人と話をするときに気になるのが歯並びです。
前歯の歯並びが悪いとそのことがコンプレックスになってしまい笑うときに歯を見せないという方もいらっしゃいます。しかし、歯並びの悪さから起こる問題は見た目だけの問題ではありません。
そのような見た目にはわかりにくく、あまり気にしている人が少ない奥歯の歯並びの悪さがどのような問題が起こるか・治療法・理想の歯並びについてを解説していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
奥歯の歯並びが悪いと起こりやすい症状
日常生活において奥歯の歯並びが悪くても、実害を実感しにくいため大した問題だと感じていない方も多いです。しかし、歯並びを悪いままにしておくことで さまざまな症状を引き起こす可能性があります。
ここでは奥歯の歯並びが悪いことで起こる可能性が高い症状を以下で解説していきます。ぜひ参考にしてください。
むし歯
むし歯の原因は歯に付着した細菌が繁殖した塊であるプラークです。口の中には複数の細菌がいて唾液によって細菌が流されるため細菌の繁殖を防いでいます。
しかし、歯の隙間・歯と歯茎の境目・奥歯は細菌が流されにくいためプラークができやすい場所です。歯磨きの目的はこのプラークを取り除くことです。
奥歯はただでさえ歯ブラシが行き届きにくく、歯並びの悪さが加わると磨き残しが増えたりします。さらに歯にものが詰まったり挟まったりしやすくなるため、むし歯になる確率が高くなります。
また噛み合わせの悪い状態で咀嚼をすることで歯に負担もかかるでしょう。歯が動き始め、歯を支える骨の隙間が広がり細菌が侵入するスペースができる可能性もあります。
その結果むし歯を引き起こすというケースも起こりうるため、噛み合わせが悪いとそういった点からもむし歯になるリスクを孕んでいます。
歯周病
歯周病とは歯茎が炎症を起こすことで顎の骨が溶かされていく病気です。むし歯と同じで歯周病の原因もプラークです。
歯並びが悪いと歯磨きによるプラークの磨き残しが起こりやすくなるため、歯周病の原因となるプラークが繁殖しやすい環境であるといえます。
繁殖した細菌が毒素を放出し歯茎の炎症を引き起こすため、奥歯の歯並びが悪いと歯周病を引き起こすのです。
むし歯や歯周病を放置すると歯茎が痩せ、歯の溝や隙間が広がってしまいさらに歯並びを悪化させることにつながります。
自覚症状がほとんどないまま症状が進んでいくことが多く日本人が歯を失う原因で最も多い理由です。
顎関節症
奥歯の歯並びが悪いことで歯ぎしり・食いしばりを引き起こす原因にもなります。それが原因で顎関節に負荷をかけ、顎関節症を引き起こしてしまうのです。
また食べ物を食べるときに使いやすい片側だけを使うことで片顎の筋肉に過度の負荷がかかり、顎関節症を引き起こす可能性があります。
顎関節症になると口が開き辛くなり、開口時に痛みを感じるようになります。顎関節の異常と歯の異常は相互に影響するため、歯にかかる力がまっすぐでない場合、バランスが取れずにさらに噛み合わせを悪くしていきます。
奥歯の歯並びが悪いことで与える全身への影響
奥歯の歯並びが悪いことは口腔環境だけではなく全身にさまざまな影響を与えています。
ここでは奥歯の歯並びが悪いとどのような全身への影響があるのかを解説していきます。思い当たるものがあれば一度歯科医院に見てもらってもよいでしょう。
ぜひ参考にしてください。
肩こり・頭痛
肩こり・頭痛は筋肉の緊張による血行不良が原因で引き起こされることがあります。
奥歯の噛み合わせが悪いことで噛み合わせたときに力が両顎にきちんと分散されず顎の周りの周囲の筋肉にストレスがかかり、緊張を引き起こすのです。 筋肉の緊張により血行不良が起こることから頭痛を引き起こします。
肩こりも同様で噛み合わせの悪さから肩・首の筋肉にストレスがかかることで筋肉に過緊張・血行不良を引き起こし肩こり症状があらわれます。
噛み合わせが悪いと頭のバランスが崩れるため他の場所でバランスを調整しようとすることも筋肉の緊張を引き起こす原因です。
