マウスピース型矯正では、食事のときは必ずマウスピースを外さなければなりません。食事の後は、マウスピースを装着する前に歯磨きをする必要があります。
食事のときに取り外せることで普段と変わらない食事を楽しめますが、学校・職場・外食時など食後に歯磨きができない場面も出てくるでしょう。
本記事では、マウスピース型矯正中の歯磨きの方法を解説します。
歯磨きの重要性や歯列矯正中の口腔ケアポイントも解説するので、現在歯列矯正中の方だけでなく、歯列矯正を検討している方も参考にしていただければ幸いです。
マウスピース型矯正中の歯磨きは大変?
マウスピース型矯正中の歯磨きは、マウスピースを外して通常通りの歯磨きを行えばよいので、ワイヤー型矯正などと比べるとは歯磨きがしやすいです。
ただし、食後すぐに歯磨きをしてからマウスピースを取り付ける必要があるため、外食などで歯磨きがすぐに行えない状況の場合に、歯磨きが手間と感じることもあるでしょう。
マウスピース型矯正は、取り外し可能な透明なマウスピースを使用し歯並びを改善する歯列矯正です。治療段階にあわせた歯列矯正装置を装着し、1〜2週間ごとに交換することで、少しずつ歯並びを改善していきます。
マウスピース型矯正にはメリットとデメリットがあります。マウスピース型矯正は、次のようなメリットがあります。
- 透明なマウスピースを使用するため目立ちにくく歯列矯正していることを周囲に気付かれにくい
- マウスピースの取り外しが簡単で歯列矯正中でも食事を楽しむことができ歯磨きがしやすい
しかし、次のようなデメリットもあります。
- 1日20時間以上装着する必要がある
- 食事のときは必ずマウスピースを外さなければならない
- 食事後は歯磨きをしてからマウスピースを装着する
以上のように、歯列矯正装置が簡単に取り外しでき自由に食事を楽しめる一方で、食事の後すぐに歯磨きをしマウスピースを取り付ける必要があることに大変さを感じる方もいるのが現実です。
マウスピース型矯正中の歯磨き方法
食事の後、歯磨きをせずにマウスピースを装着すると、汚れや細菌が密着した状態となります。むし歯や歯周病の原因となるので、必ず歯磨きをしてからマウスピースを装着しましょう。
以下、マウスピース型矯正中の歯磨き方法を解説します。
マウスピースを外す
食事の前に、必ずマウスピースを外します。
マウスピースを外すときは、左右どちらかの奥の内側から外します。マウスピースと歯の境目に指を引っかけてマウスピースを外しましょう。
アタッチメントがある場合、少し取り外しにくいですが、同様に注意しながら奥歯から外します。
どうしても外せないときは、専用の器具を用いて、マウスピースの内側にフックを引っかけて外しましょう。
慣れるまでに少し時間はかかりますが、慣れれば簡単に外せるようになるでしょう。
口腔内を水ですすぐ
お口の中は常に細菌が繁殖しています。マウスピースを外した後、口腔内を清潔に保つために、お口を水ですすぐことが大切です。
食後に歯磨きができない場合、水で口腔内をすすぐだけでも、食べ物や飲み物の残りかすを一部除去できます。
歯ブラシで丁寧に磨く
歯列矯正によって歯が移動したり、歯を並べるスペースを獲得するために歯を削ったりすることで、歯と歯の間に隙間ができる場合があります。
歯に隙間ができると食べ物が詰まりやすくなります。すぐに歯磨きをせず放置することでおこるリスクが、細菌の繁殖によるむし歯や歯周病です。
歯磨きをするときは、歯ブラシの毛先が隙間に入るよう歯ブラシを細かく動かして磨きます。フロスや歯間ブラシも使用すると、より効果的です。
また、歯をより動かしやすくする目的でアタッチメントを使用する場合があります。アタッチメントは、歯の表面に接着させるレジン製の突起物です。
歯の表面に小さな突起物が複数接着するため、アタッチメントまわりの歯磨きが難しく磨き残しが多くなります。
丁寧に歯ブラシをあてて歯磨きしましょう。
マウスウォッシュやフロスを使う
外食などですぐに歯が磨けないとき、お口をすすぐだけでも食べ物や飲み物の残りかすを一部取り除けます。
このときにマウスウォッシュを使用すると口腔内の細菌を抑制し、お口の中の衛生状態を保つのに役立ちます。
マウスピース型矯正中は、むし歯や歯周病のリスクが高まるため、フッ素入りのマウスウォッシュを選ぶと効果的です。
しかし、マウスウォッシュは歯垢(プラーク)を落とすことはできないため、一時的な対応であると認識しておきましょう。
歯列矯正中は、歯を削って歯を移動させるスペースを作る場合があります。フロスは、歯と歯の間の汚れを取り除くのに役立ちます。フロスを使用するときは、歯磨きの前に使用するのが効果的です。
