「小児矯正に興味があるけれど、失敗したらどうなってしまうのだろう」と不安を感じる方も多いのではないでしょうか。
矯正による効果を十分に得られる方もいる一方で、失敗例がまったくないとはいい切れません。
この記事では小児矯正の失敗例に加え、その原因や失敗しないためのポイントについて解説します。小児矯正を考えている方はぜひ参考にしてください。
小児矯正の失敗例
小児矯正の失敗例にはどのようなものがあるのでしょうか。具体的には次のようなものが挙げられます。
- 治療が終わらない
- 説明不十分で抜歯された
- むし歯になる
- 拡大床のトラブルが起きた
- 非抜歯の治療にこだわりすぎた
以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。
治療が終わらない
小児矯正治療が失敗につながる可能性のある例として、治療が終わらないことが挙げられます。
小児矯正治療は子どもの成長に合わせて段階的に行われるため、治療期間が長期にわたることが特徴です。しかし治療が長くなると子どもの意欲の低下や、家族の治療への協力が難しくなる可能性があります。
治療が長期化する主な理由は、以下のようなものです。
- 治療計画が適切ではなく、治療期間の見積もりが甘かった場合
- 子どもの協力が得られず、計画通りに進まなかった場合
- 成長に合わせた装置の変更が必要になった場合
- 予期せぬ合併症が発生し、治療期間が延長された場合
このように治療が長引くと、子どもの負担が大きくなり、最終的な治療結果にも影響を及ぼす可能性があります。
説明不十分で抜歯された
失敗例の1つとして、適切な説明と同意が得られないまま抜歯が行われた事例もあります。
矯正治療においては、患者さん(子ども本人)やその保護者に対する十分な説明と同意が重要です。
しかし時に医療従事者側から適切な説明がなされずに治療が進められ、結果的に保護者や患者さんが納得いかない事態に至ることがあります。
特に小児矯正の場合、患者さんが未成年のため、保護者の理解と承諾は不可欠です。しかし治療の必要性・具体的な治療内容・リスク・副作用についての説明が不十分だと、保護者は治療方針を理解できずに不安を抱えることになるでしょう。
その結果、例えば抜歯が必要と言われても、なぜ抜歯が必要なのかやどのような影響があるのかが伝わらず、保護者が納得できずに治療に反対してしまうといったケースが起こりうるのです。
こうした事態は、医療従事者と患者さん・保護者との信頼関係を損ね、治療の中断や中途半端な結果に至る大きな要因となります。
むし歯になる
小児矯正治療においてむし歯になるというのは、大きな失敗例の1つとして挙げられます。
小児の矯正治療中にむし歯が発生する要因は、主に次のような理由です。1つ目は適切な口腔衛生管理の欠如です。
矯正装置を装着すると、歯ブラシが届きにくい部分ができ、プラークが溜まりやすくなります。装置の周りの歯磨きが十分にできなければ、むし歯のリスクが高まります。
矯正治療中は丁寧な歯磨きが必要になるため、子どもが歯磨きを嫌がり歯磨きをしなくなるケースも少なくありません。
2つ目は定期検診の欠如です。矯正治療中は定期的な歯科検診が重要ですが、通院が面倒になり、早期発見ができずにむし歯が進行してしまう可能性があります。
このように患者さん側の口腔衛生管理の不良や、医療側の管理体制の不備など、さまざまな要因が重なってむし歯のリスクが高まるのです。
むし歯の発生は、治療の遅延や中断を招きます。
拡大床でトラブルが起きた
小児矯正の失敗例には拡大床のトラブルが起きたという事例も挙げられます。
拡大床とは、歯がきれいに並ぶためのスペースが足りないときに、歯列を頬側に拡大してスペースを作る装置です。
しかし、この拡大床にはさまざまなトラブルが起こりやすいという問題があります。
まず拡大床の装着や調整が適切に行われないと、装置が口腔内に合わず、違和感や痛みを引き起こす可能性があります。また装置の部品が外れたり破損したりすることもあり、そうなると使用できなくなるのが特徴です。
このように、拡大床にはさまざまなトラブルが伴いやすく、適切な使用と慎重な管理が重要です。
非抜歯の治療にこだわりすぎた
小児矯正治療において非抜歯の治療にこだわりすぎたというのも、大きな失敗例の1つです。
一般的に小児の矯正治療では可能な限り歯の抜歯を避けることが望ましいとされています。これは成長期にある子どもの顎骨発育を利用し、バランスの取れた顔貌を形成するためです。
しかしなかには抜歯が必要なケースも存在します。例えば歯列が過密で前歯が出っ張っている場合や、顎の発育が悪い場合など、抜歯を行わないと理想的な咬合を得るのが困難な場合もあるのです。
しかし抜歯を避けるために無理な矯正を続けてしまうと、かえって好ましくない結果を招くことがあります。