歯ぎしり・食いしばり
噛み合わせの悪さから歯と歯の接触にばらつきができることで歯ぎしりや食いしばりを引き起こす原因になります。
歯ぎしりをすることで歯が割れたり・ヒビを引き起こしたり、歯周病・知覚過敏・歯の周りを覆っている歯根膜の炎症・歯の擦り減りなど歯を失うリスクを高めるのです。
それ以外でも歯を支える顎の骨や関節への負担がかかることで口腔環境だけではなく、顎との痛み・頭痛・肩こりといった症状に加え、えら張りなどの顔の印象にも影響を与えます。
顔や体の歪み
歯並びが悪いと特定の片側だけでものを噛む癖がつきやすく、それにより片側だけの筋肉が発達します。
一方の使われていない方の筋肉が落ちていくため、左右の筋肉のアンバランスな発達により顔の歪みが起こるのです。
また、顎の筋肉のバランスが崩れることで体の重心の位置がずれるため、体に対しても負担のかかり方がアンバランスになってしまいます。 そのため奥歯の歯並びが悪いことで体全体のゆがみを引き起こすことになるのです。
また、姿勢が悪かったり頬杖を突くことで逆に歯並びに影響を与えます。
正しい姿勢を心がけることも重要です。
消化不良による胃腸への負担
噛み合わせが悪いとうまくものをかむことが難しくなり奥歯の役割である食べ物をすりつぶすこと・唾液と食べ物を混ぜ合わせることがうまくできません。
それにより食べ物をしっかり消化できる状態で消化器に送ることができず消化不良を起こし胃腸へと負担がかかるのです。
またよく噛まずに飲み込んでしまう習慣ができることで咀嚼の際の唾液の分泌量が減ってしまい、消化しやすい状態にして食べ物を消化器に送るということができにくくなってしまいます。
唾液量が減ってしまうと歯周病やむし歯のリスクも高くなります。
奥歯の歯並びが悪い場合の治療方法
奥歯同士が当たらなかったり、また一部分だけ過剰に負荷が掛かったりという状態を悪い歯並びだと考えます。
そういった状態を放置することでこれまでご説明したさまざまな症状を引き起こす可能性があるのです。
ここではそのような奥歯の歯並びの悪い状態を治療する方法を、以下で解説していきます。
ブラケット矯正
歯にブラケットと金属製のワイヤーを付ける矯正治療法で、歯科矯正治療といわれて一番にイメージするもっともポピュラーな矯正治療法です。
どのような症状でも使うことができ、低コストで治療を行うことができるので治療費を抑えられるというメリットがあります。
一方のデメリットとしては見た目が目立ちやすい・金属アレルギーのリスクが多少あること・口腔内を傷つける可能性がある・手入れをしっかりとしないと食べ残し等からむし歯や歯周病のリスクが高まるなどがあげられる歯列矯正です。
マウスピース型矯正
矯正治療用のマウスピースを付け替えていきながら、理想の歯並びに矯正していくという治療法です。
透明で目立ちにくいマウスピースを使うため、人の目が気になるお仕事をされている人にはおすすめの治療法です。
ブラケット矯正治療と比較してマウスピース型矯正は食事や歯磨きの時に取り外せるためむし歯や歯周病のリスクが低いこと・違和感が少ないというメリットがあります。
一方ですべての症状で使えるわけではないという点・装着時間に決まりがあるというのがデメリットになる歯列矯正です。
部分矯正
気になる部分だけを矯正する方法です。
全体の矯正治療の場合治療期間が2〜3年程度必要なことと費用面が80〜100万円(税込)程度と高額であることに対し、部分矯正であれば期間は短く費用は安く済ませることができるというメリットがあります。
局所的に歯並びが悪い方が選択する矯正法ですが当然全体の歯並びがなおるわけではないので噛み合わせの治療と考えたときには全体矯正に比べて効果が薄いです。
また場合によっては歯を抜いてスペースを作ることもあります。
どの程度の矯正が必要なのかは専門の歯科医師と相談して部分矯正で大丈夫な治療方針を決めていくとよいでしょう。
奥歯の歯並びは噛み合わせに影響する?
