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拡大床を使う矯正治療の方法を解説!他の装置との比較も紹介

拡大床を使う矯正治療の方法を解説!他の装置との比較も紹介

子どもの矯正治療では、「拡大床(かくだいしょう)」という装置を使うことが多いようです。矯正治療というとワイヤー矯正のマルチブラケット装置やマウスピース型矯正装置を思い浮かべる人がほとんどなので、拡大床といわれてもどのような装置なのかイメージできない方も多いことでしょう。ここではそんな拡大床を使う矯正治療の方法やその他の装置との比較について解説します。拡大床に関心のある方は参考にしてみてください。

拡大床を使う矯正治療とは

拡大床を使う矯正治療とは

拡大床とは

拡大床とは、 プラスチック製のプレート(床)と金属製のワイヤーで構成された装置です。後段でも詳しく説明しますがプレートがないタイプの拡大床もあります。主に子どもの矯正の1期治療で用いられる装置で、歯列や顎の拡大作用が期待できます。拡大床は必ずしも子どもだけに用いられるものではなく、 大人の矯正治療でも利用される場合があります。

・取り外し式の装置
拡大床は、 患者さん自身が着脱できる取り外し式の装置です。子どもの場合は、家にいる時だけ装着するなど、日常生活への影響を最小限に抑えることが可能です。大人で拡大床を使う場合は、ワイヤー矯正と併用するケースが多いそうです。

拡大床の種類

矯正治療に使う拡大床には、スケルトンタイプとプレートタイプの2つの種類があります。

・スケルトンタイプ
スケルトンタイプは、プラスチック製のプレートがない拡大床です。 金属製のワイヤーとバネやネジなどで構成されています。

・プレートタイプ
プレートタイプは、その名の通り プラスチック製のプレートがある拡大床です。スケルトンタイプと同様、金属製のワイヤーに加えて、バネやネジなども付属しています。

拡大床を使う矯正治療の手順

拡大床を使う矯正治療の手順 拡大床を使う矯正治療は、次のような手順で進行します。

治療計画の作成

拡大床を用いた矯正治療では、 検査・診断・治療計画の作成が重要となります。矯正治療との出発点となるこのプロセスで誤りが生じると、適切な効果が得られなくなるからです。そのため拡大床による矯正治療でもレントゲン撮影や歯型取り、模型の作製などをきちんと行っていきます。その上で患者さん一人ひとりに合った治療計画を作成するのです。拡大床による治療計画の説明を受けて疑問に感じることがあれば、その時点で質問しておくことが大切です。不安を抱えたまま治療に入るのは良くありません。

拡大床の装着

拡大床が完成したら患者さんのお口の中に装着します。始めは 大きな異物感が生じることで不安に感じることかと思いますが、徐々に慣れていきますのでご安心ください。拡大床は患者さん自身が取り外しする装置であるため、 着脱の練習も行います。

拡大床の調整

完成した拡大床には、細かい調整が必要です。患者さんの お口にぴったり合うよう調整を加え、不快症状などを最小限に抑えます。ただし、拡大床はあくまで矯正装置であることから、装着時の違和感や異物感などをゼロにすることはできません。また、拡大床を装着時には歯列や顎の骨に矯正力が働くため、少なからず 痛みも感じます。拡大床の調整は、治療が始まった後も適宜、行っていきます。装置の種類によっては患者さんがネジを回すなどして調整を加える必要があるパターンもあります。

拡大床のメンテナンス

拡大床の治療中は、 定期的にメンテナンスを受けます。拡大床自体のメンテナンスはもちろん、歯やお口の中の状態も定期的にチェックする必要があります。メンテナンスを怠ると、思いもよらないトラブルに見舞われることもあるため、定期的な通院は欠かさず行っていきましょう。

拡大床を使う矯正治療のメリットとデメリット

拡大床を使う矯正治療のメリットとデメリット 矯正治療に拡大床を使うと、次に挙げるようなメリットとデメリットを伴います。

拡大床を使う矯正治療のメリット

・装置が目立ちにくい
拡大床は、ワイヤー矯正のマルチブラケット装置ほど目立つものではありません。プレートタイプも半透明のプラスチックで作られていることから、見た目に大きな違和感が生じにくくなっています。また、拡大床は12時間以上の装着が推奨されている装置なので、 外出時には外すことも可能です。実際、学校に行く時には装置を外しているお子さんがほとんどだそうです。

