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開咬は放置していると良くない?矯正治療の方法や期間などについて解説!

開咬は放置していると良くない?矯正治療の方法や期間などについて解説!

奥歯ではしっかり噛めるのに前歯では噛めない。そんな症状がある人は、開咬(かいこう)という不正咬合を抱えているかもしれません。開咬は、上顎前突や反対咬合、叢生などと同じ、悪い歯並びの一種で、日本人にも一定数見られます。

開咬はその性質上、見た目が悪いだけでなく、歯の機能面にもさまざまな支障をきたすため、十分な注意が必要な歯並びといえるでしょう。ここではそんな開咬を放置するリスクや矯正治療で治す方法、治療に要する期間などを詳しく解説します。

開咬の症状

開咬とはどのような症状ですか?
開咬は、文字通り咬んだときに上下の歯列が開いてしまう歯並び、噛み合わせの異常です。開咬には、前歯部開咬と臼歯部開咬の2種類がありますが、一般的には前者を指すことがほとんどです。つまり、奥歯で噛んだときに上下の前歯の間に隙間が生じている状態です。前歯部開咬は、専門家ではなくても自分で確認できることが多いです。臼歯部開咬は、奥歯の部分に現れるものなので、詳しく検査してみなければ自覚することも難しいでしょう。
開咬になる原因について教えてください。
開咬になる主な原因は、乳幼児期の指しゃぶりや舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)です。指や舌で前歯が圧迫されると、その力に応じて隙間が生じます。骨格的な異常に由来する開咬の場合は、遺伝によるところが大きいといえます。上下の顎の位置や大きさのバランスが悪く、前歯部が開いてしまうのです。
自分が開咬であるかチェックする方法を教えてください。
開咬であるかどうかは、前歯の接触状態を見ることで確認できます。まず、奥歯を自然に噛んだ状態で、上下の前歯が噛み合わなければ、開咬の可能性が高まります。その状態で下の顎を前に移動しても、上下の前歯が一切接触しないのであれば、それは開咬といえるでしょう。開咬は、下顎をどの位置に動かしても上下の前歯が接触しない噛み合わせなのです。
開咬を放置していると、どのようなリスクがありますか?
開咬は、数ある不正咬合(ふせいこうごう)の中でもリスクの大きい歯並びです。原則としては、矯正治療で改善するのが望ましいです。そんな開咬を放置していると、次に挙げるようなリスクが生じます。

リスク1:むし歯や歯周病になりやすい
開咬には、口呼吸を伴うことが多いです。口で呼吸をしていると、口腔内が乾燥して唾液による殺菌作用や自浄作用が働きにくくなります。その結果、むし歯や歯周病といった細菌感染症のリスクが上がってしまうのです。

リスク2:奥歯を失いやすい
前歯で食べ物を噛むことができない開咬では、そしゃく機能のほぼすべてを奥歯で負担しなければなりません。本来は前歯で細かく噛み切ってからそしゃくするところを、食品の原型をとどめた状態で奥歯が噛み砕き、すりつぶさなければならないことから、正常な噛み合わせの人よりも奥歯に大きな負担がかかってしまいます。ですから、開咬の人では奥歯の摩耗や破折がよく見られます。歯を失うリスクも自ずと高まります。

リスク3:顎関節症になりやすい
普段から奥歯だけで噛んでいる人ならイメージしやすいかと思いますが、前歯が使えないと顎の関節に大きな負担がかかります。開咬の症状を持っている人は、もうすでに顎関節に痛みや雑音、腫れなどが生じているかもしれません。そうした症状が深刻化すると、顎関節症という病気へと進展します。

リスク4:口元のコンプレックスになる
開咬は、出っ歯や乱ぐい歯と同じように、口元の審美性を大きく下げることが多い歯並びです。笑ったときに上下の前歯部間に不自然な隙間があると、周囲からの視線が気になってしまう人も多いようです。そうした視線が嫌で、人前ではあまり笑わなくなってしまう人も少なくないでしょう。

開咬の矯正治療方法と治療期間

開咬の矯正治療方法と治療期間

開咬の矯正治療方法にはどのような種類がありますか?
歯並びの異常に由来する開咬は、いわゆる歯列矯正で改善できます。具体的には、表側矯正、裏側矯正(舌側矯正)、マウスピース型矯正のいずれかで治すことになります。

・表側矯正
歯並びの治療と聞いて、ほとんどの人が思い浮かべるのがこの表側矯正です。その名の通り歯列の表側に装置を固定する方法で、多くの歯並びに適応できます。開咬は三次元的な歯の移動が必要となりやすい歯並びなのですが、自由度の高い表側矯正なら問題なく治せることも多いです。費用も80万円〜100万円程度と、適正な料金で開咬を治せます。部分矯正の場合は、30万円〜60万円程度まで費用を抑えられますが、開咬は全体矯正でなければ改善できないことの方が多い傾向にあります。

ちなみに、表側矯正は装置が目立ちやすいというデメリットを伴います。標準的な表側矯正は、金属製のブラケットとワイヤーを使うため、口を開けたときにギラギラとした装置が目立ってしまうのです。セラミック製のブラケットや白くコーティングされたワイヤーをオプションで選択することで審美性の低下を抑えることはできますが、開咬の矯正中であることはひと目見てわかることでしょう。

・裏側矯正(舌側矯正)
装置が目立ちやすいという表側矯正のデメリットを解消したのが裏側矯正です。歯列の裏側にマルチブラケット装置を固定するため、開咬の矯正中であることに気づかれにくいです。ただし、裏側矯正は表側矯正よりも高度なテクニックを要することから、正しく行える歯科医師は一部に限られます。表側矯正とは異なる装置を使うこともあり、標準的な症例でも130万円〜140万円程度の費用がかかります。

・マウスピース型矯正
矯正装置による異物感や違和感、見た目の悪さに悩まされにくいのは、マウスピース型矯正です。薄くて透明なマウスピースを着脱するだけなので、表側矯正や裏側矯正よりも快適に開咬の治療を進めていくことができます。食事や歯磨き、発音への影響が少ない点もマウスピース型矯正の利点といえます。適応範囲という点では、残念ながら表側矯正や裏側矯正よりもマウスピース型矯正の方が劣ります。なぜならマウスピース型矯正は、軽度から中等度の開咬であればきれいに治せる場合も多いのですが、比較的重症度の高い症例には向かない方法だからです。

開咬の矯正治療にはどのくらいの期間がかかりますか?
開咬の矯正治療は、軽度の症例なら1〜2年程度で歯の移動が完了します。中等度の開咬の場合は、2〜3年の矯正期間を要することでしょう。歯の移動が完了したら、後戻りを防止するための保定処置を行わなければなりません。保定処置は、歯を動かすのに要した期間と同程度、継続する必要があります。

開咬の矯正治療後について

開咬の矯正治療後について

開咬の矯正治療を行うと、見た目にはどのような影響がありますか?
矯正治療によって開咬の症状が解消されると、面長だった顔貌が正常化されます。専門的な表現をすると、下顔面高が長大となっている状態が改善されるのです。その結果、バランスの取れた顔立ちになることでしょう。
開咬の矯正治療後に行うべき後戻りの予防方法について教えてください。
開咬の矯正治療によって歯並び・噛み合わせが正常化されたらリテーナーという専用の装置を使った保定処置を実施します。リテーナーには、固定式のものや着脱式のものなど、いろいろな種類があり、それぞれのケースに最適なものを使います。リテーナーは、歯を動かす動的治療(どうてきちりょう)と同じ期間装着することで、開咬の後戻りを防止することが可能となります。

舌を前に突き出す癖や指しゃぶりなどが原因で開咬になっていた場合は、そうした悪習癖も完全に取り除く必要があります。矯正治療で開咬がきれいに治っても、歯並びを悪くする悪習癖が残っていたら、あっという間に後戻りしてしまいますので、十分に注意しましょう。

編集部まとめ

今回は、開咬を放置するリスクや矯正治療で治す方法、期間、後戻りを防止する方法などを解説しました。開咬を放置していると実に多くのデメリットやリスクを伴うことになるため、可能な限り早く矯正治療を受けましょう。開咬の症状が認められる人は、まず矯正歯科でカウンセリングを受けることから始めてください。

参考文献

この記事の監修歯科医師
坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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坂本 輝雄歯科医師(東京歯科大学 千葉歯科医療センター 矯正歯科 臨床准教授)

東京歯科大学卒業 東京歯科大学大学院歯学研究科(歯科矯正学専攻)修了 東京歯科大学歯科矯正学講座助手 慶応義塾大学医学部形成外科学教室非常勤講師 米国オクラホマ大学歯科矯正学講座 Visiting Assistant Professor 東京歯科大学歯科矯正学講座講師 東京歯科大学退職 東京歯科大学千葉歯科医療センター矯正歯科 臨床准教授

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