出っ歯は自力で治せると考えている方はいらっしゃいませんか?間違った方法で矯正を行うと歯並びがさらに悪化したりお口全体のダメージにもつながったりすることがあるので注意が必要です。
本記事では出っ歯の矯正方法や対策について以下の点を中心にご紹介します。
- 自力で出っ歯は治るのか
- 出っ歯の治療法
- 出っ歯を悪化させないための対策
自己流の方法で歯やお口に悪影響を及ぼさないためにも、ご参考いただけますと幸いです。 ぜひ、最後までお読みください。
出っ歯は押したら治るのか
- 出っ歯を指で押し続けていたら治りますか?
- 出っ歯を押し続けたら治るという噂を耳にしたことがあるかもしれません。しかし、これは危険な行為であり、歯科的には推奨されません。たしかに、歯は継続的な力を受けると動くことがあります。
例えば、舌で歯を押す”舌癖”が原因で出っ歯になることもあります。しかし、歯列矯正治療は専門的な知識と精密な力のコントロールが必要な治療です。ただ指で押すだけで理想的な歯並びにできるほど簡単なものではありません。むしろ、間違った力を加え続けると、歯の神経がダメージを受けたり、歯並びがさらに悪化することもあります。場合によっては歯を失うリスクもあるため、自己流の矯正は避けましょう。出っ歯が気になる場合は、専門の歯科医師に相談することが推奨されます。
- 自力で歯を押し続けると、歯並び以外にも問題が起きますか?
- 自力で歯を押し続けると、歯並びだけでなくお口全体や健康に深刻な影響を及ぼす可能性があります。歯列矯正治療では、歯や骨に無理な負担をかけないように慎重に力をかけますが、自己流の歯列矯正では力加減を誤りやすく、歯や顎の骨にダメージを与えてしまいます。強い力を加え続けると、歯の根が短くなる歯根吸収が起こり、歯がグラグラしたり抜けやすくなったりするリスクがあります。さらに、歯肉が退縮し、歯が長く見えたりむし歯になりやすくなったりすることもあります。最悪の場合、歯の根が骨から飛び出して神経が死んでしまい、歯を失う可能性もあります。また、無理な力で噛み合わせが乱れると、顎関節症や肩こり・頭痛の原因にもなります。見た目の改善を求めて自己流の歯列矯正を試すのは危険なので、歯並びが気になる場合は専門の歯科医師に相談しましょう。
- 割り箸を使って出っ歯を治す方法があると聞きましたが可能ですか?
- インターネット上では割り箸を使って出っ歯を治せるという方法が話題になることがあります。具体的には、仰向けに寝て割り箸の中央を軽く唇で挟み、口周りの筋肉をリラックスさせることで出っ歯を改善しようとするものです。しかし、この方法は歯並びを直接矯正するものではなく、あくまで筋肉に働きかけるものです。そのため、歯を動かして出っ歯を治すことはできません。さらに、自己流で行うと噛み合わせが悪化するリスクもあり、歯茎に負担がかかることで歯の寿命を縮める可能性もあります。出っ歯を本当に治したい場合は、歯科医師の適切な診断と治療が不可欠です。安易な自己流矯正は避け、専門の歯列矯正治療を検討しましょう。
出っ歯の治療法
- 出っ歯を治すにはどのような治療法がありますか?
- 出っ歯を治す方法はいくつかあり、症状の程度や原因に応じて適切な治療法が選ばれます。
- マウスピース型矯正
透明なマウスピースを装着し、少しずつ歯を移動させる方法です。目立ちにくく、取り外しができるため衛生的ですが、軽度の出っ歯の方におすすめされる治療法であり、重度の方には適用できないことがあります。また、1日20時間以上の装着が必要で、自己管理が重要になります。 - ワイヤー矯正
歯にブラケットを装着し、ワイヤーの力で歯を移動させる歯列矯正方法です。軽度から重度の出っ歯まで対応可能とされており、高い歯列矯正効果が期待できます。ただし、装置が目立ちやすく、口内炎や痛みが生じることもあります。 - 顎矯正手術
骨格の問題による重度の出っ歯には、歯列矯正と顎矯正手術を組み合わせた治療が必要になることがあります。顎の骨を調整し、噛み合わせや顔のバランスを整えます。症例によっては保険適用となることもあります。
出っ歯の治療は個々の症状によって異なるため、まずは歯科医師に相談し、自分に合った治療法を選びましょう。
- マウスピース型矯正
- 出っ歯を治すのにどのくらいの期間と治療費が必要ですか?
- 治療にかかる期間と費用について、治療法別にご紹介します。①マウスピース型矯正
透明なマウスピースを装着し、定期的に交換しながら歯を動かす方法です。- 矯正期間:部分矯正で2ヶ月~1年、全体矯正で1~3年
- 費用:20万~100万円程度
目立たちにくく取り外し可能ですが、重度の出っ歯には適用できないことがあります。
②ワイヤー矯正
ブラケットとワイヤーを使い、前歯を後方に動かす方法です。- 矯正期間:部分矯正で3ヶ月~1年、全体矯正で1年半~3年
- 費用:30万~130万円程度
軽度から重度まで対応可能ですが、装置が目立ちやすく、口内炎や痛みを伴うことがあります。
③顎矯正手術+矯正治療
顎の骨格に問題がある場合、手術と矯正を併用することがあります。- 矯正期間:2~3年程度
- 費用:保険適用なら数十万円、美容目的なら100万円以上
治療期間は個人差があり、歯科医師の診断によって変わるため、まずは医師に相談しましょう。
- 通販で購入したマウスピースで出っ歯を矯正できますか?