・食事や歯磨きがしやすい
拡大床は着脱式なので、食事や歯磨きは普段通りに行えます。標準的なワイヤー矯正では、装置が邪魔になったり、治療で強い痛みを伴ったりするため、十分な食事がとれないことも珍しくありません。拡大床ならそうした 不自由を感じる場面はほとんどないでしょう。 歯もしっかりと磨けることから虫歯や歯周病リスクを低く抑えられます。

・会話がしやすい
拡大床は、比較的シンプルな装置です。発音の妨げとなるようなことは少なく、見た目も気にならないことから、ご家族やお友達との会話もしやすいことでしょう。これは 成長期の子どもにとって大きなメリットといえます。もちろん、大人になってから拡大床を使用する場合も会話がしやすい点はありがたいものです。

・費用が比較的安い
拡大床は、標準的なワイヤー矯正やマウスピース型矯正と比較すると、費用が安いです。口腔内の状態によっても費用は大きく変動しますが、全国的には10万~30万円程度で拡大床による矯正治療を受けられることが多いと言われています。いわゆる歯列矯正は80万~100万円程度の費用がかかります。

・抜歯を回避しやすくなる
拡大床は、歯列や顎の骨を拡大できる装置であるため、スペースの不足を解消することができます。その結果、足りないスペースを確保するために行う 便宜抜歯を回避しやすくなるのです。便宜抜歯は、虫歯や歯周病にかかっていない健康な歯が対象となるケースがほとんどであるので、できる限り抜歯を避けたいという方は少なくありません。拡大床を併用することで、そうした要望にも応えやすくなります。何よりも自然な形で歯並びをきれいにできる点がメリットといえるでしょう。

拡大床を使う矯正治療のデメリット

・装置の着脱は自己管理
拡大床は着脱式の装置であるため、着けるか着けないかは 本人の意思に委ねられます。拡大床による不快症状が嫌で装着を怠るようなことがあると、歯列はなかなか拡大していきません。その分、治療期間も長くなることでしょう。ですから、矯正装置の着脱の自己管理に不安がある人は、固定式の装置を選択した方がよいといえます。

・装置を破損、紛失するおそれがある
着脱式の装置には、 紛失するリスクを伴います。とくに小さなお子さんの場合は、拡大床をどこかに置き忘れたり、誤って捨てたりするおそれが高いため、その点は十分な注意が必要です。また、拡大床を外している時の 保管方法にも細心の注意を払う必要があります。拡大床は複雑な構造をとっており、少しの圧力を加えるだけでも変形してしまいます。床に落とした場合はプレートの部分も割れるリスクもあることから、外している時は必ず専用のケースに入れるようにしましょう。

・適応できないケースも少なくない
拡大床は、万能な矯正装置ではありません。歯列が狭窄している場合など、一部のケースに適応できる装置なので、子どもであれば 誰でも使えるというものではないのです。大人に拡大床を使う場合は、ほとんどのケースでワイヤー矯正などを併用することになります。

拡大床と他の矯正装置の比較

拡大床と他の矯正装置の比較 ここからは、ワイヤー矯正(表側矯正)、裏側矯正(舌側矯正)、マウスピース型矯正の特徴について紹介した上で、拡大床との比較を解説します。

ワイヤー矯正との比較

ワイヤー矯正は、歯列の表側にブラケットとワイヤーを装着する治療法です。その特性から「表側矯正」と呼ばれることもあります。ワイヤー矯正は適応範囲が広く、ほとんどの歯並びに適応できますが、 小児矯正の1期治療で用いられることは稀です。なぜならワイヤーや歯並びの乱れを細かく整えていく矯正装置だからです。今回のテーマである拡大床は、歯列や顎を拡大するための装置なので、ワイヤー矯正とは使用目的が根本的に異なるといえます。

裏側矯正(舌側矯正)との比較

裏側矯正もブラケットとワイヤーを使用することから、ワイヤー矯正といっても間違いではありません。それらのパーツを歯列の裏側に設置するため、裏側矯正もしくは舌側矯正と呼ばれています。裏側矯正は装置が表側からまったく見えないので、矯正治療で 審美性に重点を置く人におすすめできる方法といえるでしょう。

ただ、裏側矯正は極めて専門性の高い矯正法であることから、適切に治療できる歯科医師は一部に限られます。特別な装置が必要であり、高度な技術も必要となることから、治療にかかる費用も表側矯正の1.3~1.4倍程度になるのが一般的です。また、表側矯正と同様、裏側矯正も歯並びの乱れを細かく整えるための方法なので、拡大床とは適応症が異なります。

