マウスピース矯正

小児矯正で使うプレオルソとは?効果やデメリット、注意点を解説

小児矯正で使うプレオルソとは?効果やデメリット、注意点を解説

小児歯列矯正が必要かもしれないと考えたとき、「できるだけ負担の少ない装置を使いたい」と感じる保護者の方は少なくないのではないでしょうか。

取り外しができて、装着時間も短いプレオルソは、お子さんへの負担を抑えながら歯並びを整えられる歯列矯正装置として注目を集めています。

ただし、すべてのお子さんに適しているわけではなく、症例や成長段階によっては使用できないことがあるため注意が必要です。

プレオルソについて気になる特徴や効果、使い方の注意点などを整理してみましょう。

治療を始める前に知っておきたい注意点も取り上げているため、これからお子さんの歯列矯正を検討する方に役立ててもらえると幸いです。

小児矯正で使うプレオルソとは

歯が抜けた子ども

プレオルソは、3〜10歳頃のお子さんが使うマウスピース型の歯列矯正装置です。

お口の周りの筋肉の力を利用し、永久歯が生えそろう前から使い始めることで、整った歯並びや噛み合わせに導いていきます。

歯を直接動かすのではなく、お口周りの筋肉や顎の成長をサポートし、歯が並びやすい環境をつくります。

例えば受け口があるお子さんに装着すると、下顎が後ろに下がって自然な噛み合わせに近づいていくでしょう。

ワイヤーを使った固定式の歯列矯正とは違い、自分で取り外しができるのが特徴です。

装着時間は日中1時間と寝るときだけなので、学校にいる間は外しておけます。日常生活でも、取り組みやすい歯列矯正方法でしょう。

プレオルソにはいくつかのタイプやサイズ、硬さが用意されており、歯科医院でそれぞれに合った状態に調整してから装着します。やわらかい素材が使われ、痛みや違和感が出にくいでしょう。

歯並びの乱れには、顎の成長が不十分だったり舌の動かし方に偏りがあったりと、生活習慣の影響が関係しているケースもあります。そうした癖に早くから向き合うことで、歯列や噛み合わせのバランスが整いやすくなります。

ただ、すべてのお子さんに使えるわけではありません。歯の生え方が過度に斜めの場合や、顎のサイズに極端な差があるケースでは、ほかの装置が検討されることもあります。

歯列矯正が必要かどうかを判断するには、歯並びだけではなく成長の様子や癖まで含めて確認する必要があります。

まずは歯科医院で診てもらい、装置が合うかどうかを確かめてから治療を進めましょう。

プレオルソの効果

歯の模型を持つ男の子

プレオルソは、歯に力を加えて動かすのではなく、成長期の顎や筋肉に働きかけて歯が並びやすい環境を整えていく歯列矯正装置です。

プレオルソを使うことで、実際にみられることの多い変化を3つ挙げてみましょう。

永久歯の歯並びがそろいやすくなる

歯並びが乱れる背景には、顎の成長が遅れていたり舌の動かし方に偏りがあったりと、いくつかの生活習慣が影響していることがあります。

プレオルソは、こうした要因に働きかけるマウスピース型の装置です。歯列弓の幅を広げやすい形状になっており、乳歯の段階でスペースが足りなくても、顎の成長に合わせて並ぶ場所を確保しやすくなります。

噛み合わせが整ってくると、これまで止まっていた歯の動きや成長が進みやすくなる場合もあるでしょう。

さらに、装着している間は舌が上顎に収まりやすくなり、前歯を押すような動きが抑えられます。

顎の骨そのものを広げるわけではありませんが、筋肉の働きや舌の位置、噛み合わせのバランスがとれると永久歯が並びやすくなっていきます。

歯が戻りにくくなる

歯列矯正で整えた歯が、時間の経過とともに元の位置に戻ってしまう後戻りは、決してめずらしいことではありません。

その原因の一つが、舌の癖や口呼吸などの日常的な習慣です。治療後もその習慣が変わらないままだと、歯に余計な力がかかり続け、歯並びが乱れてしまうことがあります。

プレオルソは、舌の位置や唇・お口周りの筋肉の使い方が改善するよう調整する装置です。筋肉の使い方が安定してくると、歯の位置も安定しやすくなるでしょう。

お口周りの筋肉を鍛えて悪習慣を改善できる

お風呂で舌を出す男の子

指しゃぶりや舌の癖、口呼吸などが続いていると、歯並びだけでなく噛み合わせや発音にも影響がおよびます。

プレオルソを装着すると、舌が正しい位置に戻りやすくなり、唇を閉じる動きも自然に行いやすくなります。

このような働きかけにより、口が開きっぱなしになる状態を防ぎ、鼻呼吸を促すきっかけにもなるでしょう。

舌や唇の使い方が変わることで、歯並びが乱れる原因を取り除く流れが生まれます。歯だけでなく、噛む・話す・呼吸するといった日々の行動にもよい変化が起きやすくなります。