マウスピースを洗浄する
マウスピースを外した後は、ぬるま湯で軽くすすぎます。熱湯を使用するとマウスピースが変形する可能性があるため避けましょう。
自宅で取り外した場合は、やわらかめの歯ブラシを使用して汚れを落とします。
マウスピース専用の洗浄液を使用すると、マウスピース全体をしっかりと清掃できます。
マウスピース型矯正中の歯磨きが重要な理由
マウスピース型矯正治療は、口腔ケアがとても重要です。
歯磨きやマウスピースの洗浄を丁寧に行い、お口の中の衛生状態をしっかりと保ちましょう。また、定期的に歯科医師のチェックを受けることも大切です。
口腔トラブルを発生させないため
マウスピース型矯正中、歯磨きを適切に行わないことで、むし歯や歯周病の可能性が高まります。
マウスピース装着中は、お口全体に唾液がいきわたりにくくなり、唾液による自浄作用が働かず細菌が繁殖しやすくなります。
また、歯と歯の間に隙間があることやアタッチメントの接着により、普段より歯磨きが難しくなることが少なくありません。
口腔トラブルを発生させないためにも、丁寧な歯磨きがとても重要です。
マウスピースを清潔に保つため
食後、歯磨きをせず食べ物の残りかすが残ったままマウスピースを装着すると、汚れや細菌が歯に密着した状態となります。
マウスピース内で細菌が増殖し、マウスピースの透明度も落ち、清潔に保つことができません。
マウスピースを清潔に保つためにも、歯磨きをしてからマウスピースを装着するようにしましょう。
マウスピース型矯正の成功確率を上げるため
歯磨きによる口腔ケアが適切にできていないと、むし歯や歯周病のリスクが高まります。
むし歯や歯周病の治療を行うと、詰め物や被せ物により歯の形や噛み合わせが変化する可能性があります。
この場合、マウスピースが合わず作り直しが必要となり、治療期間の延長や費用の追加を検討しなければなりません。
マウスピース型矯正中の口腔ケアのポイント
マウスピース型矯正中は、歯磨きが重要であることは、これまでにお伝えしました。
ここからは、口腔ケアをするうえでのポイントを解説します。フッ素入り歯磨き粉や歯間ブラシ・デンタルフロス、マウスピース専用の洗浄液を使用し、口腔ケアの質を高めましょう。
フッ素入りの歯磨き粉を使う
フッ素入り歯磨き粉は、以下のように歯質のむし歯抵抗性を高めて、むし歯を予防する方法です。
- 耐酸性の獲得(酸をつくる細菌の活動を抑制する)
- 結晶性の向上(歯の表面を酸に溶けにくい性質に強化しむし歯への抵抗力を高める)
- 再石灰化の促進(酸で溶かした歯を、健康な状態に修復し再石灰化を促進する)
マウスピース装着中は、お口全体に唾液がいきわたりにくくなります。唾液のもつ再石灰化作用や抗菌作用をフッ素で補うことが効果的です。
世界的に市販の歯磨き粉のほとんどにフッ素が配合されています。日本ではフッ素入りの歯磨き粉のシェアは90%に達しており、日常的に使用されている歯磨き粉です。
この30年間、先進国では、むし歯は大きく減少しています。これはフッ素入り歯磨き粉が大きく影響していると評価されています。
歯間ブラシ・デンタルフロスを併用する
歯列矯正中は、歯磨きだけでなく歯間ブラシやデンタルフロスも使用することが推奨されています。
歯と歯の間の汚れを取り除くことで、むし歯や歯周病のリスクを下げる効果が期待できます。
奥歯の噛む面と、歯と歯の間はむし歯になりやすい場所です。歯と歯肉の溝から歯周病は進みます。
歯間ブラシ・デンタルフロスを使用する手順は以下のとおりです。
- 歯間にゆっくりと差し込む
- 歯の面に沿わせて小刻みに動かして、汚れをしっかり取り除く
歯間ブラシやデンタルフロスの使い方が難しいと感じる方も少なくありませんが、歯科医院で相談すると、歯磨き指導時に使い方を教えてもらえます。
洗浄液を使ってマウスピースを清潔に保つ
歯磨き粉をつけた歯ブラシでマウスピースを洗浄すると、歯磨き粉に含まれる研磨剤によりマウスピースに傷をつけてしまいます。
傷ついた部分は細菌が繁殖しやすくなるため、歯磨き粉を使用してマウスピースを洗浄する方法はおすすめできません。
マウスピース専用の洗浄液を使用すると、マウスピース全体をしっかりと清掃でき清潔に保つことができます。
清掃が行きとどかないマウスピースの装着は、口腔内の衛生を保つことができません。
洗浄液には、つけ置きタイプと、スプレー・泡タイプがあります。つけ置きタイプは、家庭でのお手入れに適した洗浄液です。水かぬるま湯に洗浄剤1錠とマウスピースを入れて洗浄します。
スプレー・泡タイプは持ち運べるため、外出先で使いたい場合に便利です。用途にあわせて選びましょう。
歯磨きができないときの対処法は?