マウスピース型矯正との比較

マウスピース型矯正は、透明な樹脂製のマウスピースを使って歯並びを整える方法です。ワイヤーと同じ「歯列矯正」であることから、拡大床とは期待できる効果や適応症が異なります。ただし、装置を着脱できる点はマウスピース型矯正と拡大床で共通しているといえます。 どちらも患者さん自身が着脱するタイプの装置であり、食事や歯磨きを普段通りに行えます。

拡大床と他の矯正装置の併用

上段で解説したように、ワイヤー矯正・裏側矯正・マウスピース型矯正は、拡大床とは異なる目的で使用するため、 大人の矯正治療では併用するケースが少なからずあります。具体的にはまず拡大床で歯列の幅を広げた上で、ワイヤー矯正やマウスピース型矯正で歯並びの乱れを細かく整えていきます。もちろん、ケースによっては子どもの矯正治療でも拡大床と他の矯正装置を併用することもあります。

拡大床矯正がおすすめの場合

拡大床矯正がおすすめの場合 拡大床による矯正は、次のようなケースで推奨されます。

子どもの矯正治療

歯列の幅が狭くて 出っ歯 乱ぐい歯などを誘発しているケースでは、拡大床が適応されやすいようです。拡大床で歯列の幅を広げることで、十分なスペースを作り出すことができ、出っ歯や乱ぐい歯を改善しやすくなります。とくに小児期は顎の骨の発育をコントロールしやすいため、拡大床による効果も大きいといえるでしょう。

成人の矯正治療

成人矯正でも基本的には歯列が狭くなっているケースに拡大床を適応します。年齢的には 25歳くらいまでなら拡大床による効果をある程度は受けられることでしょう。30代や40代になってからでは顎の骨もしっかりと成熟していることもあり、拡大床による効果は得られにくいです。実際、30代以降の成人矯正で拡大床を併用するケースは極めて少なくなっています。

知っておきたい拡大床矯正のリスク

知っておきたい拡大床矯正のリスク 矯正治療で拡大床を用いると、次に挙げるようなリスクを伴います。

拡大床矯正で発生するトラブル

・拡大床を使っても歯並びが悪くなる
拡大床は決して万能な矯正装置ではありません。患者さんの歯並び・噛み合わせの状態によっては、拡大床による十分な効果が得られない場合があります。結果的には拡大床を用いる前より歯並びが悪くなる可能性もあり得ます。これは拡大床を含めた すべての矯正装置に共通していることですので、そのリスクは事前に理解しておくことが大切です。

・いつまで経っても治療が終わらない
治療計画では、2年程度で矯正が終わるはずだったのに、もうすでに3年目に入ってしまった。いつまで経っても矯正治療が終わらない。拡大床ではそうしたトラブルに見舞われる場合もあります。これも着脱式の矯正装置全般に共通していえることですが、 装置の装着時間を守れないと、治療期間は自ずと延びていきます。場合によっては治療計画を立て直さなければならなくなることもあるため十分な注意が必要です。また、患者さんの生活習慣や顎の骨の状態によっても治療期間が大幅に延びるリスクがあることも忘れないようにしましょう。

・第二期治療で抜歯が必要になった
抜歯を回避するために拡大床による第一期治療を行ったのに、結局は抜歯をしなければ歯並びをきれいにできなかった。というケースも拡大床矯正ではよく見られるトラブルです。それは「拡大床を使えば抜歯が絶対に必要なくなる」と断言した歯科医師に責任があるといえるかもしれません。繰り返しになりますが拡大床は万能な装置ではなく、 便宜抜歯を100%回避するように治療することも不可能です。

安心して拡大床矯正治療を受ける方法

拡大床矯正治療で失敗や後悔、トラブルを回避するためには、これまで たくさんの症例を経験している歯科医師に治療を任せるのが良いでしょう。経験豊富な歯科医師であれば、難しい症例でも上手に治すことができますし、始めから無責任な発言をすることもありません。

まとめ

まとめ 今回は、拡大床を使う矯正治療の方法やその他の装置との比較などについて解説しました。拡大床は主に小児矯正で用いられる装置ですが、大人の矯正で使う場合もあります。いずれも歯列を拡大する際に有用で、美しい歯並び・噛み合わせを作り上げる上で大きな力を発揮してくれるものの、万能ではないため注意が必要です。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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