プレオルソの予防矯正としての役割

歯ブラシを持つ子供

プレオルソは、歯並びの乱れが起きてから治療するのではなく、将来問題が起きにくい状態を先に作っておくことを目的とした歯列矯正装置です。

お子さんのうちに顎の発育や噛み合わせ、筋肉の使い方を整えておけば、大がかりな歯列矯正が必要になるリスクを減らせます。

噛み合わせの問題をそのままにしていると、お口の周りの筋肉や神経のバランスが乱れ、噛むといった機能面だけでなく見た目にも影響が出てくることがあります。なるべく早い段階での対応が重要です。

また、歯列矯正が必要になる背景には、歯の生え方だけでなく食べ方や話し方などの日常動作が関係していることも少なくありません。

例えば、片側だけで噛む癖があると、顎の成長に左右差が出て噛み合わせがずれやすくなります。

さらに、発音の癖によって舌や唇の筋肉が偏って使われると、永久歯の並びにも影響が出やすくなります。

プレオルソは、癖の改善にもつながるような装置です。舌が自然と上顎に収まりやすいような設計で、唇を閉じる動きも無理なく促され、無意識にお口が開いてしまう状態を防ぎやすくなります。

口呼吸の改善や、舌の誤った使い方の修正を通じて、歯にかかる余計な力を減らす効果も期待されるでしょう。

歯並びに影響を与える癖を、早いうちから整えていくことができるのも、筋機能トレーニングの役割です。

さらに、プレオルソはお子さん自身で取り外しができるタイプです。前より話しやすくなったり、舌の位置が気になるようになったりと、お子さん自身が癖に気付くきっかけになることもあります。

治療が歯並びだけでなく、毎日の習慣にも関わるものだと実感できると、前向きに治療を続けやすくなるでしょう。

プレオルソのメリット

笑顔の子ども

プレオルソは、お子さんが無理なく取り組みやすい歯列矯正方法として注目されています。つらさを感じにくいのも、選ばれる理由のひとつです。

この章では、そのなかでもよく実感されるメリットを取り上げます。

装着時間が短い

プレオルソは、日中1時間と就寝中の使用が基本とされています。学校や習い事では外して過ごせるため、友達と過ごす時間に気を遣わなくてすむでしょう。

長時間の装着を必要とせず負担を感じにくいのも特徴で、生活リズムに合わせて毎日続けやすいことも、この装置ならではのメリットです。

歯みがきや食事のタイミングには取り外せるため、お口の中を清潔に保ちやすく、むし歯や歯茎の炎症も予防しやすいでしょう。

自分で着脱ができるようになると、歯列矯正へのハードルが下がります。抵抗感を抱きにくくなるため、治療を前向きに続けやすくなることにもつながります。

取り外しできる

プレオルソは、自分で簡単に取り外せるタイプの歯列矯正装置です。

もし装着に問題が起きたときも、すぐに取り外して確認できます。

固定式の装置と比べると衛生面の管理がしやすく、お口の中を清潔に保ちやすい安心感もあるでしょう。

また、毎日の装着を通じて、お子さん自身が口の中の状態を意識するきっかけにもなります。歯並びに関心を持つことで、自分のこととして治療に向き合いやすくなります。

痛みが少ない

プレオルソは、やわらかいポリウレタン素材でできており、歯に強い圧力がかかる構造ではありません。

温めることで、それぞれのお子さんのお口に合うように微調整もできます。

使いはじめの頃に少し違和感が出ることもありますが、歯を直接動かす装置ではないため、ワイヤー歯列矯正に比べて痛みを感じにくいでしょう。

歯列矯正は痛みを伴うもの、というイメージが軽減されることで、痛みに対して不安の強いお子さんでも前向きに取り組みやすくなります。

プレオルソのデメリット

歯が痛い子供

プレオルソは、お子さんに優しい歯列矯正装置としてメリットがありますが、すべての症例に適しているわけではありません

ここでは、プレオルソに見られる主なデメリットとして4点を解説します。導入しやすい反面、適応の判断や治療の進め方には、歯科医師の慎重な見極めが必要になります。

適応できる症例が限られる

プレオルソは、特定の噛み合わせやお口の問題に焦点を当てており、あらゆる症例に対応できる装置ではありません。

骨格に大きなずれがある場合や、歯のねじれ、重なりが強いケースなどでは別の歯列矯正方法が選ばれることがあります。

既製品の装置を使うため、歯の位置ずれや重なりが大きいなどの場合には装置がうまくフィットせず、十分な効果が出にくくなる場合もあります。

装置の形が合うかどうかや、お子さんの口腔習癖や成長の状況なども含めた診断が求められるでしょう。治療を始める際は、診断をしっかり受けておくと安心感が持てます。

治療結果に個人差が現れる

プレオルソは、毎日使いながら少しずつ歯並びの環境や噛み合わせを整えていく装置です。
夜寝るときと日中1時間の装着のみですが、その積み重ねが結果につながっていきます。