- 通販やドラッグストアで購入できる市販のマウスピースは手軽で安価ですが、出っ歯の歯列矯正にはおすすめできません。歯科医院で作る歯列矯正用マウスピースとは目的が異なり、歯ぎしり防止やスポーツ時の歯の保護を目的としたものがほとんどです。市販のマウスピースは個人の歯型に合わせて作られていないため、使用すると歯に合わず痛みが出たり、かえって噛み合わせが悪くなる可能性があります。
また、やわらかい素材のものが多く、歯を正しく動かす力をかけることができません。さらに、歯列矯正治療は専門的な知識が必要で、誤った力を加えると歯や歯茎にダメージを与える危険があります。
安全性を重視して出っ歯を治すためには、歯科医師の診断を受け、適切な歯列矯正治療を行うことが大切です。
自己判断で市販のマウスピースを使用するのは避けましょう。
出っ歯を悪化させないための対策
- これ以上出っ歯を悪化させないためにできることはありますか?
- 出っ歯は生活習慣や癖によって悪化することがあります。特に 舌で前歯を押す癖は出っ歯を進行させる原因の一つです。食事の際に無意識に舌で前歯を押したり、普段から舌が前歯に触れていると、少しずつ歯が前に押し出されてしまいます。また、 口呼吸や唇を噛む癖も出っ歯を悪化させる要因になります。
口呼吸が続くと、舌の位置が低くなり、前歯に圧がかかりやすくなります。さらに、長期間の指しゃぶりやタオルを噛む癖も出っ歯のリスクを高めるため注意が必要です。出っ歯の進行を防ぐためには、 MFT(口腔筋機能療法) を取り入れるのも効果が期待できます。これはお口周りの筋肉を鍛え、正しい舌の位置を意識するトレーニングで、小さな子どもでも実践できます。すでに出っ歯が気になる場合は、歯列矯正治療と併せて癖の改善を行いましょう。
- 指しゃぶりや爪を噛む癖は出っ歯に関係ありますか?
- 指しゃぶりや爪を噛む癖は、出っ歯の原因や悪化の要因になることがあります。
特に 指しゃぶり は、長期間続くと前歯が前に押し出され、出っ歯だけでなく 開咬(上下の歯が噛み合わない状態) を引き起こすこともあります。4〜5歳を過ぎても続けている場合は、歯並びへの影響が大きくなるため、早めの対策が重要です。また、 爪を噛む癖 も歯に強い負担をかけるため、出っ歯の悪化につながる可能性があります。さらに、 切端咬合(せったんこうごう) という歯の先端同士がぶつかる状態になり、歯が欠けるリスクもあります。無理にやめさせるのではなく、指しゃぶりが安心材料になっている子どもには優しく説明し、自然に卒業できるサポートをしましょう。そして生活習慣を見直し、歯並びに悪影響を与える癖を少しずつ改善していきましょう。
- 舌の位置を正しくする方法を教えてください
- 舌の正しい位置は 上顎の天井(口蓋) ですが、舌が下顎前歯の裏側にある状態を “低位舌” と呼びます。低位舌になると上顎の成長が妨げられ、歯並びが悪くなったり、出っ歯の原因になることがあります。舌の側面に歯型がついている場合は、低位舌の可能性が高いので注意しましょう。正しい舌の位置を保つためには、 口腔筋機能療法(MFT) や日常的なトレーニングが有効とされています。
日常的なトレーニングについて、以下でご紹介します。① ポッピングトレーニング
舌を上顎に吸い付かせ、ポンッと音を鳴らすトレーニングです。お口を大きく開け、舌全体を上顎にしっかり押し付けてから弾きましょう。 1日10回を目安に行うと効果が期待できます。② ガムを使ったトレーニング
ガムを噛んでやわらかくした後、舌の上に置きます。舌の先端を正しい位置(スポット)に固定しながら、上顎に押し付けることで舌の筋力を鍛えることができます。これらのトレーニングを継続することで、舌の正しい位置を意識できるようになり、歯並びやお口の健康を守ることにつながるとされています。
編集部まとめ
ここまで出っ歯の治し方などをお伝えしてきました。
出っ歯の矯正方法や対策について、要点をまとめると以下のとおりです。
- 出っ歯は押し続けたり、割り箸を使って自力で治すのはリスクがあるため推奨されない
- 出っ歯の治療法にはマウスピース型矯正、ワイヤー矯正、顎矯正手術などがある
- 出っ歯を悪化させないためには生活習慣や癖を改めたり、適切なトレーニングを行うことなどが挙げられる
自身の歯を守るためにも、出っ歯の矯正は自己流で行うのではなく、信頼できる歯科医師に相談しましょう。
本記事が少しでも皆様のお役に立てば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございました。