最近インターネットで見かけることが多い、歯列の部分矯正。全体矯正よりだいぶん費用が安く感じるけどほんとうなの?と疑問を持たれている方もいるのではないでしょうか。
気になる前歯がある……すきっ歯は部分矯正できるの?結婚式までに間にあう治療法はある?部分矯正とはいったいどういうものなのか?治療方法や費用などの疑問に詳しくお答えします。
部分矯正とは
部分矯正とは、1本だけでも治療ができる歯列矯正の方法です。前歯だけや、上の歯だけ、下の歯だけと、部分的に範囲を限定してできる治療方法でもあります。
特徴としては、すべての歯を矯正する全体矯正に比べて治療期間も短く費用も安く抑えられる点などがあります。 では、具体的にはどのような治療となるのか、次で説明します。
- 部分矯正とはどのような治療方法ですか?
- 移動させたい歯のみを目的に合わせて動かし、そのほかの歯を極力そのままで、また顎位も変えずに矯正します。たとえば、気になる歯を1本だけ矯正したい、結婚式を間近にひかえているので前歯だけ矯正したい、下の歯の重なり具合をきれいにしたいなどの場合にもできる治療です。ちなみに治療期間は治療方法にもよりますが、数ヶ月で治療が完了するケースもあり、費用については全体矯正の半額くらいに抑えられることもあります。矯正治療というと、長期にわたっての治療や、高額な費用が必要というイメージですが、部分矯正であれば多少の気軽さがうまれるかもしれません。
- 部分矯正を適応できる症例について教えてください。
- 主な部分矯正の適応症例としては、「軽度の出っ歯」「軽度の歯並びの凹凸」「前歯のズレ」「すきっ歯」「全体矯正後の後戻り」などがあげられます。以上のことから部分矯正は前歯を中心に行われることが多いです。
なお、重度の出っ歯や、八重歯、凹凸が複雑な歯並び、噛み合わせに問題がある場合などは部分矯正治療ができないことがあります。また、噛み合わせが深い、前歯がかみ合わない、受け口の場合も調整が難しくなりますのであらかじめご承知ください。
- 部分矯正のメリットとデメリットを教えてください。
- 前述のとおり、部分矯正のメリットのなかには、費用を抑えられる点があげられます。治療する範囲が限られているため、その分費用は安い傾向にあるのです。また、同様に治療範囲の限定により期間も短くすみ、気になる部分を短期間で整えることが可能です。そして、矯正部分を限定して治療ができることから、「すきっ歯」や「前歯のズレ」など気になる部分だけの治療も可能で、結婚式や講演会などのイベント前に応える治療としてもニーズは多くあります。
反対にデメリットとしては、適応できる症例は限られている点です。全体矯正と違い部分矯正では、全体の噛み合わせの治療はできません。さらに部分矯正では、歯を動かすスペースが必要となることから、歯を削ることもあります。医師と事前の治療計画を確認しておくことが大切です。
部分矯正の費用
全体矯正よりもリーズナブルな印象の部分矯正ですが、実際にはどのくらいの費用がかかるのでしょうか?歯科矯正は自由診療であるため、クリニックにより料金には差があります。また、治療方法の違いによっても費用は異なるので、さまざまな角度から費用について考えてみましょう。
- 部分矯正は保険が適用されますか?