外出先などで、食後すぐに歯磨きができない場合も少なくありません。その場合、以下のような方法で対処しましょう。
- お口の中を水ですすぎ食べ物の残りかすを除去する
- マウスウォッシュを使用してうがいをする
- 歯磨きシートを利用する
歯磨きができないときは、うがいだけでもしましょう。お口の中の汚れや食べ物の残りかすの除去が可能です。
可能であれば、マウスウォッシュや歯磨きシートを利用するとよいでしょう。
これは、一時的な対処法なので、できるだけ早いタイミングで歯磨きをしマウスピースを装着することが大切です。
食事のために外したマウスピースは、しっかり水ですすぎ、ケースに保管しましょう。ティッシュに包んで保管すると、間違えて捨てたり破損したりする場合があるので、注意が必要です。
マウスピース型矯正の結果を最大限にするために
マウスピース型矯正の効果をあげるためには、口腔内を清潔に保つことが重要です。
歯列矯正治療以外に、歯の治療が必要になる場合、歯列矯正治療の期間延長や追加の費用も考慮しなければなりません。
食後の歯磨きと定期メンテナンスは、必ず行いましょう。
食事後は必ず歯磨きをする
マウスピース型矯正中は、食事後は必ず歯磨きを行うことが大切です。
食事を摂るときや、お水以外の飲み物を飲むときは、マウスピースを外すようにしましょう。食後には、丁寧に歯磨きをし、ぬるま湯ですすぎ清掃したマウスピースを装着します。
マウスピースは、1日20時間以上の装着が必要であるため、食事後すぐの歯磨きが大切です。
食事後すぐの歯磨きが難しい場合には、マウスウォッシュなどを使用して口腔内を洗浄し、できるだけ早めに歯磨きをするように心がけましょう。
歯磨きをしないままだと、食事の残りかすがお口のなかに残ったままになり細菌が繁殖しやすくなり、むし歯や歯周病の原因となります。
むし歯や歯周病の治療が必要になると、歯列矯正治療を中断することや、マウスピースを再度作り直さなければならない場合もあります。
治療期間の延長や追加の費用を出さないためにも、食後は必ず歯磨きをするようにしましょう。
定期メンテナンスを怠らない
歯科医院での定期メンテナンスも重要です。
歯磨きが適切に行えているかチェックをしてもらうと同時に、むし歯や歯周病のリスクがないか確認してもらうことが大切です。
また、定期的に通うことによりプロによるクリーニングを受けることができ、お口の衛生環境を守ることができます。
歯列矯正が順調にすすんでいるかだけでなく、マウスピースの破損などのチェック、きちんと装着できているかなども確認してもらいます。
まとめ
マウスピース型矯正は、透明なマウスピースを装着することで歯並びを改善する歯列矯正方法です。歯列矯正装置が目立ちにくく、取り外しが可能な点がメリットです。
取り外しが可能であるため、歯列矯正中でも食事を楽しむことができ、歯磨きがしやすい点もメリットとしてあげられます。
しかし、食事の前にマウスピースを外し、食事後に歯磨きをしてからマウスピースを装着しなければならないことが大変だと感じる方も少なくありません。
特に外食時などは、マウスピースを外すタイミングや歯磨きをする場所がないなど困ることもあるでしょう。
食後の歯磨きは、口腔内を清潔に保つために重要です。歯磨きをせずにマウスピースを装着すると、細菌が増殖しやすくなりむし歯や歯周病の原因となります。
むし歯などの治療を開始すると、歯列矯正を一時的に中断することやマウスピースを作り直さなければならない可能性があります。
食後に歯磨きができない場合は、お口の中を水ですすぐことやマウスウォッシュを使用し、お口の環境を保つための対策をしましょう。
しかし、これは一時的な対処法なので、できるだけ早いタイミングで歯磨きをすることが重要です。
適切な歯磨きの習慣を身につけることで、お口の衛生環境を保ち、歯列矯正治療の成功に導くことができるでしょう。
参考文献