前歯が過度に出っ張った状態が長期化したり、顎の形態がバランスを失ったりするなど、美容的な問題や咀嚼機能の低下を引き起こしかねません。
無理な非抜歯治療にこだわりすぎると、結果的に子どもの顔貌や咬合、そして生活の質を損なう可能性があります。
そのため小児矯正においては、子どもの健全な顎顔面発育と機能的・審美的な観点から総合的に判断し、必要に応じて抜歯も選択肢の1つとして検討することが重要です。
小児矯正後に生じる失敗例
小児矯正後に生じる失敗例にはどのようなものがあるのでしょうか。
- 後戻りが起きた
- 歯ぐきが下がってしまった
- 噛み合わせが悪化した
後戻りが起きた
小児矯正治療の後に後戻りが起きたというのは、よくある失敗例の1つです。
矯正治療では最終的に理想的な歯並びや咬合を実現することが目標ですが、治療後にその状態が維持されなければ意味がありません。
ところが小児矯正の場合、成長期の子どもの顎骨や歯列の変化に伴って、治療結果が後戻りしてしまうことがあります。
その主な原因として考えられるのは以下のような点です。
- 保定装置の不適切な使用
- 成長変化への対応不足
- 生活習慣の乱れ
1つ目は保定装置の不適切な使用です。矯正治療後は歯の位置を固定するための保定装置が必要ですが、適切な保定が行われないと、歯が本来の位置に戻ってしまう可能性があります。
2つ目は成長変化への対応不足です。小児期は顎骨や歯列が変化し続ける時期のため、成長変化に合わせて治療や保定を行わないと、治療成果が保てないことがあります。
3つ目は生活習慣の乱れです。矯正治療後も歯磨きや食生活など、口腔内の健康を維持する習慣が続けられないと、後戻りの原因になります。
このように小児矯正後の後戻りは、子どもの成長変化への対応力不足・生活習慣管理・医療従事者側の管理体制など、さまざまな要因が重なって起こる可能性があるのです。
歯ぐきが下がってしまった
小児矯正治療の後に、歯ぐきが下がってしまう失敗例もあり、以下のようなケースが考えられます。
1つ目は歯の移動に伴う歯根の露出です。前歯の出っ張りを改善するために前歯を大きく引っ込める際に、歯根部分が歯ぐきから露出し歯ぐきの退縮を招くことがあります。
2つ目は矯正力による歯周組織への負荷です。強い矯正力が加わると、歯周組織に過度の負担がかかり、歯ぐきの炎症や退縮を引き起こすことがあります。
このように小児矯正治療では歯の位置矯正だけでなく、同時に歯周組織の健康維持にも注意を払う必要があります。適切な口腔衛生管理と、慎重な矯正力の管理が重要といえるでしょう。
噛み合わせが悪化した
小児矯正治療の後に噛み合わせが悪化したということも、失敗例の1つです。
矯正治療の目的の1つは、適切な咬合(噛み合わせ)を実現することです。
しかし小児矯正の場合、成長の著しい時期に行うため、治療後の噛み合わせの変化に十分に注意を払う必要があります。
小児矯正後に噛み合わせが悪化する主な原因としては、成長変化への対応不足・保定装置の不適切な使用・治療計画の甘さ・外科的処置の必要性の見落としなどが挙げられます。
小児期は顎骨の発育が旺盛な時期のため、矯正治療では顎の成長に合わせた装置の調整が必要ですが、それが適切に行われないと噛み合わせが悪化してしまう可能性もあるでしょう。
また不十分な保定でも、歯の位置がもとに戻ってしまい、噛み合わせが悪くなります。
加えて小児の場合、成長変化を見越した適切な治療計画を立てることや、顎の形態を外科的に修正する必要性の考慮なども重要です。
このように小児矯正後の噛み合わせの悪化は、複雑な成長変化への対応の難しさから生じるといえるでしょう。
小児矯正で失敗する原因
小児矯正で失敗する原因には次のようなものが挙げられます。
- 治療前の検査不足
- 歯科医師の経験不足
以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。
治療前の検査不足
治療前の検査不足は、小児矯正で失敗する原因の1つです。
小児矯正は、子どもの成長発達に合わせて治療を行う必要があるため、治療を始める前の十分な検査と分析が重要となります。具体的には以下のような検査が不可欠です。
- 顎骨の発育状態の把握
- 歯列の配列と咬合状態の詳細な分析
- 顔貌や口腔の形態の評価
- 将来的な成長変化の予測
しかしこれらの検査が不十分だと、適切な治療計画が立てられず、思わぬ問題が生じる可能性があります。
例えば、成長発達に合わせた装置の選択や装着時期の見誤りなどが起こりうるのです。また検査不足により、顎の形態異常や複雑な症例を見落とす恐れもあります。
こうした場合、単なる歯列矯正では抜本的な解決にはならず、外科的処置の必要性を見逃してしまう可能性もあります。