- 基本的には歯科矯正は自由診療ですので、保険は適用されません。
- 部分矯正にかかる費用の相場について教えてください。
- 部分矯正の費用相場として考えていただきたいのは、30万円~70万円というところです。これは、追加費用の発生をさせずに、満足のいく部分歯列矯正を求めるにはこのくらいの価格が必要であるという考えからです。
部分矯正の最安値としては、10万円くらいからありますが、10万円台での治療というのは症例にごく限りがあります。また、最近では2、3万円でできるマウスピース矯正も出回っていますが、その多くはマウスピース1枚のみのお試しプランのことで、追加購入が必要となる場合があります。
以上のようなケースもあるため、適正相場を理解しておきましょう。
- 部分矯正の方法ごとにかかる費用について教えてください。
- 部分矯正の費用は治療方法によって異なりますので、それぞれの治療方法と費用を説明していきます。
まず、ワイヤー矯正(表側矯正)についてですが、この治療は矯正装置を歯の表面に装着し歯を移動させる治療方法です。ブランケットとワイヤーの装置が必要で使用する素材によっても費用は変わってきます。金属製のブランケットは比較的安価ですが、プラスチック・ジルコニア・セラミックは高くなります。なお、一般的な素材を使用した場合での、この治療にかかる費用はおよそ30万円~60万円です。
ワイヤー矯正でも裏側矯正(舌側矯正)と呼ばれている方法は、ブランケットとワイヤーを歯の裏側に装着させる治療です。表側矯正よりも高価となり、40万円~70万円とされています。値段が上がる理由としては、歯の裏側は複雑な形状であるため、ブランケットをオーダーメイドする必要があることと、表面に取り付けるよりも技術を要するためといわれています。
また、ワイヤー矯正にはハーフリンガル矯正という方法もあり、この方法は上顎は裏側に、下顎は表側に装置をつける方法です。費用は表側矯正と裏側矯正の中間くらいが相場とされています。
さらに、薄く透明に作られたマウスピースを数週間ごとに付け替えて歯を移動させるマウスピース型歯列矯正方法もあります。この部分矯正の費用は10万円~40万円とされていますが、この金額で受けられる適応症例には限りがあることを念頭においてください。
- 部分矯正にはどのような追加費用がかかる可能性がありますか。
- 部分矯正の治療には矯正装置だけではなく、ほかにもかかる費用があります。矯正前には各種の検査(プレ矯正期間)が必要で、また矯正後にも治した歯列をキープするために、リテーナーという保定装置をつける期間があります。それぞれの期間に発生する費用をまとめました。
プレ矯正期間にかかる費用としては、カウンセリングで5000円くらい、精密検査と診療で10000円~65000円、さらに抜歯が必要な場合は、1本につき5000円~15000円がかかります。
そして、矯正期間に発生する追加費用としては、調整料として1回3000円~10000円。矯正計画の修正には1回につき20000円くらいかかります。
保定期間にかかる費用としては、保定装置料として10000円~60000円、観察料として3000円~5000円が1回につき発生する費用と考えておきましょう。
部分矯正の費用の支払い方法
自由診療である歯科矯正の治療は高額となるため、支払い方法もクリニックによりいろいろ用意されています。
- 部分矯正の費用はどのような支払い方法がありますか?
- 自由診療であることから、支払い方法についてもクリニックにより異なります。一般的な支払い方法としては現金やクレジットカードなどが主ですが、クリニックによっては分割払い、デンタルローンなどを扱っている場合もありますので、事前に確認することをおすすめします。なお、デンタルローンは金利がかかりますが、支払い回数を増やせば月払い金額が下がるため月々の支払い金額を抑えたい場合には有効といえる方法です。
- 部分矯正で医療費控除は受けられますか?
- 医療費が発生した年度の1月~12月までに支払った医療費が10万円を超えた場合は、確定申告により納税金額から一部還付されます。
歯列矯正は噛み合わせの治療であることから、医療費控除が認められていますが、美容目的だけでは認められません。部分矯正では、噛み合わせまで治療することができないことが多く、対象外となることがあるので注意が必要です。ただし、歯科医師による治療が必要であるという診断書があれば医療費控除が可能となりますので、医師に相談するとよいでしょう。
編集部まとめ
部分歯科矯正における疑問は解消できたでしょうか?一概に部分歯科矯正といっても、さまざまな治療方法やそれに伴う料金体系があります。さらに気をつけたいのは、歯科矯正には歯科医師の高度な技術が必要な点です。値段につられて安易に治療を開始すると、満足のいく結果が得られないことや、予定よりも追加費用が多く、思わぬ出費となる可能性もあります。納得のいく効果を得るためにも、多くの情報と知識で準備をしておきたいですね。
参考文献