ただ、同じような歯並びでも、うまくいくケースとそうではないケースがあるのも事実です。

舌の癖が強く残っていたり、口呼吸の習慣が直っていなかったりすると、期待どおりの効果が感じられないことがあります。

プレオルソは、装着時間だけでなく、普段の過ごし方や習慣の影響も受けやすい歯列矯正法です。

まだ小さいお子さんの場合は特に、ご家庭での声かけや歯科医院でのチェックが続けられると、治療もスムーズに進みやすくなるでしょう。

歯列の細かい調整が難しい

歯科治療を受ける子供

プレオルソは成長を利用し、歯ならび全体の位置を整えていく装置です。 お口まわりの筋肉や舌の動きにも働きかけながら、歯列のバランスを整えていくことを目的としています。

そのため、1本1本の歯を細かく動かすような調整には向いていません。

例えば、ねじれや傾きが強く出ている歯をピンポイントで動かしたい場合には、ワイヤー歯列矯正などの治療を併用するケースもあります。

どこまでの改善を目指すかによって、必要な治療の内容は変わるでしょう。

治療の初めの段階で、歯科医師と治療のゴールを共有し、進め方を一緒に確認しておくと納得感のある結果につながります。

顎の成長が終わると適用できない

プレオルソは、顎の骨が成長しているお子さんに向けた歯列矯正装置です。永久歯がすべてそろう前に始めることで、効果が出やすくなるとされています。

使い始める時期として3歳から10歳くらいが目安とされているのは、顎の骨の成長が止まってしまうと、装置の効果が限定的になるためです。

もしタイミングを逃してしまうと、別の方法が適切になることもあります。

永久歯に生え変わった後でも効果がみられた報告もありますが、少しでも気になる歯並びがあれば、状態を早めに診てもらうのがおすすめです。

プレオルソを使用する場合の注意点

診察を受ける男の子

プレオルソは取り組みやすい歯列矯正装置として知られていますが、治療を始める前に確認しておきたい点もあります。

ここでは、プレオルソの使用に伴う主な注意点として、次の3つを紹介します。

費用がかさみやすい

プレオルソは保険が適用されない自由診療のため、治療費は全額自己負担です。

装置の費用はクリニックごとに異なるうえ、通院ごとの調整料や、紛失や破損時の装置の再作製費用がかかることもあります。

治療が長引くと支払いがふくらみやすくなるため、事前に見通しを立てておくのが大切です。

また、支払い方法は歯科医院によって違いますが、分割払いやデンタルローンに対応している場合もあります。

医療費控除の対象となることもあるため、年間でかかった費用を整理しておくと、確定申告の際に役立つかもしれません。

定期的な検診と通院が欠かせない

歯科医院のコップ

プレオルソは、装着していれば治療が完了するわけではありません。顎の成長や歯の動きをみながら、定期的なチェックと微調整を続ける必要があります。

通院頻度は歯科医院によって異なります。学校や習い事などとのスケジュール調整が必要になることもあるため、通院の負担が大きくないか見直してみましょう。

使い方は難しくありませんが、経過のチェックや装置の調整が欠かせません。

長期的な使用が求められる

プレオルソは、お子さんの成長を待ち口腔内の環境を整えていく特性のため、短期間で効果が出る装置ではありません。

装着時間や歯の状態によって期間には差がありますが、数ヶ月から数年にわたることもあります。

途中で装着をやめてしまうと、歯の位置が安定せず、思うような効果が得られません。

毎日決められた時間に装着を続けることで、治療の手応えも感じやすくなります。普段の生活のなかで無理なく続けられるかどうか、考えておくとよいでしょう。

まとめ

ベッドで頬杖を突く子ども

プレオルソは、成長途中のお子さんに向けたマウスピース型の歯列矯正装置です。

歯に力をかけて動かすのではなく、顎の成長や筋肉の使い方を整えることで、自然と歯が並びやすい状態に近づけていきます。

ワイヤー式のような固定装置とは異なり、装着時間が短く、自分で取り外せる点も取り組みやすさにつながっています。

ただし、すべての歯並びや噛み合わせに対応できるわけではなく、一定の期間しっかり使い続けることが欠かせません。

治療に向き合う前に、効果だけでなく注意点にも目を通しておくと、納得して進めやすくなります。

装置が合っているかどうかは、お子さんの成長や癖によっても変わるため、まずは歯科医師に相談して判断してもらうことが大切です。

必要に応じて装置の変更を視野に入れておくことで、成長や歯並びの変化にも柔軟に対応できます。

参考文献

この記事の監修歯科医師
小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

小田 義仁歯科医師(小田歯科・矯正歯科 院長)

岡山大学歯学部 卒業 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室 / 歯科医院勤務をへて平成10年3月小田歯科・矯正歯科を開院 / 所属協会・資格:日本矯正歯科学会 認定医 / 日本顎関節学会 / 日本口蓋裂学会 / 安佐歯科医師会 学校保健部所属 / 広島大学歯学部歯科矯正学教室同門会 会員 / 岡山大学歯学部同窓会広島支部 副支部長 / 岡山大学全学同窓会(Alumni)広島支部幹事 / アカシア歯科医会学術理事

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