したがって小児矯正では治療に先立ち、患者さんの状態を詳細に把握し、長期的な成長変化を見据えた綿密な治療計画を立てることが不可欠です。
歯科医師の経験不足
小児矯正で失敗する主な原因の1つに歯科医師の経験不足が挙げられます。
小児矯正は高度な専門性が求められる分野で、十分な知識と技術がなければ適切な治療を行うのは困難です。
経験の浅い歯科医師の場合、成長発達に合わせた的確な診断・細やかな治療計画の立案・治療中の問題への対応力などが不十分なことにより、失敗につながる恐れがあります。
小児矯正には高度な専門性が求められるため、豊富な経験が不可欠といえます。
小児矯正で失敗しないためのポイント
小児矯正で失敗しないためにはどうしたらよいのでしょうか。具体的なポイントには次のようなものが挙げられます。
- 歯科医院の治療経験や症例などをチェックする
- 治療方針をしっかり確認する
- 歯科医師との相性を確認する
- 定期検診をきちんと受診する
以下でそれぞれについて詳しくみていきましょう。
歯科医院の治療経験や症例などをチェックする
小児矯正で失敗しないためには、歯科医院の治療経験や症例などをチェックすることが重要なポイントです。
小児矯正は子どもの健やかな成長発達に大きな影響を及ぼす治療のため、経験豊富で高い技術を持つ専門の歯科医師に、信頼を置いて治療を任せることが不可欠です。
しかし小児矯正に精通していない医院では、適切な診断・治療計画の立案・的確な対応ができない可能性があり、治療の失敗や後遺症につながってしまいます。
そのため、歯科医院の治療経験や症例を確認することが重要です。
治療方針をしっかり確認する
治療方針をしっかりと確認することも、小児矯正で失敗しないための重要なポイントです。
小児矯正は、歯並びを改善するだけでなく、長期的な観点から総合的な治療計画を立てる必要があります。
そのため、以下のような治療方針をしっかりと確認する必要があります。
- 診断と治療計画の妥当性
- 段階的な治療ステップ
- 保定計画の適切性
小児矯正では、単なる外見的な改善だけでなく、長期的な視点に立った包括的な治療計画が重要です。
治療方針をしっかりと確認し、理解と同意を得ることが、失敗を防ぐための鍵となるでしょう。
歯科医師との相性を確認する
担当の歯科医師との相性も、矯正の成功のためには重要なポイントです。
小児矯正は長期間にわたる治療が必要で、歯科医師と患者さん・保護者の信頼関係が治療成功の鍵となります。
具体的には以下のような点に留意することが重要です。
- 歯科医師のコミュニケーション能力
- 子どもへの接し方
- 治療に対する熱意
- 子どもの成長に合わせて治療方針を柔軟に変更していける対応力
このように単なる知識や技術だけでなく、患者家族との相性も小児矯正の成功につながります。
信頼関係が構築できる歯科医師に出会えれば、治療への協力も得やすく、失敗のリスクを大きく下げられるでしょう。
定期検診をきちんと受診する
小児矯正において、定期検診の受診はとても重要です。
小児の顎骨や歯並びの成長を定期的に確認する必要性に加え、定期健診が口腔内の問題を早期に発見し、深刻化する前に対処することにつながります。
また定期検診で得られたデータをもとに、治療計画を柔軟に修正し、子どもの成長に合わせて適切な対応をとることができるでしょう。
小児矯正において、定期的な検診受診は、治療の成功に欠かせません。成長段階に合わせた適切なタイミングと内容の検診を心がけることが重要です。
小児矯正を受けるメリット
小児矯正を受けるメリットは以下のようなことが考えられます。
- 顎の成長に合わせた早期対応
- 機能面の改善
- 容貌の改善
以上のように小児期の矯正治療は、機能面や容貌面など、さまざまな面でメリットが期待できます。ただし治療期間が長期にわたるため、患児や保護者の協力が不可欠です。
小児矯正は何歳までに受けた方がいい?
小児矯正治療を開始する適切な時期については、一概にはいえないものの、一般的に6〜8歳ごろが小児矯正治療を開始する適切な時期とされています。
しかし小児矯正においては、個々の症例によって適切な治療時期が異なります。
そのため小児歯科医や矯正歯科医と相談しながら、成長段階に合わせた適切なタイミングで治療を開始することが重要です。
まとめ
小児矯正の失敗例には、治療が終わらない・説明不十分で抜歯された・むし歯になる・拡大床のトラブルが起きた・非抜歯の治療にこだわりすぎたなどがあります。
小児期は顎の発育が活発な時期であるため、小児矯正には高度な専門性が求められます。
そのため、小児患者さんの成長に合わせた治療を行うことのできる、経験豊富な歯科医師を選ぶことも重要なポイントといえるでしょう。
矯正治療を受ける際には、治療のリスクなども考慮することが大切です。
参考文献