奥歯の歯並びが悪いということはその人の噛み合わせが悪いということです。
噛み合わせが悪いと食事をする際にうまくものが噛めなかったり、そのせいで唾液の分泌量が少なくなりむし歯や歯周病になってしまう可能性があります。
よく噛めていない状態で食べ物を飲み込むので胃炎・大腸炎などの消化器系の病気になったり、また顎の変形やズレにより顎関節症を引き起こしたりとさまざまな体に対する全身症状を引き起こしてしまいます。
歯並びの良しあしは前歯・奥歯ではなく全体的に考えるのです。
理想の噛み合わせの条件
理想の噛み合わせの条件は奥歯を噛み合わせたときに上と下の前歯の中心があっていて2~3ミリ被っていること・歯と歯が重なっていないこと・歯列に隙間がないこと・鼻先から顎を結んで横から見たラインより唇が出っ張っていない・歯列がアーチ状・犬歯より奥の歯が一本に対して二本の割合で噛み合っていること・顎の骨や関節が正常な形態で正常に機能していることなどがあげられます。
奥歯の歯並びと不正咬合との関係
咬合とは上と下の歯の接触関係のことです。奥歯の歯並びが悪いということは奥歯の咬合が悪いということを指します。
そして不正咬合とは、歯並びや噛み合わせの状態が良くないことで正常咬合でないものを指します。
奥歯の歯並びが悪いことも不正咬合の一つです。不正咬合の原因は歯の生え方だけの問題ではなく、顎の成長異常・指しゃぶり・舌癖・生活態度の影響でも引き起こされます。
しかし正常咬合と不正咬合の数値的な境目があるわけではありませんし、その定義は人種によっても異なります。
線引きが難しいものではありますが、ここでは見た目を含めて日常生活において何かしらの支障があると考えられる代表的な不正咬合について3つ解説します。
受け口
クロスバイト・交叉咬合・反対咬合という別名もある不正咬合です。
受け口は上の歯を噛み合わせたときに歯列の一部が通常の噛み合わせと逆になる箇所がある状態を指します。
奥歯の噛み合わせが逆になっている・骨格上の顎のバランスが悪い場合は遺伝の可能性が高いです。
後天的な原因として考えられるのは歯の生える位置が本来より内側で生えてきてしまった場合・口呼吸や舌が下がることで気道が狭まることで顎を突き出す・指しゃぶりで顎を突き出す・舌で下の歯を押すなどの癖がある人は後天的な原因に考えられるのです。
矯正装置で正しい噛み合わせに調整しますが、顎に問題がある場合は骨の手術を併用します。
これとは逆に奥歯を噛んだ時に上の歯と合わさらず隙間が空いている状態になる不正咬合を開咬(オープンバイト)といい、前歯が閉じない・奥歯が噛み合わないというケースがあり発音障害や奥歯に過度にストレスがかかるなどの症状を抱えます。
叢生
乱ぐい歯とも言われる不正咬合で歯と歯が重なっている状態や歯が飛び出している状態のことで一般的にいわれる八重歯がこれです。
叢生は重なっている場所・飛び出している部分は歯磨きがしにくいため、むし歯や歯周病になりやすいです。
顎と歯のサイズがアンバランスな場合は遺伝的な問題の可能性があります。
後天的な原因としてはやわらかい食事が多いことで上顎が充分に発達していないことで起こるのです。
問題が骨格にあるのか歯だけの問題なのかでアプローチのタイミングが異なりますが歯が隙間を作っていくため抜歯してしまう場合もあります。
過蓋咬合
上の歯が下の歯に大きくかぶさっている状態の不正咬合で「ディープバイト」とも呼ばれる不正咬合です。
過蓋咬合は歯をかんだ状態で歯列を見たときに下の歯が隠れてみえ、下の歯が見えないというケースもあり出っ歯とは異なります。
上下の顎のアンバランスな成長・歯ぎしりによる歯の研磨の結果上下の歯の高さが合わなくなった・奥歯の噛み合わせの欠損により歯の高さがあわなくなったことなどが理由です。
引っ込みすぎている上の歯を優先的に治療しますが、歯が隙間を作って動いていくため抜歯が必要になることや顎の発達の問題である場合は手術を施すこともあります。
まとめ
奥歯の歯並びが悪いと全体の噛み合わせが悪くなり、むし歯や歯周病だけではなく顎関節症・消化不良・肩こりや頭痛などと体全体に影響を及ぼします。
ご自身が症状を持っている場合は、こういった症状が表面化する前に一度歯科医師に相談するのが良いでしょう。
また、発育期の子どもの場合は指しゃぶりや舌の癖、しっかり固いものを食べる習慣をつけることによって不正咬合になることを防ぐことができます。
奥歯で見えないからと軽視せずしっかりと今の体の状態と向き合うことが大切です。
参考文献