その傷に汚れが溜まりやすくなる場合があります。傷がつくと見た目にも影響を与え、口腔内に細菌が繁殖しやすくなるリスクも生じるため注意が必要です。
また、汚れが部分的に残らないよう、マウスピースの隅々まできれいにすることが重要です。洗浄の際には特に、凹凸がある部分や歯と接する内側の部分を意識的に磨くようにしましょう。洗浄後は、しっかりと水気を拭き取り、清潔な状態で保管することで、衛生面の維持に役立ちます。
また、マウスピース用の洗浄剤を使用することで、さらに口臭の発生を予防できます。
保管方法
長時間マウスピースを外したままにする際は、清潔を保つために専用のケースにしまって保管することが重要です。
そのままテーブルやカウンターの上に置いてしまうと、ホコリや汚れ、さらには細菌が付着する原因になります。また、落下や紛失のリスクもあるため、ケースを活用することでマウスピースを安全に保管できます。
外食や旅行など、自宅以外でマウスピースを外す機会がある場合は、専用のケースを常に持ち歩く習慣をつけるとよいでしょう。
ケースがあれば、外出先でも衛生的にマウスピースを管理することができます。特にバッグの中に直接入れると汚れや傷が付きやすいため、ケースは忘れずに携帯してください。
保管時には、自然乾燥でしっかりと乾かすことが大切です。水分が残ったままケースにしまうと、湿気がこもり、細菌やカビの繁殖につながる可能性があります。
マウスピースを清潔なタオルやペーパータオルの上で乾かしてからケースに入れると、衛生的に保つことができます。
注意点として、乾燥を早めるためにドライヤーの強い熱風を当てるのは避けましょう。マウスピースはプラスチック素材でできており、強い熱によって変形してしまう可能性があります。
マウスピース型矯正による口臭の予防方法
マウスピース型矯正は、口臭が発生しやすい治療方法です。
口臭を気にすることなく治療を進めていくためにも、日々の口臭予防をかかさず行うことが大切です。
マウスピース型矯正による口臭の予防方法について、以下で解説します。
食事中はマウスピースを外す
食事中は、マウスピースを外しましょう。マウスピースを装着したまま食事をすると、汚れがついたり、硬い食べ物によってマウスピースが破損したりする可能性があります。
甘い飲み物は、歯とマウスピースの間に入り込み、むし歯などの原因になることがあるので要注意です。
コーヒーといった色が濃い物も、マウスピースが着色してしまうことがあります。また、熱い飲み物によってマウスピースが変形する場合もあります。
水や冷たいお茶などであればマウスピースを装着したままでも問題はありません。
しかしそれ以外の場合には、基本的にはマウスピースを取り外してから食べたり飲んだりするとよいです。
定期的に歯科医院で歯のクリーニングを受ける
歯磨きは、自分ではしっかりと磨けていると思っていても実際には十分ではないこともあります。
歯磨きが十分でないと、磨き残しや歯石など自分ではきれいにしきれない汚れがどうしても残ります。
歯石や磨き残しは、口臭の原因です。
定期的に歯科医院を受診し、歯石の除去や磨き残しのチェックを受けるとよいでしょう。
歯科医院では歯のクリーニングをしてもらえるので、定期的にしっかりと歯をきれいにすることで口臭予防ができます。
まとめ
マウスピース型矯正は、目立ちにくく取り外しもできる反面、口臭の原因となりやすいです。
マウスピースのお手入れや口腔ケアが不十分であることが、口臭の主な原因です。
口臭をそのまま放置しておくと、むし歯や歯周病などの原因になるケースもあります。
口臭を防ぐには、日々のお手入れや歯磨きをしっかりと行うことが大切です。また、定期的に歯科医院を受診し、お口の中を清潔に保つようにしましょう。
マウスピースのお手入れ方法や保管方法も正しいやり方があります。
わからないことがあったり、口臭がどうしても気になったりするときには、歯科医院で相談をすることが大切です。
参考文献